箱根駅伝のプレイベントである「箱根駅伝100回記念シンポジウムin東京」が11月22日、東京・よみうり大手町ホールで行われた。
今回のテーマは『エースの役割 ~100回大会を前にレジェンドが語り合う~』。5区で3年連続区間賞を獲得した今井正人(トヨタ自動車九州/順大卒)、3区・1区・7区で3年連続区間新記録を樹立した佐藤悠基(SGホールディングス/東海大卒)、大東大監督として箱根駅伝を4度制した青葉昌幸氏(関東学連名誉会長)、神奈川大監督として箱根駅伝2連覇に導いた大後栄治監督がパネリストとして登壇した。山梨学大の上田誠仁顧問(関東学連駅伝対策委員長)がコーディネーター、司会進行を日本テレビの蛯原哲アナウンサーが務め、多くの名選手や名勝負を生み出してきた箱根駅伝の魅力、自身の経験談や今大会の注目点などを語り合った。
第99回箱根駅伝や10月の予選会をハイライト映像で振り返り、今年の出雲駅伝、全日本大学駅伝の結果をおさらい。前回Vの駒大の強さについて、今井は「この選手はこのぐらい走るという計算ができる。駅伝は足し算ではなく、掛け算と言われますが、それが確実にできている」と話し、大後監督は「どこかが止めないといけない。今の強い駒澤を倒さない限り、学生のレベルは上がらない」と自身の指導する神奈川大を含め、駒大以外の大学の奮起を促した。
「箱根駅伝の思い出」という話題では、1年時に2区を担った今井が、「あこがれの大会だったので緊張して、10kmまでは自分がどこにいるのかわからない、フワフワした感じだった」と振り返った一方、佐藤は「自分が目指す舞台は世界だと思って大学に入学したので、そこまで箱根駅伝に思い入れがなかった」と本音を明かす。
日大で4年時に1区を走った青葉氏は、「3年時まで毎年、エントリーメンバーに入っていましたが、当日は走れなかった。でも、この経験が指導者になってから役に立った」と振り返る。大後監督は日体大に入学してまもなく監督不在になり、先輩からマネージャーになることを勧められた。そこで「選手の勧誘から練習の計画、最終的に箱根駅伝のメンバーを決めるまで学生主体でやることに魅力を感じた」という。
続いてのテーマは「エースの役割」。パネリストたちはそれぞれどんなエース像を持つか発表。「チームの顔」と表現した今井は、「その選手が走るか走らないかでチームの結果を左右する。1区で出遅れても2区で流れを変えられるのがエースです」と述べた。佐藤は東海大時代、Ⅰ学年上の先輩・伊達秀晃をエースととらえ、「エース区間は丸投げしていた」と語ったが、4年時になった時は「自分がしっかりしないといけない」と、それまで以上に責任感が芽生えたようだ。
エースに必要なのは「チームをまとめる人間力」としたうえで、「箱根駅伝にエースはいらない」と言い切ったのは青葉氏だ。「すべて20km以上を走るのでエースでもエースでなくても変わらない。大切なのは10人がしっかり走ることで、今の駒大がそういうチーム」。大後監督はエースを「チームにいることでこういうレースをするという青写真を与えてくれる存在」と定義する。これまで多くの選手を指導してきた中では、93回大会の2区で区間賞に輝いた鈴木健吾(富士通/神奈川大卒)が唯一、エースと呼べる存在だったという。
箱根駅伝が「時代を超えて支持される理由」について、「学生スポーツなので、4年間しかない短い期間のなかで、筋書きのないドラマがたくさんある。応援する方も感情移入しながら見ることができる」と述べた今井は、「100回大会のみどころ」の回答として、フリップに「熱」と書いた。佐藤は「スーパースター誕生なるか」と記し、チームのエースにとどまらず、箱根駅伝全体を盛り上げるような新星の出現を待望している。
最後にパネリストたちが箱根駅伝ファンに向けたメッセージを語り、約2時間に渡ったシンポジウムが閉幕。第100回箱根駅伝は12月11日に16人のチームエントリーが行われ、12月29日の区間エントリーを経て、1月2日の往路、3日の復路(いずれも午前8時スタート)が行われる。
文/小野哲史
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.12.31
これが世界メダリストの走り!ケジェルチャが25人ごぼう抜きで30万円ゲット
2025.12.31
棒高跳デュプランティスがジャーナリスト投票2年連続で年間MVP受賞
-
2025.12.30
2025.12.30
城西大が2冠達成!2区・本間香が区間新、順位下げるも7区で再逆転/富士山女子駅伝
-
2025.12.30
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝女子(2025年12月14日)
2025.12.21
【大会結果】第37回全国高校駅伝・女子(2025年12月21日)
2025.12.21
早大が来春入部選手発表!高校駅伝1区激闘の増子陽太、新妻、本田がそろって加入!
-
2025.12.14
-
2025.12.21
-
2025.12.21
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.12.31
これが世界メダリストの走り!ケジェルチャが25人ごぼう抜きで30万円ゲット
TBSでオールスター体育祭が放送され、番組内では「オールスター感謝祭」でもおなじみの赤坂5丁目ミニマラソンが行われた。 レースには1991年東京世界選手権男子マラソン金メダリストで65歳になった谷口浩美さん、レジェンドラ […]
2025.12.31
棒高跳デュプランティスがジャーナリスト投票2年連続で年間MVP受賞
国際スポーツプレス協会(AIPS)のアスリート・オブ・ザ・イヤーが12月30日に発表され、男子棒高跳のA.デュプランティス(スウェーデン)が「男子・アスリート・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。 121カ国836人のジャーナ […]
2025.12.31
逆境はねのけ初優勝の城西大「選手たちの思いが強かった」 ルーキー3人が区間賞/富士山女子駅伝
◇全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝、12月30日/静岡・富士山本宮浅間大社前~富士総合運動公園陸上競技場:7区間43.4km) 学生女子駅伝2大タイトルの一つ、富士山女子駅伝が行われ、城西大が2時間22分36秒で初 […]
2025.12.31
箱根駅伝 ご当地選手をチェック! 福岡市出身6人が登録 川崎市、新潟市、姫路市、北九州市からも多数エントリー 徳島県から4年ぶり箱根路なるか
2026年1月2、3日に開催される第102回箱根駅伝のスタートまであと2日。12月29日には各チームの区間エントリーも発表された。 今回も登録された21チーム336人全員にアンケートを実施。その回答を元に出身地を都道府県 […]
Latest Issue
最新号
2026年1月号 (12月12日発売)
箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望
大迫傑がマラソン日本新
箱根駅伝「5強」主将インタビュー
クイーンズ駅伝/福岡国際マラソン
〔新旧男子100m高校記録保持者〕桐生祥秀×清水空跳
