2021.07.16

前回は筋力トレーニングに「筋トレロス(注)」と呼ばれる問題点があることを紹介した。それを改善する方法の1つが、トレーニング後にポリフェノールなどの抗酸化物質を摂取することだ。今回は抗酸化物質の中でも“スーパーポリフェノール”として注目される「Eルチン*」について解説しよう。
<前編はこちら>
*酵素処理ルチン(Enzymatically modified Rutin)の略
酸化ストレスには抗酸化物質が有効
筋肉量を効率よく増加させるためには、トレーニングで筋肉細胞を破壊してから、その筋肉をタンパク質合成によって修復させる必要がある。だが、筋肉に強い負荷をかけると活性酸素が発生してアミノ酸のタンパク質合成が妨げられ、思うようなトレーニング効果が得られない場合がある。この現象を「筋トレロス」と言う。
筋トレロスを防ぐためには、トレーニング後はタンパク質に加えてポリフェノールなどの抗酸化物質を摂取し、酸化ストレスを改善するのが効果的だ。なかでもポリフェノールの一種であるルチンを酵素処理して水溶性を高めた「Eルチン」は、一般的なルチンに比べて体内への吸収率が23倍にもなるという(※1)。
ルチンはそばやアスパラガス、たまねぎの皮などに多く含まれるポリフェノールの一種だが、体内への吸収率が悪く、ほとんど吸収されないというデメリットがあった。この問題を改善したEルチンは〝スーパーポリフェノール〟として注目されている。
高強度トレーニングをせずともEルチンが筋合成を後押し
Eルチン摂取の影響を調べた実験をいくつか紹介しよう。アメリカンフットボール部に所属する男子大学生39名を対象に、プロテイン20gを摂取する群とプロテイン20g+Eルチン42mgを摂取する群に分け、それぞれ週6回、4ヵ月摂取させたところ、プロテインのみの群では下肢筋肉量の増加が平均255gだったのに対し、プロテインとEルチンを摂取した群では平均930gも増加した(※2)。
別の実験(※3)では成人男性10名を対象に、ホエイプロテイン20gのみを摂取する場合と、ホエイプロテイン20gとEルチン42mgを摂取する場合に分けてたんぱく質(アミノ酸)の消化・吸収に及ぼす影響を検証したところ、Eルチンを摂取した群は摂取後60分後における血中総アミノ酸量(TAA)は統計的有意を示して上昇。必須アミノ酸(EAA)と分岐鎖アミノ酸(BCAA)の濃度も高値を示す傾向が見られた(グラフ参照)。
また、マウスを使った動物実験(※4)でも、筋肉に負荷を与えなくてもEルチンを摂取することで筋肥大が見られるという結果が出ている。これはつまり、日常生活レベルの運動刺激があれば、Eルチンの摂取によって筋肥大につながる可能性があることを示している。
Eルチン摂取に伴う血中総アミノ酸量(TAA)と血中分岐鎖アミノ酸(BCAA)の変化

筋トレを効果的に行うには、毎日ひたすら同じ種目を実施するよりも、定期的に休養を取ることが必要とされる。Eルチンの研究成果からは、Eルチンを摂取することで筋肉が炎症から回復するサイクルの短縮が期待できるため、プロテインとEルチンを同時摂取することでトレーニングの効果がさらに高められると考えられる。
Eルチンを活用する際の注意点としては、Eルチンを筋トレ前に摂取すると活性酸素による炎症が抑えられ、筋肥大が起こりにくくなる可能性があることだ(図参照)。筋肉に炎症を起こさせることがトレーニングでは重要となるため、Eルチンを摂取するタイミングはトレーニングの後が良いだろう。
活性酸素と抗酸化力の関係

