
10月9日に行われた法大競技会に、男子110mハードルの金井大旺(ミズノ)と矢澤航(デサントTC)が出場。現役ラストランを迎えた。矢澤は一次レースから出場し13秒93(+0.6)、二次レースはそろって走り、金井が13秒55(+0.1)で1着。後輩の樋口陸人(法大)が13秒69、横地大雅(同)が13秒71で続き、矢澤は13秒84で4着だった。
レース後は法大のハードルブロックで記念撮影。現役学生、苅部俊二監督はじめスタッフ陣、そして家族が見守るなか、セレモニーも行われた。
110mハードルで中学記録を樹立し、中学、高校、大学、そして日本選手権と各カテゴリーで日本一になった矢澤。2016年リオ五輪に出場したことが、昨今の男子スプリントハードルの活況の火付け役となったのはまぎれもない事実だ。矢澤は「17年間陸上をやってきて、たくさんの勝ちも負けも経験してきた。順風満帆ではありませんでしたが、幸せな時間を過ごせました」とあいさつ。レース後は「思っていたより(感情が)こない」と後輩たちに笑顔を向ける。最後は「迷惑をかけてきた両親に感謝したいです」と言い、「後悔のない競技人生でした」と振り返った。今後はデサントに残り、社業に専念。後輩たちに向け「これからも競技場で会うことがあると思うので挨拶してください」とみなを笑わせ、矢澤らしく明るくトラックに別れを告げた
矢澤が「僕を超えていって、僕が目指していたところに到達した」と言うのが金井。中学、高校と歯科医師になる夢を抱きながら競技を続けた金井は、一度は高校で現役を終えるつもりだった。競技継続を決めて法大に進学。そこにいたのが矢澤だった。「最初は本当に矢澤さんのコピーをしていました」。スタートからのアプローチを7歩に変えたのも法大に入ってから。「矢澤さんがいると練習での質も集中力上がります」と言うように、先輩の背中を追ってメキメキと成長した。
大学卒業時にまたも引退から「東京五輪までやりたい」翻意して競技を続けると、「一番思い出に残っているレース。あそこで殻を破れた」と語る2018年の日本選手権で当時日本新となる13秒36で初優勝を飾った。2019年にドーハ世界選手権出場。高山峻野(ゼンリン)、突き上げてきた泉谷駿介(順大)らとハイレベルな争いを演じ、今年4月の織田記念では13秒16の日本新(当時)。男子日本スプリントハードルを飛躍的に成長させた一人だった。
父の後を継いで歯科医師になるという目標だけはぶれず、自身が「2度とできない」と振り返るほどトレーニングで追い込んで迎えた東京五輪。予選を通過すると、ファイナルの懸かった準決勝では「持ち味の前半からいこうと全力で」走った。だが、スピードに脚が追いつかず、「刻みきれなかった」とまさかの転倒。それでも最後までハードルを飛び越え、フィニッシュした姿に、これまでのいくつものハードルを乗り越えてきたプライドが見えた。そのレースは「一度だけ見ましたが、やっぱり思い出したくないというのが正直なところ」。
それでも、競技人生において「悔しいという気持ちはありますが、後悔や悔いはないです」と金井。思いがけぬコロナ禍で1年現役生活が延びたが、「僕の競技はここで終わり」と明言し、もちろん、ある程度のレベルなら勉強をしながらでもできるだろうが、「やるからにはトップ、世界を目指す」というスタイルを最後まで貫いた。矢澤、そして後輩たちと競り合う最後のレース。直前まで動画を熱心に見ながら課題の修正に取り組む。そして勝ちきった。「最後は矢澤さんや後輩たちと走りたかった」と、法大競技会を最後に選んだ理由を明かす。「理想に近づいたと思ったらまた新しい課題が出てきて、マイナス面も出てくる。どれだけプラスを大きくしてマイナスを抑えられるか。100%完成するといことがない」。それこそが、金井大旺のハードル人生だった。
レース後、家族や後輩たちへの挨拶では涙ぐみ言葉を震わせた金井。今後は大学受験をし、合格すれば歯科医師になるための生活が本格的にスタートする。「将来は患者さんに信頼される歯科医になりたい。信頼される医師がどういうものか、これから形成していければ」。そして、「以前は思っていなかったのですが、自分の経験や技術をどんな形かわかりませんが伝えていく機会があれば」と、合間を縫って指導する場を設けたいという思いも芽生えている。今回も2人と競り合った法大の後輩ハードラーたちには「タイムも上がってきていますし、リオ、東京と2大会で法大から代表が出ているので続いてほしい」と期待を寄せていた。
「最後くらい笑って」と言ってやっと笑ってくれるシャイさは変わらなかったが、最後の最後まで丁寧に一つひとつの質問に答え、所属先であるミズノのスタッフの声かけでメディアとも記念撮影したあとは、「ありがとうございました」と深々と挨拶し、メディアも自然と拍手を送った。きっと尊敬する父のように地元で信頼される歯科医師になるのだろうと想像がついた。
次々と歴史を切り開いてきた矢澤と金井。最後は愛用してきたシューズメーカーのミズノから金色のスパイクが贈呈され、温かな拍手で送り出された。誰からも応援されたハードラー2人のこれからに幸あれ。
◇法大OBの世界選手権代表・小林雄一も引退
男子短距離で2011年テグ、2013年モスクワと2大会に出場した小林雄一(NTN)も母校でラストレースを迎えた。両親ともに短距離選手で、保善高時代にはインターハイで100m、200mの2冠。法大、NTNと安定した活躍を見せたスプリンターの一人だった。小林は後輩たちに向けて「強い法大の土俵に立っています。僕も先輩たちと同じようにオリンピック、世界選手権とつないできました。その思いを受け継ぎならがこのグラウンドで過ごしてほしいです」とエールを送った。
