HOME バックナンバー
Rising Star Athlete 不破聖衣来 “朝練”から始まったサクセスロード
Rising Star Athlete 不破聖衣来 “朝練”から始まったサクセスロード

いまや陸上界の“ヒロイン”の一人として、不破聖衣来(拓大)の注目は日に日に増している。無敵を誇った中学時代、ケガとコロナ禍に泣いた高校時代、そして進化を遂げた大学1年目と、そのすべてが世界の高みへ向かうために必要な過程だった。

広告の下にコンテンツが続きます

物語のはじまりは、祖父と姉とともに走り始めた、毎日の朝練習。どれだけ取り巻く環境が変わっても、「変わらない」という強さがある。少しでも速くなるために、大きな目標のために、目の前のやるべきことに全力を尽くす。その道が世界の頂点につながっていると信じて。
文/向永拓史

無敵の中学時代、苦難だった高校時代

先輩たちと話すあどけない表情。スタートラインに立つとひときわ小さな身体。走り出すと想像もつかない大きな走りで人々を虜にする。18歳の不破聖衣来(拓大)には不思議な魅力がある。

その名は、この半年で陸上の枠を超えて日本中に知れ渡った。インカレ不敗。駅伝を走れば区間記録を塗り替えてごぼう抜き。極めつきが12月11日の記録会。10000mに出場した不破は、日本歴代2位となる30分45秒21をマークして、オレゴン世界選手権の参加標準記録(31分25秒00)を軽々と突破した。自身初の10000m、しかもペースメーカー不在の独走。衝撃だった。

本人はそんな喧噪はどこ吹く風。「ちょっとプレッシャーを感じますが、どうしてこんなに注目されているのか違和感があるというのが本音です」。自分が秘める可能性も、その魅力も、まだまだ測りかねているようだ。

一般的に言われているような“新星”ではない。むしろ中学時代から特別な存在だった。不破が走り出したのは小学校2年生の時。「小学校で持久走があるので、その練習です」。3つ上の姉・亜莉珠(現・センコー)が、クロスカントリースキーの国体選手だった祖父と走っていたのにくっついて、毎朝走るようになった。今でも姉が「あこがれで、一番尊敬する選手」だという。

小3で大会に出たことはあるが、小学生の間は5年生で始めたミニバスケットボールに夢中。「クラブチーム(アラマキッズ)に登録して駅伝だけ参加するような感じでした」。

本格的に陸上を始めたのは地元・群馬県高崎市の大類中に進んでから。当時、群馬の中学・高校には全国トップクラスのランナーがそろっていた。15年の全国高校駅伝では常磐高が岡本春美(現・ヤマダホールディングス)や樺沢和佳奈(現・資生堂)らを擁して2位。健大高崎高に進んだ姉の亜莉珠も1年生で3000m9分15秒60をマークし、同期には林英麻もいた。全国中学校駅伝では伊井笑歩(現・武蔵野大)がいた富士見中が女子3位、男子優勝を飾っている。

そんな“長距離どころ”の中で、不破もまた大きく成長していく。中2で全中1500mに出場すると、10月のジュニア五輪B1500mでは4分27秒81をマークして全国初タイトル。ここから無類の強さを見せる。翌年1月の全国都道府県対抗女子駅伝では3区区間賞を獲得。3年時は全中1500m優勝、ジュニア五輪A3000mも制して2冠を果たした。都道府県対抗女子駅伝でも3区で連続区間賞。ほぼ敵なしだった。

中3の全中1500mは終始トップを譲らない圧巻の優勝を飾った

姉の背中を追って健大高崎高に進学すると、「1年目は思ったより記録を出せました」と振り返るように、1500mと3000mでインターハイに出場(予選落ち)すると、1500m4分24秒50、3000m9分13秒45をマーク。だが、春先に左シンスプリントを発症し、「8月くらいまで痛みがありました」。痛みを押して出場したインターハイ路線は北関東大会の3000mで敗退。その後は秋の県駅伝まで1本しかレースを走れなかった。奮起を誓った最終学年はコロナ禍に見舞われて、その足音を響かせる機会は失われている。

「2年目はほぼ1年間、走れない状態でした。3年目も試合がほとんどなくて、活躍できる場面がなくて、状態もなかなか上がりませんでした。このまま高校生活が終わっちゃうのかなって」

