2021.12.22

箱根駅伝Stories
伊藤大志
Ito Taishi(早稲田大学1年)
12月29日の区間エントリーを直前に控え、箱根駅伝ムードが徐々に高まっている。「箱根駅伝Stories」と題し、12月下旬から本番まで計19本の特集記事を掲載していく。
第6回目は、1年生ながら出雲・全日本の両駅伝で出走した早大の伊藤大志をピックアップ。長野・佐久長聖高時代は5000mで高校歴代2位(現3位)の13分36秒57をマーク。鳴り物入りで入学した期待のルーキーは、「もらったタスキを先頭まで持っていくのが、一番の仕事」と自らの役割を認識している。
全日本は1区7位と好走
今回の箱根駅伝で早大のキーマンとなるのは、この男かもしれない。長野・佐久長聖高出身のルーキー・伊藤大志だ。
伊藤は、5000m高校歴代2位(当時)の13分36秒57というタイムを引っ提げて、早大に入学した。これは入学した4月時点では上級生を含めてもチーム内最速だった。
前半戦はなかなか目立った活躍はなかったが、関東インカレにはいきなり対校選手として出場。5000m17位と満足できる成績ではなかったが、緊張感のある公式戦の空気を肌で感じた。
国内トップ選手が集う6月の日本選手権にも出場。同日開催のU20日本選手権ではなく、「強さを求めたい」と、あえてシニアとの戦いを選んだ。5000m20位という結果だったが、東京五輪の代表選考がかかった舞台で、その緊張感を味わえたことは大きな経験になった。
「13分36秒というタイムに見合った結果が求められるなか、自分自身もタイム以上の走りを追求してきましたが、前半戦はまだまだ物足りないなと感じました」
伊藤にとっては、消化不良な前半戦だったかもしれない。だが、それは高いレベルを求め、果敢に挑んだからこそ。「臙脂のエース」への道のりは、決して平坦ではないのだ。
駅伝シーズンに入ると、伊藤は1年生にして、出雲駅伝、全日本大学駅伝の両方に出場した。跳ねる走りのため、出雲は強風に煽られて5区区間12位と力を出せなかったが、全日本は1区でトップと13秒差の区間7位と、まずまずの走りを見せた。高い修正能力も伊藤の持ち味だ。
中学、高校から全国区で活躍
伊藤が陸上を始めたのは、小学2年の時だった。
「周りの友達が習い事を始めたので、僕も何か習いたかったんですけど、勉強は好きじゃなかったので塾には行きたくないし、手先が器用ではないので、そろばんや楽器系も無理。運動神経も良くなかったので、球技もできなかった。それで、地域のスポーツ少年団で陸上を選びました」
小学生の頃は短距離をやっていたが、高学年になると長距離のレースにも出るようになった。とはいえ、「地区大会でも入賞できないレベルでした」と話す。
中学に入学すると、そのままの流れで陸上部に入った。すると、中2の夏に「いきなりタイムが伸びた」。中3では、全中3000m5位、ジュニア五輪3000m2位など、一気に全国区の選手に成長した。
佐久長聖高でもエースとして活躍。高校2年時の国体では少年A5000mで、三浦龍司(洛南高・京都/現・順大)、吉居大和(仙台育英高・宮城/現・中大)、児玉真輝(鎌倉学園高・神奈川/現・明大)、石原翔太郎(倉敷高・岡山/現・東海大)といった、そうそうたる面々に先着して3位に入っている。
高2の国体少年A5000mでは3位入賞
そして高3時には、高校記録を樹立した同世代の石田洸介(現・東洋大)に次いで、5000mで当時高校歴代2位の記録をマークした。
チームのエースである中谷雄飛(4年)や、東京五輪男子マラソン6位入賞の大迫傑と同じ、佐久長聖高→早大というルートを辿る。即戦力にして、将来のエース候補だ。
山上りの5区に意欲
冒頭で「伊藤がキーマンになるかもしれない」と書いたのは、伊藤が箱根駅伝の5区に意欲を示しているからだ。
早大は近年、箱根駅伝の山区間、特に上りの5区を大きな課題としてきた。この3年間はいずれも区間ふたケタ順位と苦戦し、山で順位を落としている。
