写真/フォート・キシモト
◇日本選手権50km競歩・全日本競歩輪島大会(4月11日/石川・輪島)
東京五輪代表選考会を兼ねた男子50km競歩は丸尾知司(愛知製鋼)が大会新記録の3時間38分42秒で初優勝。2017年ロンドン世界選手権で5位に入った実力者が、東京五輪最後の代表選考会でその強さを発揮して東京五輪代表に内定した。
序盤こそ1km4分25~30秒と派遣設定記録(3時間45分00秒)のペースで推移したが、20km競歩で五輪・世界選手権で5回出場している藤澤勇(ALSOK)が13kmまでの1kmを4分14秒に上げるとレースはハイペースに。そのなかで16年リオ五輪銅、17年ロンドン世界選手権銀の両メダリスト・荒井広宙(富士通)が離れ、24kmには17年ロンドン世界選手権銅メダリストの小林快(新潟アルビレックスRC)、25km過ぎには藤澤が脱落。優勝争いは丸尾と野田明宏(自衛隊体育学校)に絞られた。所属先や年齢(丸尾29歳、野田25歳)も違うが時折練習も一緒にする2人が、最後の五輪代表という切符を懸けてマッチレースを繰り広げた。
その後も1km4分10~15秒のペースを維持し、30kmは2時間9分15秒、35km2時間30分11秒で通過。日本記録(3時間36分45秒)やアジア記録(3時間36分07秒)だけでなく、あわよくば世界記録(3時間32分33秒)にも届きそうな展開となった。2人のレースは10km以上にも及んだ。
動いたのは35km過ぎ。野田に次の1kmを4分07秒に引き上げられると、丸尾はやや離れた。わずかずつ差が広がったが、ここで粘る。前日の記者会見で「冷静に進めていくことが大事。落ち着いて進めたい」と話していた通り、野田の勢いにやや陰りが出るとじわじわと詰めていく。40km付近では再び並んだ。
そして、42kmで丸尾が前に出て、野田を引き離す。中盤までのハイペースが影響したからか、野田はつくことができない。丸尾自身もペースを落としていったが、順位を確認してしっかりと歩き抜いた。
優勝記録は2年前に鈴木雄介(富士通)がマークした大会記録(3時間39分07秒)を25秒更新。丸尾にとっては2019年10月の全日本50km競歩高畠大会で出した自己記録3時間37分39秒(日本歴代2位)に次ぐセカンドベスト、歴代パフォーマンスでは3番目のタイムとなった。
京都府出身で、洛南高3年時の2009年新潟国体少年共通5000m競歩で優勝したことがある。男子短距離の飯塚翔太(ミズノ)や男子走高跳の戸邉直人(JAL)、男子やり投のディーン元気(ミズノ)らと同学年の『プラチナ世代』だ。
びわこ成蹊スポーツ大卒業後は和歌山県教育庁や16年に入社した愛知製鋼でそのキャリアを重ね、17年のロンドン世界選手権の他にも、18年世界競歩チーム選手権では3位に入っている。しかし、シニア以降は好記録を出して日本代表として国際舞台を踏んでも、この種目での主要大会優勝がなかった。金メダルが狙える位置にあった18年のジャカルタ・アジア大会は腕がつってしまうアクシデントで4位。世界歴代15位に位置する自己ベストを出した時も、川野将虎(東洋大/現・旭化成)が日本新の3時間36分45秒を出して先着された。
派遣設定記録の突破者で優勝した選手が東京五輪代表を手にすることができる今大会。そんな大一番で、丸尾はこれまでの“脇役”から、“主役”に躍り出た。
この種目の五輪代表は19年ドーハ世界選手権金メダリストの鈴木、日本記録保持者の川野がすでに内定しており、そこに日本歴代2位の記録を持つ丸尾が加わる。熾烈な争いを経て、日本史上最強トリオで8月の本番に臨みそうだ。
■男子50kmW上位8人の成績
①丸尾 知司(愛知製鋼) 3.38.42
②勝木 隼人(自衛隊体育学校) 3.42.34
③小林 快(新潟アルビレックスRC) 3.43.31
④野田 明宏(自衛隊体育学校) 3.45.26
⑤藤澤 勇(ALSOK) 3.46.27
⑥高橋 和生(ADワークスグループ) 3.47.38
⑦荒井 広宙(富士通) 3.50.11
⑧伊藤 佑樹(サーベイリサーチセンター) 4.02.46
