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2021.12.23

充実した戦力で勢いに乗るSGホールディングス 元日のニューイヤー駅伝で22年ぶり入賞を目指す
充実した戦力で勢いに乗るSGホールディングス 元日のニューイヤー駅伝で22年ぶり入賞を目指す


SGホールディングス陸上競技部を代表してインタビューに応じてくれた3選手。左から鈴木塁人、佐藤悠基、川端千都
 1987年に陸上競技部を創部したSGホールディングス(当時、佐川急便)が強烈な追い風に乗っている。今年のニューイヤー駅伝は昨年11月に加わった佐藤悠基が最長4区で9年ぶりの区間賞を獲得。21世紀に入って最高順位となる10位でゴールした。今季は村澤明伸、戸田雅稀、川端千都が加入するなど戦力がさらに充実し、11月14日の関西実業団対抗駅伝で圧勝している。選手兼アドバイザーでもある佐藤と、新キャプテンの川端、入社2年目の鈴木塁人がSGホールディングスの“新時代”について語り合った。

新戦力が続々と加入

──鈴木選手は一昨年4月、佐藤選手は昨年11月、川端選手は今年4月に入社しました。3人がSGホールディングスを選んだ理由を教えてください。

鈴木 青山学院大学時代の4年間で強くなる理想像が見えきて、SGホールディングスは、その先の自分のやりたいことができる環境だと思ったからです。同学年の關颯人、阪口竜平が入社を決めていたので、これから絶対に強くなるチームだと感じたのも大きかったですね。

佐藤 所属していた企業の陸上競技部が活動を休止することになったので、新たなチームを探していた時に声をかけていただきました。まだまだ自分の競技力を伸ばせるような環境を用意してもらえたことと、先のキャリアも考えていたので「アドバイザー」という役割を提示してもらえたのも理由です。

川端 僕の場合は東海大学時代の恩師である両角速先生(駅伝監督)の紹介がきっかけです。大学時代に熱烈な勧誘を受けていたこともあり、僕もこのチームで走りたいなという思いが強くなりました。移籍先が決まっていなかったので、本当にありがたかったです。

──SGホールディングス陸上競技部は滋賀・守山がメインの活動拠点になりますが、3人は東京を拠点にされているそうですね。東京組はどんな環境でトレーニングをしているのでしょうか?

鈴木 トラック練習は江戸川陸上競技場や夢の島陸上競技場、距離走は葛西臨海公園を中心にやっています。僕が入社した時は東京組が3~4人で故障者も多く、1人で練習していたイメージでした。今は東京組が8人いるので、ずいぶんと雰囲気が変わりましたね。

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佐藤 西川雄一朗コーチのもと基本的なメニューがあるのですが、個々でやりたいことがあれば、それぞれの練習をやることもできます。僕は少し離れたところに住んでいるので、自分のペースでやりながら、ポイント練習はなるべく合わせるかたちでやらせてもらっています。

チーム内はもちろん、日本の陸上界に大きな影響を与えている35歳の佐藤

自主性を尊重してくれるチーム

川端 僕が入社して感じたのは、自主性を尊重してくれるチームだということですね。実業団連合の合宿ではジョグもグループや、時間などが指定されることが多いんです。このチームは次のポイント練習のためのメニューは自分たちで考えながらやらせてもらえる。そこは他チームにはあまりない個性かなと思います。

──今季は村澤明伸選手、戸田雅稀選手も加入しました。来春も有力選手が入社する予定です。チームの雰囲気はどうでしょうか?

鈴木 村澤さんは僕と同じで朝練習に速いジョグをするので一緒にやらせてもらっています。戸田さんも実績がありますし、一流選手が集まっているので、お互いにいいものを吸収しようという雰囲気になっています。

佐藤 若い選手が多いので勢いのあるチームです。僕はニューイヤー駅伝で優勝した経験もあるので、その雰囲気に導いていくのが、自分が呼ばれた意味でもあると思っています。

川端 力のある選手が集まっていて、後輩からも学べるところがすごくあるチームです。それぞれの選手の意識が高く、まだまだ成長できるチームだと思っています。

他チームからの移籍1年目ながら夏からキャプテンを務めている26歳の川端

課題が残った前回のニューイヤー駅伝

──前回のニューイヤー駅伝を振り返っていただきましょう。佐藤選手は34歳にして最長4区で9年ぶりの区間賞を獲得。チームは惜しくも入賞は逃しましたが、21世紀に入って最上位の10位です。前年(22位)、前々年(33位)から大躍進しました。