総合優勝を目標に掲げるからには、5区攻略は必須。この1年は、チーム全体でこの課題を共有してきた。
そして、その候補に名乗りを挙げたのが伊藤だった。
「高校時代から上りは結構得意でした」と話す伊藤。峰の原高原(長野)での夏合宿では、練習がフリーの日に、先輩の中谷とともにトレイルランに取り組むなどし、起伏対策と脚筋力の強化をしてきた。
また、全日本大学駅伝の1週間後には、箱根を舞台に行われた激坂王最速決定戦に志願して出場。全日本の疲労があったため、先頭集団に付いたのは2kmまでだったが、箱根5区で活躍した神野大地(セルソース)のすぐ後ろに付いて、上りの走りを観察しヒントを探った。
「神野さんは身体全体をうまく使って、上り坂でも軽く走っていました。僕も見習って、もう少し練習しなきゃいけないと思いました」
平地での走力もあり、他の区間を走る可能性も、もちろんある。だが、伊藤は、自分自身の役割をこう口にする
「早稲田は毎年5区が鬼門になっているので、5区で“良い走り”といかないまでも、“無難”につなぐことができれば、優勝は見えてくると思います。それに、僕を5区に使えれば、主力選手を別の区間に回すこともできます。良い意味で、僕を捨て駒にしてくれれば」
すべてはチームの優勝のため、伊藤は覚悟を固めている。
「タイムはあまり気にしていませんが、(同じ高校だった)前回の鈴木芽吹先輩(駒大2年/区間4位、1時間12分44秒)ぐらいで走れたら万々歳ですね。大事なのは、タイムよりもレース展開。もらったタスキを先頭まで持っていくのが、一番の仕事だと思うので、そこを全うしたい。そうすれば、タイムもついてくるのかなと思っています」
その言葉通りの走りを伊藤が見せた時、早大の総合優勝がぐっと近づくだろう。

◎いとう・たいし/2003年2月2日生まれ。長野県出身。171cm、50kg。赤穂中(長野)→佐久長聖高→早大。5000m13分36秒57、10000m29分42秒24。
文/福本ケイヤ
※記事内に誤りがあったため修正しました
箱根駅伝Stories
伊藤大志
Ito Taishi(早稲田大学1年)
12月29日の区間エントリーを直前に控え、箱根駅伝ムードが徐々に高まっている。「箱根駅伝Stories」と題し、12月下旬から本番まで計19本の特集記事を掲載していく。
第6回目は、1年生ながら出雲・全日本の両駅伝で出走した早大の伊藤大志をピックアップ。長野・佐久長聖高時代は5000mで高校歴代2位(現3位)の13分36秒57をマーク。鳴り物入りで入学した期待のルーキーは、「もらったタスキを先頭まで持っていくのが、一番の仕事」と自らの役割を認識している。
全日本は1区7位と好走
今回の箱根駅伝で早大のキーマンとなるのは、この男かもしれない。長野・佐久長聖高出身のルーキー・伊藤大志だ。 伊藤は、5000m高校歴代2位(当時)の13分36秒57というタイムを引っ提げて、早大に入学した。これは入学した4月時点では上級生を含めてもチーム内最速だった。 前半戦はなかなか目立った活躍はなかったが、関東インカレにはいきなり対校選手として出場。5000m17位と満足できる成績ではなかったが、緊張感のある公式戦の空気を肌で感じた。 国内トップ選手が集う6月の日本選手権にも出場。同日開催のU20日本選手権ではなく、「強さを求めたい」と、あえてシニアとの戦いを選んだ。5000m20位という結果だったが、東京五輪の代表選考がかかった舞台で、その緊張感を味わえたことは大きな経験になった。 「13分36秒というタイムに見合った結果が求められるなか、自分自身もタイム以上の走りを追求してきましたが、前半戦はまだまだ物足りないなと感じました」 伊藤にとっては、消化不良な前半戦だったかもしれない。だが、それは高いレベルを求め、果敢に挑んだからこそ。「臙脂のエース」への道のりは、決して平坦ではないのだ。 駅伝シーズンに入ると、伊藤は1年生にして、出雲駅伝、全日本大学駅伝の両方に出場した。跳ねる走りのため、出雲は強風に煽られて5区区間12位と力を出せなかったが、全日本は1区でトップと13秒差の区間7位と、まずまずの走りを見せた。高い修正能力も伊藤の持ち味だ。中学、高校から全国区で活躍