■男子50kmW日本歴代10傑+パフォーマンス
3.36.45 川野 将虎(東洋大3) 2019.10.27
3.37.39 丸尾 知司(愛知製鋼) 2019.10.27
3.38.42 丸尾 2 2021. 4.11
3.39.07 鈴木 雄介(富士通) 2019. 4.14
3.39.24 川野 2 2019. 4.14
3.39.47 野田 明宏(自衛隊体育学校) 2018.10.28
3.40.04 丸尾 3 2019. 4.14
3.40.12 山﨑 勇喜(長谷川体育施設) 2009. 4.12
3.40.19 谷井 孝行(自衛隊体育学校) 2014.10. 1
3.40.20 荒井 広宙(自衛隊体育学校) 2015. 4.19
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
3.41.19 小林 快(ビックカメラ) 2017. 8.13
3.43.02 吉田 琢哉(盛岡市役所) 2014.10.26
3.43.14 森岡紘一朗(富士通) 2012. 8.11
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
2025.01.20
青学大の皆渡星七が悪性リンパ腫を公表「がんになっても箱根を目指したい」
-
2025.01.20
-
2025.01.20
2025.01.19
【大会結果】第30回全国都道府県対抗男子駅伝(2025年1月19日)
-
2025.01.15
-
2025.01.19
2024.12.22
早大に鈴木琉胤、佐々木哲の都大路区間賞2人が来春入学!女子100mH谷中、松田ら推薦合格
-
2024.12.22
-
2024.12.30
-
2025.01.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.01.21
男子ハーフでマンツが59分17秒の北米新!女子もケラティ・フレズギが自身の北米記録更新/ヒューストンマソン
1月19日、米国テキサス州でヒューストンマラソンが開催され、ハーフマラソンでは男子、女子ともに北米記録が樹立された。 男子では、59分17秒で優勝した20歳のA.ゴベナ(エチオピア)と最後まで競り合ったA.マンツ(米国) […]
2025.01.21
【プレゼント】ハーツ&ハーツクリニックの 「スーパーシール」 ~「レギュラー」と「ベタ貼り」セット/2025年2月号
ハーツ&ハーツクリニックのベストセラー商品である独自の「周波数加工®」…「ハーツ加工®」を施した「スーパーシール」。 貼るだけで呼吸が楽になり、ピッチ&ストライドアップをアシストするなど、アスリート間で非常に高 […]
2025.01.20
青学大の皆渡星七が悪性リンパ腫を公表「がんになっても箱根を目指したい」
今年の第101回箱根駅伝で連覇を達成した青学大に所属する皆渡星七(3年)が自身のSNSを更新し、昨年11月に「悪性リンパ腫」と診断されたことを公表した。 皆渡は大阪・関大北陽高出身。昨年は箱根駅伝のメンバー16人にも入っ […]
2025.01.20
【プレゼント】鼻パッドのないスポーツサングラス「AirFly」 クレーマージャパン限定モデル!/2025年2月号
眼鏡の聖地・福井県鯖江市で誕生し、より良いパフォーマンスを求めるすべてのアスリート、スポーツを愛する人へ、世界特許取得の鼻パッドのないスポーツサングラスとして人気を博している「AirFly(エアフライ)」。この製品を生み […]
2025.01.20
棒高跳・諸田実咲が4m25 シュマンスキが男子60mHで7秒41/WAインドアツアー
1月19日、ルクセンブルクで世界陸連(WA)室内ツアー・シルバーのCMCMルクセンブルク室内が開催され、女子棒高跳に日本記録保持者の諸田実咲(アットホーム)が出場し、4m25で6位に入った。 諸田は4m00から跳び始め、 […]
Latest Issue 最新号
2025年2月号 (1月14日発売)
駅伝総特集!
箱根駅伝
ニューイヤー駅伝
高校駅伝、中学駅伝
富士山女子駅伝