HOME 国内、日本代表、五輪
やり投・北口榛花“逃げ切り”で世界一!「満足できないのは幸せ」次の夢は…/パリ五輪
やり投・北口榛花“逃げ切り”で世界一!「満足できないのは幸せ」次の夢は…/パリ五輪

表彰式で喜び合う女子やり投メダリスト

◇パリ五輪・陸上競技(8月1日~11日/フランス・パリ)10日目

パリ五輪・陸上競技の10日目のイブニングセッションで行われた女子やり投で、北口榛花(JAL)が金メダルを獲得した。今大会、陸上競技で初のメダルをもたらした金メダルは、日本女子トラック&フィールド初の快挙。昨年のブダペスト世界選手権に続いて、真の世界一となった。

イブニングセッションが始まってまだスタンドが温まっていないなか、北口がビッグスローを見せる。「いつもの6投目くらい集中した」という1投目で自己最高となる65m80のシーズンベストを叩き出す。これまで6投目で強さを見せる“逆転の北口”が与えた一撃。これがライバルたちに大きなプレッシャーをかける。

2投目以降は「投げられると思ってしまった」と記録を伸ばせなかったが、同じようにライバルたちの記録も伸びてこない。6投目を待つ間、メダルがだんだんと近づいてくる。「いつ誰に抜かれても絶対に抜き返すと思いながら待っていました」。

金メダルが決まった後は、スタジアムの視線が北口に注がれた。湧き出る思いをぐっとこらえ、「やるべきことに集中しました」。記録は満足いくものではなく、「1回目に65mを投げたから、自己ベスト(67m38)は投げたかった」と言い、「夢では70mを投げていたのに」と悔しがったが、スタンドに向かう時には涙があふれた。

今季は苦しい日々を過ごしてきた北口。「シーズンはじめに2回くらい身体が動かなくなりました」。持ち味でもある柔軟性が失われ、「しっくりくるものが全然なかった」と、記録面でも昨年ほどのアベレージは残せなかった。

広告の下にコンテンツが続きます

「パリに来てからもあまり良い状態ではなかったので、本当にこの状態で金メダルが取れるのか、勝負ができるのか、という不安がありました」

表彰台に上り、金メダルにちらっと目をやる。「不安から解放されて、一気に抜けていくようなそんな気分でした」。胸にあるメダルは「すごく重く感じます」。それだけさまざまな思いが詰まっていた。

3年前の東京五輪は予選の際に左脇腹を痛め、決勝では12位に終わり涙に暮れた。それから3年。「ケガをしたことでイチから見つめ直すきっかけになりましたし、同じことを絶対にやりたくないと準備してきました」。

昨年のブダペスト世界選手権を制したあと、「オリンピックを制してこそ、真の世界一」と言ってきた北口。「目指している試合で勝つというのはそう簡単ではないと思うのですごくうれしいです」。

ただ、途中で涙を浮かべたのは喜びや解放ではなく、「悔しさ」だった。

「金メダルを取ったら満足できると思っていたのですが、65mじゃまだ満足できない。また頑張る理由ができてホッとしていますし、満足できない理由があるのはとても幸せだなって思います」