佐藤 新たなチームで2年ぶりのニューイヤー駅伝となり、フレッシュな気持ちで臨むことができました。自分がこのチームに呼ばれた意味を考えると、駅伝でしっかりと結果を出さないといけません。その中で自分の役割を果たすことができました。個人としては「まだがんばれるな」と思いましたが、チームとしては課題が多く残るレースになりました。その分、まだまだ伸びる余地はあると感じています。

鈴木 僕はレースの流れを作る前半区間を走ることを目指していましたが、12月の合宿で体調を崩し、急きょ7区(15.5kmのアンカー)になりました。8位でもらいながら入賞を逃して、チームに迷惑をかけてしまったと思っています。3位が目標でしたけど、そこまで勝負できていなかった。目指していたものと自分たちの実力にギャップがあったのかなとも感じています。

前回のニューイヤー駅伝で惜しくも入賞を逃す10位でフィニッシュした鈴木。今回は自身もチームメイトも、22年ぶりとなる8位入賞を確実にものにしたいと考えている

川端 僕は別のチームで走っていたのですが、SGホールディングスで一番印象に残ったのは悠基さんの走りですね。率直に悠基さんは「本当にすごい選手だな」と思いましたし、SGホールディングスは10位に入り、すごく勢いのあるチームになっていると感じました。

日本長距離界のレジェンド・佐藤悠基は「誰よりも練習する」

──佐藤選手は昨年12月の日本選手権10000mでも7位(27分41秒84)に入りました。中学時代から大活躍し、世界大会も数多く経験している日本長距離界のレジェンドである佐藤選手はチームにどんな影響を与えていますか?

川端 悠基さんはシンプルに「強い選手」だと思っています。好記録を持つ選手や激しい練習をこなせる選手はたくさんいるのですが、悠基さんはプラスして試合で結果もしっかりと残している。合宿では誰よりもたくさん走り、誰よりもハードで質の高いメニューを消化しているんです。びっくりしたのは7月のホクレンディスタンスチャレンジ(3日の士別大会・5000m)の時ですね。当日の朝練習で18km走って、レースでは日本人34歳最高タイムの13分35秒74(チーム新記録)。「強い」というのはこういうことなんだと感じました。

鈴木 悠基さんはとにかく誰よりも練習していますね。それに自分の身体をわかっている。僕は狙うレースの前で脚の状態が良くなくても練習をやめられる勇気がないのですが、悠基さんの場合はスパッとやめる決断をするんです。本当に見習うことが多いです。

──佐藤選手はアドバイザーとしてどんなことを意識しているのでしょうか?

佐藤 特に心掛けていることはありません。自分からあまり話すタイプではないですし。とにかく、自分のやれることを最大限やるというのを意識しています。若手の選手が自分を見てくれているのも逆に自分のモチベーションになっていますよ。自分が言ったことが正解ではないと思うので、あくまでも参考程度で、本人たちが自分なりに解釈して成長につなげてもらえればいいかなと思っています。

前回のニューイヤー駅伝でエースが集う最長4区(22.4km)を務め、並み居る強豪を抑えて区間賞を獲得した佐藤

関西実業団駅伝に大会新で圧勝

──11月14日の関西実業団駅伝は大会新記録で完勝しました。鈴木選手は6区で区間新記録。川端選手も最終7区で区間賞を獲得しています。

鈴木 僕は昨年と同じ練習の流れで、昨年と同じ区間を走りました。昨年は少しオーバーペース気味に入って、最後はバテたんです。今回は昨年とほぼ変わらないぐらいで5kmを入っても、余裕度が違っていて、11.0kmを昨年より20秒近く速く走ることができました。大会記録を2分近く更新できたので、チームとしても成長したと思っています。

川端 自分は夏にキャプテンに任命されて、初めてのレースになりました。大会新記録での優勝なので、チームの勢いというか、強さを示すことができましたね。個人でも最低限、区間賞の走りができた。ニューイヤー駅伝に向けていい流れをつかめたかな、というのが感想です。

