2022.12.29
スタミナ、選手層、山の充実
前回の青学大から負った「11分15秒差」をひっくり返すために、駒大には何が必要で、彼らは何を準備してきたのか。
前回の駒大に不足していたものに、大八木監督は「スタミナ」と「選手層」を挙げている。駒大は以前より、トラック強化の比重を大きくしている。レギュラーの最大層を形成する3年生の多くがスピードタイプ。以前より年月をかけてゆっくりと、スタミナ養成を行っている面がある。
スタミナ力を示すハーフマラソンの平均タイム(エントリー選手上位10人)が、前回の駒大は出場チーム中19位(1時間5分40秒)だった。これはほとんどレースに参加しなかったためで、そのまま受け止めてはいけないが、今年のデータ(1時間2分14秒)では他校をすべてごぼう抜きしてトップに躍り出た。
今季はハーフマラソンに積極的に参加したことと、実際にスタミナがアップしたことを示すデータだ。2月の全日本実業団ハーフマラソンで主将の山野力(現4年)が1時間0分40秒の日本人学生最高を樹立したほか、篠原倖太朗(現2年)と花尾恭輔(現3年)が1時間1分台をマーク。11月の上尾シティハーフでも円健介(4年)が1時間1分51秒と好走したことが大きい。
もう1つの「選手層」について、大八木監督は「今回は格段に違いますよ」と自信を持つ。

悲願達成へ、指導にも熱が入る大八木弘明監督
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出雲と全日本はともに大会新
駒大は史上5校目の学生駅伝3冠を懸けて箱根駅伝に臨む。 「2冠」の数は、今年度も入れて随一の9回。出雲、全日本を制して迎える「3冠がかかった箱根駅伝」は、1998年度と2013年度(ともに箱根駅伝は2位)に続く3度目だ。 1995年にコーチとして就任し、04年に現職へ昇格した大八木弘明監督が「私も長くやってきたので一度くらいは……と思いますが、こればっかりは運もあります」と語るように、3冠は駒大の悲願だ。 今季の出雲駅伝、全日本大学駅伝ともに“圧勝”だった。出雲は2区で、全日本では3区で先頭に立って主導権を握り、その後トップを“守る”のでなく、さらに攻撃的に、リードを広げた。非の打ち所がない内容だ。 出雲、全日本ともに大会新。全日本にいたっては、自校が保持していた5時間11分08秒を一気に4分21秒も更新。2位との差は3分21秒ついた。両駅伝で2位だった國學院大・前田康弘監督が「駒大の壁はエベレストよりも高い」とコメントするほどだ。 駒大OBの前田監督は、全日本と箱根の初優勝メンバーであり、元主将だ。それだけに母校の強さ、恩師・大八木監督の情熱を肌身に感じている。 両駅伝でのあまりの強さから、今回の箱根駅伝の大本命に挙げる声も少なくない。 しかし、そう簡単でないことは指揮官も、選手たちも理解している。前回大会も優勝候補に挙げられながら3位に終わった。今回は「挑戦者」の立場で臨む。 駒大を挑戦者たらしめる存在は前回覇者の青学大だ。 青学大は前回、10時間43分42秒という異次元の大会新を樹立。2位・順大との差は10分51秒に広げた。 この時、駒大は8区にレース中の故障発生というアクシデントもあり、青学大から11分15秒遅れの3位。この時のタイムが、箱根駅伝における駒大の「自己ベスト」だ。 青学大は至近8年で箱根駅伝6勝。旧コースも含めて10時間50分切りを3度も達成しており、「再現能力」も高い。一方、駒大にとっての10時間40分台は未知の領域である。 全日本に関しては、駒大こそ絶対王者だが、箱根駅伝に関しては、チャンピオン・青学大に挑む側なのだ。 次のページ スタミナ、選手層、山の充実スタミナ、選手層、山の充実
前回の青学大から負った「11分15秒差」をひっくり返すために、駒大には何が必要で、彼らは何を準備してきたのか。 前回の駒大に不足していたものに、大八木監督は「スタミナ」と「選手層」を挙げている。駒大は以前より、トラック強化の比重を大きくしている。レギュラーの最大層を形成する3年生の多くがスピードタイプ。以前より年月をかけてゆっくりと、スタミナ養成を行っている面がある。 スタミナ力を示すハーフマラソンの平均タイム(エントリー選手上位10人)が、前回の駒大は出場チーム中19位(1時間5分40秒)だった。これはほとんどレースに参加しなかったためで、そのまま受け止めてはいけないが、今年のデータ(1時間2分14秒)では他校をすべてごぼう抜きしてトップに躍り出た。 今季はハーフマラソンに積極的に参加したことと、実際にスタミナがアップしたことを示すデータだ。2月の全日本実業団ハーフマラソンで主将の山野力(現4年)が1時間0分40秒の日本人学生最高を樹立したほか、篠原倖太朗(現2年)と花尾恭輔(現3年)が1時間1分台をマーク。11月の上尾シティハーフでも円健介(4年)が1時間1分51秒と好走したことが大きい。 もう1つの「選手層」について、大八木監督は「今回は格段に違いますよ」と自信を持つ。 [caption id="attachment_89905" align="alignnone" width="800"]
箱根駅伝では“挑戦者”
前々回の箱根駅伝優勝時は、全日本ではメンバー外だった選手の活躍が効いた。いわゆる“箱根男”の台頭だ。今年もそこが充実している。 全日本メンバー外「8人」の顔ぶれは、全学年にわたりバラエティに富む。最初で最後のチャンスをつかんだ4年生・小野恵崇や、ケガからの再復帰にかける3年生エースの鈴木芽吹、進境著しい1年生も。いずれも他校では主力となれる選手たちだ。 準備と言えば5、6区の「山」が重要だが、前回区間4位の金子伊吹(3年)に加え、山野、全日本4区区間賞の山川拓馬と、「山」の字を抱く2人が5区出走を希望。「ここにきて山志望の選手がいい動きをしている」(大八木監督)と、自信の度合いが増しそうだ。 下りの6区も、前回出走の準備をしていた篠原倖太朗が平地に回っても、高い水準が維持されるだろう。 もちろん前提として、学生長距離界のエース・田澤廉(4年)の存在は欠かせない。主軸の篠原や花尾恭輔、山野らが一段上の力をつけたことも大きな要素だ。 出雲、全日本の「最大の勝因」と指揮官から高評価を受けた佐藤圭汰は初の20km超えレースに挑む。箱根駅伝では上級生が役割を増し、大型ルーキーの負担を軽減するはずだ。 [caption id="attachment_89903" align="alignnone" width="800"]
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