2023.12.10
◇第107回日本選手権10000m(12月10日 東京・国立競技場)
第107回日本選手権10000mが行われ、男子は塩尻和也(富士通)が27分09秒80の日本新記録で初優勝を飾った。
万感のガッツポーズでフィニッシュした塩尻は、「日本記録での優勝を目標を置いていた。達成できてうれしい」。6月の5000mとの2冠にも輝き、自然と笑顔が広がった。
準備は万端だった。9月末のアジア大会10000mで、残り3周で転倒に巻き込まれて5位に。その影響で5000mは欠場となったが、状態を整えて11月3日の東日本実業団駅伝に出場。4区でトップに立ち、4連覇の原動力となった。そこから、この大会に向けたトレーニングに入った。
「東日本実業団駅伝から1ヵ月ほど、チームの練習から少し離れて、ニューイヤー駅伝に向けて持久系が増える中で少しスピードを加えて取り組んできました。良いタイムで取り組むことができていました」
ターゲットはもちろん、パリ五輪。そのためのポイントを「8000m以降に勝負どころで前に出る」に置いた。そして、狙い通りに9000mからのロングスパートで頂点をつかみ取り、日本人初の27分10秒切りも達成。「日本記録で走れ、タイム、順位ともにとても良い結果でした」と振り返るとともに、「来年のパリに向けて大きなポイントを稼ぐことができました」とうなずいた。
2016年のリオ五輪には3000m障害で出場した。群馬・伊勢崎清明高時代にインターハイを制した思い入れのある種目だ。だが、リオ五輪以降はケガが重なったこともあり、障害を避けてフラットレースに専念している。
「学生の頃からどの種目でも勝ちたいと思ってやっていた」が、3000m障害には「高橋健一監督には言っていませんが、未練があります」とも明かす。それでも、今は「結果を出せている」5000m、10000mでまっすぐパリを見据えている。
「ブダペスト世界選手権には出場できましたが、悔しさが残るレースになりました(5000mで予選敗退)。しっかりパリに出場して、レース内容としても良い結果で終えられるようにしたい」
そのために、「参加標準記録を突破しなければ、国際レースでの勝負は難しい」と記録への挑戦を見据える。塩尻だけでなく、2位の太田智樹(トヨタ自動車)が27分12秒53、3位の相澤晃(旭化成)も27分13秒04と従来の日本記録(27分18秒75)を上回り、4位の田澤廉(旭化成)も自己ベストを更新する27分22秒31。日本歴代1~4位が一気に誕生したが、「五輪の参加標準記録は27分00秒00なので、国内のレベルで見れば高いですが、そこをクリアしないといけない」と自らも、周囲も鼓舞する。
「また明日から、今以上のタイムを目指してやっていきたい」
塩尻は、力強く語った。
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