11月14日の関西実業団駅伝は3区の三上嵩斗(右)で首位に立ち、4区の千葉直輝から独走。大会新記録で圧勝して全日本大会に弾みをつけた

──佐藤選手は関西実業団駅伝には出場しませんでしたが、12月5日の福岡国際マラソンでペースメーカーを務めています。

佐藤 駅伝は僕がいなくても全然いいなと思いましたね(笑)。福岡国際マラソンは、夏にマラソン練習をしていたのですが、予定していた10月の東京マラソンが延期になってその成果を試す機会がなくなり、どれぐらいの状態なのかを確認したかったのと、ニューイヤー駅伝に向けてスタミナを意識してのペースメーカーでした。

ニューイヤー駅伝は
確実に“入賞ライン”を突破したい

──次は2022年のニューイヤー駅伝です。佐川急便時代を含めて1996年の7位が過去最高成績で、2000年の8位以降は入賞していません。チーム目標は決まっているのでしょうか?

川端 目標は「入賞」です。これから勝ち上がっていくための足がかりという意味で、確実に入賞ラインを突破したい。そうでないと、トップスリーや優勝という順位は見えてきませんから。確実に入賞して、今後はさらに順位をステップアップしていきたいです。

──その目標を達成するために、それぞれがどんな役割を果たすべきだと考えていますか?

川端 前年は目標(3位)が高すぎて、どうがんばっていいのかわからないという選手が多かったと聞いています。今回は一人ひとりが目標に向けて明確に何をするべきかわかっている状態だと思っています。個人としては、悠基さんと一緒に練習してきた自信もあるので、主要区間と言われる3区(13.6km)、4区(最長22.4km)、5区(15.8km)あたりで結果を残したい。前回は3区(区間25位)で悔しい思いをしたので、今回はチームの流れをしっかり作りたいです。

佐藤 区間配置を決めるのはスタッフなので、どの区間を任されてもいいような準備をしていきたい。選手みんながそういう気持ちをしっかり持つことと、それに見合った準備をするだけかなと思っています。だから希望区間も特にありません。前回は4区を走りましたが、僕が行かなくてもいいかなとは思っていますよ。ただ言われたら、「はい、行きます」と返すだけで、そのための準備はできています。

鈴木 今季は出場したレースで、自分の目標からさほどずれることのない結果を残しています。前半から突っ込んでいけるのが自分の持ち味なので、希望があるとすれば前半区間かな。前回は悔しい思いをしましたが、今回はすごくワクワクした状態で当日を迎えられるのではないかなと思っています。

──駅伝はSGホールディングスの主力事業である「荷物を届けること」と親和性があるように思います。物流業界を引っ張るSGホールディングスの社員選手として求められていること、何か意識していることはありますか?

佐藤 佐川急便は飛脚マークを採用していますし、陸上競技部の活動とリンクしてくる部分があると思います。社会インフラを担う物流企業の選手として、会社に貢献したいという気持ちで競技をしています。ニューイヤー駅伝は1年の始まりということで、社内を盛り上げるために少しでも力になればいいなと思っています。

川端 ニューイヤー駅伝は僕らが会社の顔になります。結果を求めるだけでなく、社会人ランナーのあるべき姿をしっかり示していきたいと思っています。

鈴木 競技に集中させてもらっているからには、1月1日は絶対に外せません。僕たちが駅伝をがんばることで会社のイメージアップにつなげたいですね。

青学大を出て社会人2年目の鈴木は若い力でチームを盛り立てる

ジュニア世代の選手たちに夢を持たせたい

──SGホールディングスは全国高校駅伝を特別協賛しています。佐藤選手は全国高校駅伝でも活躍しましたね。

佐藤 僕らアスリートは夢を与える仕事も担っています。特にジュニア世代の選手たちには、がんばった先に明るい未来が待っていることを走りで伝えていきたい。母校の佐久長聖高(長野)は全国高校駅伝に連続出場しているので、後輩たちの活躍が自分の刺激にもなっています。

──最後に2022年シーズンの目標と今後の大きな目標を教えてください。

佐藤 まずはニューイヤー駅伝で自分たちの目標をしっかりとクリアしたい。個人としてはマラソンですね。自分の中ではまだ成功していないですし、来年はちゃんとかたちにしたいというのが一番です。選手としては、1年、1年が勝負だと思って取り組み、その結果、結構長くやっていたというのが理想です。チャンスがあれば海外レースにもどんどん挑戦していきたい。その経験を次の世代に伝えて、参考にしてもらえればと思っています。

