2023.06.05
◇第107回日本選手権(6月1日~4日/大阪・ヤンマースタジアム長居)4日目
ブダペスト世界選手権の代表選考会を兼ねた第107回日本選手権の最終日。大会のフィナーレを飾った男子100mは、坂井隆一郎(大阪ガス)が好スタートから逃げ切り10秒11(-0.2)で初制覇を成し遂げた。
「大会直前に左のアキレス腱が痛み出し、正直棄権も考えましたが、地元・大阪で優勝したいという気持ちが強かったので、そういう意味でも感極まるところがありました。本当にうれしいです」
フィニッシュ後、詰めかけた大観衆の声援に応えつつ、うれし涙が頬をつたった。
出場にこだわったのには理由があった。「今後も肝心な場面で、(脚を痛めるなど)こういうケースが出るかもしれない。それに備えるためにもやり切ろうと、スタッフと話し合って出場を決断しました」と打ち明ける。
予選、準決勝は脚への負担を最小限に抑えてラウンドをこなしたが、それでも準決勝では10秒17と全体のトップタイムをマークするなど、周囲には不安を感じさせなかった。
決勝もスタートは完璧とは言えなかったが、「今季に入り成長していると感じていた二次加速の部分で、リードを維持することができた」と中盤で勝負をつけた。「他の選手が後半に追い上げてくることはわかっていたので、それにもしっかり冷静に対応できた」と、今ある力を出し切ったレースだった。
5月のセイコーゴールデングランプリでも脚がケイレンするアクシデントを乗り越えて3位と力走。そうした経験も今回の優勝へとつながっている。
逆境を乗り越えての栄冠だったが、「出場するからには、10秒00は出したい気持ちがあったのでタイムについては残念です」と反省も忘れない。
ワールドランキングでは世界選手権出場圏内につけるものの、「まだ参加標準記録(10秒00)を切っていないので、脚の状態を見ながらチャレンジしていきたい」と意気込みを話す。
所属する大阪ガスにとって、日本選手権100mのタイトルは朝原宣治さん、江里口匡史さんが獲得してきた勲章。「得意のスタートと、二次加速の部分がうまく噛み合ってくれば、タイムも狙えると思います」。地元・大阪でつかんだタイトルをステップに、日本人5人目の9秒台突入を目指し突き進む。
予選から好調だった栁田大輝(東洋大)が10秒13の自己新で2位。小池祐貴(住友電工)が0.05差で続き、前回覇者で昨年のオレゴン世界選手権7位のサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)は、仕切り直しとなった1回目のスタートで左脚にケイレンを起こし10秒59の8位に終わった。
文/花木 雫
【動画】坂井隆一郎が地元で涙の初V!男子100mのレースをチェック!
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.12.03
明大主将に短距離・神戸毅裕が就任 「紫紺の矜持を重んじ、研鑽を重ねる」
2025.12.02
世界陸上銅メダルの藤井菜々子に那珂川市市民栄誉賞&北九州市民スポーツ大賞
2025.12.02
サニブラウンがピックルボール初体験!子どもたちと真剣勝負「スポーツの力あらためて感じる」
-
2025.12.01
-
2025.12.01
-
2025.11.28
-
2025.11.29
-
2025.12.01
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.12.03
明大主将に短距離・神戸毅裕が就任 「紫紺の矜持を重んじ、研鑽を重ねる」
明大競走部は、チームのホームページで12月1日からスタートした新体制を発表し、主将には短距離ブロックの神戸毅裕が就任した。 神戸は東京・明星学園高出身。高校時代はインターハイ南関東大会4×100mリレーで優勝したほか、U […]
2025.12.02
世界陸上銅メダルの藤井菜々子に那珂川市市民栄誉賞&北九州市民スポーツ大賞
9月の東京世界選手権女子20km競歩で銅メダルを獲得した藤井菜々子(エディオン)が、出身地である福岡県那珂川市の市民栄誉賞、そして高校時代を過ごした北九州市の北九州市民スポーツ大賞を受賞することが決まり、12月2日に両市 […]
2025.12.02
サニブラウンがピックルボール初体験!子どもたちと真剣勝負「スポーツの力あらためて感じる」
ピックルボール普及のためのイベントTORAY PICKLEBALL EXPERIENCEが12月2日に東京の有明アーバンスポーツ内のコートで行われ、男子短距離のサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)が参加した。 ピック […]
2025.12.02
東洋大男子長距離が4社と契約 “昇り龍”を描いた鉄紺の新ユニフォームも発表「頂点目指し力強く上昇」
東洋大は12月2日、陸上競技部男子長距離部門において、セブン銀行(本社:東京都千代田区)、カカクコム(本社:東京都渋谷区)が運営する「求人ボックス」、ECC(本社:大阪市北区)、ビースタニング(本社:東京都渋谷区)が運営 […]
Latest Issue
最新号
2025年12月号 (11月14日発売)
EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選
Follow-up Tokyo 2025