幼い頃から夢見てきたオリンピックで一番高い表彰台に立ち、君が代を聴いた北口。次はどんな夢を描いているのか。

「やっぱり70mを投げたいなって。夢の中じゃなくて現実で70mを投げたい」

日本記録を投げても、世界一になっても尽きることのない夢。もっと遠くへ、はるか遠くへ。

◇パリ五輪・陸上競技(8月1日~11日/フランス・パリ)10日目 パリ五輪・陸上競技の10日目のイブニングセッションで行われた女子やり投で、北口榛花(JAL)が金メダルを獲得した。今大会、陸上競技で初のメダルをもたらした金メダルは、日本女子トラック&フィールド初の快挙。昨年のブダペスト世界選手権に続いて、真の世界一となった。 イブニングセッションが始まってまだスタンドが温まっていないなか、北口がビッグスローを見せる。「いつもの6投目くらい集中した」という1投目で自己最高となる65m80のシーズンベストを叩き出す。これまで6投目で強さを見せる“逆転の北口”が与えた一撃。これがライバルたちに大きなプレッシャーをかける。 2投目以降は「投げられると思ってしまった」と記録を伸ばせなかったが、同じようにライバルたちの記録も伸びてこない。6投目を待つ間、メダルがだんだんと近づいてくる。「いつ誰に抜かれても絶対に抜き返すと思いながら待っていました」。 金メダルが決まった後は、スタジアムの視線が北口に注がれた。湧き出る思いをぐっとこらえ、「やるべきことに集中しました」。記録は満足いくものではなく、「1回目に65mを投げたから、自己ベスト(67m38)は投げたかった」と言い、「夢では70mを投げていたのに」と悔しがったが、スタンドに向かう時には涙があふれた。 今季は苦しい日々を過ごしてきた北口。「シーズンはじめに2回くらい身体が動かなくなりました」。持ち味でもある柔軟性が失われ、「しっくりくるものが全然なかった」と、記録面でも昨年ほどのアベレージは残せなかった。 「パリに来てからもあまり良い状態ではなかったので、本当にこの状態で金メダルが取れるのか、勝負ができるのか、という不安がありました」 表彰台に上り、金メダルにちらっと目をやる。「不安から解放されて、一気に抜けていくようなそんな気分でした」。胸にあるメダルは「すごく重く感じます」。それだけさまざまな思いが詰まっていた。 3年前の東京五輪は予選の際に左脇腹を痛め、決勝では12位に終わり涙に暮れた。それから3年。「ケガをしたことでイチから見つめ直すきっかけになりましたし、同じことを絶対にやりたくないと準備してきました」。 昨年のブダペスト世界選手権を制したあと、「オリンピックを制してこそ、真の世界一」と言ってきた北口。「目指している試合で勝つというのはそう簡単ではないと思うのですごくうれしいです」。 ただ、途中で涙を浮かべたのは喜びや解放ではなく、「悔しさ」だった。 「金メダルを取ったら満足できると思っていたのですが、65mじゃまだ満足できない。また頑張る理由ができてホッとしていますし、満足できない理由があるのはとても幸せだなって思います」 幼い頃から夢見てきたオリンピックで一番高い表彰台に立ち、君が代を聴いた北口。次はどんな夢を描いているのか。 「やっぱり70mを投げたいなって。夢の中じゃなくて現実で70mを投げたい」 日本記録を投げても、世界一になっても尽きることのない夢。もっと遠くへ、はるか遠くへ。

【動画】表彰式で涙を流す北口榛花

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.07.13

【女子200m】バログン・イズミ(千住ジュニア)24秒71=中2歴代6位

東京都中学総体の2日目は7月13日、東京・上柚木公園陸上競技場で行われ、女子共通200m決勝でバログン・イズミ(千住ジュニア・荒川三2)が24秒71(±0)の中2歴代6位、大会新記録をマークした。 これまでの自己ベストは […]

NEWS 【女子200m】井戸アビゲイル風果が日本歴代3位タイの23秒16 日本選手権での自己ベストを0.02秒更新

2025.07.13

【女子200m】井戸アビゲイル風果が日本歴代3位タイの23秒16 日本選手権での自己ベストを0.02秒更新

第80回福島県選手権は7月13日、福島・とうほう・みんなのスタジアムで行われ、女子200m決勝で井戸アビゲイル風果(東邦銀行)が日本歴代3位タイとなる23秒16(+0.4)をマークした。 100mで中学2年時の2015年 […]

NEWS 走高跳・赤松諒一が地元で人生初サイン会 エール受け「東京世界陸上も頑張りたい」

2025.07.13

走高跳・赤松諒一が地元で人生初サイン会 エール受け「東京世界陸上も頑張りたい」

岐阜で行われている第109回日本選手権混成競技の会場で、男子走高跳の赤松諒一(SEIBU PRINCE)がサイン会に参加してファンと交流した。 昨年のパリ五輪で5位入賞した赤松は岐阜出身。地元でビッグイベント開催とあって […]

NEWS 青木涼真が3000m障害日本歴代2位8分18秒75! 岩水嘉孝を上回る/WAコンチネンタルツアー

2025.07.13

青木涼真が3000m障害日本歴代2位8分18秒75! 岩水嘉孝を上回る/WAコンチネンタルツアー

世界陸連(WA)コンチネンタルツアー・シルバーのサンセットツアーは7月12日、米国・ロサンゼルスで行われ、男子3000m障害で青木涼真(Honda)が日本歴代2位の8分18秒75で5位に入った。 青木は1000mを2分5 […]

NEWS 男子4×100mR筑波大が大会新で18年ぶり戴冠!最上級生3人とスーパールーキー「最後に勝てて良かった」/日本選手権リレー

2025.07.13

男子4×100mR筑波大が大会新で18年ぶり戴冠!最上級生3人とスーパールーキー「最後に勝てて良かった」/日本選手権リレー

◇第109回日本選手権リレー(7月12、13日/岐阜・岐阜・岐阜メモリアルセンター長良川競技場) 日本選手権リレーの男子4×100mリレー決勝が行われ、筑波大が38秒72の大会新で優勝した。筑波大の優勝は2007年の品田 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年7月号 (6月13日発売)

2025年7月号 (6月13日発売)

詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会

page top