2021.12.27

箱根駅伝Stories
東京国際大学
Tokyo International University
12月29日の区間エントリーを直前に控え、箱根駅伝ムードが徐々に高まっている。「箱根駅伝Stories」と題し、12月下旬から本番まで計19本の特集記事を掲載していく。
第16回目は、出雲駅伝で初出場&初優勝の快挙を達成した東京国際大を特集する。
箱根駅伝の過去最高成績は5位。強力3本柱で往路の主導権を握り、目標に掲げる「往路優勝」「総合3位以内」の達成へ邁進していく。
2021駅伝シーズンの台風の目に
出雲駅伝の初出場・初優勝は“新時代”への序章に過ぎない。
出雲は最終6区に5000mの学生記録(13分15秒15)を持つイェゴン・ヴィンセント(3年)を配置。大志田秀次監督は「1分以内なら逆転優勝のチャンスはある」と読んでいた。
しかし、選手たちは指揮官の想像以上の走りを見せた。
1区の山谷昌也(3年)がトップと5秒差の3位でスタートし、2区・佐藤榛紀(1年)は順位をキープ。3区の丹所健(3年)で首位に立つと、29秒ものリードを奪った。
4区の白井勇佑(1年)、5区の宗像聖(3年)も安定感のあるレース運びでトップを独走する。ヴィンセントにタスキが渡った時には、2位の東洋大に28秒もの貯金があった。終わってみれば2位の青学大に1分57秒という大差をつけて圧勝。1993年以降では最大差をつけた。
「勝つなら逆転だろうと思っていましたが、天候にも助けられました。各校、暑さ対策を考えながらのペース配分でしたので、我々にとっては都合が良かったです」(大志田監督)
11月の全日本大学駅伝では5位ながら、3区、4区、6区で先頭に立つなど、上位争いの中で存在感を発揮した。
出雲のVメンバー6人は全員が3年生以下。しかもケニア人留学生に頼るのではなく、日本人選手だけでトップを独走したことが大きい。そのパワーを箱根駅伝にぶつけることになる。
優勝した出雲駅伝でアンカーのイェゴン・ヴィンセントを出迎える東京国際大の選手たち
他校も警戒する強力3本柱
全日本で1区を務めた佐藤がエントリーから外れたこともあり、正月決戦は「1区山谷、2区ヴィンセント、3区丹所」という“超先行型オーダー”がさらに色濃くなった。
大志田監督は、「山谷が30秒差ぐらいで来てくれれば、3区を終えて1分半ほどのリードは稼げる」と計算している。
山谷は1区にこだわりを持っている選手。今季は10000mで28分11秒94の自己ベストをマークしている。「自分がうまく走ることができれば“ロケットスタート”ができると思います。区間賞を狙って勝負していきたい」とラスト勝負で自慢のスピードを炸裂させるつもりだ。
ヴィンセントは1年時に3区、2年時は2区で区間記録を樹立。日本人トップにそれぞれ1分58秒、1分25秒という大差をつけている。
出雲駅伝の6区(10.2km)は安全運転で走りながら、必死に前を追いかけた駒大の田澤廉(3年)に21秒差をつけた。3区(11.9km)に入った全日本大学駅伝は6位から一気にトップを奪う走りで区間賞。10000mで27分25秒65を持つ拓大のジョセフ・ラジニ(3年)に35秒、日本人トップだった青学大の岸本大紀(3年)に1分09秒という大差をつけている。
前回は花の2区で1時間5分49秒という大記録を打ち立てているが、大志田監督は、「前回は20kmまで1時間5分30秒ペースだったんですけど、残り3kmの上り坂が動かなかった。前回の経験もありますし、コンディションが整えば区間記録の更新はできるかなという期待は持っています」とヴィンセントの実力を評価している。
丹所は出雲駅伝でトップと4秒差の3位で走り出すと、2km過ぎに集団から抜け出して、後続をぶっちぎった。青学大の佐藤一世(2年)に32秒差をつけての日本人トップだった。全日本は左足底を痛めたために2区予定から6区にまわったが、圧倒的な区間賞(区間新)。早大、青学大、順大を抜き去り、トップを奪い返した。
過去2回の箱根駅伝は1区(区間13位、同14位)を務めたが、今回は3区での登場になりそうだ。
「出雲、全日本といいかたちで来ているので、区間賞を目標にしたいですね。今回は3区を走って、次回は2区を走りたい。3区なら母校(神奈川・湘南工大附高)の横を走ると思うので、お世話になった方々に走りで恩返しして、チームにも貢献したいと思っています」
