2023.03.14
部活やクラブチームの中で、今や欠かせないのが「チームTシャツ」。そのチームの個性やスピリットを象徴するアイテムだ。このチームTシャツを思い通りの色やデザインで、誰でも気軽に、短期間で作れるシステムをつくりあげ、20年以上も前から実績を積み重ねてきたのがクレーマージャパン。
当時最先端だった「昇華プリント」をいち早く導入し、「チームオリジナルの1着」を少人数から作れるようにした。昨年から「直射プリント」の技術も加わり、チームの想いをより素敵に、より鮮やかに、より快適なものに実現させ、しかも1日でも早く届けることができるようになった。クレーマージャパンが、オリジナルチームウエアづくりに懸ける想いとは?
昇華プリントを軸に「サブリメイト」構築
「自分たちだけのオリジナルTシャツがあると、きっとチームの励みになるよね」
クレーマージャパンがオリジナルTシャツのチームオーダーに乗り出したのは、そんな想いが始まりだった。時は1998年ごろ。当時のオリジナルTシャツづくりはプリントの色数を1色増やしただけで価格が大きく上がってしまうため、少人数のチームでは値段が高くなり過ぎて、なかなかそろえてつくることが難しかった時代だ。
1991年の創業以来、常に〝現場で求められていて、実際に役立つ商品〟の開発に取り組んできたクレーマージャパンは、ここで「どんなチームでも団結したい気持ちは一緒のはず。だったら人数が少ないチームでも、簡単に、早く、安くオリジナルTシャツが作れるシステムができないか――そしてそれは、今までになくカラフルで、デザインの自由度が高く、着た時にみんなのテンションが上がるものがいい!」と、それまでにないプリントシステムづくりに着手した。
その一手が、『昇華プリント』の導入だった。何色使ってもコストが変わらないため、デザインの自由度が高く、欧米で注目され始めたばかりのプリント技術だ。同社サブリメイト事業部のトップである竹内嗣郎さんは、当時をこう振り返る。
「海外の展示会などに出向き、まだ日本では普及していなかった昇華プリントに着目し、その技術の導入にトライしました」
このプリント技術では世界の最先端を行くアメリカのインクメーカーや素材メーカーに直接足を運び、ゼロからノウハウを蓄え、試行錯誤の結果、どうにかどこにも負けない発色を出すことに成功した。しかし、当時の昇華プリント用として販売されているTシャツは普段着を目的としていたため生地が厚く、値段が高く、世界中どこを探してもとてもスポーツ中に着れるモノは存在しなかった。
とはいえ、自分たちが欲しいスポーツ用Tシャツをどこかの会社がつくってくれる見込みもない状況では、「『必要だけど今の世の中にないモノ』は自分たちで開発するしかない」との結論に至るまでに、時間はかからなかった。糸の段階から生地メーカーと何度もテストを繰り返し、数ヵ月後にようやく自分たちが満足できる昇華プリントスポーツ用生地「ポーリードライ」が完成した。
ハード面の完成のめどが立った段階で、次は注文を受ける体制づくりのソフト面に着手。「お客様から求められる短い納期と質の高いデザイン」の要望に応えるため、専任のデザイナーをそろえ、急な大量注文にも安心して応えられる態勢も整えた。
こうして、通常は2週間程度、早ければ10日前後の納期で、質の高いオリジナルオーダーTシャツを手にできるシステムが完成。「昇華」を意味するサブリメイションと、「仲間」を意味するメイトを組み合わせて、システムは、『サブリメイト』と名付けられた。
チームの個性や想いを表現
サブリメイトシステムの事業展開は、2000年から本格的にスタート。同年の入社で、現在は広報部長を務める取締役の靑葉貴幸さんが、新入社員として最初に任されたのは、全国の学校を回ってこのシステムを紹介することだったという。
「先生方と話をさせていただいてわかったことは、それまで少人数のチームでTシャツをそろえるのは本当に難しかったのだということ。そして、こんなにキレイなオリジナルTシャツがこんなに手軽に作れるのかと、目の前で喜んでもらえることが本当にうれしかった」
並行して02年からは、インターハイ、全中、国体などで、大会記念Tシャツの販売も開始した。会場の同社販売ブースに並んだ、色とりどりの華やかなデザインや、人気のマスコット『かめうさぎ』を使ったキュートなデザインのTシャツは、中高生の心をがっちりとつかんだ。それを機に自分たちもこういうオリジナルで色鮮やかな感じのTシャツを作りたい!」と、急激に全国からチームTシャツの注文が来るようになる。
竹内さんは、その過程をこう振り返る。「チームカラーやエンブレムを用いたり、スローガンや合い言葉を入れたり……。この20年で、オリジナルTシャツを、チームの個性を表現するツールとして、欠かすことのできないものに成長させることができました。大切な仲間と作った、思い入れのあるオリジナルTシャツを着て練習したり、試合に挑めたりするのは、きっと着る人の心を奮い立たせるはず。私たちも、まるでそのチームの一員となったようなつもりで、心を込めて作製に当たっています」
