クレーマージャパンが開発したアスリートのためのスポーツマスク
リピート購入続出の大人気アイテムはどのようにして誕生したか――

クレーマージャパンが開発した「JOGMASK」
新型コロナウイルスの感染拡大により、「新しい生活様式」の必需品となったマスク。スポーツ活動中でも状況によって着用が求められるようになっているが、一般的な不織布マスクの使用は、息苦しさや不快感のほか、熱がこもることで生じる熱中症リスクなど懸念材料が多い。
そんな中、関係者の注目を集めているのがクレーマージャパンの「JOGMASK」。6月の発売以来、「呼吸しやすい」「着けていることを忘れる」と大人気なのだ。この「アスリートのためのスポーツマスク」は、どういう経緯で開発されたのか。外園隆社長に話をうかがった。
コロナ禍でも練習を継続するため必要に迫られてできた商品
「まずいな。このままだと練習ができなくなる」
代表取締役としてクレーマージャパンを率いる一方で、大東文化大学陸上競技部女子長距離ブロックの監督を務める外園隆社長は、心に芽生えていた懸念の深刻さを実感していた。時計の針は遡ること2020年4月、学生たちの朝練習でロード走に同行していたときのことだ。
「すれ違う人の誰もが眉間にしわを寄せて、口元を覆うようにしながら走る選手たちに背を向けるんです。『ああ、これはもうマスクなしでは外を走ることができないな』と思いました」
ちょうど新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令され、日常生活のあらゆる場面で制限がかかるようになったころだった。ジョギングなど屋外での身体活動は支障ないとされていたが、呼吸が荒くなると息を吐いたときに出る飛沫が拡散しやすくなるということで、有識者が「周囲へのエチケットとして、走るときはマスクを着用したほうが望ましい」とコメント。これにより世間に、「ランナーのマスク着用はマスト」という考え方が急速に植えつけられていた。
「確かに“周囲へのエチケット”は不可欠なのですが、昔はマスクを重ね着けして走ることで低酸素状態をつくり、負荷をかける練習をやったこともあるくらいで、マスクを着けて走るのは本当に息苦しいんです。4月の段階では不織布マスクが使われていましたが、あれを着けた状態では、専門的な走トレーニングは無理。夏に向かっていく時期ということもあり、マスクを着けてのトレーニングは熱中症のリスクが非常に高く、命にもかかわると考えました。その後、いろいろな研究が進んで“マスク必須”は走る環境や条件にもよるという認識に変わりましたが、あの時点では、選手たちが継続してトレーニングできるように、安心して使えるマスクをつくる必要がありました。着けた状態で走れるマスク、“ジョグマスク”を、大急ぎでつくらなければと、そのとき決断したんです」(外園社長)

クレーマージャパンの外園隆社長
クレーマージャパンによるアスリートのためのスポーツマスク「JOG MASK」の開発は、こうした経緯でスタートした。
最高の素材にこだわり
形状はミリ単位の改善重ねる
目指したのは、着用して走ったときに「呼吸がしやすい」のはもちろんのこと、「熱がこもらないか、蒸れにくいか、軽いか、フィットするか、肌触りがよいか」などの点でストレスを感じさせないマスク。「良い眼鏡はフィット感に優れていて、かけていることを感じさせませんよね。そういうマスクにしたかったんです」と外園社長は話す。
クレーマージャパンは、現場のニーズとスポーツ医科学の見地から、さまざまな商品を開発し、世に送り出している。そこで培われたノウハウは、今回のマスク開発においても大いに生かされた。生地は、3層メッシュ立体構造ダブルラッセルを採用。「軽く、通気性やクッション性に富んだ生地で、いろいろな場面で使われていますが、これをマスクに使うのがクレーマーらしさかな」と外園社長。さらりとした肌触りのこの生地を、鼻の下と口元に空間ができるように設計して縫製することによって、息を吸ったときにマスクが肌に貼りついてくる不快さをなくした。そして、「指示はミリ単位」という細かな修正を何回も繰り返し、顔にぴったり沿う形状をつくり上げた。
さらに、耳にかけるゴムに、「素材に詳しい人からは、『こんな高いものを使うなんて』と驚かれましたが、使い心地を考えると絶対に譲れなかった」と伸縮性と耐久性に富む最高級の丸ゴムを使用。長さを各自で調節できる工夫を加えたことで、誰もが心地よく装着できる状態を実現した。デザインや採用カラーは、若い社員の意見が大いに反映されたという。
選手の声を迅速にフィードバック
実質3週間で開発
驚くべきことにジョグマスクの開発は、実質3週間で行われた。同社が誇る機動力とともに、このスピード感を可能にしたのが「アスリートの協力による現場での試用、ヒアリング、フィードバックの迅速さ」だ。前述の通り、外園社長が指導にあたる大東大女子長距離ブロックは、全日本大学女子駅伝では例年優勝候補に名前が挙がる強豪チーム。ジョグマスクの開発では、この女子長距離ブロック員たちがモニターを務めたのである。
