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2019.11.27

【イベント】「Thank You, Japan」世田谷区で日米のトップアスリートが子供たちにアドバイス
【イベント】「Thank You, Japan」世田谷区で日米のトップアスリートが子供たちにアドバイス

【月陸NEWS】
「Thank You, Japan」
世田谷区で日米のトップアスリートが
子供たちにアドバイス

メインスタンドの改築工事が完了した東京都世田谷区の世田谷区立総合運動場陸上競技場のオープニングイベントが11月23日、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)の東京オリンピック・パラリンピックに向けた国際親善キャンペーン「Thank You, Japan」の活動も兼ねて行われた。

「Thank You, Japan」は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックがもたらすポジティブなレガシーに貢献し、オリンピック・パラリンピックの価値を日本の人々と共有することを目的に立ち上げられたキャンペーンだ。2008年の北京五輪以降で実施され、ホスト国に「Tnank You」を伝えてきた。

同総合運動場が東京オリンピック・パラリンピックに向けたUSOPCアメリカ選手団のキャンプ地となるなど、世田谷区は「Host Town USA」に指定されている。世田谷区が〝ホーム〟となるTeam USAが、大会期間中にはなかなかできない地元の人たちとの交流を図っていくことが今回のイベントの趣旨だ。
トップアスリートが集結し子供たちと交流した
リレーが行われるなどさまざまな企画が催された

当日は本格的な冬の訪れを告げるような冷たい雨が降り続き、予定していたプログラムがいくつか中止となったが、世田谷区内の小学生から高校生まで200人以上が参加して行われた。

2部構成で行われたイベントのうち、トップアスリートたちが残した子供たちへのアドバイスを中心に紹介する。

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【第1部 トラック&フィールドイベント 一流の陸上競技を〝生で観てみよう〟】

MTC9人が勢ぞろいで陸上教室

午前中に行われた第1部には、ミズノトラッククラブ(MTC)のメンバーと、車いす陸上でパラリンピックに4大会連続で出場している副島正純選手が参加した。

MTCの中村哲郎監督が世田谷区出身で、この競技場が1970年(昭和45年)に日本初の400mオールウェザートラックとなった際の〝こけら落とし〟に、当時中学3年だった中村監督が出場(100m)した縁もあり、現チームではめったになかった9人全員が勢ぞろい。各選手がデモンストレーションを披露した後、日本大学陸上競技部の選手や、地元の子供たちも加わって4×100mリレーを実施。その後、希望種目ごとに分かれて、陸上教室を行った。

MTCのキャプテンを務める男子短距離の飯塚翔太は、参加した子供たちに、次のようにアドバイスを送った。

「小さい目標を1日1個立てて、それをクリアしていくことが大きな夢の実現につながります。僕は1日1個ゴミを拾うという目標を決めて、取り組んでいます。そうやっていけば叶わない夢はないと思っているので、みなさんも夢に向かってがんばってください」

イベント後には、それぞれがイベントの感想と、東京五輪イヤーとなる2020年への抱負を語った。
写真提供/ミズノトラッククラブ

飯塚翔太(男子短距離)
「(陸上教室などで)全員で集まったことはほとんどなかったので、できて良かったですし、個人的にもとても楽しかったです。2020年に向けては200mで勝負するためにスタートの改善と、トップスピードを高めていくことが課題。200mで日本記録更新を目指します」

●野澤啓佑(男子400mH)
「子供たちにとって、このイベントが結果としていろいろな道につながるきっかけになってくれればと思います。自分自身は昨年を振り返ると、固定概念が強すぎた1年でした。レース展開もいろいろな幅が持てるようにしていきたい。自己新を出せば、それが結果につながると思っています」

●松下祐樹(男子400mH)
「子供たちに陸上競技を見せることができて、楽しい1日でした。チーム全員でできたことも、僕らにとってもいい思い出になりました。冬でも夏と同じようにスピードの高いトレーニングを積んでいます。それが来年につながればと思っています。リオ五輪が予選落ち。五輪の悔しさは五輪でしか晴らせないので、東京でがんばりたいです」

●荻田大樹(男子棒高跳)
「(雨で跳躍のデモンストレーションが中止となり、ポール走のみに)跳べなかったのは残念だけど、MTC全員でやれて楽しかったです。今季は少し課題が多い1年になりましたが、いい状態を作ってからシーズンに臨めるようにしたい。東京五輪を競技人生の最高の舞台にできるようにがんばります」

ディーン元気(男子やり投)
「すごく新鮮に参加できましたし、子供たちにもいいきっかけを与えられたのではないでしょうか。今季はケガなくシーズンを遅れたので、これからも引き続き毎日やるべきことをやっていきたい。85m00の東京五輪参加標準記録を突破して、五輪本番でそれを更新してメダルを取ることが2020年の目標です」