だが、苦しい時期も「絶対に復活して、家族や支えてくれた人たちに恩返しがしたい」と強い気持ちを持ち続けた。試合がなかった3年目は「体重も筋力も落ちていたので、イチから身体を作り直せる期間」と捉えた。少しずつ感覚を取り戻すと、全国高校大会3000mで6位、そして5000mでは15分37秒44をマーク。高校最後の大舞台となった昨年2月のU20日本選手権クロスカントリー(6㎞)で、19分49秒で中3以来の日本一となった。「そこで優勝できたことが大きかったです」。自信を得た不破は、不死鳥のごとく蘇った。

この続きは2022年2月14日発売の『月刊陸上競技3月号』をご覧ください。

 

※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する
定期購読はこちらから

いまや陸上界の“ヒロイン”の一人として、不破聖衣来(拓大)の注目は日に日に増している。無敵を誇った中学時代、ケガとコロナ禍に泣いた高校時代、そして進化を遂げた大学1年目と、そのすべてが世界の高みへ向かうために必要な過程だった。 物語のはじまりは、祖父と姉とともに走り始めた、毎日の朝練習。どれだけ取り巻く環境が変わっても、「変わらない」という強さがある。少しでも速くなるために、大きな目標のために、目の前のやるべきことに全力を尽くす。その道が世界の頂点につながっていると信じて。 文/向永拓史

無敵の中学時代、苦難だった高校時代

先輩たちと話すあどけない表情。スタートラインに立つとひときわ小さな身体。走り出すと想像もつかない大きな走りで人々を虜にする。18歳の不破聖衣来(拓大)には不思議な魅力がある。 その名は、この半年で陸上の枠を超えて日本中に知れ渡った。インカレ不敗。駅伝を走れば区間記録を塗り替えてごぼう抜き。極めつきが12月11日の記録会。10000mに出場した不破は、日本歴代2位となる30分45秒21をマークして、オレゴン世界選手権の参加標準記録(31分25秒00)を軽々と突破した。自身初の10000m、しかもペースメーカー不在の独走。衝撃だった。 本人はそんな喧噪はどこ吹く風。「ちょっとプレッシャーを感じますが、どうしてこんなに注目されているのか違和感があるというのが本音です」。自分が秘める可能性も、その魅力も、まだまだ測りかねているようだ。 一般的に言われているような“新星”ではない。むしろ中学時代から特別な存在だった。不破が走り出したのは小学校2年生の時。「小学校で持久走があるので、その練習です」。3つ上の姉・亜莉珠(現・センコー)が、クロスカントリースキーの国体選手だった祖父と走っていたのにくっついて、毎朝走るようになった。今でも姉が「あこがれで、一番尊敬する選手」だという。 小3で大会に出たことはあるが、小学生の間は5年生で始めたミニバスケットボールに夢中。「クラブチーム(アラマキッズ)に登録して駅伝だけ参加するような感じでした」。 本格的に陸上を始めたのは地元・群馬県高崎市の大類中に進んでから。当時、群馬の中学・高校には全国トップクラスのランナーがそろっていた。15年の全国高校駅伝では常磐高が岡本春美(現・ヤマダホールディングス)や樺沢和佳奈(現・資生堂)らを擁して2位。健大高崎高に進んだ姉の亜莉珠も1年生で3000m9分15秒60をマークし、同期には林英麻もいた。全国中学校駅伝では伊井笑歩(現・武蔵野大)がいた富士見中が女子3位、男子優勝を飾っている。 そんな“長距離どころ”の中で、不破もまた大きく成長していく。中2で全中1500mに出場すると、10月のジュニア五輪B1500mでは4分27秒81をマークして全国初タイトル。ここから無類の強さを見せる。翌年1月の全国都道府県対抗女子駅伝では3区区間賞を獲得。3年時は全中1500m優勝、ジュニア五輪A3000mも制して2冠を果たした。都道府県対抗女子駅伝でも3区で連続区間賞。ほぼ敵なしだった。 中3の全中1500mは終始トップを譲らない圧巻の優勝を飾った 姉の背中を追って健大高崎高に進学すると、「1年目は思ったより記録を出せました」と振り返るように、1500mと3000mでインターハイに出場(予選落ち)すると、1500m4分24秒50、3000m9分13秒45をマーク。だが、春先に左シンスプリントを発症し、「8月くらいまで痛みがありました」。痛みを押して出場したインターハイ路線は北関東大会の3000mで敗退。その後は秋の県駅伝まで1本しかレースを走れなかった。奮起を誓った最終学年はコロナ禍に見舞われて、その足音を響かせる機会は失われている。 「2年目はほぼ1年間、走れない状態でした。3年目も試合がほとんどなくて、活躍できる場面がなくて、状態もなかなか上がりませんでした。このまま高校生活が終わっちゃうのかなって」 だが、苦しい時期も「絶対に復活して、家族や支えてくれた人たちに恩返しがしたい」と強い気持ちを持ち続けた。試合がなかった3年目は「体重も筋力も落ちていたので、イチから身体を作り直せる期間」と捉えた。少しずつ感覚を取り戻すと、全国高校大会3000mで6位、そして5000mでは15分37秒44をマーク。高校最後の大舞台となった昨年2月のU20日本選手権クロスカントリー(6㎞)で、19分49秒で中3以来の日本一となった。「そこで優勝できたことが大きかったです」。自信を得た不破は、不死鳥のごとく蘇った。 この続きは2022年2月14日発売の『月刊陸上競技3月号』をご覧ください。  
※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する 定期購読はこちらから