「社内で設計して、原案モデルを用意し、協力工場に持ち込んでサンプルをつくってもらいます。サンプルはその日の夜に私の元へ届き、すぐに妻が洗います。そして翌日の朝練習で選手たちに試してもらい、感想を聞くんです。そこで出た声を急いで持ち帰って会社で再検討。修正モデルをつくって、再び協力工場で新たなサンプルを製作してもらう……。その工程を毎日繰り返しました」
外園社長が指導者として現場で活動しているからこそ可能だったサイクルと言えるだろう。

クレーマージャパンの“こだわり”を追求した商品
また、選手たちからのフィードバックには忌憚(きたん)のない、厳しいものが多かったと外園社長。「自信を持って渡したのに、2kmも走らないうちに『ダメ、使い物になりません。軽いのはいいけれど、安定しなくて気になっちゃいます』と、ばっさり言われてやり直したことも。“チクチクして、肌が荒れる”なんて声もありました」と苦笑いしながら振り返ったが、これも率直に言い合える関係性ができているから出てきた意見と言える。
大好評で当初は売り切れ続出
ようやく安定供給が可能に
完成したジョグマスクは、まずは公共の場を走るときに困っていた大学や実業団の選手たち、そして、クレーマージャパンがオフィシャルスポンサーを務める日本パラ陸上競技連盟を通じて、パラアスリートに使ってもらうところから始まったが、そこでの評判が、あっという間に広がった。反響の大きさに、販売開始直後は生産が追いつかない期間もあったというが、生産体制が整ったことで、今では安定供給が可能になっている。
「着用して走れる」を前提に開発したことによって、心拍数が上がったり、汗をかいたり、激しく動いたりといったスポーツ活動に取り組むさまざまな場面で活用できる製品に仕上がったジョグマスク。その快適さは、「ありがたいことに、一度注文してくださった方の再オーダーが、とても多いんです」という傾向からもよくわかる。
冬を迎えて、屋内でのトレーニングにシフトせざるを得ない寒冷な地域や、ウエイトトレーニングなど室内施設を利用するときなどにも、アスリートの強い味方になってくれそうだ。

“スピード”と“こだわり”をモットーにより良い製品づくりに励んで「ジョグマスク」を完成させた外園社長(前列中央)をはじめとするクレーマージャパンの主な開発スタッフ
※この記事は『月刊陸上競技』2021年1月号に掲載しています
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新型コロナウイルスの感染拡大により、「新しい生活様式」の必需品となったマスク。スポーツ活動中でも状況によって着用が求められるようになっているが、一般的な不織布マスクの使用は、息苦しさや不快感のほか、熱がこもることで生じる熱中症リスクなど懸念材料が多い。
そんな中、関係者の注目を集めているのがクレーマージャパンの「JOGMASK」。6月の発売以来、「呼吸しやすい」「着けていることを忘れる」と大人気なのだ。この「アスリートのためのスポーツマスク」は、どういう経緯で開発されたのか。外園隆社長に話をうかがった。
コロナ禍でも練習を継続するため必要に迫られてできた商品
「まずいな。このままだと練習ができなくなる」 代表取締役としてクレーマージャパンを率いる一方で、大東文化大学陸上競技部女子長距離ブロックの監督を務める外園隆社長は、心に芽生えていた懸念の深刻さを実感していた。時計の針は遡ること2020年4月、学生たちの朝練習でロード走に同行していたときのことだ。 「すれ違う人の誰もが眉間にしわを寄せて、口元を覆うようにしながら走る選手たちに背を向けるんです。『ああ、これはもうマスクなしでは外を走ることができないな』と思いました」 ちょうど新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令され、日常生活のあらゆる場面で制限がかかるようになったころだった。ジョギングなど屋外での身体活動は支障ないとされていたが、呼吸が荒くなると息を吐いたときに出る飛沫が拡散しやすくなるということで、有識者が「周囲へのエチケットとして、走るときはマスクを着用したほうが望ましい」とコメント。これにより世間に、「ランナーのマスク着用はマスト」という考え方が急速に植えつけられていた。 「確かに“周囲へのエチケット”は不可欠なのですが、昔はマスクを重ね着けして走ることで低酸素状態をつくり、負荷をかける練習をやったこともあるくらいで、マスクを着けて走るのは本当に息苦しいんです。4月の段階では不織布マスクが使われていましたが、あれを着けた状態では、専門的な走トレーニングは無理。夏に向かっていく時期ということもあり、マスクを着けてのトレーニングは熱中症のリスクが非常に高く、命にもかかわると考えました。その後、いろいろな研究が進んで“マスク必須”は走る環境や条件にもよるという認識に変わりましたが、あの時点では、選手たちが継続してトレーニングできるように、安心して使えるマスクをつくる必要がありました。着けた状態で走れるマスク、“ジョグマスク”を、大急ぎでつくらなければと、そのとき決断したんです」(外園社長)
