HOME 駅伝

2022.10.31

6連覇の金字塔!女王・名城大「史上初」の重圧を跳ねのける圧巻の完封リレー/全日本大学女子駅伝
6連覇の金字塔!女王・名城大「史上初」の重圧を跳ねのける圧巻の完封リレー/全日本大学女子駅伝

◇第40回全日本大学女子駅伝(10月30日/宮城・6区間38.1km)

今回も女王の牙城は全く揺るがなかった。スタート直後にトップに立った名城大がその座を一度も譲ることなく、2時間3分11秒で大会史上初の6連覇を果たした。

広告の下にコンテンツが続きます

米田勝朗監督は、「史上初という言葉がずっとつきまとっていましたので、私も学生たちも、今回の優勝にプレッシャーがまったくなかったと言えば噓になります」と本音を吐露した。

それでも、「やってきたことをしっかり出し切れば、結果ついてくる。今年は今年のチームとして良い駅伝をやろう」とレースに臨み、その言葉通り、会心の内容で偉業を成し遂げた選手たちを指揮官は称えた。

1、2区に入った米澤奈々香と石松愛朱加、2人のルーキーが連続区間賞の快走でチームに流れを呼び込んだ。

「2区以降の選手を勢いづけられるような走りを目標にしていました」と語った米澤は、宮城・仙台育英高時代を過ごした地で躍動し、快調なペースで主導権を握る。背後に食らいついていた立命大・村松結(1年)を4km過ぎに振り切り、昨年の全国高校駅伝1区区間賞の実力を見せつけた。

レース前日に19歳の誕生日を迎えた石松も、堂々とした走りを披露した。「1秒でも早く(山本)有真先輩(4年)に渡すという目標を持った走りができました」と胸を張ったように、後続をぐんぐん引き離していく。

後方で各校が激しい順位変動を繰り広げるなか、名城大は中盤以降も盤石の継走で独走を続けた。3区の山本は、3週間前の国体・成年女子5000mで、日本代表の廣中瑠梨佳(日本郵政グループ)らに競り勝ち、15分16秒71の日本人学生最高記録をマークするなど、絶好調で今大会を迎えていた。

「今年は良い後輩たちに恵まれ、みんなのためにがんばろうと思える良いチーム。自分のためじゃなく、チームのために、また、4年間一緒にがんばってきた(小林)成美(4年)のためにがんばる走りができました」

メンタルの充実も力走を後押しし、1年時からともにチームを支えてきた小林が持つ区間記録に並ぶ21分37秒で、中継所に飛び込んだ。山本は2年時こそ、2区で区間2位だったものの、1年時の4区、前回の1区に続き、今大会3度目の区間賞をすべて異なる区間で獲得したことになる。

4区の谷本七星(2年)、最長区間の5区・小林、アンカーの増渕祐香(3年)の3人は、前回と同じ区間に入ったが、谷本はルーキーだった1年前とは意識の面でも走りの面でも進化していた。

「去年はつなぎの区間というイメージが強かった。今年は成美先輩に少しでもゆとりを持って走ってもらえるように後続とのリードを広げる」と自らに役割を課し、山本らが作った貯金を守るのではなく、積極的な走りでリードの拡大に努めた。2年連続の区間賞で打ち立てた15分14秒は、前回、自身がマークした区間記録(15分37秒)を23秒も上回るものだった。

今大会、米田監督がわずかに不安視していたのが、小林の状態だった。万全ではなく、出場をどうするか、という問いかけに「行きます」ときっぱり答えたのは、主将としての責任感やオレゴン世界選手権10000m代表としてのプライドからだろうか。

「メンバーには感謝しかありません。結果で恩返しをしたかったのですが、個人としては不甲斐ない走りになってしまい、みなさんには申し訳なく思っています」。反省しながらも区間6位と粘りの走りで、しっかりタスキをつないだ。

今回もアンカーの大役を任された増渕は、「史上初の6連覇のアンカーとして走ることになり、正直、プレッシャーや緊張もあったのですが、それ以上に任せていただいたことに誇りや喜びがありました」と話す。