金井大旺(男子110mH)
「ハードルを跳んだりリレーをやったりと、みんなが楽しんでくれたことがよかったです。冬季は踏み切りの改善を重点的に取り組んでいます。2020年は自分の力を出し切るつもりで、全力で挑みたいと思っています」

中村太地(男子砲丸投)
「天候が悪い中でしたが、すごく楽しんでもらえたのではないかと思います。個人的には久々に4×100mリレーを走って、すごく楽しかったです。砲丸投は反復練習。その量・質を高めて、19mを投げることを目指したい」

●市川華菜(女子短距離)
「リレーも楽しかったですし、子供たちの笑顔がすごく印象的でした。今季は走りのタイミングがズレてしまっていたので、力の発揮の仕方などをもう1回ゼロから組み直し、まずは自己ベストを出すことを目指します」

●和田麻希(女子短距離)
「全員がそろうことはめったにないし、リレーもみんなでできました。いろんな刺激を受けて、とてもいい教室だったと思います。秋にケガをして以来、初めて動いたので、冬季はしっかりと身体を作ることが目標。今季は100m、200mともセカンドベストどまりだったので、自己ベストを出して、後悔のないシーズンにしたいです」
金井選手、松下選手によるハードルのデモンストレーション

【第2部 アメリカ陸上競技選手との交流イベント】

アメリカの〝ホープ〟と〝レジェンド〟がトークショー
第2部の「Thank You, Japan」キャンペーンでは男子短距離のマイケル・ノーマン選手(右から2人目)、女子車いす陸上のタチアナ・マクファデン選手(その左)が自身の経験や子供たちへのアドバイスを話した。はMCは髙平慎士さん(右端)と副島正純選手(左端)が務めた。左から2人目は世田谷区の保坂展人区長

第2部は、「Tnank You, Japan」キャンペーンのメイン。アメリカ陸上界のホープで、男子400mで室内世界記録を持つマイケル・ノーマン選手と、パラリンピックの女子車いす陸上競技で金メダル7個を含む14個ものメダルを獲得した〝レジェンド〟タチアナ・マクファデン選手が参加した交流イベントが開催。雨天の影響で予定されていたランニング教室やリレーが中止となったが、メインスタンドでのトークショーが行われた。

トークショーのMCは、2008年北京五輪男子4×100mリレー銀メダルメンバーの髙平慎士さんと、第1部に引き続いて副島選手が担当。それぞれの経験を基に、軽妙な掛け合いで2人のトークを引き出していった。その内容をQ&Aにまとめた。

Q.陸上競技を始めたきっかけは?

ノーマン 僕が10歳の時、父から「陸上競技をやってみないか?」と言われたことがきっかけです。その時は特にスポーツを何もやっていなかったので、ちょっとやってみようと思って始めました。そしたら、陸上が楽しくなりました。なぜかと言うと、陸上は競争心を持ってやるスポーツだということにすごく魅力を感じたことと、競争をすることで自分自身を高められるものだと思ったからです。

小さい頃から足が速かったかと言われると、イエスとも言えないし、ノーとも言えません(笑)。スポーツは全般的に好きだったけど、足が速いという自覚はありませんでした。中学3年とか高校1年ぐらいになって、もしかしたら自分は速いのかな? と感じ始めました。僕は控えめというか、自分で自分をすごいと思うタイプじゃないけど、切磋琢磨しながら伸びて行くところに好感を持ちました。

マクファデン 私は二分脊椎症という病気で、下半身が麻痺した状態で生まれました。本当なら手術を受けないといけなかったのですが、それが受けられずに下半身付随となりました。その後、孤児院で育ったのですが、6歳の時に人生が変わるきっかけがありました。私の今の母である人が、私を養女にしてくれたのです。

それからいろんなことが変わりました。まず学校に通わせてもらい、手術も受けることができました。現地のスポーツクラブにも入りました。そこで、たくさんのスポーツに出会いました。アイスホッケーやスキーなどですね。なかでも、車いすの競走で非常にスピードが出ることがとても楽しかったんです。そこで、私は絶対にパラリンピックに出るぞ、という夢を持ちました。

2004年のアテネ・パラリンピックで銀メダルと銅メダルを獲得したのですが、その後ももっと取りたい、もっとがんばりたいと競技を続けました。願わくば、来年の東京でもメダルを取りたいと思っています。クレイジーだと思われるかもしれませんが、100m、200m、400m、1500m、5000m、マラソンと、いろんな種目にどんどん出場したいと思っています。みなさんには、ぜひ現地に来て応援してもらえたらと思っています。

