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2025.10.27

城西大が四半世紀ぶりV!「今年のチームは全員が主役」重い“日本一”の扉こじ開ける/全日本大学女子駅伝
城西大が四半世紀ぶりV!「今年のチームは全員が主役」重い“日本一”の扉こじ開ける/全日本大学女子駅伝

25年全日本大学女子駅伝を制した城西大

◇第43回全日本大学女子駅伝(10月26日/宮城・弘進ゴムアスリートパーク仙台発着・6区間38.0km)

第43回全日本大学女子駅伝が行われ、冷雨のレースは最終盤に劇的なドラマが待っていた。

城西大の主将・金子陽向(4年)が5区の本澤美桜(2年)から3位でタスキを受けたとき、2位の東北福祉大とは29秒差。5区で首位に立った大東大とは、1分17秒もの差があった。しかも、大東大のアンカーは学生女子長距離界を代表する野田真理耶(3年)。金子にとっては実績面でも5000mの自己記録でも格上だったが、迷うことなく中継所を飛び出した。

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「最後、美桜が苦しみながらもラスト100m、50mと、もがいて走ってくれた姿を見て、『ここで私ががんばらなくてどうするんだ』という気持ちにさせてもらいました。最後は何が何でも私が1番でみんなのもとに帰るんだという気持ちで走りました」

3.3kmで東北福祉大を捕らえて2位に浮上すると、今ひとつスピードに乗れない野田を残り1kmを切って逆転。区間賞&区間新の快走で、城西大としては25年ぶり3度目の優勝となる歓喜のフィニッシュを迎えた。

前日会見では、赤羽周平監督が「100点では少し足らない。1区の本間(香、1年)で最高の流れを作り、全員が105点ぐらい出せれば優勝が近づくと思います」と語っていたが、その狙い通りにルーキーの区間新の快走がチームの起爆剤となった。

「4年生には優勝して笑顔で終わってほしい。そのためには、私が1区で区間賞を取って、しっかり勢いをつけなければならないと思ってスタートを切りました」と本間。終始、先頭集団のトップを力強く走り抜く。

「監督と立てたレースプラン通りに初めから先頭に立って、5km過ぎから前に出て、ラストの直線でまた一段上げて、心晴先輩(兼子、4年)に笑顔でタスキをつなぐことができました」

2区の兼子も「4年生としてしっかり差を広げて、3区の1年生の由菜(大西)に少しでも楽に走ってもらおう」と、2年ぶりの出場となった全日本で躍動。2区間連続の区間賞&区間新で後続を引き離した。

3区の大西も区間3位ながら区間新記録の力走を見せ、石川苺(3年)につなぐ。3年連続4区に起用された石川は、3度目の区間2位で、「区間賞を狙っていたので悔しさが残ります」と語ったが、安定感は抜群だった。

最長9.2kmのエース区間に抜擢された本澤は、5kmで大東大のサラ・ワンジル(3年)に、5.7kmでは東北福祉大に抜かれ、3位に後退。レース後は「期待して5区を任せていただいたのに、チームにブレーキをかけるような走りになってしまって悔しいです」と涙に暮れたが、金子が話したように最後まであきらめずに走り切ったことが大逆転優勝につながったのは間違いなかった。

赤羽監督は選手たちの奮闘ぶりに感無量といった様子だった。

「5区が終わった時点で、普通に考えると優勝はなかなか難しい状況でしたが、金子は前を抜くことしか考えていなかったと思います。沿道に出ていて、学生たちみんなが『今、40秒差です』『30秒差です』『10秒切りました』といった報告をLINEに上げてくれるのを見て、すごく興奮しました。優勝を目標にやってきて、実際に優勝もさせてもらった。その景色を見せてくれた彼女たちには感謝しかありません」

城西大の前回の優勝は、赤羽監督の妻・有紀子コーチが学生だった2000年。今の選手たちは当然、その時代を知らない。

だが、金子が「今年のチームは全員が主役。誰1人欠けてはならなくて、そんなみんなだったからこそ、1つになって目標を達成できました」と胸を張ったように、チームに携わる1人1人が自身の役割を果たし、全日本大学女子駅伝制覇という重い扉を25年ぶりにこじ開けた。

