HOME バックナンバー
【誌面転載】桂中が前人未到のアベックV&5連覇
【誌面転載】桂中が前人未到のアベックV&5連覇

桂中が前人未到のアベックV&5連覇

全国中学校駅伝 優勝 桂(京都)

〝伝統の力〟で王者の強さを証明

これまでに数々の学校が挑みながら跳ね返されてきた〝高い壁〟だった。そんな前人未到の金字塔を打ち立てたのが、開催地の滋賀県からほど近い京都市立桂中。女子は前回大会まで4連覇中、男子も前回5位のメンバーが4人残っており、史上初のアベック優勝なるかに注目が集まっていた。
しかし、ここまでの道のりは順調ではなかった。特に女子は秋までチームがまとまらず、片山典子監督によると「まずは全中駅伝に出よう」という状態。実際に11月11日の京都府大会では最終区までもつれる接戦となり、わずか4秒差で何とか5年連続5回目の出場権を獲得している。それでも11月25日の京都陸協記録会でメンバーの多くが3000mの自己ベストを出したことで、片山監督は「もしかしたらもしかするかも」と、ようやく優勝を意識したという。

1、2区の連続区間賞で主導権握る

1区は前回大会で優勝のゴールテープを切った鎌田幸来。3000mで9分35秒73の力を持つ3年生は集団の中で冷静にレースを進め、「トラックに入ってからが勝負だと思っていました」(鎌田)と予定通りに残り300mを切ったところでスパートをかける。そのまま後続を引き離し、10分09秒で区間賞を獲得。5回目の出場にして、初めて第1中継所を先頭で通過した。
こうなれば選手層で分のある桂が、ますます有利となる。2区の松井あれさ(3年)は悠々とトップを快走。区間1位タイで2位との差を3秒から13秒に広げて早くも独走態勢を築いた。3区の上村琴も1年生ながら〝先頭効果〟もあり、落ち着いた走りを見せる。2位の七尾(石川)に追い上げられる場面もあったが、ラストで踏ん張り、2秒詰められただけにとどめた。4区の山本菜々香(2年)は区間10位に留まり、「走りはあんまり……」という出来だったが、安定した走りで先頭をキープ。2位の七尾に6秒差をつけてアンカーへとタスキを渡した。

広告の下にコンテンツが続きます

「誰かのために走る」

最終区に入るにあたって、片山監督が警戒していたチームがある。前回5区で区間賞を獲得し、大会MVPに選ばれた細谷愛子(2年)を擁する静岡東(静岡)だ。片山監督は「細谷さんまでに40秒は欲しい」と考えていたが、その差は47秒。想定通りとはいえ、追いかけられる選手のプレッシャーは計り知れない。5区を任されたのは「冷静な選手」と片山監督が信頼を置く1年生の佐野桃香。「後ろが来ているのがわかっていたけど、落ち着いて走ることができました」と冷静に歩を進める。最後は細谷の猛追を受けたが、トラックに入ってもしっかりとした足取りで駆け抜けた佐野。10分35秒の区間9位でカバーし、41分34秒でフィニッシュ。静岡東を3秒差で振り切り、笑顔でゴールテープを切った。
片山監督は女子の勝因を「誰かのために走ることだと思います」と話した。その「誰か」とはメンバーに入れなかった3年生の新谷ひなの主将と塩見海みいな七の2人だ。今年度の3年生部員は4人いるが、当日に走れたのは鎌田と松井の2人のみ。出走メンバーは、「走れなかった3年生のために走った」と声をそろえていた。
この舞台に立てるのは5人。メンバー選考の際に悔しい思い、辛い思いをする選手は当然出てくる。「そういうメンバーが必死でやっているのを知っているからその子のためにというのが生まれてくると思っています」と片山監督。走れなかった選手を含めて「全員駅伝」でつかみ取った5連覇だった。(馬場 遼)

※この続きは2019年1月12日発売の『月刊陸上競技』2月号をご覧ください

桂中が前人未到のアベックV&5連覇

全国中学校駅伝 優勝 桂(京都)

〝伝統の力〟で王者の強さを証明

これまでに数々の学校が挑みながら跳ね返されてきた〝高い壁〟だった。そんな前人未到の金字塔を打ち立てたのが、開催地の滋賀県からほど近い京都市立桂中。女子は前回大会まで4連覇中、男子も前回5位のメンバーが4人残っており、史上初のアベック優勝なるかに注目が集まっていた。 しかし、ここまでの道のりは順調ではなかった。特に女子は秋までチームがまとまらず、片山典子監督によると「まずは全中駅伝に出よう」という状態。実際に11月11日の京都府大会では最終区までもつれる接戦となり、わずか4秒差で何とか5年連続5回目の出場権を獲得している。それでも11月25日の京都陸協記録会でメンバーの多くが3000mの自己ベストを出したことで、片山監督は「もしかしたらもしかするかも」と、ようやく優勝を意識したという。