私がこれまでたどってきた道のりには、みなさんももちろんそうでしょうけど〝ストーリー〟があります。私は小さい頃から、夢を持って過ごしてきました。夢を持って、きちんとした姿勢、きちんとした考え方で自分の夢に向かうことができれば、それは必ずかなうものと信じています。

人生とは自分が持っていないもので決まるのではなく、自分が何をするかで決まってきます。そういった正しい気持ちで、正しい考え方で常に努力をしていけば、夢は必ずかなうと思います。東京2020に向けてアスリートが持っている、いろんなストーリーを知る機会が増えると思います。それをぜひ耳にして、話を聞くことで、自分もいつかこういう人になれるんじゃないか、そういう気持ちをぜひ持ってほしいと思います。

Q.普段はどれぐらいトレーニングをしていますか?

ノーマン 月、火、水、木、金、土、日、毎日練習していますよ。練習時間はだいたい1日2~3時間ぐらいだけど、その時期によります。トレーニングをすることが自分の日常生活なので、それにしっかりと取り組むためにはしっかりと休養をとり、しっかりと睡眠をとり、しっかりと食事をとることも大切ですね。

マクファデン 毎日練習するの? 私は週1回は休みです。本当は、彼は週2で休みと言っていたわよ(笑)。

Q.トレーニングや試合の時の食事で気をつけていることは?

ノーマン 普段はチキンなどでたんぱく質をしっかりととることです。あとはライスだったり、ブロッコリーだったり、栄養バランスを考えて、1日に4回ぐらい食事をとります。食事には気をつけていますね。

マクファデン 私は長い距離がメインなので、炭水化物がをしっかりととります。たんぱく質もとるようにしていますが、ライスやパスタなどが多いです。実は甘いものも好きで、日本のおもちも大好きなので、食べられるのを楽しみに来ました。

Q.自分が陸上競技をやっているうえで大事にしていることは?

ノーマン 僕はとにかく自分をしっかり保つことを心がけています。時には誘惑にかられることもあるのですが、やはり自分は何をしたいのかということをしっかりと見つめ直して、自分なりにやるべきことを続けていくということを心がけています。

マクファデン 自分の存在がパラアスリートを代表していると思って、競技を続けています。

Q.2020年の目標は? 達成した後は何をやりたいですか?

ノーマン もちろん金メダルに尽きるのですが、五輪が終わった後はおいしいものを食べたいと思っています。コンビニにカスタードパイがあるんですけど、それを食べたいですね(笑)

マクファデン 私ももちろん金メダルです。終わったら、おもちを食べたい、お寿司をたべたい、ディズニーランドに行きたいと思っています(笑)

Q.400mが好きで、400mでオリンピック選手になりたいと思っています。走り方を教えてください。

ノーマン すごくいい歩みを始めていると思います。一番重要なことは自分自身の気持ちです。周りの環境、両親のサポート、いいコーチに出会うことも大事ですが、今の気持ちをしっかりと持って続けていってほしいです。

Q.レース前に緊張している時に心がけていることは?

マクファデン まず言いたいことは、緊張するのは当たり前だということです。まず深呼吸をして、どんなレースになるだろうと自分の頭の中で思い浮かべてください。そして私は今、自分の好きなことをやっているんだ、と。そう思っていれば、気持ちは落ち着いてくるはずです。

構成/小川雅生

【月陸NEWS】 「Thank You, Japan」 世田谷区で日米のトップアスリートが 子供たちにアドバイス メインスタンドの改築工事が完了した東京都世田谷区の世田谷区立総合運動場陸上競技場のオープニングイベントが11月23日、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)の東京オリンピック・パラリンピックに向けた国際親善キャンペーン「Thank You, Japan」の活動も兼ねて行われた。 「Thank You, Japan」は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックがもたらすポジティブなレガシーに貢献し、オリンピック・パラリンピックの価値を日本の人々と共有することを目的に立ち上げられたキャンペーンだ。2008年の北京五輪以降で実施され、ホスト国に「Tnank You」を伝えてきた。 同総合運動場が東京オリンピック・パラリンピックに向けたUSOPCアメリカ選手団のキャンプ地となるなど、世田谷区は「Host Town USA」に指定されている。世田谷区が〝ホーム〟となるTeam USAが、大会期間中にはなかなかできない地元の人たちとの交流を図っていくことが今回のイベントの趣旨だ。 トップアスリートが集結し子供たちと交流した リレーが行われるなどさまざまな企画が催された 当日は本格的な冬の訪れを告げるような冷たい雨が降り続き、予定していたプログラムがいくつか中止となったが、世田谷区内の小学生から高校生まで200人以上が参加して行われた。 2部構成で行われたイベントのうち、トップアスリートたちが残した子供たちへのアドバイスを中心に紹介する。