文/小野哲史

◇第43回全日本大学女子駅伝(10月26日/宮城・弘進ゴムアスリートパーク仙台発着・6区間38.0km) 第43回全日本大学女子駅伝が行われ、冷雨のレースは最終盤に劇的なドラマが待っていた。 城西大の主将・金子陽向(4年)が5区の本澤美桜(2年)から3位でタスキを受けたとき、2位の東北福祉大とは29秒差。5区で首位に立った大東大とは、1分17秒もの差があった。しかも、大東大のアンカーは学生女子長距離界を代表する野田真理耶(3年)。金子にとっては実績面でも5000mの自己記録でも格上だったが、迷うことなく中継所を飛び出した。 「最後、美桜が苦しみながらもラスト100m、50mと、もがいて走ってくれた姿を見て、『ここで私ががんばらなくてどうするんだ』という気持ちにさせてもらいました。最後は何が何でも私が1番でみんなのもとに帰るんだという気持ちで走りました」 3.3kmで東北福祉大を捕らえて2位に浮上すると、今ひとつスピードに乗れない野田を残り1kmを切って逆転。区間賞&区間新の快走で、城西大としては25年ぶり3度目の優勝となる歓喜のフィニッシュを迎えた。 前日会見では、赤羽周平監督が「100点では少し足らない。1区の本間(香、1年)で最高の流れを作り、全員が105点ぐらい出せれば優勝が近づくと思います」と語っていたが、その狙い通りにルーキーの区間新の快走がチームの起爆剤となった。 「4年生には優勝して笑顔で終わってほしい。そのためには、私が1区で区間賞を取って、しっかり勢いをつけなければならないと思ってスタートを切りました」と本間。終始、先頭集団のトップを力強く走り抜く。 「監督と立てたレースプラン通りに初めから先頭に立って、5km過ぎから前に出て、ラストの直線でまた一段上げて、心晴先輩(兼子、4年)に笑顔でタスキをつなぐことができました」 2区の兼子も「4年生としてしっかり差を広げて、3区の1年生の由菜(大西)に少しでも楽に走ってもらおう」と、2年ぶりの出場となった全日本で躍動。2区間連続の区間賞&区間新で後続を引き離した。 3区の大西も区間3位ながら区間新記録の力走を見せ、石川苺(3年)につなぐ。3年連続4区に起用された石川は、3度目の区間2位で、「区間賞を狙っていたので悔しさが残ります」と語ったが、安定感は抜群だった。 最長9.2kmのエース区間に抜擢された本澤は、5kmで大東大のサラ・ワンジル(3年)に、5.7kmでは東北福祉大に抜かれ、3位に後退。レース後は「期待して5区を任せていただいたのに、チームにブレーキをかけるような走りになってしまって悔しいです」と涙に暮れたが、金子が話したように最後まであきらめずに走り切ったことが大逆転優勝につながったのは間違いなかった。 赤羽監督は選手たちの奮闘ぶりに感無量といった様子だった。 「5区が終わった時点で、普通に考えると優勝はなかなか難しい状況でしたが、金子は前を抜くことしか考えていなかったと思います。沿道に出ていて、学生たちみんなが『今、40秒差です』『30秒差です』『10秒切りました』といった報告をLINEに上げてくれるのを見て、すごく興奮しました。優勝を目標にやってきて、実際に優勝もさせてもらった。その景色を見せてくれた彼女たちには感謝しかありません」 城西大の前回の優勝は、赤羽監督の妻・有紀子コーチが学生だった2000年。今の選手たちは当然、その時代を知らない。 だが、金子が「今年のチームは全員が主役。誰1人欠けてはならなくて、そんなみんなだったからこそ、1つになって目標を達成できました」と胸を張ったように、チームに携わる1人1人が自身の役割を果たし、全日本大学女子駅伝制覇という重い扉を25年ぶりにこじ開けた。 文/小野哲史

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