依然として圧倒的なリードがありながら、前だけを見て果敢に歩を進め、22分04秒で自身が持つ区間記録(22分14秒)を更新したのは、谷本と同じだった。増渕は「しっかりみんなのもとに1位で帰ってくることだけを考えて走ったのが区間新を出せた要因」と充実の表情を浮かべた。

2017年に12年ぶりとなる優勝を果たしてから、勝ち続けて重ねた連覇は「6」。あれだけ強い選手をそろえれば、勝って当然と見る向きもあるが、米田監督はその考えをきっぱりと否定する。

「学生たちに言ってきたのは、自滅することだけは絶対にやめようということ。きちんと自分の身体をコントロールして、良い状態で全員がスタートラインに立つ。それが優勝云々の前にアスリートとしてやるべきことだと言い続けてきました」

日々の練習で自らの能力を高め、レース本番でその力をいかんなく発揮する。エースや主力数名だけでなく、多くの部員がそれをできるチームだからこそ、大学女子長距離界において名城大の強さが際立っているのだ。

文/小野哲史

◇第40回全日本大学女子駅伝(10月30日/宮城・6区間38.1km) 今回も女王の牙城は全く揺るがなかった。スタート直後にトップに立った名城大がその座を一度も譲ることなく、2時間3分11秒で大会史上初の6連覇を果たした。 米田勝朗監督は、「史上初という言葉がずっとつきまとっていましたので、私も学生たちも、今回の優勝にプレッシャーがまったくなかったと言えば噓になります」と本音を吐露した。 それでも、「やってきたことをしっかり出し切れば、結果ついてくる。今年は今年のチームとして良い駅伝をやろう」とレースに臨み、その言葉通り、会心の内容で偉業を成し遂げた選手たちを指揮官は称えた。 1、2区に入った米澤奈々香と石松愛朱加、2人のルーキーが連続区間賞の快走でチームに流れを呼び込んだ。 「2区以降の選手を勢いづけられるような走りを目標にしていました」と語った米澤は、宮城・仙台育英高時代を過ごした地で躍動し、快調なペースで主導権を握る。背後に食らいついていた立命大・村松結(1年)を4km過ぎに振り切り、昨年の全国高校駅伝1区区間賞の実力を見せつけた。 レース前日に19歳の誕生日を迎えた石松も、堂々とした走りを披露した。「1秒でも早く(山本)有真先輩(4年)に渡すという目標を持った走りができました」と胸を張ったように、後続をぐんぐん引き離していく。 後方で各校が激しい順位変動を繰り広げるなか、名城大は中盤以降も盤石の継走で独走を続けた。3区の山本は、3週間前の国体・成年女子5000mで、日本代表の廣中瑠梨佳(日本郵政グループ)らに競り勝ち、15分16秒71の日本人学生最高記録をマークするなど、絶好調で今大会を迎えていた。 「今年は良い後輩たちに恵まれ、みんなのためにがんばろうと思える良いチーム。自分のためじゃなく、チームのために、また、4年間一緒にがんばってきた(小林)成美(4年)のためにがんばる走りができました」 メンタルの充実も力走を後押しし、1年時からともにチームを支えてきた小林が持つ区間記録に並ぶ21分37秒で、中継所に飛び込んだ。山本は2年時こそ、2区で区間2位だったものの、1年時の4区、前回の1区に続き、今大会3度目の区間賞をすべて異なる区間で獲得したことになる。 4区の谷本七星(2年)、最長区間の5区・小林、アンカーの増渕祐香(3年)の3人は、前回と同じ区間に入ったが、谷本はルーキーだった1年前とは意識の面でも走りの面でも進化していた。 「去年はつなぎの区間というイメージが強かった。今年は成美先輩に少しでもゆとりを持って走ってもらえるように後続とのリードを広げる」と自らに役割を課し、山本らが作った貯金を守るのではなく、積極的な走りでリードの拡大に努めた。2年連続の区間賞で打ち立てた15分14秒は、前回、自身がマークした区間記録(15分37秒)を23秒も上回るものだった。 今大会、米田監督がわずかに不安視していたのが、小林の状態だった。万全ではなく、出場をどうするか、という問いかけに「行きます」ときっぱり答えたのは、主将としての責任感やオレゴン世界選手権10000m代表としてのプライドからだろうか。 「メンバーには感謝しかありません。結果で恩返しをしたかったのですが、個人としては不甲斐ない走りになってしまい、みなさんには申し訳なく思っています」。反省しながらも区間6位と粘りの走りで、しっかりタスキをつないだ。 今回もアンカーの大役を任された増渕は、「史上初の6連覇のアンカーとして走ることになり、正直、プレッシャーや緊張もあったのですが、それ以上に任せていただいたことに誇りや喜びがありました」と話す。 依然として圧倒的なリードがありながら、前だけを見て果敢に歩を進め、22分04秒で自身が持つ区間記録(22分14秒)を更新したのは、谷本と同じだった。増渕は「しっかりみんなのもとに1位で帰ってくることだけを考えて走ったのが区間新を出せた要因」と充実の表情を浮かべた。 2017年に12年ぶりとなる優勝を果たしてから、勝ち続けて重ねた連覇は「6」。あれだけ強い選手をそろえれば、勝って当然と見る向きもあるが、米田監督はその考えをきっぱりと否定する。 「学生たちに言ってきたのは、自滅することだけは絶対にやめようということ。きちんと自分の身体をコントロールして、良い状態で全員がスタートラインに立つ。それが優勝云々の前にアスリートとしてやるべきことだと言い続けてきました」 日々の練習で自らの能力を高め、レース本番でその力をいかんなく発揮する。エースや主力数名だけでなく、多くの部員がそれをできるチームだからこそ、大学女子長距離界において名城大の強さが際立っているのだ。 文/小野哲史