直射プリントを新導入してさらに進化
サブリメイトシステムは昨年、さらに大きな進化を遂げている。
昇華プリントは基本的に白い生地にプリントをするものなので、それまでカラーTシャツに対しては通気性やごわつき感の点で課題の残る「転写プリント」という手法をとっていた。
「着心地を損なわずに、色の濃いカラーTシャツに、フルカラーでプリントできる方法はないかと、ずっと模索していたんです」と竹内さんは言う。

Tシャツには、薄暗い中で存在を知らせる『蓄光反射』マークが標準装着。さらにサイズタグには『AED(自動体外式除細動器)を使用した救急処置法の手順』もプリントされている。安全性を第一に、“常に使う人のことを考える”同社ならではのこだわりだ
そんななか、昨年導入したのが『直射プリント』だ。通気性を確保し、着心地を損なわないこの技術の完成によって、生地に応じて昇華プリントと直射プリントを使い分けることで、スポーツ時に求められる通気性と動きを妨げない生地の柔らかさ、ベタつきを感じさせない肌触りの良さをすべてのカラーTシャツにおいて実現した。「着て、トレーニングしてもらえれば、全然違うことを実感できるはず。自信を持って、アスリートのみなさんに着ていただけるものができました。たかがTシャツ、されどTシャツ。その1着が、チームの団結を生んだり、それぞれの大事な思い出となったりします。そういった大切なウエアを提供していると思うと、本当に身が引き締まります」と靑葉さんは言葉に力を込める。

サブリメイトシステムで培われ、より磨かれた技術を用いて、2010年からユニフォーム作成もスタート。今ではジャージやウインドブレーカーなど、すべてのウエアをオリジナルで用意できるようになっている。その取り組みが評価され、2021年東京パラリンピックでは陸上競技日本代表ウエアも任された
20年前から変わらないそのスタンスは、これからもクレーマージャパンのものづくりに受け継がれていく――。
文/児玉育美、撮影/原田健太
昇華プリントを軸に「サブリメイト」構築
「自分たちだけのオリジナルTシャツがあると、きっとチームの励みになるよね」 クレーマージャパンがオリジナルTシャツのチームオーダーに乗り出したのは、そんな想いが始まりだった。時は1998年ごろ。当時のオリジナルTシャツづくりはプリントの色数を1色増やしただけで価格が大きく上がってしまうため、少人数のチームでは値段が高くなり過ぎて、なかなかそろえてつくることが難しかった時代だ。 1991年の創業以来、常に〝現場で求められていて、実際に役立つ商品〟の開発に取り組んできたクレーマージャパンは、ここで「どんなチームでも団結したい気持ちは一緒のはず。だったら人数が少ないチームでも、簡単に、早く、安くオリジナルTシャツが作れるシステムができないか――そしてそれは、今までになくカラフルで、デザインの自由度が高く、着た時にみんなのテンションが上がるものがいい!」と、それまでにないプリントシステムづくりに着手した。 その一手が、『昇華プリント』の導入だった。何色使ってもコストが変わらないため、デザインの自由度が高く、欧米で注目され始めたばかりのプリント技術だ。同社サブリメイト事業部のトップである竹内嗣郎さんは、当時をこう振り返る。 「海外の展示会などに出向き、まだ日本では普及していなかった昇華プリントに着目し、その技術の導入にトライしました」 [caption id="attachment_95254" align="alignnone" width="800"]
オリジナルTシャツ作成への熱い思いを語った靑葉貴幸さん(左)と竹内嗣郎さん[/caption]
このプリント技術では世界の最先端を行くアメリカのインクメーカーや素材メーカーに直接足を運び、ゼロからノウハウを蓄え、試行錯誤の結果、どうにかどこにも負けない発色を出すことに成功した。しかし、当時の昇華プリント用として販売されているTシャツは普段着を目的としていたため生地が厚く、値段が高く、世界中どこを探してもとてもスポーツ中に着れるモノは存在しなかった。
とはいえ、自分たちが欲しいスポーツ用Tシャツをどこかの会社がつくってくれる見込みもない状況では、「『必要だけど今の世の中にないモノ』は自分たちで開発するしかない」との結論に至るまでに、時間はかからなかった。糸の段階から生地メーカーと何度もテストを繰り返し、数ヵ月後にようやく自分たちが満足できる昇華プリントスポーツ用生地「ポーリードライ」が完成した。
ハード面の完成のめどが立った段階で、次は注文を受ける体制づくりのソフト面に着手。「お客様から求められる短い納期と質の高いデザイン」の要望に応えるため、専任のデザイナーをそろえ、急な大量注文にも安心して応えられる態勢も整えた。