丹所は今季10000mでも28分19秒17をマーク。出雲と全日本で見せたアグレッシブな走りで、3区の日本人最高記録(1時間1分23秒/帝京大・遠藤大地)の更新を狙っている。
過去最高成績への挑戦
1~3区の“爆発力”はこれまで箱根駅伝に出場したチームの中でも最大級になるだろう。4区候補には出雲駅伝の5区を区間3位と好走した宗像聖(3年)という経験者(前回は区間13位)もいる。4区終了時までにどれだけのリードを奪うことができるのか非常に楽しみだ。
ただし、山は未知数になる。大志田監督は、「5区は1時間13分、6区は59分前後くらい」を想定している。もし計算通りの走りができれば、前回、創価大が見せたような独走を今度は東京国際大が再現する可能性を秘めている。
チームの目標は「3位以内」。大志田監督は、「絶対に優勝しなきゃいけないチームではないので、チャレンジャーとしての気持ちが強いです。全日本は目標にしていた3位以内を逃しましたが、先頭の背中が見えてきている感じはあります。できるかどうかは分かりませんが、来季は3冠を目指せるような、今後につながるような大会にしたいです」と選手たちには攻めの走りを期待している。
そして復路は4年生が軸になる。実力的には「谷間の世代」で8人ほどが選手からサポートにまわった。野澤巧理は一般入試で入ってきた選手だが、全日本7区を区間6位と好走するまで成長した。
全日本大学駅伝の長距離区間である7区、8区を任された4年生の野澤巧理(左)と3年生の宗像聖
主将の三浦瞭太郎は、「箱根駅伝は総合3位という目標を掲げています。出雲と全日本は1~3年生が中心でしたが、箱根は距離が長くなるので4年生の力が重要になってくる。例年キャプテンが最終10区を任されているので、自分がゴールテープを切って、有終の美を飾りたいです」と意気込んでいる。
東京国際大はセンスと勢いのある3年生世代とコツコツ実力をつけてきた4年生を中心に、箱根路でも旋風を巻き起こす予感は十分。最後は4年生が意地を見せて“新時代”につなげていく。
文/酒井政人
箱根駅伝Stories
東京国際大学
Tokyo International University
12月29日の区間エントリーを直前に控え、箱根駅伝ムードが徐々に高まっている。「箱根駅伝Stories」と題し、12月下旬から本番まで計19本の特集記事を掲載していく。
第16回目は、出雲駅伝で初出場&初優勝の快挙を達成した東京国際大を特集する。
箱根駅伝の過去最高成績は5位。強力3本柱で往路の主導権を握り、目標に掲げる「往路優勝」「総合3位以内」の達成へ邁進していく。
2021駅伝シーズンの台風の目に
出雲駅伝の初出場・初優勝は“新時代”への序章に過ぎない。 出雲は最終6区に5000mの学生記録(13分15秒15)を持つイェゴン・ヴィンセント(3年)を配置。大志田秀次監督は「1分以内なら逆転優勝のチャンスはある」と読んでいた。 しかし、選手たちは指揮官の想像以上の走りを見せた。 1区の山谷昌也(3年)がトップと5秒差の3位でスタートし、2区・佐藤榛紀(1年)は順位をキープ。3区の丹所健(3年)で首位に立つと、29秒ものリードを奪った。 4区の白井勇佑(1年)、5区の宗像聖(3年)も安定感のあるレース運びでトップを独走する。ヴィンセントにタスキが渡った時には、2位の東洋大に28秒もの貯金があった。終わってみれば2位の青学大に1分57秒という大差をつけて圧勝。1993年以降では最大差をつけた。 「勝つなら逆転だろうと思っていましたが、天候にも助けられました。各校、暑さ対策を考えながらのペース配分でしたので、我々にとっては都合が良かったです」(大志田監督) 11月の全日本大学駅伝では5位ながら、3区、4区、6区で先頭に立つなど、上位争いの中で存在感を発揮した。 出雲のVメンバー6人は全員が3年生以下。しかもケニア人留学生に頼るのではなく、日本人選手だけでトップを独走したことが大きい。そのパワーを箱根駅伝にぶつけることになる。
優勝した出雲駅伝でアンカーのイェゴン・ヴィンセントを出迎える東京国際大の選手たち
他校も警戒する強力3本柱
