8月27日まで開催されたブダペスト世界選手権の男子100mで6位入賞を果たしたサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)が、拠点とする米国への乗り継ぎのため一時帰国。メディアの取材に応じた。
100mでは準決勝で自己タイの9秒97をマークし、2大会連続のファイナル進出という偉業を達成。4×100mリレーではアンカーとして予選から出場して5位入賞を牽引した。それでも、サニブラウンにとって「全然満足していない結果」ではある。ただ、確かな成果もあった。
「去年も100mで決勝に行ったけど、悔しい結果。でも、今年はステップアップしたなという経験はできました。今後に向けていい形でつなげられるような世界陸上だったかなと思います」
初めてファイナルの舞台に立った昨年のオレゴン世界選手権は、「決勝に行くだけでいっぱいいっぱい。(決勝は)本当に満身創痍で走っていました」。だが、ブダペストは違う。
「予選も準決勝も、余裕を持って入れました。気持ちの余裕があるぶん、身体の負担は少なかったと思う。去年よりもコンディションもメンタルも、しっかり成長してそこ(決勝)に向けて走れるようななったのかな。決勝の内容は、タイムはあまり変わっていないけど、すべてを通して成長していると感じました」
200mで予選敗退だった一昨年の東京五輪は腰のヘルニアを患うなど、万全とはほど遠い状態だった。そこから、イチから身体を作り直し、その過程にあったオレゴン世界選手権で100m7位入賞。今年はケガなく冬季練習をこなし、「徐々に身体が戻ってきていると実感しています」という段階に進んだ。
その中で、今回の準決勝は「満足のいく走りができていた部分があります」。とはいえ、「コーチからは直すところがまだまだあるよ、と言われました」とも続ける。
メダルラインとされる9秒8台に向けては、「レースパターンを練習通り、いつもやっている通りに出せれば普通に出るタイム」。だが、「それを決勝の舞台でしっかりと出せる強さを備えないといけない」。準決勝では「中間の40m~60mでほとんど何もしてない部分があった」という課題を指摘されたという。
「決勝という舞台で普段の練習でやっている動き、自分の描いているレースパターンをしっかり出すということ。そこにプラスして、パフォーマンスを100%以上出してきている選手が目立った大会。そういう部分は、まだまだやらないといけない部分だと感じました」
理想の走り、目指す結果に向けては、まだまだ道半ば。今季はまた海外レースを転戦する予定で、ブダペストで得た感覚に、さらに磨きをかける。来年のパリ五輪、再来年の東京世界選手権に向けて、「一つひとつ取り組んでいって、一歩一歩前進していきたい」とサニブラウンは言葉に力を込めた。
特に、地元・東京での開催を控える25年の世界選手権には、強い思いがにじむ。閉会式では、ブダペストから東京への引き続ぎ式に出席し、ハンガリー陸連の会長から世界陸連オフィシャル・フラッグを受け取った際には「次はあなたたちの街の番だよ」と言われたという。「次は東京なんだ、と鳥肌が立ちました」とサニブラウンは振り返る。
連日満員だったブダペストの歓声、雰囲気を身体で味わったばかり。「選手としてはものすごくうれしいことです」。その景色を、国立競技場で再現することもサニブラウンの目指すものの一つだ。
「東京五輪は無観客。自国開催とはいえ、ものすごく寂しかった。世界陸上で、国立を満員に埋めて、その中で走ることは自分の目標であり、夢になります」
昨年も開催した子供たち向けのイベントなどを、今オフも検討している。サポートしてくれる人への恩返しをし、陸上人気向上への機運を作り、そして子供たちに夢を与える存在になる。サニブラウンはプロアスリートとして、たくさんのやるべきことと向き合い、一つひとつ実現させていく。
サニブラウン ブダペスト世界選手権男子100m決勝ファイナルの激走をプレイバック!
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