川端 まずはニューイヤー駅伝の入賞を確実に達成したい。個人としてはマラソンに挑戦するタイミングが来たと感じているので、大阪マラソン(2月27日)で2時間8分台を目指しています。その後は、海外レースもたくさん経験していきたいです。

鈴木 チームから求められているニューイヤー駅伝で、どの区間でもしっかりと区間賞争いをするのが最初の目標です。個人としては、丸亀ハーフマラソン(2月6日)か全日本実業団ハーフマラソン(2月13日)のどちらかで自己ベストを狙います。その後は10000mを本気で狙っていきたいので、チャンスがあれば海外レースにも挑戦したいですね。スピードを磨いて、ゆくゆくはマラソンにもチャレンジするつもりです。

──本日はありがとうございました。ニューイヤー駅伝でのご活躍を楽しみにしています。

インタビュー場所だったSGホールディングス東京事務所の最上階デッキにて。右端は西川雄一朗コーチ、奥の建物は昨年1月に竣工した同社の次世代型大規模物流センター「Xフロンティア」

構成/酒井政人
撮影/船越陽一郎(インタビュー、ポートレート)

SGホールディングスのニューイヤー駅伝成績

第38回(1994年) 14位
第40回(1996年) 7位
第41回(1997年) 14位
第42回(1998年) 22位
第43回(1999年) 18位
第44回(2000年) 8位
第45回(2001年) 19位
第46回(2002年) 22位
第47回(2003年) 14位
第48回(2004年) 19位
第49回(2005年) 19位
第50回(2006年) 20位
第51回(2007年) 33位
第52回(2008年) 25位
第53回(2009年) 16位
第54回(2010年) 23位
第56回(2012年) 18位
第57回(2013年) 15位
第58回(2014年) 21位
第59回(2015年) 20位
第60回(2016年) 20位
第61回(2017年) 28位
第62回(2018年) 34位
第63回(2019年) 33位
第64回(2020年) 22位
第65回(2021年) 10位

※2013年までは「佐川急便」として出場
※色つきはひとケタ成績

SGホールディングス陸上競技部を代表してインタビューに応じてくれた3選手。左から鈴木塁人、佐藤悠基、川端千都  1987年に陸上競技部を創部したSGホールディングス(当時、佐川急便)が強烈な追い風に乗っている。今年のニューイヤー駅伝は昨年11月に加わった佐藤悠基が最長4区で9年ぶりの区間賞を獲得。21世紀に入って最高順位となる10位でゴールした。今季は村澤明伸、戸田雅稀、川端千都が加入するなど戦力がさらに充実し、11月14日の関西実業団対抗駅伝で圧勝している。選手兼アドバイザーでもある佐藤と、新キャプテンの川端、入社2年目の鈴木塁人がSGホールディングスの“新時代”について語り合った。

新戦力が続々と加入

──鈴木選手は一昨年4月、佐藤選手は昨年11月、川端選手は今年4月に入社しました。3人がSGホールディングスを選んだ理由を教えてください。 鈴木 青山学院大学時代の4年間で強くなる理想像が見えきて、SGホールディングスは、その先の自分のやりたいことができる環境だと思ったからです。同学年の關颯人、阪口竜平が入社を決めていたので、これから絶対に強くなるチームだと感じたのも大きかったですね。 佐藤 所属していた企業の陸上競技部が活動を休止することになったので、新たなチームを探していた時に声をかけていただきました。まだまだ自分の競技力を伸ばせるような環境を用意してもらえたことと、先のキャリアも考えていたので「アドバイザー」という役割を提示してもらえたのも理由です。 川端 僕の場合は東海大学時代の恩師である両角速先生(駅伝監督)の紹介がきっかけです。大学時代に熱烈な勧誘を受けていたこともあり、僕もこのチームで走りたいなという思いが強くなりました。移籍先が決まっていなかったので、本当にありがたかったです。 ──SGホールディングス陸上競技部は滋賀・守山がメインの活動拠点になりますが、3人は東京を拠点にされているそうですね。東京組はどんな環境でトレーニングをしているのでしょうか? 鈴木 トラック練習は江戸川陸上競技場や夢の島陸上競技場、距離走は葛西臨海公園を中心にやっています。僕が入社した時は東京組が3~4人で故障者も多く、1人で練習していたイメージでした。今は東京組が8人いるので、ずいぶんと雰囲気が変わりましたね。 佐藤 西川雄一朗コーチのもと基本的なメニューがあるのですが、個々でやりたいことがあれば、それぞれの練習をやることもできます。僕は少し離れたところに住んでいるので、自分のペースでやりながら、ポイント練習はなるべく合わせるかたちでやらせてもらっています。 チーム内はもちろん、日本の陸上界に大きな影響を与えている35歳の佐藤

