◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)2日目
オレゴン世界陸上2日目のイブニングセッションに行われた男子100m決勝にサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)が出場した。
陸上大国の目の肥えた観衆は最終種目の男子100mに注がれる。8人中4人に米国代表がいる。一人ずつ紹介される。1レーンのサニブラウンは堂々と右手を挙げた。世界陸上の100mファイナル。そこに初めて日本人が並んだ。
異様なムードの中で号砲が鳴る。サニブラウンは反応がやや遅れる。それでもしっかりとした足取りで進む。目の前で次々と米国代表がフィニッシュしていき、サニブラウンは10秒06(-0.1)で7位。男子100mの歴史にとっては小さな一歩かもしれないが、日本陸上界にとって大きな大きな足跡を、自らが拠点とする米国に刻んだ。
「独特の緊張感がありました。緊張はせずリラックスして、やってやろうという気持ちで、トラックに入ってからも集中を切らさず」。だが、ここからがまさに別世界だったのか。走りについて「まったく覚えていない。断片的に、最後の20~30mあたりで横が前に出ているなくらい。無我夢中だったからかな」と振り返る。
疲れ果てて座り込む視線の先には大観衆に答えるフレッド・カーリー、マーヴィン・ブレイシー、トレイヴォン・ブロメルの3人。1991年東京大会以来のメダル独占に、「USAコール」が響き渡る。ブレイシーとブロメルは練習をともにする仲。「悔しい思いもしましたが、どれだけ頑張っているか間近で見てきたので『おめでとう』と言いたい」。
高校卒業と同時にフロリダ大に渡り、その後はプロアスリートになった。この日、米国でファイナリストとなったことで「自分がやってきたことが自分にとって正解だったと証明ができた」と胸を張る。
世界陸上では初、五輪を含めると1932年ロス五輪の吉岡隆徳以来、90年ぶりだった。そんな快挙にも「まずまず」とサニブラウン。「こんなところで満足していられない。もっともっと上を目指していく」。
メダルとの距離は「近くて遠い」と表現する。「その何センチを埋めるためにものすごい練習が必要で、メンタルの調整が必要。その1ミリを縮めるために選手たちは練習も、練習以外も過ごしている。自分も1秒1秒を無駄にせず励んでいきたいです」。
過去2回、不完全燃焼だった世界陸上の100m。「全力でこういう舞台で走りきるのはこのレベルになると難しいし、それができたのは収穫。でも、こんなところで記憶が飛んでいたらいけない。ファイナルを経験できたのは来年の世界陸上に向けていいスタートになります」。また一つ歴史の扉を開いたサニブラウン。高校時代から掲げる「世界一」への道のりは、険しくも楽しいものとなりそうだ。
◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)2日目
オレゴン世界陸上2日目のイブニングセッションに行われた男子100m決勝にサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)が出場した。
陸上大国の目の肥えた観衆は最終種目の男子100mに注がれる。8人中4人に米国代表がいる。一人ずつ紹介される。1レーンのサニブラウンは堂々と右手を挙げた。世界陸上の100mファイナル。そこに初めて日本人が並んだ。
異様なムードの中で号砲が鳴る。サニブラウンは反応がやや遅れる。それでもしっかりとした足取りで進む。目の前で次々と米国代表がフィニッシュしていき、サニブラウンは10秒06(-0.1)で7位。男子100mの歴史にとっては小さな一歩かもしれないが、日本陸上界にとって大きな大きな足跡を、自らが拠点とする米国に刻んだ。
「独特の緊張感がありました。緊張はせずリラックスして、やってやろうという気持ちで、トラックに入ってからも集中を切らさず」。だが、ここからがまさに別世界だったのか。走りについて「まったく覚えていない。断片的に、最後の20~30mあたりで横が前に出ているなくらい。無我夢中だったからかな」と振り返る。
疲れ果てて座り込む視線の先には大観衆に答えるフレッド・カーリー、マーヴィン・ブレイシー、トレイヴォン・ブロメルの3人。1991年東京大会以来のメダル独占に、「USAコール」が響き渡る。ブレイシーとブロメルは練習をともにする仲。「悔しい思いもしましたが、どれだけ頑張っているか間近で見てきたので『おめでとう』と言いたい」。
高校卒業と同時にフロリダ大に渡り、その後はプロアスリートになった。この日、米国でファイナリストとなったことで「自分がやってきたことが自分にとって正解だったと証明ができた」と胸を張る。
世界陸上では初、五輪を含めると1932年ロス五輪の吉岡隆徳以来、90年ぶりだった。そんな快挙にも「まずまず」とサニブラウン。「こんなところで満足していられない。もっともっと上を目指していく」。
メダルとの距離は「近くて遠い」と表現する。「その何センチを埋めるためにものすごい練習が必要で、メンタルの調整が必要。その1ミリを縮めるために選手たちは練習も、練習以外も過ごしている。自分も1秒1秒を無駄にせず励んでいきたいです」。
過去2回、不完全燃焼だった世界陸上の100m。「全力でこういう舞台で走りきるのはこのレベルになると難しいし、それができたのは収穫。でも、こんなところで記憶が飛んでいたらいけない。ファイナルを経験できたのは来年の世界陸上に向けていいスタートになります」。また一つ歴史の扉を開いたサニブラウン。高校時代から掲げる「世界一」への道のりは、険しくも楽しいものとなりそうだ。 RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.11.28
青学大、國學院大、中大、早大など11校! 4回目を迎える宮古島大学駅伝の出場予定校発表
-
2025.11.28
-
2025.11.27
-
2025.11.02
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.11.28
中国陸連にWA加盟連盟賞 世界室内、ダイヤモンドリーグなど開催 競技会、ロードレースには600万人が参加
世界陸連(WA)は11月28日、ワールド・アスレティックス・アワード2025の加盟連盟賞に中国陸連を選出したと発表した。 加盟連盟賞は、年間を通して顕著な功績を挙げ、陸上競技の発展や知名度向上に大きく貢献した加盟連盟を表 […]
2025.11.28
青学大、國學院大、中大、早大など11校! 4回目を迎える宮古島大学駅伝の出場予定校発表
「宮古島大学駅伝ワイドー・ズミ2026」の実行委員会は、11月20日時点の出場予定校を発表した。 箱根駅伝で総合3連覇を狙う青学大や、前回大会で2連覇を飾った國學院大、全日本大学駅伝2位の中大、出雲駅伝で2位の早大など関 […]
2025.11.28
22年世界陸上走幅跳金メダル・王嘉男 ドーピング陽性反応も嫌疑なし AIUが正式に報告
世界陸連(WA)の独立不正調査機関「アスリート・インテグリティ・ユニット(AIU)」は11月27日、男子走幅跳でオレゴン世界選手権金メダルを獲得した王嘉男(中国)のドーピング疑惑について、違反はなかったことを確認し、処分 […]
2025.11.27
プロ野球選手・筒香嘉智と陸上界がコラボ スポーツの垣根を超えるクリニックを12月に開催
11月27日、日本陸連は2024年度から取り組むプロジェクト「RIKUJO JAPAN」の一環として、「~スポーツの垣根を超える~ 2025 TSUTSUGO SPORTS ACADEMY FESTIVAL × RIKU […]
Latest Issue
最新号
2025年12月号 (11月14日発売)
EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選
Follow-up Tokyo 2025