クレーマージャパンの外園隆社長
クレーマージャパンによるアスリートのためのスポーツマスク「JOG MASK」の開発は、こうした経緯でスタートした。
最高の素材にこだわり 形状はミリ単位の改善重ねる
目指したのは、着用して走ったときに「呼吸がしやすい」のはもちろんのこと、「熱がこもらないか、蒸れにくいか、軽いか、フィットするか、肌触りがよいか」などの点でストレスを感じさせないマスク。「良い眼鏡はフィット感に優れていて、かけていることを感じさせませんよね。そういうマスクにしたかったんです」と外園社長は話す。 クレーマージャパンは、現場のニーズとスポーツ医科学の見地から、さまざまな商品を開発し、世に送り出している。そこで培われたノウハウは、今回のマスク開発においても大いに生かされた。生地は、3層メッシュ立体構造ダブルラッセルを採用。「軽く、通気性やクッション性に富んだ生地で、いろいろな場面で使われていますが、これをマスクに使うのがクレーマーらしさかな」と外園社長。さらりとした肌触りのこの生地を、鼻の下と口元に空間ができるように設計して縫製することによって、息を吸ったときにマスクが肌に貼りついてくる不快さをなくした。そして、「指示はミリ単位」という細かな修正を何回も繰り返し、顔にぴったり沿う形状をつくり上げた。 さらに、耳にかけるゴムに、「素材に詳しい人からは、『こんな高いものを使うなんて』と驚かれましたが、使い心地を考えると絶対に譲れなかった」と伸縮性と耐久性に富む最高級の丸ゴムを使用。長さを各自で調節できる工夫を加えたことで、誰もが心地よく装着できる状態を実現した。デザインや採用カラーは、若い社員の意見が大いに反映されたという。選手の声を迅速にフィードバック 実質3週間で開発
驚くべきことにジョグマスクの開発は、実質3週間で行われた。同社が誇る機動力とともに、このスピード感を可能にしたのが「アスリートの協力による現場での試用、ヒアリング、フィードバックの迅速さ」だ。前述の通り、外園社長が指導にあたる大東大女子長距離ブロックは、全日本大学女子駅伝では例年優勝候補に名前が挙がる強豪チーム。ジョグマスクの開発では、この女子長距離ブロック員たちがモニターを務めたのである。 「社内で設計して、原案モデルを用意し、協力工場に持ち込んでサンプルをつくってもらいます。サンプルはその日の夜に私の元へ届き、すぐに妻が洗います。そして翌日の朝練習で選手たちに試してもらい、感想を聞くんです。そこで出た声を急いで持ち帰って会社で再検討。修正モデルをつくって、再び協力工場で新たなサンプルを製作してもらう……。その工程を毎日繰り返しました」 外園社長が指導者として現場で活動しているからこそ可能だったサイクルと言えるだろう。
クレーマージャパンの“こだわり”を追求した商品
また、選手たちからのフィードバックには忌憚(きたん)のない、厳しいものが多かったと外園社長。「自信を持って渡したのに、2kmも走らないうちに『ダメ、使い物になりません。軽いのはいいけれど、安定しなくて気になっちゃいます』と、ばっさり言われてやり直したことも。“チクチクして、肌が荒れる”なんて声もありました」と苦笑いしながら振り返ったが、これも率直に言い合える関係性ができているから出てきた意見と言える。
大好評で当初は売り切れ続出 ようやく安定供給が可能に
完成したジョグマスクは、まずは公共の場を走るときに困っていた大学や実業団の選手たち、そして、クレーマージャパンがオフィシャルスポンサーを務める日本パラ陸上競技連盟を通じて、パラアスリートに使ってもらうところから始まったが、そこでの評判が、あっという間に広がった。反響の大きさに、販売開始直後は生産が追いつかない期間もあったというが、生産体制が整ったことで、今では安定供給が可能になっている。 「着用して走れる」を前提に開発したことによって、心拍数が上がったり、汗をかいたり、激しく動いたりといったスポーツ活動に取り組むさまざまな場面で活用できる製品に仕上がったジョグマスク。その快適さは、「ありがたいことに、一度注文してくださった方の再オーダーが、とても多いんです」という傾向からもよくわかる。 冬を迎えて、屋内でのトレーニングにシフトせざるを得ない寒冷な地域や、ウエイトトレーニングなど室内施設を利用するときなどにも、アスリートの強い味方になってくれそうだ。
“スピード”と“こだわり”をモットーにより良い製品づくりに励んで「ジョグマスク」を完成させた外園社長(前列中央)をはじめとするクレーマージャパンの主な開発スタッフ
※この記事は『月刊陸上競技』2021年1月号に掲載しています
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