HOME ニュース、国内

2021.04.11

最終選考会で強さを発揮した丸尾が主要大会初Vで五輪代表つかむ/日本選手権50km競歩
最終選考会で強さを発揮した丸尾が主要大会初Vで五輪代表つかむ/日本選手権50km競歩


写真/フォート・キシモト
◇日本選手権50km競歩・全日本競歩輪島大会(4月11日/石川・輪島)

東京五輪代表選考会を兼ねた男子50km競歩は丸尾知司(愛知製鋼)が大会新記録の3時間38分42秒で初優勝。2017年ロンドン世界選手権で5位に入った実力者が、東京五輪最後の代表選考会でその強さを発揮して東京五輪代表に内定した。

序盤こそ1km4分25~30秒と派遣設定記録(3時間45分00秒)のペースで推移したが、20km競歩で五輪・世界選手権で5回出場している藤澤勇(ALSOK)が13kmまでの1kmを4分14秒に上げるとレースはハイペースに。そのなかで16年リオ五輪銅、17年ロンドン世界選手権銀の両メダリスト・荒井広宙(富士通)が離れ、24kmには17年ロンドン世界選手権銅メダリストの小林快(新潟アルビレックスRC)、25km過ぎには藤澤が脱落。優勝争いは丸尾と野田明宏(自衛隊体育学校)に絞られた。所属先や年齢(丸尾29歳、野田25歳)も違うが時折練習も一緒にする2人が、最後の五輪代表という切符を懸けてマッチレースを繰り広げた。

その後も1km4分10~15秒のペースを維持し、30kmは2時間9分15秒、35km2時間30分11秒で通過。日本記録(3時間36分45秒)やアジア記録(3時間36分07秒)だけでなく、あわよくば世界記録(3時間32分33秒)にも届きそうな展開となった。2人のレースは10km以上にも及んだ。

動いたのは35km過ぎ。野田に次の1kmを4分07秒に引き上げられると、丸尾はやや離れた。わずかずつ差が広がったが、ここで粘る。前日の記者会見で「冷静に進めていくことが大事。落ち着いて進めたい」と話していた通り、野田の勢いにやや陰りが出るとじわじわと詰めていく。40km付近では再び並んだ。

そして、42kmで丸尾が前に出て、野田を引き離す。中盤までのハイペースが影響したからか、野田はつくことができない。丸尾自身もペースを落としていったが、順位を確認してしっかりと歩き抜いた。

優勝記録は2年前に鈴木雄介(富士通)がマークした大会記録(3時間39分07秒)を25秒更新。丸尾にとっては2019年10月の全日本50km競歩高畠大会で出した自己記録3時間37分39秒(日本歴代2位)に次ぐセカンドベスト、歴代パフォーマンスでは3番目のタイムとなった。

広告の下にコンテンツが続きます

京都府出身で、洛南高3年時の2009年新潟国体少年共通5000m競歩で優勝したことがある。男子短距離の飯塚翔太(ミズノ)や男子走高跳の戸邉直人(JAL)、男子やり投のディーン元気(ミズノ)らと同学年の『プラチナ世代』だ。

びわこ成蹊スポーツ大卒業後は和歌山県教育庁や16年に入社した愛知製鋼でそのキャリアを重ね、17年のロンドン世界選手権の他にも、18年世界競歩チーム選手権では3位に入っている。しかし、シニア以降は好記録を出して日本代表として国際舞台を踏んでも、この種目での主要大会優勝がなかった。金メダルが狙える位置にあった18年のジャカルタ・アジア大会は腕がつってしまうアクシデントで4位。世界歴代15位に位置する自己ベストを出した時も、川野将虎(東洋大/現・旭化成)が日本新の3時間36分45秒を出して先着された。

派遣設定記録の突破者で優勝した選手が東京五輪代表を手にすることができる今大会。そんな大一番で、丸尾はこれまでの“脇役”から、“主役”に躍り出た。

この種目の五輪代表は19年ドーハ世界選手権金メダリストの鈴木、日本記録保持者の川野がすでに内定しており、そこに日本歴代2位の記録を持つ丸尾が加わる。熾烈な争いを経て、日本史上最強トリオで8月の本番に臨みそうだ。

■男子50kmW上位8人の成績
①丸尾 知司(愛知製鋼) 3.38.42
②勝木 隼人(自衛隊体育学校) 3.42.34
③小林  快(新潟アルビレックスRC) 3.43.31
④野田 明宏(自衛隊体育学校) 3.45.26
⑤藤澤  勇(ALSOK) 3.46.27
⑥高橋 和生(ADワークスグループ) 3.47.38
⑦荒井 広宙(富士通) 3.50.11
⑧伊藤 佑樹(サーベイリサーチセンター) 4.02.46