自主性を尊重してくれるチーム

川端 僕が入社して感じたのは、自主性を尊重してくれるチームだということですね。実業団連合の合宿ではジョグもグループや、時間などが指定されることが多いんです。このチームは次のポイント練習のためのメニューは自分たちで考えながらやらせてもらえる。そこは他チームにはあまりない個性かなと思います。 ──今季は村澤明伸選手、戸田雅稀選手も加入しました。来春も有力選手が入社する予定です。チームの雰囲気はどうでしょうか? 鈴木 村澤さんは僕と同じで朝練習に速いジョグをするので一緒にやらせてもらっています。戸田さんも実績がありますし、一流選手が集まっているので、お互いにいいものを吸収しようという雰囲気になっています。 佐藤 若い選手が多いので勢いのあるチームです。僕はニューイヤー駅伝で優勝した経験もあるので、その雰囲気に導いていくのが、自分が呼ばれた意味でもあると思っています。 川端 力のある選手が集まっていて、後輩からも学べるところがすごくあるチームです。それぞれの選手の意識が高く、まだまだ成長できるチームだと思っています。 他チームからの移籍1年目ながら夏からキャプテンを務めている26歳の川端

課題が残った前回のニューイヤー駅伝

──前回のニューイヤー駅伝を振り返っていただきましょう。佐藤選手は34歳にして最長4区で9年ぶりの区間賞を獲得。チームは惜しくも入賞は逃しましたが、21世紀に入って最上位の10位です。前年(22位)、前々年(33位)から大躍進しました。 佐藤 新たなチームで2年ぶりのニューイヤー駅伝となり、フレッシュな気持ちで臨むことができました。自分がこのチームに呼ばれた意味を考えると、駅伝でしっかりと結果を出さないといけません。その中で自分の役割を果たすことができました。個人としては「まだがんばれるな」と思いましたが、チームとしては課題が多く残るレースになりました。その分、まだまだ伸びる余地はあると感じています。 鈴木 僕はレースの流れを作る前半区間を走ることを目指していましたが、12月の合宿で体調を崩し、急きょ7区(15.5kmのアンカー)になりました。8位でもらいながら入賞を逃して、チームに迷惑をかけてしまったと思っています。3位が目標でしたけど、そこまで勝負できていなかった。目指していたものと自分たちの実力にギャップがあったのかなとも感じています。 前回のニューイヤー駅伝で惜しくも入賞を逃す10位でフィニッシュした鈴木。今回は自身もチームメイトも、22年ぶりとなる8位入賞を確実にものにしたいと考えている 川端 僕は別のチームで走っていたのですが、SGホールディングスで一番印象に残ったのは悠基さんの走りですね。率直に悠基さんは「本当にすごい選手だな」と思いましたし、SGホールディングスは10位に入り、すごく勢いのあるチームになっていると感じました。

日本長距離界のレジェンド・佐藤悠基は「誰よりも練習する」

──佐藤選手は昨年12月の日本選手権10000mでも7位(27分41秒84)に入りました。中学時代から大活躍し、世界大会も数多く経験している日本長距離界のレジェンドである佐藤選手はチームにどんな影響を与えていますか? 川端 悠基さんはシンプルに「強い選手」だと思っています。好記録を持つ選手や激しい練習をこなせる選手はたくさんいるのですが、悠基さんはプラスして試合で結果もしっかりと残している。合宿では誰よりもたくさん走り、誰よりもハードで質の高いメニューを消化しているんです。びっくりしたのは7月のホクレンディスタンスチャレンジ(3日の士別大会・5000m)の時ですね。当日の朝練習で18km走って、レースでは日本人34歳最高タイムの13分35秒74(チーム新記録)。「強い」というのはこういうことなんだと感じました。 鈴木 悠基さんはとにかく誰よりも練習していますね。それに自分の身体をわかっている。僕は狙うレースの前で脚の状態が良くなくても練習をやめられる勇気がないのですが、悠基さんの場合はスパッとやめる決断をするんです。本当に見習うことが多いです。 ──佐藤選手はアドバイザーとしてどんなことを意識しているのでしょうか? 佐藤 特に心掛けていることはありません。自分からあまり話すタイプではないですし。とにかく、自分のやれることを最大限やるというのを意識しています。若手の選手が自分を見てくれているのも逆に自分のモチベーションになっていますよ。自分が言ったことが正解ではないと思うので、あくまでも参考程度で、本人たちが自分なりに解釈して成長につなげてもらえればいいかなと思っています。 前回のニューイヤー駅伝でエースが集う最長4区(22.4km)を務め、並み居る強豪を抑えて区間賞を獲得した佐藤