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

         

Latest articles 最新の記事

2026.02.19

田中希実 豪州の競技会で5000m2位 3月には名古屋ウィメンズマラソンでペースメーカーを担当

豪州メルボルンで2月19日、地元クラブ主催のボックス・ヒル・バーンが行われ、女子5000mに田中希実(New Balance)が出場した。 田中は、東京五輪1500m6位のL.ホール(豪州)とともに、練習の一環としてレー […]

NEWS アジアクロカンと同時レースで激突 三浦龍司ら日本代表や井川龍人、齋藤みうが参戦 U20勢の争いも注目/日本選手権クロカン

2026.02.19

アジアクロカンと同時レースで激突 三浦龍司ら日本代表や井川龍人、齋藤みうが参戦 U20勢の争いも注目/日本選手権クロカン

第109回日本選手権クロスカントリー、第41回U20日本選手権クロスカントリーが2月21日に福岡・海の中道海浜公園で開催される。今回は第18回アジアクロスカントリー選手権大会との併催で、アジアの選手たちも出場する。 レー […]

NEWS 新装されたパロマ瑞穂スタジアム初公開!飯塚翔太、ディーン元気、佐藤風雅が試走「ワクワクする」

2026.02.19

新装されたパロマ瑞穂スタジアム初公開!飯塚翔太、ディーン元気、佐藤風雅が試走「ワクワクする」

瑞穂公園の指定管理者の株式会社瑞穂LOOP-PFIが2月19日、新装開業となるパロマ瑞穂スタジアム(瑞穂陸上競技場)を公開した。ゲストとして、男子短距離の飯塚翔太、佐藤風雅、男子やり投のディーン元気のミズノトラッククラブ […]

NEWS サニブラウンが26年に新たな「チャレンジ」コーチ変更など「世界最速」への思い再確認

2026.02.19

サニブラウンが26年に新たな「チャレンジ」コーチ変更など「世界最速」への思い再確認

男子短距離のサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)がゴールドウインと契約を締結したことを2月19日発表し、同日に記者会見を行った。 サニブラウンはその中で、「チャレンジ」について口にした。 広告の下にコンテンツが続きま […]

NEWS 男子短距離サニブラウンがゴールドウインと契約!「ともに最速を作り上げていく」

2026.02.19

男子短距離サニブラウンがゴールドウインと契約!「ともに最速を作り上げていく」

男子短距離のサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)がゴールドウインと契約を締結したことを2月19日発表した。同日に行われた記者会見で、「新しい挑戦。数々いろいろなことに挑戦してきたが、さらなるパフォーマンス向上、自分を […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2026年3月号 (2月14日発売)

2026年3月号 (2月14日発売)

別府大分毎日マラソン
大阪国際女子マラソン
矢田みくにインタビュー
追跡箱根駅伝

page top