■男子50kmW日本歴代10傑+パフォーマンス
3.36.45 川野 将虎(東洋大3) 2019.10.27
3.37.39 丸尾 知司(愛知製鋼) 2019.10.27
3.38.42  丸尾 2  2021. 4.11
3.39.07 鈴木 雄介(富士通) 2019. 4.14
3.39.24  川野 2  2019. 4.14
3.39.47 野田 明宏(自衛隊体育学校) 2018.10.28
3.40.04  丸尾 3  2019. 4.14
3.40.12 山﨑 勇喜(長谷川体育施設) 2009. 4.12
3.40.19 谷井 孝行(自衛隊体育学校) 2014.10. 1
3.40.20 荒井 広宙(自衛隊体育学校) 2015. 4.19
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
3.41.19 小林  快(ビックカメラ) 2017. 8.13
3.43.02 吉田 琢哉(盛岡市役所) 2014.10.26
3.43.14 森岡紘一朗(富士通) 2012. 8.11

写真/フォート・キシモト ◇日本選手権50km競歩・全日本競歩輪島大会(4月11日/石川・輪島) 東京五輪代表選考会を兼ねた男子50km競歩は丸尾知司(愛知製鋼)が大会新記録の3時間38分42秒で初優勝。2017年ロンドン世界選手権で5位に入った実力者が、東京五輪最後の代表選考会でその強さを発揮して東京五輪代表に内定した。 序盤こそ1km4分25~30秒と派遣設定記録(3時間45分00秒)のペースで推移したが、20km競歩で五輪・世界選手権で5回出場している藤澤勇(ALSOK)が13kmまでの1kmを4分14秒に上げるとレースはハイペースに。そのなかで16年リオ五輪銅、17年ロンドン世界選手権銀の両メダリスト・荒井広宙(富士通)が離れ、24kmには17年ロンドン世界選手権銅メダリストの小林快(新潟アルビレックスRC)、25km過ぎには藤澤が脱落。優勝争いは丸尾と野田明宏(自衛隊体育学校)に絞られた。所属先や年齢(丸尾29歳、野田25歳)も違うが時折練習も一緒にする2人が、最後の五輪代表という切符を懸けてマッチレースを繰り広げた。 その後も1km4分10~15秒のペースを維持し、30kmは2時間9分15秒、35km2時間30分11秒で通過。日本記録(3時間36分45秒)やアジア記録(3時間36分07秒)だけでなく、あわよくば世界記録(3時間32分33秒)にも届きそうな展開となった。2人のレースは10km以上にも及んだ。 動いたのは35km過ぎ。野田に次の1kmを4分07秒に引き上げられると、丸尾はやや離れた。わずかずつ差が広がったが、ここで粘る。前日の記者会見で「冷静に進めていくことが大事。落ち着いて進めたい」と話していた通り、野田の勢いにやや陰りが出るとじわじわと詰めていく。40km付近では再び並んだ。 そして、42kmで丸尾が前に出て、野田を引き離す。中盤までのハイペースが影響したからか、野田はつくことができない。丸尾自身もペースを落としていったが、順位を確認してしっかりと歩き抜いた。 優勝記録は2年前に鈴木雄介(富士通)がマークした大会記録(3時間39分07秒)を25秒更新。丸尾にとっては2019年10月の全日本50km競歩高畠大会で出した自己記録3時間37分39秒(日本歴代2位)に次ぐセカンドベスト、歴代パフォーマンスでは3番目のタイムとなった。 京都府出身で、洛南高3年時の2009年新潟国体少年共通5000m競歩で優勝したことがある。男子短距離の飯塚翔太(ミズノ)や男子走高跳の戸邉直人(JAL)、男子やり投のディーン元気(ミズノ)らと同学年の『プラチナ世代』だ。 びわこ成蹊スポーツ大卒業後は和歌山県教育庁や16年に入社した愛知製鋼でそのキャリアを重ね、17年のロンドン世界選手権の他にも、18年世界競歩チーム選手権では3位に入っている。しかし、シニア以降は好記録を出して日本代表として国際舞台を踏んでも、この種目での主要大会優勝がなかった。金メダルが狙える位置にあった18年のジャカルタ・アジア大会は腕がつってしまうアクシデントで4位。世界歴代15位に位置する自己ベストを出した時も、川野将虎(東洋大/現・旭化成)が日本新の3時間36分45秒を出して先着された。 派遣設定記録の突破者で優勝した選手が東京五輪代表を手にすることができる今大会。そんな大一番で、丸尾はこれまでの“脇役”から、“主役”に躍り出た。 この種目の五輪代表は19年ドーハ世界選手権金メダリストの鈴木、日本記録保持者の川野がすでに内定しており、そこに日本歴代2位の記録を持つ丸尾が加わる。熾烈な争いを経て、日本史上最強トリオで8月の本番に臨みそうだ。 ■男子50kmW上位8人の成績 ①丸尾 知司(愛知製鋼) 3.38.42 ②勝木 隼人(自衛隊体育学校) 3.42.34 ③小林  快(新潟アルビレックスRC) 3.43.31 ④野田 明宏(自衛隊体育学校) 3.45.26 ⑤藤澤  勇(ALSOK) 3.46.27 ⑥高橋 和生(ADワークスグループ) 3.47.38 ⑦荒井 広宙(富士通) 3.50.11 ⑧伊藤 佑樹(サーベイリサーチセンター) 4.02.46 ■男子50kmW日本歴代10傑+パフォーマンス 3.36.45 川野 将虎(東洋大3) 2019.10.27 3.37.39 丸尾 知司(愛知製鋼) 2019.10.27 3.38.42  丸尾 2  2021. 4.11 3.39.07 鈴木 雄介(富士通) 2019. 4.14 3.39.24  川野 2  2019. 4.14 3.39.47 野田 明宏(自衛隊体育学校) 2018.10.28 3.40.04  丸尾 3  2019. 4.14 3.40.12 山﨑 勇喜(長谷川体育施設) 2009. 4.12 3.40.19 谷井 孝行(自衛隊体育学校) 2014.10. 1 3.40.20 荒井 広宙(自衛隊体育学校) 2015. 4.19 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 3.41.19 小林  快(ビックカメラ) 2017. 8.13 3.43.02 吉田 琢哉(盛岡市役所) 2014.10.26 3.43.14 森岡紘一朗(富士通) 2012. 8.11