10月9日に行われた法大競技会に、男子110mハードルの金井大旺(ミズノ)と矢澤航(デサントTC)が出場。現役ラストランを迎えた。矢澤は一次レースから出場し13秒93(+0.6)、二次レースはそろって走り、金井が13秒55(+0.1)で1着。後輩の樋口陸人(法大)が13秒69、横地大雅(同)が13秒71で続き、矢澤は13秒84で4着だった。レース後は法大のハードルブロックで記念撮影。現役学生、苅部俊二監督はじめスタッフ陣、そして家族が見守るなか、セレモニーも行われた。110mハードルで中学記録を樹立し、中学、高校、大学、そして日本選手権と各カテゴリーで日本一になった矢澤。2016年リオ五輪に出場したことが、昨今の男子スプリントハードルの活況の火付け役となったのはまぎれもない事実だ。矢澤は「17年間陸上をやってきて、たくさんの勝ちも負けも経験してきた。順風満帆ではありませんでしたが、幸せな時間を過ごせました」とあいさつ。レース後は「思っていたより(感情が)こない」と後輩たちに笑顔を向ける。最後は「迷惑をかけてきた両親に感謝したいです」と言い、「後悔のない競技人生でした」と振り返った。今後はデサントに残り、社業に専念。後輩たちに向け「これからも競技場で会うことがあると思うので挨拶してください」とみなを笑わせ、矢澤らしく明るくトラックに別れを告げた矢澤が「僕を超えていって、僕が目指していたところに到達した」と言うのが金井。中学、高校と歯科医師になる夢を抱きながら競技を続けた金井は、一度は高校で現役を終えるつもりだった。競技継続を決めて法大に進学。そこにいたのが矢澤だった。「最初は本当に矢澤さんのコピーをしていました」。スタートからのアプローチを7歩に変えたのも法大に入ってから。「矢澤さんがいると練習での質も集中力上がります」と言うように、先輩の背中を追ってメキメキと成長した。大学卒業時にまたも引退から「東京五輪までやりたい」翻意して競技を続けると、「一番思い出に残っているレース。あそこで殻を破れた」と語る2018年の日本選手権で当時日本新となる13秒36で初優勝を飾った。2019年にドーハ世界選手権出場。高山峻野(ゼンリン)、突き上げてきた泉谷駿介(順大)らとハイレベルな争いを演じ、今年4月の織田記念では13秒16の日本新(当時)。男子日本スプリントハードルを飛躍的に成長させた一人だった。父の後を継いで歯科医師になるという目標だけはぶれず、自身が「2度とできない」と振り返るほどトレーニングで追い込んで迎えた東京五輪。予選を通過すると、ファイナルの懸かった準決勝では「持ち味の前半からいこうと全力で」走った。だが、スピードに脚が追いつかず、「刻みきれなかった」とまさかの転倒。それでも最後までハードルを飛び越え、フィニッシュした姿に、これまでのいくつものハードルを乗り越えてきたプライドが見えた。そのレースは「一度だけ見ましたが、やっぱり思い出したくないというのが正直なところ」。それでも、競技人生において「悔しいという気持ちはありますが、後悔や悔いはないです」と金井。思いがけぬコロナ禍で1年現役生活が延びたが、「僕の競技はここで終わり」と明言し、もちろん、ある程度のレベルなら勉強をしながらでもできるだろうが、「やるからにはトップ、世界を目指す」というスタイルを最後まで貫いた。矢澤、そして後輩たちと競り合う最後のレース。直前まで動画を熱心に見ながら課題の修正に取り組む。そして勝ちきった。「最後は矢澤さんや後輩たちと走りたかった」と、法大競技会を最後に選んだ理由を明かす。「理想に近づいたと思ったらまた新しい課題が出てきて、マイナス面も出てくる。どれだけプラスを大きくしてマイナスを抑えられるか。100%完成するといことがない」。それこそが、金井大旺のハードル人生だった。レース後、家族や後輩たちへの挨拶では涙ぐみ言葉を震わせた金井。今後は大学受験をし、合格すれば歯科医師になるための生活が本格的にスタートする。「将来は患者さんに信頼される歯科医になりたい。信頼される医師がどういうものか、これから形成していければ」。そして、「以前は思っていなかったのですが、自分の経験や技術をどんな形かわかりませんが伝えていく機会があれば」と、合間を縫って指導する場を設けたいという思いも芽生えている。今回も2人と競り合った法大の後輩ハードラーたちには「タイムも上がってきていますし、リオ、東京と2大会で法大から代表が出ているので続いてほしい」と期待を寄せていた。「最後くらい笑って」と言ってやっと笑ってくれるシャイさは変わらなかったが、最後の最後まで丁寧に一つひとつの質問に答え、所属先であるミズノのスタッフの声かけでメディアとも記念撮影したあとは、「ありがとうございました」と深々と挨拶し、メディアも自然と拍手を送った。きっと尊敬する父のように地元で信頼される歯科医師になるのだろうと想像がついた。次々と歴史を切り開いてきた矢澤と金井。最後は愛用してきたシューズメーカーのミズノから金色のスパイクが贈呈され、温かな拍手で送り出された。誰からも応援されたハードラー2人のこれからに幸あれ。◇法大OBの世界選手権代表・小林雄一も引退
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