2023.01.16
◇ヒューストン・マラソン(1月15日/米国・ヒューストン)
ヒューストン・マラソンが1月15日(現地時間)に行われ、新谷仁美(積水化学)が日本歴代2位の2時間19分24秒(速報値)で優勝した。
「応援が多くて、2020年のハーフの時のようにたくさんの応援の中で走れたことをうれしく思います」。新谷はレース直後のインタビューでそう語ると、チャンピオンに贈られるカウボーイハットをかぶって笑顔でポーズを取った。
3年前は、同時開催だったハーフの部に出場し、1時間6分38秒の日本新を打ち立てている。同じ場所で、今度はマラソンの日本新を。新谷は、2005年に野口みずき(グローバリー)が作った2時間19分12秒の日本記録を見据え、スタートラインに立った。
練習拠点とするTWOLAPS TCの新田良太郎コーチがペースメーカー役を担当。最初の5km通過(16分25秒)こそ日本新ペースから1秒遅れだったが、32分45秒で通過した10km以降は野口のペースを10~20秒を上回る。中間点は1時間9分09秒。日本人初の2時間18分台すら視野に入るペースだ。
25km1時間22分00秒、30km1時間38分29秒、35km1時間55分14秒はいずれもロードの日本記録を上回るもの。この後、新田コーチが離脱し、苦しい表情に変わったが、必死にペースを維持する。
40km通過が2時間11分56秒。ここでついに野口の日本記録ペースから3秒遅れた。野口はラスト2.195kmを7分19秒でカバーしているが、単独走の中で新谷は7分28秒を要し、ヒューストンで日本新の再現は果たせなかった。
それでも、日本女子にとって野口以降は誰も破れなかった「2時間20分」の壁を、新谷がついに破った。日本歴代2位、日本人4人目の2時間19分台はまぎれもない快挙だ。
フィニッシュ直後は悔しげな表情を見せた新谷だったが、「今回はマラソンなので前回のハーフの時とは違う苦しさはあったけど、応援がすごく背中を押してくれた。楽しく走ることができました」とインタビューでは充実感ものぞかせた。
同じ米国で行われた昨年7月のオレゴン世界選手権では、「最後の世界陸上という覚悟」で臨み、結果を残すはずだった。だが、直前に新型コロナウイルス陽性となり、欠場を余儀なくされた。
振り返れば、21年の東京五輪では10000mで21位。前年はヒューストンでのハーフ日本新を皮切りに、12月には10000mで30分20秒44の驚異的日本新をマークとキャリアハイの結果を残してはいた。ただ、コロナ禍で開催された五輪に対する思いを整理できず、心身ともにコンディションを整えきれなかった。
そこからマラソン挑戦を決意し、22年3月の東京で13年ぶりのマラソンを日本歴代7位の2時間21分17秒で走破。失意の五輪から前へ進むきっかけを作れていただけに、オレゴンでの欠場に際して「切り替えて次の目標に進みたい」とSNSに思いを綴ったものの、それは簡単なことではなかっただろう。
それでも、新谷は戻ってきた。
2013年のモスクワ世界選手権10000mで5位入賞を果たした後、いったんは現役を引退。その後、18年に復帰してから常に口にしてきたことを、この日のレース後にも語った。
「もう1度このスポーツに戻ってきて、自分がここまで力を戻せたのは、常に私の味方でいてくれるチームメイト、サポートしてくれる人、ファンの人のお陰で、本当に私の力になってくれています」
昨年11月の全日本実業団対抗女子駅伝では、新谷が力を出し切れなかった東京五輪の10000mで7位入賞を果たした廣中璃梨佳(日本郵政グループ)とのデッドヒートを展開。中継では先行を許したが、区間賞はものにした。
この大会に向けてマラソン練習をこなしていた中でのレースで、序盤は廣中に大きく離される展開から巻き返している。「次のマラソンにつながるかというと距離が全然違うので」としつつ、「立て直せたということは収穫」と一定の評価をしていた。そこから1ヵ月半。トレーニングを重ねた成果を、見事に発揮した。
10月にはパリ五輪選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ」が控え、来年にはパリ五輪が待っている。「これからも頑張ります」と語った新谷。現役日本人最速のタイムは出した。あとは常々語る「結果を残す」のみだ。
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