◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)8日目
オレゴン世界陸上8日目のイブニングセッションに行われた女子やり投決勝。その瞬間、涙があふれ、でも笑顔が輝いた。
5位で迎えた最終投てき、北口榛花(JAL)は土壇場で渾身の一投を見せた。オレゴンの空を突き抜けるように、やりがグングン伸びていく。63m27。それまでのトップが66m91の前回女王ケルセイ・リー・バーバー(豪州)、2位が東京五輪金メダルの劉詩穎(中国)で63m25。劉を2cm上回り、一気に2位へと浮上した。
その直後に64m05をマークしたカラ・ウィンガー(米国)に抜かれはしたが、まだ3位。残るはバーバーを除いて2人。そして、誰にも抜かれなかった。北口の銅メダルが確定した。
激闘を終えた選手たちと抱き合う北口はその後、日の丸を受け取って高々と掲げる。デヴィッド・シェケラック・コーチとも一緒に写真に収まった。そしてウィニングランへ。メダリストだけが許されるこのセレモニーでスタンドの大観衆からの祝福を受けた北口は、「一番輝いた色ではないですが、メダルが取れてうれしい」と感涙に浸った。
世界陸上における日本女子投てきの最高成績は、11点テグ大会やり投・海老原有希の8位。五輪では1932年ロサンゼルス大会やり投で真保正子、1936年ベルリン大会円盤投で中村コウがそれぞれ4位に入っているのが最高だ。世界陸上を通じて日本女子投てき初のメダリストは、その後のメダルセレモニーでは輝く笑顔で銅メダルを掲げた。
「ドキドキしながら臨みました」というファイナル。予選は1投目に堂々の全体トップとなる64m32を放っているが、それには及ばないものの62m07としっかりまとめた。トップ8入りは間違いない位置を抑え、2投目以降に臨む。
そこから投げたい気持ちが空回りしたのか、2投目はファウル、3投目は55m78にとどまったものの、3位でトップ8に入る。だが、4投目も61m27、ファウルと伸び悩んで順位を落とし、5位で最終投てきを迎えた。
その土壇場で見せた逆転の一投は、これまで北口が積み上げてきたものの証明だ。
北海道旭川市で生まれ育ち、幼少期から水泳、バドミントンなどさまざまなスポーツに取り組んだ北口。旭川東高で陸上部に入ると、やり投でその才能が開花。2年時からインターハイを連覇、3年時には世界ユース選手権で金メダルに輝いた。
大学ではケガに悩まされる時期もあったが、4年だった19年に64m36、66m00と日本記録を連発。同年のドーハ世界選手権では、初出場ながら予選突破にあと6cmに迫っている。そして、昨年の東京五輪では日本勢57年ぶりのファイナル進出。決勝は左腹斜筋肉離れの影響で12位となったが、着実に世界トップとの距離を縮めてきた。
今季は6月のダイヤモンドリーグ(DL)・パリ大会を63m13で制覇。世界最高峰リーグで日本人初優勝を飾るなど、その距離を一気に詰めた。2018年の終わり頃から師事するシェケラック・コーチととも取り組んできた走る、跳ぶ、投げるの基本トレーニングの積み重ねが、やりに伝わるようになってきた。
「あまり家族と一緒に過ごす時間が取れなかったり、親しい友だちとも会えない生活をしてきたので、本当良かった。トレーナーさんや、理解してくれるコーチも含めてやってきた結果です」。北口は、そう誇らしげに語る。
もちろん、「ここが私のゴールじゃない」。これは北口にとって「始まり」だ。
「金を目指してがんばっていきます」
世界の頂点へ、北口はまた一歩ずつ積み上げていく。
※事実関係に一部誤りがありましたので訂正しました。
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.11.05
-
2025.11.05
-
2025.11.05
-
2025.11.05
-
2025.11.05
-
2025.11.05
2025.11.02
青学大が苦戦の中で3位確保!作戦不発も「力がないチームではない」/全日本大学駅伝
-
2025.11.02
-
2025.11.02
-
2025.11.03
2025.10.18
【大会結果】第102回箱根駅伝予選会/個人成績(2025年10月18日)
2025.11.02
青学大が苦戦の中で3位確保!作戦不発も「力がないチームではない」/全日本大学駅伝
-
2025.10.18
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.11.05
全国高校駅伝都道府県代表出そろう 前年V佐久長聖&長野東など 最速は男女とも仙台育英 6日から地区大会順次開幕
全国高校駅伝の出場権を懸けた都道府県高校駅伝が11月4日の埼玉をもってすべて終了し、都道府県代表がすべて出そろった。 昨年の全国大会は男子が佐久長聖、女子は長野東といずれも長野勢が優勝を遂げた。全国2連覇中の佐久長聖は県 […]
2025.11.05
神戸マラソンの招待選手発表 荒生実慧、平田幸四郎らがエントリー 21年パリ優勝のロティッチも参戦
11月5日、神戸マラソンの主催者は16日に開催される神戸マラソン2025の招待選手を発表した。 国内からは、8月末のシドニーで2時間7分42秒の6位に入った荒生実慧(NDソフト)がエントリー。前回大会で日本人トップの4位 […]
2025.11.05
日本陸連と広島テレビ放送が 「スポーツを通じて誰もが自分らしく活躍できる社会づくりに関する連携協力協定」を締結
11月5日、日本陸連は広島テレビ放送株式会と「スポーツを通じて誰もが自分らしく活躍できる社会づくりに関する連携協力協定」を結んだことを発表した。陸上競技を通じて人と人をつなぎ、すべての人が心身ともに健やかで、自分らしく生 […]
2025.11.05
仙台国際ハーフの来年大会の日程が決定 国内レースによる「ジャパンプレミアハーフシリーズ」
仙台国際ハーフマラソン大会実行委員会は、2026年大会の日程が5月10日に決まったと発表した。定員は10,000人とし、エントリーは11月18日から順次開始される。 国内主要ハーフマラソン6大会が連携する「ジャパンプレミ […]
2025.11.05
「アスリート・オブ・ザ・イヤー」最終候補にデュプランティス、ライルズら12人!
世界陸連(WA)はワールド・アスレティクス・アワード2025「ワールド・アスリート・オブ・ザ・イヤー」の最終候補者を発表した。 トラック、フィールド、競技場外種目の各部門で、10月に発表された候補者の中から男女2選手ずつ […]
Latest Issue
最新号
2025年11月号 (10月14日発売)
東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望