2024.04.24
勝負の3年目。周囲を驚かせる走りを
箱根に対する強い情熱を持つ川崎監督。選手以上の熱意を近田も日々感じている。
一方、小学校時代に走る楽しさを教わったTTランナーズ。代表を務めるのは箱根駅伝第60回大会(1984年)の早大優勝メンバーで、7区区間賞を取った仲井(旧姓伊藤)雅弘さんだ。川崎監督も順大3年時に同じ大会の7区を走っており、区間9位。40年の時を越え、同じ区間で競った2人が近田を育てているのは何かの縁だろうか。
今年4月13日の日体大長距離競技会では、5000mで14分05秒70をマーク。狙っていた13分台には届かなかったが、着実にスピードもつけてきている。
3年目のシーズンの目標は明確だ。「エース頼りではなく、みんなで助け合って全体を引っ張り上げたい。練習がうまくいかなくて落ち込んでいる人がいたら励ましたり、全員がいい記録を出せるようなチームにしたい」。
陽路という名前は「日の当たる道を歩いていってほしい」という両親の願いが込められている。どんなにつらいことがあっても、きっといいことがある―。近田が写る写真は走っている時以外はほぼ笑顔なのが印象的だ。
TTランナーズの仲井代表からは箱根後、「来年や再来年があるから挽回できるよう頑張れ」と励まされた。後輩の中高生たちに近田はこう伝えたいという。「努力しようと思えば、人はどこまでも頑張れる。ぜひ高い目標を持って競技に取り組んでほしい」。
自らは勝負の大学3年目。箱根の悔しさを糧に、周囲をもっと驚かせる走りを見せるつもりだ。

今年1月の箱根駅伝で9区を走る近田陽路
◎こんだ・ひろ/2003年12月3日生まれ、愛知県豊橋市出身。豊橋羽田中→豊川高→中央学大。自己記録5000m14分05秒70、10000m29分16秒76、ハーフマラソン1時間2分08秒。
文/荒井寛太
満を持しての箱根駅伝は無念の走りに
今年1月の第100回箱根駅伝。近田陽路は10区の主将・飯塚達也(現・山陽特殊製鋼)にタスキをつなぐはずだった。 大学2年目のシーズン、近田は結果を残し続けていた。関東インカレ(2部)ハーフマラソンは5位入賞(1時間3分50秒)。全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会は暑さの残る1組で10位、箱根予選会では吉田礼志(4年)、伊藤秀虎(現・愛知製鋼)に次ぐチーム3番手と好走した。12月には10000mで自己ベストも更新。満を持しての9区抜擢だった。 迎えた1月3日、曇天の復路。戸塚中継所でウォーミングアップをしていた近田は、若干の蒸し暑さを感じていた。初の箱根で、希望していた9区。緊張からか、水分をあまり取らずにスタートしてしまう。 前半からスピードに乗らず、7㎞過ぎの権太坂の上りでは長身の体が少しよろける。10㎞過ぎには脱水症状気味に陥っていた。 「スポドリ!スポドリ!」 14.4㎞地点の給水で川崎勇二監督が叫んだ。水分こそ補給したものの、本来の粘り強い走りとは程遠かった。 そして、先頭の青学大が鶴見中継所を通過して20分が経過。鶴見へタスキはつながらず、10区飯塚は最後の箱根路へと飛び出して行っていた。 飯塚がスタートして1分33秒後。近田は鶴見中継所にたどり着いたが、区間最下位。「駅伝はタスキをつなぐ競技なのに…」。何より卒業する主将につなげなかったことが悔しかった。 鶴見中継所での繰り上げスタートは、中央学大がまだ出場3回目だった1999年の第75回大会、わずか8秒、距離にして約50m届かなかった時以来。実に25年ぶりの出来事だった。「自分だけが落ち込んでいるわけにはいかなかった」
箱根以降、近田は自分を見つめ直した。自覚した弱さ、大舞台で力を発揮する選手との違い。「今やらなければならないことは何か」。 まずは走行距離を伸ばした。ポイント練習も、ジョグも、何かしらプラスすることを心掛けた。補強も工夫した。新体制で副キャプテンとなり、自分だけが落ち込んでいるわけにはいかなかった。 成果はすぐに表れた。2月4日の丸亀国際ハーフで1時間2分08秒の自己新、そして3月10日の日本学生ハーフ。優勝した國學院大の青木瑠郁(3年)に抜け出されたものの、2位集団につけた近田は残り1㎞からロングスパートを仕掛ける。早大の工藤慎作(2年)、中大の白川陽大(3年)、國學院大の辻原輝(2年)らを振り切り、1時間2分19秒で2位。周囲を驚かせた。 「近田みたいに距離を増やしたら強くなるぞ」 レース後、川崎監督はそうチームを奮い立たせた。箱根以降の近田の取り組みを指揮官は注視。今季は全日本選考会、箱根予選会ともにトップ通過という目標を持つチームの見本となるようになった。 [caption id="attachment_131366" align="alignnone" width="800"]
勝負の3年目。周囲を驚かせる走りを
箱根に対する強い情熱を持つ川崎監督。選手以上の熱意を近田も日々感じている。 一方、小学校時代に走る楽しさを教わったTTランナーズ。代表を務めるのは箱根駅伝第60回大会(1984年)の早大優勝メンバーで、7区区間賞を取った仲井(旧姓伊藤)雅弘さんだ。川崎監督も順大3年時に同じ大会の7区を走っており、区間9位。40年の時を越え、同じ区間で競った2人が近田を育てているのは何かの縁だろうか。 今年4月13日の日体大長距離競技会では、5000mで14分05秒70をマーク。狙っていた13分台には届かなかったが、着実にスピードもつけてきている。 3年目のシーズンの目標は明確だ。「エース頼りではなく、みんなで助け合って全体を引っ張り上げたい。練習がうまくいかなくて落ち込んでいる人がいたら励ましたり、全員がいい記録を出せるようなチームにしたい」。 陽路という名前は「日の当たる道を歩いていってほしい」という両親の願いが込められている。どんなにつらいことがあっても、きっといいことがある―。近田が写る写真は走っている時以外はほぼ笑顔なのが印象的だ。 TTランナーズの仲井代表からは箱根後、「来年や再来年があるから挽回できるよう頑張れ」と励まされた。後輩の中高生たちに近田はこう伝えたいという。「努力しようと思えば、人はどこまでも頑張れる。ぜひ高い目標を持って競技に取り組んでほしい」。 自らは勝負の大学3年目。箱根の悔しさを糧に、周囲をもっと驚かせる走りを見せるつもりだ。 [caption id="attachment_131365" align="alignnone" width="800"]
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