関西実業団駅伝に大会新で圧勝

──11月14日の関西実業団駅伝は大会新記録で完勝しました。鈴木選手は6区で区間新記録。川端選手も最終7区で区間賞を獲得しています。 鈴木 僕は昨年と同じ練習の流れで、昨年と同じ区間を走りました。昨年は少しオーバーペース気味に入って、最後はバテたんです。今回は昨年とほぼ変わらないぐらいで5kmを入っても、余裕度が違っていて、11.0kmを昨年より20秒近く速く走ることができました。大会記録を2分近く更新できたので、チームとしても成長したと思っています。 川端 自分は夏にキャプテンに任命されて、初めてのレースになりました。大会新記録での優勝なので、チームの勢いというか、強さを示すことができましたね。個人でも最低限、区間賞の走りができた。ニューイヤー駅伝に向けていい流れをつかめたかな、というのが感想です。 11月14日の関西実業団駅伝は3区の三上嵩斗(右)で首位に立ち、4区の千葉直輝から独走。大会新記録で圧勝して全日本大会に弾みをつけた ──佐藤選手は関西実業団駅伝には出場しませんでしたが、12月5日の福岡国際マラソンでペースメーカーを務めています。 佐藤 駅伝は僕がいなくても全然いいなと思いましたね(笑)。福岡国際マラソンは、夏にマラソン練習をしていたのですが、予定していた10月の東京マラソンが延期になってその成果を試す機会がなくなり、どれぐらいの状態なのかを確認したかったのと、ニューイヤー駅伝に向けてスタミナを意識してのペースメーカーでした。

ニューイヤー駅伝は 確実に“入賞ライン”を突破したい

──次は2022年のニューイヤー駅伝です。佐川急便時代を含めて1996年の7位が過去最高成績で、2000年の8位以降は入賞していません。チーム目標は決まっているのでしょうか? 川端 目標は「入賞」です。これから勝ち上がっていくための足がかりという意味で、確実に入賞ラインを突破したい。そうでないと、トップスリーや優勝という順位は見えてきませんから。確実に入賞して、今後はさらに順位をステップアップしていきたいです。 ──その目標を達成するために、それぞれがどんな役割を果たすべきだと考えていますか? 川端 前年は目標(3位)が高すぎて、どうがんばっていいのかわからないという選手が多かったと聞いています。今回は一人ひとりが目標に向けて明確に何をするべきかわかっている状態だと思っています。個人としては、悠基さんと一緒に練習してきた自信もあるので、主要区間と言われる3区(13.6km)、4区(最長22.4km)、5区(15.8km)あたりで結果を残したい。前回は3区(区間25位)で悔しい思いをしたので、今回はチームの流れをしっかり作りたいです。 佐藤 区間配置を決めるのはスタッフなので、どの区間を任されてもいいような準備をしていきたい。選手みんながそういう気持ちをしっかり持つことと、それに見合った準備をするだけかなと思っています。だから希望区間も特にありません。前回は4区を走りましたが、僕が行かなくてもいいかなとは思っていますよ。ただ言われたら、「はい、行きます」と返すだけで、そのための準備はできています。 鈴木 今季は出場したレースで、自分の目標からさほどずれることのない結果を残しています。前半から突っ込んでいけるのが自分の持ち味なので、希望があるとすれば前半区間かな。前回は悔しい思いをしましたが、今回はすごくワクワクした状態で当日を迎えられるのではないかなと思っています。 ──駅伝はSGホールディングスの主力事業である「荷物を届けること」と親和性があるように思います。物流業界を引っ張るSGホールディングスの社員選手として求められていること、何か意識していることはありますか? 佐藤 佐川急便は飛脚マークを採用していますし、陸上競技部の活動とリンクしてくる部分があると思います。社会インフラを担う物流企業の選手として、会社に貢献したいという気持ちで競技をしています。ニューイヤー駅伝は1年の始まりということで、社内を盛り上げるために少しでも力になればいいなと思っています。 川端 ニューイヤー駅伝は僕らが会社の顔になります。結果を求めるだけでなく、社会人ランナーのあるべき姿をしっかり示していきたいと思っています。 鈴木 競技に集中させてもらっているからには、1月1日は絶対に外せません。僕たちが駅伝をがんばることで会社のイメージアップにつなげたいですね。 青学大を出て社会人2年目の鈴木は若い力でチームを盛り立てる

