◇ミドルディスタンスサーキット東京大会(10月30日/東京・駒沢)
つめかけた1000人ほどの観客が息をのんで東京五輪代表の田中希実(豊田自動織機TC)と卜部蘭(積水化学)のデッドヒートを見届ける。フィニッシュラインを超えると爆発音とともに煙が吹き出す。スタンドや特別シートとしてトラック脇にいた観客は笑顔で大きな拍手を送る。
男子800m元日本記録保持者でロンドン五輪代表の横田真人氏がコーチを務める中長距離専門のクラブ「TWOLAPS」が企画・運営を手がけた中距離特化のサーキット「TWOLAPS MIDDLE DISTANCE CIRCUIT」。8月20日の大阪、9月23日の福島と続いてきた大会も、この日の東京がファイナルステージとなった。各大会の予選を勝ち抜いた選手たちとバーチャルレースによって決定した「ファイナリスト」によって、男女1000mの“決勝戦”が行われた。優勝賞金は100万円。ロードレースを除く国内最高額だ。
「なんでこれまで賞金レースがなかったのか」。横田氏はこう続ける。「僕らが思い描いている陸上を、壊していかないといけない。大会はこうでないといけない。賞金は見せてはいけないもの。そうではなく、変わらないと」。陸上界を変えたい、変えなければ。これまで次々と新しい挑戦を続けてきた横田氏が仕掛けたのが、中距離サーキットだった。『賞金100万円』のインパクトは大きく、トップランナーが出場。SNSを活用して注目度を高め、大阪大会から発煙の演出など、これまで海外でしか見られなかったかたちのレースができあがった。

「誰に向けて競技をするのかが大事で、僕も含めてその考えがあったのか」。観客と一体になって、楽しんでもらうためにどうするべきか。レース後、スタンドにサイン入りタオルを『バズーカ砲』を使って投げ込む演出もあった。表彰式では金色のテープが空に向かって放たれる。いずれもアイドルのライブで見かけるもの。『魅せる』という意識でどれだけの競技会が行われているか。日本選手権でさえ空席が目立つ陸上界に、一石を投じる思いもあった。

それでも、東京五輪イヤーに、MVP級の活躍を見せた田中が参戦する大会でも、1000人を集めるのがやっとという現状もある。「SNSのような“空中戦”だけではダメで、選手がファンとコミュニケーションを取らないといけない。選手一人ひとりが、競技場に足を運んでもらえるような魅せ方ができているか、走りができているのか。僕らもそうで、(練習拠点としている)世田谷のみなさんに『来てもらう』だけじゃなく、自分から行かないと。Jリーグは商店街に行って活動していますよね。どれだけ地味にやっていけるか。そのためには『競技力』『競技結果』だけではダメなんです」と、自戒を含めて横田氏は語る。
この日集まった観客、ボランティアを含めた運営スタッフ、そして選手たちはみな、笑顔だった。最後はリレーをイベントとして実施。市民ランナーも、選手も、スタッフも、東京陸協の競技役員・審判も走った。東京陸協の増田明美会長からバトンを受けたのは横田氏。田中も、卜部もみんなが笑顔でバトンを持って駒沢を走った。走ることの楽しさ、みんなで“つなぐ”ことの達成感――。陸上競技、スポーツの原点があった。

「今回のサーキットで、大会のたびに僕ら運営のコアメンバーも少しずつ成長できました。やり続けていきたいし、チャレンジを続けていきたい」
参加した田中はこう言う。「みんなが走ることを楽しんでいるのが伝わってきました。こういう大会がいろんな選手を育てていくんだろうなって感じました」。将来、各地で、さまざまな種目に特化した『魅せる』競技会が増えたとき、この小さな火種が「はじまりだった」と言われる。そんな時代が来れば、陸上界の景色は大きく違ったものになっているはずだ。
◇ミドルディスタンスサーキット東京大会(10月30日/東京・駒沢)つめかけた1000人ほどの観客が息をのんで東京五輪代表の田中希実(豊田自動織機TC)と卜部蘭(積水化学)のデッドヒートを見届ける。フィニッシュラインを超えると爆発音とともに煙が吹き出す。スタンドや特別シートとしてトラック脇にいた観客は笑顔で大きな拍手を送る。男子800m元日本記録保持者でロンドン五輪代表の横田真人氏がコーチを務める中長距離専門のクラブ「TWOLAPS」が企画・運営を手がけた中距離特化のサーキット「TWOLAPS MIDDLE DISTANCE CIRCUIT」。8月20日の大阪、9月23日の福島と続いてきた大会も、この日の東京がファイナルステージとなった。各大会の予選を勝ち抜いた選手たちとバーチャルレースによって決定した「ファイナリスト」によって、男女1000mの“決勝戦”が行われた。優勝賞金は100万円。ロードレースを除く国内最高額だ。「なんでこれまで賞金レースがなかったのか」。横田氏はこう続ける。「僕らが思い描いている陸上を、壊していかないといけない。大会はこうでないといけない。賞金は見せてはいけないもの。そうではなく、変わらないと」。陸上界を変えたい、変えなければ。これまで次々と新しい挑戦を続けてきた横田氏が仕掛けたのが、中距離サーキットだった。『賞金100万円』のインパクトは大きく、トップランナーが出場。SNSを活用して注目度を高め、大阪大会から発煙の演出など、これまで海外でしか見られなかったかたちのレースができあがった。
「誰に向けて競技をするのかが大事で、僕も含めてその考えがあったのか」。観客と一体になって、楽しんでもらうためにどうするべきか。レース後、スタンドにサイン入りタオルを『バズーカ砲』を使って投げ込む演出もあった。表彰式では金色のテープが空に向かって放たれる。いずれもアイドルのライブで見かけるもの。『魅せる』という意識でどれだけの競技会が行われているか。日本選手権でさえ空席が目立つ陸上界に、一石を投じる思いもあった。
それでも、東京五輪イヤーに、MVP級の活躍を見せた田中が参戦する大会でも、1000人を集めるのがやっとという現状もある。「SNSのような“空中戦”だけではダメで、選手がファンとコミュニケーションを取らないといけない。選手一人ひとりが、競技場に足を運んでもらえるような魅せ方ができているか、走りができているのか。僕らもそうで、(練習拠点としている)世田谷のみなさんに『来てもらう』だけじゃなく、自分から行かないと。Jリーグは商店街に行って活動していますよね。どれだけ地味にやっていけるか。そのためには『競技力』『競技結果』だけではダメなんです」と、自戒を含めて横田氏は語る。この日集まった観客、ボランティアを含めた運営スタッフ、そして選手たちはみな、笑顔だった。最後はリレーをイベントとして実施。市民ランナーも、選手も、スタッフも、東京陸協の競技役員・審判も走った。東京陸協の増田明美会長からバトンを受けたのは横田氏。田中も、卜部もみんなが笑顔でバトンを持って駒沢を走った。走ることの楽しさ、みんなで“つなぐ”ことの達成感――。陸上競技、スポーツの原点があった。
「今回のサーキットで、大会のたびに僕ら運営のコアメンバーも少しずつ成長できました。やり続けていきたいし、チャレンジを続けていきたい」参加した田中はこう言う。「みんなが走ることを楽しんでいるのが伝わってきました。こういう大会がいろんな選手を育てていくんだろうなって感じました」。将来、各地で、さまざまな種目に特化した『魅せる』競技会が増えたとき、この小さな火種が「はじまりだった」と言われる。そんな時代が来れば、陸上界の景色は大きく違ったものになっているはずだ。RECOMMENDED おすすめの記事
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