全日本で1区を務めた佐藤がエントリーから外れたこともあり、正月決戦は「1区山谷、2区ヴィンセント、3区丹所」という“超先行型オーダー”がさらに色濃くなった。 大志田監督は、「山谷が30秒差ぐらいで来てくれれば、3区を終えて1分半ほどのリードは稼げる」と計算している。 山谷は1区にこだわりを持っている選手。今季は10000mで28分11秒94の自己ベストをマークしている。「自分がうまく走ることができれば“ロケットスタート”ができると思います。区間賞を狙って勝負していきたい」とラスト勝負で自慢のスピードを炸裂させるつもりだ。 ヴィンセントは1年時に3区、2年時は2区で区間記録を樹立。日本人トップにそれぞれ1分58秒、1分25秒という大差をつけている。 出雲駅伝の6区(10.2km)は安全運転で走りながら、必死に前を追いかけた駒大の田澤廉(3年)に21秒差をつけた。3区(11.9km)に入った全日本大学駅伝は6位から一気にトップを奪う走りで区間賞。10000mで27分25秒65を持つ拓大のジョセフ・ラジニ(3年)に35秒、日本人トップだった青学大の岸本大紀(3年)に1分09秒という大差をつけている。 前回は花の2区で1時間5分49秒という大記録を打ち立てているが、大志田監督は、「前回は20kmまで1時間5分30秒ペースだったんですけど、残り3kmの上り坂が動かなかった。前回の経験もありますし、コンディションが整えば区間記録の更新はできるかなという期待は持っています」とヴィンセントの実力を評価している。 丹所は出雲駅伝でトップと4秒差の3位で走り出すと、2km過ぎに集団から抜け出して、後続をぶっちぎった。青学大の佐藤一世(2年)に32秒差をつけての日本人トップだった。全日本は左足底を痛めたために2区予定から6区にまわったが、圧倒的な区間賞(区間新)。早大、青学大、順大を抜き去り、トップを奪い返した。 過去2回の箱根駅伝は1区(区間13位、同14位)を務めたが、今回は3区での登場になりそうだ。 「出雲、全日本といいかたちで来ているので、区間賞を目標にしたいですね。今回は3区を走って、次回は2区を走りたい。3区なら母校(神奈川・湘南工大附高)の横を走ると思うので、お世話になった方々に走りで恩返しして、チームにも貢献したいと思っています」 丹所は今季10000mでも28分19秒17をマーク。出雲と全日本で見せたアグレッシブな走りで、3区の日本人最高記録(1時間1分23秒/帝京大・遠藤大地)の更新を狙っている。過去最高成績への挑戦
1~3区の“爆発力”はこれまで箱根駅伝に出場したチームの中でも最大級になるだろう。4区候補には出雲駅伝の5区を区間3位と好走した宗像聖(3年)という経験者(前回は区間13位)もいる。4区終了時までにどれだけのリードを奪うことができるのか非常に楽しみだ。 ただし、山は未知数になる。大志田監督は、「5区は1時間13分、6区は59分前後くらい」を想定している。もし計算通りの走りができれば、前回、創価大が見せたような独走を今度は東京国際大が再現する可能性を秘めている。 チームの目標は「3位以内」。大志田監督は、「絶対に優勝しなきゃいけないチームではないので、チャレンジャーとしての気持ちが強いです。全日本は目標にしていた3位以内を逃しましたが、先頭の背中が見えてきている感じはあります。できるかどうかは分かりませんが、来季は3冠を目指せるような、今後につながるような大会にしたいです」と選手たちには攻めの走りを期待している。 そして復路は4年生が軸になる。実力的には「谷間の世代」で8人ほどが選手からサポートにまわった。野澤巧理は一般入試で入ってきた選手だが、全日本7区を区間6位と好走するまで成長した。
全日本大学駅伝の長距離区間である7区、8区を任された4年生の野澤巧理(左)と3年生の宗像聖
主将の三浦瞭太郎は、「箱根駅伝は総合3位という目標を掲げています。出雲と全日本は1~3年生が中心でしたが、箱根は距離が長くなるので4年生の力が重要になってくる。例年キャプテンが最終10区を任されているので、自分がゴールテープを切って、有終の美を飾りたいです」と意気込んでいる。
東京国際大はセンスと勢いのある3年生世代とコツコツ実力をつけてきた4年生を中心に、箱根路でも旋風を巻き起こす予感は十分。最後は4年生が意地を見せて“新時代”につなげていく。
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