ジュニア世代の選手たちに夢を持たせたい

──SGホールディングスは全国高校駅伝を特別協賛しています。佐藤選手は全国高校駅伝でも活躍しましたね。 佐藤 僕らアスリートは夢を与える仕事も担っています。特にジュニア世代の選手たちには、がんばった先に明るい未来が待っていることを走りで伝えていきたい。母校の佐久長聖高(長野)は全国高校駅伝に連続出場しているので、後輩たちの活躍が自分の刺激にもなっています。 ──最後に2022年シーズンの目標と今後の大きな目標を教えてください。 佐藤 まずはニューイヤー駅伝で自分たちの目標をしっかりとクリアしたい。個人としてはマラソンですね。自分の中ではまだ成功していないですし、来年はちゃんとかたちにしたいというのが一番です。選手としては、1年、1年が勝負だと思って取り組み、その結果、結構長くやっていたというのが理想です。チャンスがあれば海外レースにもどんどん挑戦していきたい。その経験を次の世代に伝えて、参考にしてもらえればと思っています。 川端 まずはニューイヤー駅伝の入賞を確実に達成したい。個人としてはマラソンに挑戦するタイミングが来たと感じているので、大阪マラソン(2月27日)で2時間8分台を目指しています。その後は、海外レースもたくさん経験していきたいです。 鈴木 チームから求められているニューイヤー駅伝で、どの区間でもしっかりと区間賞争いをするのが最初の目標です。個人としては、丸亀ハーフマラソン(2月6日)か全日本実業団ハーフマラソン(2月13日)のどちらかで自己ベストを狙います。その後は10000mを本気で狙っていきたいので、チャンスがあれば海外レースにも挑戦したいですね。スピードを磨いて、ゆくゆくはマラソンにもチャレンジするつもりです。 ──本日はありがとうございました。ニューイヤー駅伝でのご活躍を楽しみにしています。 インタビュー場所だったSGホールディングス東京事務所の最上階デッキにて。右端は西川雄一朗コーチ、奥の建物は昨年1月に竣工した同社の次世代型大規模物流センター「Xフロンティア」 構成/酒井政人 撮影/船越陽一郎(インタビュー、ポートレート)

SGホールディングスのニューイヤー駅伝成績

第38回(1994年) 14位
第40回(1996年) 7位
第41回(1997年) 14位
第42回(1998年) 22位
第43回(1999年) 18位
第44回(2000年) 8位
第45回(2001年) 19位
第46回(2002年) 22位
第47回(2003年) 14位
第48回(2004年) 19位
第49回(2005年) 19位
第50回(2006年) 20位
第51回(2007年) 33位
第52回(2008年) 25位
第53回(2009年) 16位
第54回(2010年) 23位
第56回(2012年) 18位
第57回(2013年) 15位
第58回(2014年) 21位
第59回(2015年) 20位
第60回(2016年) 20位
第61回(2017年) 28位
第62回(2018年) 34位
第63回(2019年) 33位
第64回(2020年) 22位
第65回(2021年) 10位
※2013年までは「佐川急便」として出場 ※色つきはひとケタ成績

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2024.12.13

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第101回箱根駅伝に出場する駒大がオンラインで記者会見を開き、藤田敦史監督、大八木弘明総監督、選手が登壇、報道陣の取材に応じた。 藤田監督は「前回は出雲駅伝、全日本大学駅伝を制した状態で迎え、青山学院に負けて準優勝でした […]

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2024年12月号 (11月14日発売)

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