伊藤が陸上を始めたのは、小学2年の時だった。 「周りの友達が習い事を始めたので、僕も何か習いたかったんですけど、勉強は好きじゃなかったので塾には行きたくないし、手先が器用ではないので、そろばんや楽器系も無理。運動神経も良くなかったので、球技もできなかった。それで、地域のスポーツ少年団で陸上を選びました」 小学生の頃は短距離をやっていたが、高学年になると長距離のレースにも出るようになった。とはいえ、「地区大会でも入賞できないレベルでした」と話す。 中学に入学すると、そのままの流れで陸上部に入った。すると、中2の夏に「いきなりタイムが伸びた」。中3では、全中3000m5位、ジュニア五輪3000m2位など、一気に全国区の選手に成長した。 佐久長聖高でもエースとして活躍。高校2年時の国体では少年A5000mで、三浦龍司(洛南高・京都/現・順大)、吉居大和(仙台育英高・宮城/現・中大)、児玉真輝(鎌倉学園高・神奈川/現・明大)、石原翔太郎(倉敷高・岡山/現・東海大)といった、そうそうたる面々に先着して3位に入っている。
高2の国体少年A5000mでは3位入賞
そして高3時には、高校記録を樹立した同世代の石田洸介(現・東洋大)に次いで、5000mで当時高校歴代2位の記録をマークした。
チームのエースである中谷雄飛(4年)や、東京五輪男子マラソン6位入賞の大迫傑と同じ、佐久長聖高→早大というルートを辿る。即戦力にして、将来のエース候補だ。
山上りの5区に意欲
冒頭で「伊藤がキーマンになるかもしれない」と書いたのは、伊藤が箱根駅伝の5区に意欲を示しているからだ。 早大は近年、箱根駅伝の山区間、特に上りの5区を大きな課題としてきた。この3年間はいずれも区間ふたケタ順位と苦戦し、山で順位を落としている。 総合優勝を目標に掲げるからには、5区攻略は必須。この1年は、チーム全体でこの課題を共有してきた。 そして、その候補に名乗りを挙げたのが伊藤だった。 「高校時代から上りは結構得意でした」と話す伊藤。峰の原高原(長野)での夏合宿では、練習がフリーの日に、先輩の中谷とともにトレイルランに取り組むなどし、起伏対策と脚筋力の強化をしてきた。 また、全日本大学駅伝の1週間後には、箱根を舞台に行われた激坂王最速決定戦に志願して出場。全日本の疲労があったため、先頭集団に付いたのは2kmまでだったが、箱根5区で活躍した神野大地(セルソース)のすぐ後ろに付いて、上りの走りを観察しヒントを探った。 「神野さんは身体全体をうまく使って、上り坂でも軽く走っていました。僕も見習って、もう少し練習しなきゃいけないと思いました」 平地での走力もあり、他の区間を走る可能性も、もちろんある。だが、伊藤は、自分自身の役割をこう口にする 「早稲田は毎年5区が鬼門になっているので、5区で“良い走り”といかないまでも、“無難”につなぐことができれば、優勝は見えてくると思います。それに、僕を5区に使えれば、主力選手を別の区間に回すこともできます。良い意味で、僕を捨て駒にしてくれれば」 すべてはチームの優勝のため、伊藤は覚悟を固めている。 「タイムはあまり気にしていませんが、(同じ高校だった)前回の鈴木芽吹先輩(駒大2年/区間4位、1時間12分44秒)ぐらいで走れたら万々歳ですね。大事なのは、タイムよりもレース展開。もらったタスキを先頭まで持っていくのが、一番の仕事だと思うので、そこを全うしたい。そうすれば、タイムもついてくるのかなと思っています」 その言葉通りの走りを伊藤が見せた時、早大の総合優勝がぐっと近づくだろう。
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