HOME 特集

2021.12.28

Playback2021日本記録/山縣亮太、病気とケガを乗り越えて9秒95!見事な復活遂げる
Playback2021日本記録/山縣亮太、病気とケガを乗り越えて9秒95!見事な復活遂げる


2021年は21個もの日本記録(タイ記録含む)が誕生した。東京五輪イヤーという特別な1年に樹立された日本記録を振り返っていく。

100mで山縣が9秒95

ここ10年ほど、男子短距離を牽引してきた山縣亮太(セイコー)が、ついに復活を遂げた。

2019年以降は腰や背中のケガ、肺気胸、足首の靭帯断裂など、アクシデントが幾度となく山縣を襲った。それでもエースは屈しなかった。

伏線はあった。

4月の織田記念で10秒15をマークして優勝。5月5日の水戸国際では大雨と猛烈な向かい風の中で走り、10秒95(-8.3)、10秒71(-4.7)だった。そのレース後、こう語っている。

「(風に恵まれないのは)よくあること。練習を頑張っていれば運(風)が味方してくれると思う」

広告の下にコンテンツが続きます

そして迎えた6月6日の布勢スプリント。予選で10秒01(+1.7)をマークして、東京五輪の参加標準記録を突破した。そして2本目の決勝。その時がやってくる。

スタートは多田修平(住友電工)がリード。それを山縣がしっかりと追い、80m付近で山縣がややリードを奪うと、そのままフィニッシュした。フィニッシュタイマーに刻まれたタイムは「9.97」。サニブラウン・アブデル・ハキームの日本記録と同タイムか――。

正式結果が出る。9秒95。風は……公認ギリギリの2.0m。ついに9秒台、そして日本記録保持者になった瞬間だった。

2011年に台頭して以降、「9秒台に最も近い男」だった山縣。桐生祥秀が初めて9秒台に突入し、サニブラウンが続き、大学の後輩でもある小池祐貴も9秒台選手になった。それでも、山縣は一歩ずつ、自分の走りを追求し、積み上げてきた。

「9秒台をずっと出したいと思ってやってきた」

今夏の東京五輪では12年ロンドン、16年リオに続いて3大会連続のオリンピック出場。100mでは予選落ち、前回銀メダルを取った4×100mリレーでは2走を務めたものの多田とのバトンがつながらないと、悔しい結果に終わった。

それでも、オリンピックイヤーに不死鳥のごとく舞い戻った日本短距離のエースは、再び世界で戦うために走り続ける。

■男子100m日本歴代10傑
9.95 2.0 山縣 亮太(セイコー)2021. 6. 6
9.97 0.8 サニブラウン・A・ハキーム(フロリダ大) 2019. 6. 7
9.98 1.8 桐生 祥秀(東洋大4)2017. 9. 9
9.98 0.5 小池 祐貴(住友電工)2019. 7.20
10.00 1.9 伊東 浩司(富士通)1998.12.13
10.01 2.0 多田 修平(住友電工)2021. 6. 6
10.02 2.0 朝原 宣治(大阪ガス)2001. 7.13
10.03 1.8 末續 慎吾(ミズノ)2003. 5. 5
10.03 1.0 ケンブリッジ飛鳥(Nike)2020. 8.29
10.07 1.9 江里口匡史(早大3)2009. 6.28

2021年は21個もの日本記録(タイ記録含む)が誕生した。東京五輪イヤーという特別な1年に樹立された日本記録を振り返っていく。

100mで山縣が9秒95

ここ10年ほど、男子短距離を牽引してきた山縣亮太(セイコー)が、ついに復活を遂げた。 2019年以降は腰や背中のケガ、肺気胸、足首の靭帯断裂など、アクシデントが幾度となく山縣を襲った。それでもエースは屈しなかった。 伏線はあった。 4月の織田記念で10秒15をマークして優勝。5月5日の水戸国際では大雨と猛烈な向かい風の中で走り、10秒95(-8.3)、10秒71(-4.7)だった。そのレース後、こう語っている。 「(風に恵まれないのは)よくあること。練習を頑張っていれば運(風)が味方してくれると思う」 そして迎えた6月6日の布勢スプリント。予選で10秒01(+1.7)をマークして、東京五輪の参加標準記録を突破した。そして2本目の決勝。その時がやってくる。 スタートは多田修平(住友電工)がリード。それを山縣がしっかりと追い、80m付近で山縣がややリードを奪うと、そのままフィニッシュした。フィニッシュタイマーに刻まれたタイムは「9.97」。サニブラウン・アブデル・ハキームの日本記録と同タイムか――。 正式結果が出る。9秒95。風は……公認ギリギリの2.0m。ついに9秒台、そして日本記録保持者になった瞬間だった。 2011年に台頭して以降、「9秒台に最も近い男」だった山縣。桐生祥秀が初めて9秒台に突入し、サニブラウンが続き、大学の後輩でもある小池祐貴も9秒台選手になった。それでも、山縣は一歩ずつ、自分の走りを追求し、積み上げてきた。 「9秒台をずっと出したいと思ってやってきた」 今夏の東京五輪では12年ロンドン、16年リオに続いて3大会連続のオリンピック出場。100mでは予選落ち、前回銀メダルを取った4×100mリレーでは2走を務めたものの多田とのバトンがつながらないと、悔しい結果に終わった。 それでも、オリンピックイヤーに不死鳥のごとく舞い戻った日本短距離のエースは、再び世界で戦うために走り続ける。 ■男子100m日本歴代10傑 9.95 2.0 山縣 亮太(セイコー)2021. 6. 6 9.97 0.8 サニブラウン・A・ハキーム(フロリダ大) 2019. 6. 7 9.98 1.8 桐生 祥秀(東洋大4)2017. 9. 9 9.98 0.5 小池 祐貴(住友電工)2019. 7.20 10.00 1.9 伊東 浩司(富士通)1998.12.13 10.01 2.0 多田 修平(住友電工)2021. 6. 6 10.02 2.0 朝原 宣治(大阪ガス)2001. 7.13 10.03 1.8 末續 慎吾(ミズノ)2003. 5. 5 10.03 1.0 ケンブリッジ飛鳥(Nike)2020. 8.29 10.07 1.9 江里口匡史(早大3)2009. 6.28

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.04.30

【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦

FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]

NEWS 5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場

2025.04.30

5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場

5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]

NEWS 26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得

2025.04.30

26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得

世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]

NEWS 100mH寺田明日香 恩師の訃報に「熱意と愛情を少しでも次の世代へ引き継げるように」

2025.04.30

100mH寺田明日香 恩師の訃報に「熱意と愛情を少しでも次の世代へ引き継げるように」

福島千里や寺田明日香ら女子短距離を中心に数々の名選手を育成した中村宏之氏が4月29日に79歳で他界したことを受け、寺田が自身のSNSを更新して思いを綴った。 寺田は北海道・恵庭北高時代に中村氏の指導を受け、100mハード […]

NEWS 9月の東京世界陸上に都内の子どもを無料招待 引率含め40,000人 6月から応募スタート

2025.04.30

9月の東京世界陸上に都内の子どもを無料招待 引率含め40,000人 6月から応募スタート

東京都は今年9月に国立競技場をメイン会場として開かれる世界選手権に都内の子どもたちを無料招待すると発表した。 「臨場感あふれる会場での観戦を通じて、都内の子供たちにスポーツの素晴らしさや夢と希望を届ける」というのが目的。 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL) 
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)

page top