【第1部 トラック&フィールドイベント 一流の陸上競技を〝生で観てみよう〟】

MTC9人が勢ぞろいで陸上教室 午前中に行われた第1部には、ミズノトラッククラブ(MTC)のメンバーと、車いす陸上でパラリンピックに4大会連続で出場している副島正純選手が参加した。 MTCの中村哲郎監督が世田谷区出身で、この競技場が1970年(昭和45年)に日本初の400mオールウェザートラックとなった際の〝こけら落とし〟に、当時中学3年だった中村監督が出場(100m)した縁もあり、現チームではめったになかった9人全員が勢ぞろい。各選手がデモンストレーションを披露した後、日本大学陸上競技部の選手や、地元の子供たちも加わって4×100mリレーを実施。その後、希望種目ごとに分かれて、陸上教室を行った。 MTCのキャプテンを務める男子短距離の飯塚翔太は、参加した子供たちに、次のようにアドバイスを送った。 「小さい目標を1日1個立てて、それをクリアしていくことが大きな夢の実現につながります。僕は1日1個ゴミを拾うという目標を決めて、取り組んでいます。そうやっていけば叶わない夢はないと思っているので、みなさんも夢に向かってがんばってください」 イベント後には、それぞれがイベントの感想と、東京五輪イヤーとなる2020年への抱負を語った。 写真提供/ミズノトラッククラブ ●飯塚翔太(男子短距離) 「(陸上教室などで)全員で集まったことはほとんどなかったので、できて良かったですし、個人的にもとても楽しかったです。2020年に向けては200mで勝負するためにスタートの改善と、トップスピードを高めていくことが課題。200mで日本記録更新を目指します」 ●野澤啓佑(男子400mH) 「子供たちにとって、このイベントが結果としていろいろな道につながるきっかけになってくれればと思います。自分自身は昨年を振り返ると、固定概念が強すぎた1年でした。レース展開もいろいろな幅が持てるようにしていきたい。自己新を出せば、それが結果につながると思っています」 ●松下祐樹(男子400mH) 「子供たちに陸上競技を見せることができて、楽しい1日でした。チーム全員でできたことも、僕らにとってもいい思い出になりました。冬でも夏と同じようにスピードの高いトレーニングを積んでいます。それが来年につながればと思っています。リオ五輪が予選落ち。五輪の悔しさは五輪でしか晴らせないので、東京でがんばりたいです」 ●荻田大樹(男子棒高跳) 「(雨で跳躍のデモンストレーションが中止となり、ポール走のみに)跳べなかったのは残念だけど、MTC全員でやれて楽しかったです。今季は少し課題が多い1年になりましたが、いい状態を作ってからシーズンに臨めるようにしたい。東京五輪を競技人生の最高の舞台にできるようにがんばります」 ●ディーン元気(男子やり投) 「すごく新鮮に参加できましたし、子供たちにもいいきっかけを与えられたのではないでしょうか。今季はケガなくシーズンを遅れたので、これからも引き続き毎日やるべきことをやっていきたい。85m00の東京五輪参加標準記録を突破して、五輪本番でそれを更新してメダルを取ることが2020年の目標です」 ●金井大旺(男子110mH) 「ハードルを跳んだりリレーをやったりと、みんなが楽しんでくれたことがよかったです。冬季は踏み切りの改善を重点的に取り組んでいます。2020年は自分の力を出し切るつもりで、全力で挑みたいと思っています」 ●中村太地(男子砲丸投) 「天候が悪い中でしたが、すごく楽しんでもらえたのではないかと思います。個人的には久々に4×100mリレーを走って、すごく楽しかったです。砲丸投は反復練習。その量・質を高めて、19mを投げることを目指したい」 ●市川華菜(女子短距離) 「リレーも楽しかったですし、子供たちの笑顔がすごく印象的でした。今季は走りのタイミングがズレてしまっていたので、力の発揮の仕方などをもう1回ゼロから組み直し、まずは自己ベストを出すことを目指します」 ●和田麻希(女子短距離) 「全員がそろうことはめったにないし、リレーもみんなでできました。いろんな刺激を受けて、とてもいい教室だったと思います。秋にケガをして以来、初めて動いたので、冬季はしっかりと身体を作ることが目標。今季は100m、200mともセカンドベストどまりだったので、自己ベストを出して、後悔のないシーズンにしたいです」 金井選手、松下選手によるハードルのデモンストレーション

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