こうして、通常は2週間程度、早ければ10日前後の納期で、質の高いオリジナルオーダーTシャツを手にできるシステムが完成。「昇華」を意味するサブリメイションと、「仲間」を意味するメイトを組み合わせて、システムは、『サブリメイト』と名付けられた。
チームの個性や想いを表現
サブリメイトシステムの事業展開は、2000年から本格的にスタート。同年の入社で、現在は広報部長を務める取締役の靑葉貴幸さんが、新入社員として最初に任されたのは、全国の学校を回ってこのシステムを紹介することだったという。 「先生方と話をさせていただいてわかったことは、それまで少人数のチームでTシャツをそろえるのは本当に難しかったのだということ。そして、こんなにキレイなオリジナルTシャツがこんなに手軽に作れるのかと、目の前で喜んでもらえることが本当にうれしかった」 並行して02年からは、インターハイ、全中、国体などで、大会記念Tシャツの販売も開始した。会場の同社販売ブースに並んだ、色とりどりの華やかなデザインや、人気のマスコット『かめうさぎ』を使ったキュートなデザインのTシャツは、中高生の心をがっちりとつかんだ。それを機に自分たちもこういうオリジナルで色鮮やかな感じのTシャツを作りたい!」と、急激に全国からチームTシャツの注文が来るようになる。 竹内さんは、その過程をこう振り返る。「チームカラーやエンブレムを用いたり、スローガンや合い言葉を入れたり……。この20年で、オリジナルTシャツを、チームの個性を表現するツールとして、欠かすことのできないものに成長させることができました。大切な仲間と作った、思い入れのあるオリジナルTシャツを着て練習したり、試合に挑めたりするのは、きっと着る人の心を奮い立たせるはず。私たちも、まるでそのチームの一員となったようなつもりで、心を込めて作製に当たっています」直射プリントを新導入してさらに進化
サブリメイトシステムは昨年、さらに大きな進化を遂げている。 昇華プリントは基本的に白い生地にプリントをするものなので、それまでカラーTシャツに対しては通気性やごわつき感の点で課題の残る「転写プリント」という手法をとっていた。 「着心地を損なわずに、色の濃いカラーTシャツに、フルカラーでプリントできる方法はないかと、ずっと模索していたんです」と竹内さんは言う。 [caption id="attachment_95255" align="aligncenter" width="400"]
Tシャツには、薄暗い中で存在を知らせる『蓄光反射』マークが標準装着。さらにサイズタグには『AED(自動体外式除細動器)を使用した救急処置法の手順』もプリントされている。安全性を第一に、“常に使う人のことを考える”同社ならではのこだわりだ[/caption]
そんななか、昨年導入したのが『直射プリント』だ。通気性を確保し、着心地を損なわないこの技術の完成によって、生地に応じて昇華プリントと直射プリントを使い分けることで、スポーツ時に求められる通気性と動きを妨げない生地の柔らかさ、ベタつきを感じさせない肌触りの良さをすべてのカラーTシャツにおいて実現した。「着て、トレーニングしてもらえれば、全然違うことを実感できるはず。自信を持って、アスリートのみなさんに着ていただけるものができました。たかがTシャツ、されどTシャツ。その1着が、チームの団結を生んだり、それぞれの大事な思い出となったりします。そういった大切なウエアを提供していると思うと、本当に身が引き締まります」と靑葉さんは言葉に力を込める。
[caption id="attachment_95256" align="aligncenter" width="400"]
サブリメイトシステムで培われ、より磨かれた技術を用いて、2010年からユニフォーム作成もスタート。今ではジャージやウインドブレーカーなど、すべてのウエアをオリジナルで用意できるようになっている。その取り組みが評価され、2021年東京パラリンピックでは陸上競技日本代表ウエアも任された[/caption]
20年前から変わらないそのスタンスは、これからもクレーマージャパンのものづくりに受け継がれていく――。
文/児玉育美、撮影/原田健太
最強デザイナー集団がチームの想いをかたちに!!オリジナルTシャツを作る際に、最強のパートナーとなってくれるのが、社内に10名以上いる経験豊富なデザイナー集団の存在。一つひとつの注文に専任デザイナーがついてくれるから、注文時に漠然としたラフスケッチしか描けなくても心配はいらない。イメージさえ伝えれば、あとは頼りになるデザイナーがデザインをきちんと仕上げてくれるからだ。内容にもよるが1人のデザイナーが1日に作成するデザインは5件を超えるので、1日に50以上のデザインが次々と生み出されていく。スポーツ経験者が多いので、現場の空気感や熱い想いを共有できることも大きな強みだ。 |
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