◇布勢スプリント(6月6日/鳥取・布勢総合運動公園陸上競技場)
日本男子スプリントのエースが、完全復活を果たした瞬間だった。男子100m決勝で山縣亮太(セイコー)が刻んだタイムは、「9秒95」――。追い風2.0mの絶好の条件も後押しし、2019年にサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)が作った日本記録(9秒97)を0.02秒塗り替える日本新記録を打ち立てた。
予選で自己3番目タイの10秒01(+1.7)をマークし、東京五輪参加標準記録(10秒05)をついに突破。3大会連続の五輪代表入りのために、必須だったハードルをクリアした。
これで「肩の荷が下りた」という山縣の集中力が、決勝でさらに高まった。これまで届きそうで届かなった「9秒台」。その悲願をついに成し遂げ、「9秒台をずっと出したいと思ってやってきた。今日出せて良かった。いつも近くで支えてくれるチームメイトがすごく力になった」と喜びを語った。
そして、初めての「日本記録」も手にした山縣が目指すのは、東京五輪のファイナル。「勝負は五輪だと思っているので、そこに向けてがんばりたい」。過去2大会はいずれもセミファイナルに進出し、ロンドン五輪は予選で、リオ五輪は準決勝で自己新をマークした。五輪で見せてきたこのパフォーマンスこそが、山縣の真骨頂である。
6月下旬の日本選手権で3年ぶりの王座奪還を果たせば、名実ともに「日本最速」の称号を持って世界に挑むことになる。
山縣を中盤までリードし、2位に入った多田修平(住友電工)も10秒01と力走を見せた。「山縣さんの速報を見て、僕も9秒99ぐらいいったかなと思いましたが……。後半の弱さが出てしまったけど、レースを重ねるたびに良くなっている」。4年ぶり自己新で日本歴代6位、さらに五輪参加標準も突破した。世界ランキングでも日本勢3番手につけていたが、これで日本選手権で3位以内に入れば即内定になる。
五輪標準突破者では小池祐貴(住友電工)が10秒13で3位。桐生は予選で追い風参考ながら10秒01(+2.6)をマークしたが、決勝は棄権した。2週間前に右足アキレス腱を痛めた影響で、この日は1本の予定だったそうで、「スタートから5mはもたついたけど、中盤から後半はイメージ通り」。5月9日のREADY STEADY TOKYOの予選でフライングをした影響を払拭する走りになったようだ。
女子100mハードルでも日本記録が誕生。青木益未(七十七銀行)が12秒87(+1.8)をマークし、5日前の木南記念で寺田明日香(ジャパンクリエイト)が作ったばかりの日本記録にピタリ並んだ。寺田も0.02秒差で2位に続き、同種目で初めて複数の日本人選手が13秒を切るレースとなった。
男子110mハードルは日本記録保持者の金井大旺(ミズノ)が13秒40(+1.8)で快勝。石川周平(富士通)が前日本記録保持者・高山峻野(ゼンリン)を13秒48の同タイムながら抑えて2位に食い込んだ。女子100mは御家瀬緑(住友電工)が社会人ベストの11秒57(+1.6)で制覇。北海道・恵庭北高3年だった2019年に日本選手権を制した逸材が、復調を見せた。

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
2025.04.29
100mH田中佑美が予選トップ通過も決勝棄権「故障ではない」昨年の結婚も明かす/織田記念
-
2025.04.28
-
2025.04.26
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.04.01
-
2025.04.12
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]
2025.04.30
【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦
FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]
2025.04.30
5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場
5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]
2025.04.30
26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得
世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)