◇パリ五輪・陸上競技(8月1日~11日/フランス・パリ)10日目
パリ五輪・陸上競技10日目のモーニングセッションに行われた男子マラソンで、赤﨑暁(九電工)が2時間7分32秒の自己ベストで日本人トップの6位入賞を果たした。
本当に「五輪史上最も過酷」と言われたコースを走り抜いた後なのだろうか。皇帝・ナポレオンが眠るアンヴァリッド前のフィニッシュを笑顔で迎えた。
「人生で一番楽しいレースでした」
レースについては「想像通り」に進む。序盤は「それほどハイペースにならず」に進む。レース最初の難所となる15kmからの長い上り坂は「自分のリズムで行きました。そこで集団から有力選手が遅れ始めるなど集団がばらけ始める。
中間点を1時間4分58秒の5位で通過。23kmで結果的に優勝するタミラト・トラ(エチオピア)を含めて8人の集団となると、「自分のリズムに持って行って意図的に先頭に立った」。思い描いていたように「レースを動かす」走りを見せた。
途中、順位や後ろは「まったく見ていなかったです」。「2位集団が見えていたので追いつきたかった」というが、そこでやや後退。40km付近で初めて後ろを確認し、入賞を意識して走り、前回の大迫傑(Nike)に続く6位入賞をつかみ取った。
30km手前の一気に駆け上がる坂で「ハムストリングスがつりかけた」と明かす。「ライバル」と言う山下一貴(三菱重工)も昨年のブダペスト世界選手権では入賞間近のラストで脚がケイレンして失速。「前日に山下が連絡をくれて、『つらないようにバナナを食べておけよ』と言われたので、昨夜と今朝バナナを食べました。山下のお陰です」と笑った。
熊本県出身。中学時代はバレーボール部だった。長距離が得意で、県内の強豪・開新高で陸上部に。高2まではケガで苦しんだが、3年目で5000m14分24秒84まで成長。高校で競技を辞めて、パン好きが高じて製パン会社への就職を希望していたが拓大へ。箱根駅伝で4年連続出場。主要区間を担った。
九電工に進み、マラソンデビューは22年2月の別府大分で2時間9分17秒。同年12月の福岡国際で2時間9分01秒だった。練習の一貫で出た徳島マラソン(2時間29分22秒)を経て出た昨年のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で2位と躍進。ただ、「2時間9分台の選手が代表になって大丈夫かと僕も思う話でした」。それでも、「あまりオリンピックという感じがしないで、いつも通り」の自然体で臨めたという。
5月まではトラックでスピードを磨いて10000mで27分43秒84の自己新。そこからの3ヵ月は「本当に辞めたいほど坂練習を“やらされて”きたので(笑)。そのお陰で入賞できて、綾部さん(健二/総監督)にのお陰です」と笑顔を見せる。
熊本出身のマラソン選手としては、金栗四三がちょうど100年前のパリ五輪(途中棄権)以来。「完走してきますと言って飛び出したんです」。今後はプレッシャーもあるかもしれないと問われると、「山下も2時間5分台を持っていますし、日本記録を出してやっと強いぞ、と言えます」と向上心を持ち続ける。
条件さえ整えば十分戦えることを示した赤﨑。「どう捉えてもえらるかわかりませんが」と前置きした上で「自分より上の選手は日本にいっぱいいます。自分が6位に入賞できたので、日本人はもっと上の順位でゴールできると思います」と日本マラソンの秘める可能性についてこう表現した。
26歳の赤﨑にとって、パリのゴールは新たなスタート。来年の東京世界選手権、そして4年後のロス五輪に向けて「マラソンでもしっかり目指していきたいですし、トラックでもスピードを磨いていきたいと思います。どこかで2時間6分台、5分台、そして日本記録を目指していきます」と見据えていた。
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