日本選手権展望[番外編]日本一決定戦に挑戦する高校生たち

日本選手権展望[番外編]
日本一決定戦に挑戦する高校生たち

6月27日からの4日間、福岡・博多の森で開催される日本選手権。秋のドーハ世界選手権、その先に待つ2020年東京オリンピックに向けて大事な一戦となる。
そんな〝日本一決定戦〟に挑む、注目の高校生たちを紹介する。

●日本選手権
日程:6月27日(木)~30日(日)/福岡・博多の森陸上競技場
タイムテーブル
エントリーリスト
テレビ放送:
27日NHK BS18時00分~19時50分
28日NHK BS18時30分~19時30分、総合19時30分~20時42分
29日:NHK総合16時00分~18時00分
30日:NHK総合16時00分~18時00分

優勝狙える相洋コンビ

相洋のクレイ・アーロン竜波(左)と髙島咲季

インターハイ・ディフェンディングチャンピオンである、男子800mのクレイ・アーロン竜波と女子400mの髙島咲季という相洋(神奈川)の3年生コンビは、優勝候補の1人といえる。

 クレイは昨年のインターハイ800mで2年生優勝。10月の国体を制した後に出場した新潟での記録会で、1分47秒51の高校新記録を樹立し、高校生として初めて1分48秒を切った。今年に入ってからは、3月のアジアユース選手権優勝、5月の日本グランプリシリーズ・木南記念では並み居るシニアを相手に1分49秒03で優勝。世界リレーの2×2×400m(男女それぞれ1人が400mを2回走る)にも日本代表として出場し、3位に入った。

 シニアを見越し、4月に1500mで3分44秒86(高校歴代3位)、6月の小田原市選手権の400mで47秒20をマークするなど、スピード・スタミナの両面で進化。インターハイ南関東大会の800mは、予選は独走で400mを53秒で通過したと思えば、決勝はあえて追走するかたちを取ってラストスパートでかわすという、2つのレースパターンを試した。日本選手権に向けて調整に余念がない。

 この種目は日本記録(1分45秒75)保持者の川元奨(スズキ浜松AC)が6連覇中。川元も調子を上げてきており、シニア・大学を含めた日本トップクラスにクレイがどんなレースを展開するかに注目が集まる。記録の面では、川元が持つU20日本記録(1分46秒89)更新の可能性もある。この種目で過去に高校生優勝者はなし。クレイが新たな歴史を作るか、それとも王者が意地を見せるか。

 髙島は昨年の日本選手権で5位。今年に入ってからさらにスピードが増し、アジアユース選手権優勝、5月の静岡国際では53秒31(高校歴代5位)をマークして優勝、神奈川県大会決勝も53秒99、南関東大会も53秒40と、コンスタントに53秒台をマーク。南関東の200mでは向かい風2.3mの中で24秒29をマークするなど、スピードに加え力強さも身につけた。日本ランキングでもトップに立ち、まさに優勝候補筆頭だ。

 対するシニア勢では、3年ぶりの優勝を目指す青山聖佳(大阪成蹊AC)が順調にきている。スランプを乗り越えて復活を遂げており、そう簡単に勝たせてはくれないだろう。髙島が勝てば、98回大会(2014年)の松本奈菜子(当時・浜松市立、現・東邦銀行)以来の高校生優勝。また、その前年に勝った杉浦はる香(当時・浜松市立)のマークした52秒52というU20日本記録も目標の1つになる。

女子短距離陣に有力選手多数

左から御家瀬緑、青山華依、景山咲穗

 女子100m、200mには、インターハイを前にする注目の高校生スプリンターたちが集結する。

 昨年、100mで4位に食い込んだ御家瀬緑(恵庭北3北海道)。アジア大会の4×100mリレー代表も経験し、インターハイではプレッシャーに打ち勝って2年生優勝。秋は疲労もあったが、今季は春先から順調に試合をこなしている。4月の織田記念で11秒54(+1.9、高校歴代2位タイ)で2位になった後、5月の支部予選で11秒57(-0.2)、6月の北海道大会は11秒68(-0.6)という安定ぶり。

 近畿大会100mで11秒61(+1.1、高校歴代5位タイ)をマークした青山華依(大阪2)は伸び盛り。100m11秒65(高校歴代9位タイ)、200m23秒93(高2歴代4位)を持つ景山咲穗(市船橋3千葉、100mは欠場)は、静岡国際200m日本人トップ、風に恵まれていないだけで、100m・200mともに記録以上の強さがある。

 他にも、今季、一気に才能が開花しそうな井戸アビゲイル風果(至学館3愛知)や、100mで11秒73を持ち、北海道大会200mで23秒99(高2歴代7位タイ、日本選手権100mに出場予定)の石堂陽奈(立命館慶祥・北海道)など、有力選手が多数顔をそろえる。

 高校生たちの挑戦に、優勝経験のある市川華菜(ミズノ)、世古和(CRANE)、復活を遂げた土井杏南(JAL)、そして大学生たちが迎え撃つ。

 高校記録は100m11秒43(土井杏南)と200m23秒45(齋藤愛美、現・大阪成蹊大)。この偉大な2つの記録にどこまで迫れるか。

 また、400mハードルには、地元・筑紫女3年の青木穂花が出場。5月のゴールデングランプリ大阪で58秒45(高校歴代9位)をマークしており、地元の声援を受けてどんなレースをするか見逃せない。

3000mSC・三浦、棒高跳・古澤が参戦

3000mSC高校記録保持者の三浦龍司(左)、男子棒高跳の古澤一生
 男子3000m障害には、インターハイ近畿大会で8分39秒49と、櫛部静二(当時・宇部鴻城)の持つ高校記録(8分44秒27)を実に30年ぶりに塗り替えた三浦龍司(洛南3京都)が出場。独走、強風の中で出した快記録で、シニア勢を相手にし、さらなる記録短縮もありそうだ。ちなみに、U20日本記録は愛敬重之(当時・中京大)が1983年に作った8分31秒27。伝説的な記録にどこまで迫るだろうか。

 男子棒高跳には古澤一生(前橋育英2群馬)がエントリー。資格記録の有効期限が迫る5月の群馬県大会で5m30(高2歴代3位)を跳んで滑り込んだ。もちろん、自分の持つベストが、シニアの試技スタートとなり苦戦することは自覚しているが、トップが集う中で自分の持てる力を最大限発揮できるかどうかは、貴重な経験となって後に生きてくる。古澤が目指すのは、尊敬する江島雅紀(荏田、現・日大)が持つ学年別の最高記録。高1は2cm上回る5m22を跳んだ。今年は、5m36以上が目標となる。

 沖縄インターハイを前にした高校生たちが、日本トップクラスの選手たちを相手にどんな挑戦を見せるのか。日本陸上界の未来を背負う若き力が福岡で躍動する姿を見てほしい。(文/向永拓史)