陸上界でもEルチン配合のプロテインを東海大駅伝チームなどが積極的に活用している。より高いトレーニング効果を求めるアスリートにとって、Eルチンの摂取は選択肢に1つとなりそうだ。
【出典】
※1 K.Murota et al.:Arch.Biochem.Biop hys.,501:91(2010)
※2 N.Omi et al.:J.Int.Soc.of Sports Nutr.45,16(2019)
※3 麻美直美ら,薬理と治療,48(1),51(2020)
※4 A.Kohara et al.:J.Int.Soc.Sports Nutr.32,14(2017)
注:「筋トレロス」とは……筋トレで発生する酸化ストレスによって筋肉がサビてしまい、筋肉がつきにくい状態になったもの。本来得られるはずのトレーニング効果を無駄にする。立命館大学・後藤一成教授監修のもと森永製菓が命名
※この記事は『月刊陸上競技』2021年8月号に掲載しています
前回は筋力トレーニングに「筋トレロス(注)」と呼ばれる問題点があることを紹介した。それを改善する方法の1つが、トレーニング後にポリフェノールなどの抗酸化物質を摂取することだ。今回は抗酸化物質の中でも“スーパーポリフェノール”として注目される「Eルチン*」について解説しよう。
<前編はこちら>
*酵素処理ルチン(Enzymatically modified Rutin)の略
酸化ストレスには抗酸化物質が有効
筋肉量を効率よく増加させるためには、トレーニングで筋肉細胞を破壊してから、その筋肉をタンパク質合成によって修復させる必要がある。だが、筋肉に強い負荷をかけると活性酸素が発生してアミノ酸のタンパク質合成が妨げられ、思うようなトレーニング効果が得られない場合がある。この現象を「筋トレロス」と言う。 筋トレロスを防ぐためには、トレーニング後はタンパク質に加えてポリフェノールなどの抗酸化物質を摂取し、酸化ストレスを改善するのが効果的だ。なかでもポリフェノールの一種であるルチンを酵素処理して水溶性を高めた「Eルチン」は、一般的なルチンに比べて体内への吸収率が23倍にもなるという(※1)。 ルチンはそばやアスパラガス、たまねぎの皮などに多く含まれるポリフェノールの一種だが、体内への吸収率が悪く、ほとんど吸収されないというデメリットがあった。この問題を改善したEルチンは〝スーパーポリフェノール〟として注目されている。高強度トレーニングをせずともEルチンが筋合成を後押し
Eルチン摂取の影響を調べた実験をいくつか紹介しよう。アメリカンフットボール部に所属する男子大学生39名を対象に、プロテイン20gを摂取する群とプロテイン20g+Eルチン42mgを摂取する群に分け、それぞれ週6回、4ヵ月摂取させたところ、プロテインのみの群では下肢筋肉量の増加が平均255gだったのに対し、プロテインとEルチンを摂取した群では平均930gも増加した(※2)。 別の実験(※3)では成人男性10名を対象に、ホエイプロテイン20gのみを摂取する場合と、ホエイプロテイン20gとEルチン42mgを摂取する場合に分けてたんぱく質(アミノ酸)の消化・吸収に及ぼす影響を検証したところ、Eルチンを摂取した群は摂取後60分後における血中総アミノ酸量(TAA)は統計的有意を示して上昇。必須アミノ酸(EAA)と分岐鎖アミノ酸(BCAA)の濃度も高値を示す傾向が見られた(グラフ参照)。 また、マウスを使った動物実験(※4)でも、筋肉に負荷を与えなくてもEルチンを摂取することで筋肥大が見られるという結果が出ている。これはつまり、日常生活レベルの運動刺激があれば、Eルチンの摂取によって筋肥大につながる可能性があることを示している。Eルチン摂取に伴う血中総アミノ酸量(TAA)と血中分岐鎖アミノ酸(BCAA)の変化
筋トレを効果的に行うには、毎日ひたすら同じ種目を実施するよりも、定期的に休養を取ることが必要とされる。Eルチンの研究成果からは、Eルチンを摂取することで筋肉が炎症から回復するサイクルの短縮が期待できるため、プロテインとEルチンを同時摂取することでトレーニングの効果がさらに高められると考えられる。
Eルチンを活用する際の注意点としては、Eルチンを筋トレ前に摂取すると活性酸素による炎症が抑えられ、筋肥大が起こりにくくなる可能性があることだ(図参照)。筋肉に炎症を起こさせることがトレーニングでは重要となるため、Eルチンを摂取するタイミングはトレーニングの後が良いだろう。
活性酸素と抗酸化力の関係
陸上界でもEルチン配合のプロテインを東海大駅伝チームなどが積極的に活用している。より高いトレーニング効果を求めるアスリートにとって、Eルチンの摂取は選択肢に1つとなりそうだ。
【出典】
※1 K.Murota et al.:Arch.Biochem.Biop hys.,501:91(2010)
※2 N.Omi et al.:J.Int.Soc.of Sports Nutr.45,16(2019)
※3 麻美直美ら,薬理と治療,48(1),51(2020)
※4 A.Kohara et al.:J.Int.Soc.Sports Nutr.32,14(2017)
注:「筋トレロス」とは……筋トレで発生する酸化ストレスによって筋肉がサビてしまい、筋肉がつきにくい状態になったもの。本来得られるはずのトレーニング効果を無駄にする。立命館大学・後藤一成教授監修のもと森永製菓が命名
※この記事は『月刊陸上競技』2021年8月号に掲載しています
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