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.12.15

7年ぶり開催の中国四国学生女子駅伝は山口・周南公立・至誠館大連合が独走V!/中国四国学生女子駅伝

第23回中国四国学生女子駅伝が12月15日、広島県の東広島市運動公園内周回コースで行なわれ、山口・周南公立・至誠館大連合が1時間1分37秒で優勝した。 山口・周南公立・至誠館大学連合は1区・治尾優衣奈が17分27秒で首位 […]

NEWS 男子・細江が3位入賞! 4区・柘植源太が圧巻区間賞/全中駅伝

2024.12.15

男子・細江が3位入賞! 4区・柘植源太が圧巻区間賞/全中駅伝

◇第32回全国中学校駅伝・男子(12月15日/滋賀・希望が丘文化公園:6区間18km) 第32回全国中学校駅伝が12月15日、滋賀県の野洲市と湖南市にまたがる希望が丘文化公園で開催され、男子は鶴ヶ島藤(埼玉)が57分17 […]

NEWS 我孫子 主力2人欠場のピンチも総合力で2位!「みんながあきらめなかった」/全中駅伝

2024.12.15

我孫子 主力2人欠場のピンチも総合力で2位!「みんながあきらめなかった」/全中駅伝

◇第32回全国中学校駅伝・男子(12月15日/滋賀・希望が丘文化公園:6区間18km) 第32回全国中学校駅伝が12月15日、滋賀県の野洲市と湖南市にまたがる希望が丘文化公園で開催され、男子は鶴ヶ島藤(埼玉)が57分17 […]

NEWS 女子3位・神村学園は初出場から3連続トップ3 5区・武田「みんなと一緒に走ったから自信になる」/全中駅伝

2024.12.15

女子3位・神村学園は初出場から3連続トップ3 5区・武田「みんなと一緒に走ったから自信になる」/全中駅伝

◇第32回全国中学校駅伝・女子(12月15日/滋賀・希望が丘文化公園:5区間12km) 第32回全国中学校駅伝が12月15日、滋賀県の野洲市と湖南市にまたがる希望が丘文化公園で開催され、女子は京山(岡山)が41分18秒で […]

NEWS 女子・富山の大沢野は2年連続2位 ダブルエースが見せ場 1区・長森「悔いはない」/全中駅伝

2024.12.15

女子・富山の大沢野は2年連続2位 ダブルエースが見せ場 1区・長森「悔いはない」/全中駅伝

◇第32回全国中学校駅伝・女子(12月15日/滋賀・希望が丘文化公園:5区間12km) 第32回全国中学校駅伝が12月15日、滋賀県の野洲市と湖南市にまたがる希望が丘文化公園で開催され、女子は京山(岡山)が41分18秒で […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年12月号 (11月14日発売)

2024年12月号 (11月14日発売)

全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会

page top