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.08

女子400mのナセルがアディダスと契約 パリ五輪銀、東京世界陸上銅メダリスト

女子400mのアジア記録保持者、S.E.ナセル(バーレーン)がアディダスとのプロ契約を結んだことを発表した。自身のSNSで契約締結に関して「新たな挑戦と歴史的偉業に向け、アディダスの献身的な取り組みとパートナーシップは極 […]

NEWS 全米クロカン選手権はウォルフとケラティ・フレスギが制す 世界陸上入賞・ヤングら上位選手が26年1月の世界クロカン代表に内定

2025.12.08

全米クロカン選手権はウォルフとケラティ・フレスギが制す 世界陸上入賞・ヤングら上位選手が26年1月の世界クロカン代表に内定

12月6日、米国・オレゴン州ポートランドで全米クロスカントリー選手権(10km)が行われ、男子はP.ウォルフが29分17秒で、女子はW.ケラティ・フレスギが33分46秒で優勝した。 女子を制したケラティ・フレスギはパリ五 […]

NEWS 3月のThe TENから7月にかけて17大会を実施! 26年実施の米国陸連ツアー日程発表

2025.12.08

3月のThe TENから7月にかけて17大会を実施! 26年実施の米国陸連ツアー日程発表

米国陸連(USATF)は12月5日、来年実施するUSATFツアー17大会の日程を発表した。 米国では連盟が統括するツアーの立ち上げを10月に発表しており、年次総会で対象大会と日程が決定された。3月28日のThe TENを […]

NEWS 400mH・ベンジャミンと短距離のジェファーソン・ウッデンが年間最優秀賞! 米国陸連が年間表彰者発表

2025.12.08

400mH・ベンジャミンと短距離のジェファーソン・ウッデンが年間最優秀賞! 米国陸連が年間表彰者発表

米国陸連(USATF)は12月5日、2025年の年間表彰者を発表した。 レジェンドの名を冠した年間最優秀賞は、男子(ジェシー・オーエンス賞)が400mハードルのR.ベンジャミン、女子(ジャッキー・ジョイナー=カーシー賞) […]

NEWS 福岡国際と防府読売、2つのマラソンは2人の「西山」が2時間7分台でロス五輪MGC切符つかむ

2025.12.08

福岡国際と防府読売、2つのマラソンは2人の「西山」が2時間7分台でロス五輪MGC切符つかむ

MGCシリーズ2025-26男子G1の福岡国際マラソンと防府読売マラソンの2大会が12月7日に行われた。 福岡国際はバイエリン・イエグゾー(エチオピア)が2時間7分51秒で優勝。2位には西山雄介(トヨタ自動車)が2時間7 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年12月号 (11月14日発売)

2025年12月号 (11月14日発売)

EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選

Follow-up Tokyo 2025

page top