1、2区の連続区間賞で主導権握る

1区は前回大会で優勝のゴールテープを切った鎌田幸来。3000mで9分35秒73の力を持つ3年生は集団の中で冷静にレースを進め、「トラックに入ってからが勝負だと思っていました」(鎌田)と予定通りに残り300mを切ったところでスパートをかける。そのまま後続を引き離し、10分09秒で区間賞を獲得。5回目の出場にして、初めて第1中継所を先頭で通過した。 こうなれば選手層で分のある桂が、ますます有利となる。2区の松井あれさ(3年)は悠々とトップを快走。区間1位タイで2位との差を3秒から13秒に広げて早くも独走態勢を築いた。3区の上村琴も1年生ながら〝先頭効果〟もあり、落ち着いた走りを見せる。2位の七尾(石川)に追い上げられる場面もあったが、ラストで踏ん張り、2秒詰められただけにとどめた。4区の山本菜々香(2年)は区間10位に留まり、「走りはあんまり……」という出来だったが、安定した走りで先頭をキープ。2位の七尾に6秒差をつけてアンカーへとタスキを渡した。

「誰かのために走る」

最終区に入るにあたって、片山監督が警戒していたチームがある。前回5区で区間賞を獲得し、大会MVPに選ばれた細谷愛子(2年)を擁する静岡東(静岡)だ。片山監督は「細谷さんまでに40秒は欲しい」と考えていたが、その差は47秒。想定通りとはいえ、追いかけられる選手のプレッシャーは計り知れない。5区を任されたのは「冷静な選手」と片山監督が信頼を置く1年生の佐野桃香。「後ろが来ているのがわかっていたけど、落ち着いて走ることができました」と冷静に歩を進める。最後は細谷の猛追を受けたが、トラックに入ってもしっかりとした足取りで駆け抜けた佐野。10分35秒の区間9位でカバーし、41分34秒でフィニッシュ。静岡東を3秒差で振り切り、笑顔でゴールテープを切った。 片山監督は女子の勝因を「誰かのために走ることだと思います」と話した。その「誰か」とはメンバーに入れなかった3年生の新谷ひなの主将と塩見海みいな七の2人だ。今年度の3年生部員は4人いるが、当日に走れたのは鎌田と松井の2人のみ。出走メンバーは、「走れなかった3年生のために走った」と声をそろえていた。 この舞台に立てるのは5人。メンバー選考の際に悔しい思い、辛い思いをする選手は当然出てくる。「そういうメンバーが必死でやっているのを知っているからその子のためにというのが生まれてくると思っています」と片山監督。走れなかった選手を含めて「全員駅伝」でつかみ取った5連覇だった。(馬場 遼) ※この続きは2019年1月12日発売の『月刊陸上競技』2月号をご覧ください

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.11.24

女子はレムンゴルが2連覇達成 男子はサミュエルがV/全米学生クロカン

11月22日、米国ミズーリ州コロンビアで全米学生クロスカントリー選手権が行われ、女子(6km)はD.レムンゴル(アラバマ大/ケニア)が18分25秒4で連覇を飾った。 レムンゴルはケニア出身の23歳。23年秋にアラバマ大に […]

NEWS 七種競技女王・ホール NFLスター選手と婚約発表 マクローリン・レヴロンらも祝福

2025.11.24

七種競技女王・ホール NFLスター選手と婚約発表 マクローリン・レヴロンらも祝福

女子七種競技東京世界選手権金メダリストのA.ホール(米国)が婚約を自身のSNSで発表した。お相手はNFL選手でニューヨーク・ジャイアンツ所属のダリアス・スレイトンさん。「初めて出会った場所で、永遠を誓う」というテキストと […]

NEWS バットクレッティ 今季初V 男子はキプサングがツアー3勝目/WAクロカンツアー

2025.11.24

バットクレッティ 今季初V 男子はキプサングがツアー3勝目/WAクロカンツアー

11月23日、世界陸連(WA)クロスカントリーツアー・ゴールド第6戦のアタプエルカ国際クロスがスペイン・アタプエルカで行われ、女子(6.821km)はパリ五輪・東京世界選手権10000m銀メダリストのN.バットクレッティ […]

NEWS 円盤投・湯上剛輝が2大会ぶり世界一「やっと取れた」デフリンピック新の58m93

2025.11.24

円盤投・湯上剛輝が2大会ぶり世界一「やっと取れた」デフリンピック新の58m93

聴覚障害者のスポーツ国際大会、デフリンピックの陸上競技が行われ、男子円盤投の湯上剛輝(トヨタ自動車)が金メダルを獲得した。 64m48の日本記録を持ち、今年の東京世界選手権にも出場した湯上。「理想の展開としては1回目にし […]

NEWS 3区で五島莉乃と廣中璃梨佳が熱走!東京世界陸上はじめ「日本代表」たちが力走/クイーンズ駅伝

2025.11.24

3区で五島莉乃と廣中璃梨佳が熱走!東京世界陸上はじめ「日本代表」たちが力走/クイーンズ駅伝

◇第45回全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝:11月23日/宮城・松島町文化観光交流館前~弘進ゴムアスリートパーク仙台、6区間42.195km) 女子駅伝日本一を懸けた全日本実業団対抗女子駅伝が行われ、「日本代表」 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年12月号 (11月14日発売)

2025年12月号 (11月14日発売)

EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選

Follow-up Tokyo 2025

page top