HOME バックナンバー
【誌面転載】追跡・福岡国際マラソン 服部勇馬
【誌面転載】追跡・福岡国際マラソン 服部勇馬

追跡・福岡国際マラソン 服部勇馬

日本マラソン界の若き「エース候補」成功へのターニングポイントは「気づき」と「自己変革」

12月2日の福岡国際マラソンで日本人選手として14年ぶりに優勝を飾った服部勇馬(トヨタ自動車)。日本歴代8位に入る2時間7分27秒でMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)への出場権を獲得し、2020年東京五輪の有力候補として、社会人3年目の25歳が注目を集めた。東洋大4年時からマラソンを始めて、これが4レース目。「35km以降に失速する課題を克服できたことがうれしい」とレース後に大喜びした服部は、どのような道のりを経てこの結果につなげたのか。福岡国際マラソンから半月後、服部が入社した年に新築された愛知県田原市の合宿所で、じっくりと話を聞いた。

広告の下にコンテンツが続きます

「27kmあたりからタイムか優勝かすごく悩んで、優勝を選択しました」

――福岡国際マラソンが終わってしばらく経ちますけど、直後の感想と変わってきたところはありますか?

服部 うれしい気持ちと、課題を克服できたというところは変わりないんですけど、走れた根底の部分は何だったのかと振り返った時に、大学でマラソンに挑戦してから約5年間結果が出なかった理由として、自分自身がなぜ走っているのかを理解できてなかったことに気づきました。大学から実業団に入って、僕の気持ちに変化がなかったというか、学生の気分から抜け出せてなかった。トヨタ自動車に入って、トヨタの社員として与えられている自分の役割は何なのか。この1年間でそれがようやくわかってきて、その気づきが競技と結びつき、ようやく結果が出たイメージを僕は持ってます。

――なぜ走れたのかは後からお聞きするとして、福岡のレース内容を振り返った時、反省点はありますか? 例えば、30km手前からペースが落ちた時に自分が前に出れば良かった、とか。

服部 「勇気を持って行っても良かったかな」と思うのは、ペースが落ちた27kmあたりですかね。ペースが落ちてるのはわかったんですけど、まだ怖くて出られなかったんです。実は、27~28kmあたりでタイムを狙うか、優勝を狙うか、ものすごく天秤にかけたんですよ。MGCの権利を得るタイムではなくて、もっと自己ベストを大幅に破るタイムです。それを目指すんだったら、その局面で行く。だけど、優勝を確実に取りたいんだったら、ここでは行かない。そのどっちかで迷ってました。

広告の下にコンテンツが続きます

――二者択一の葛藤をしていたんですね。

服部 かなり迷ってました(笑)。2km以上、そんな感じで走ってましたね。その結果、もう少し先延ばしした方が僕の優勝の確率は高まると思ったので、出ませんでした。それがまだ僕の弱さでもあるんですけど……。実際に僕自身まだ余裕がありましたし、タイムも狙える、優勝も狙える、どっちも狙える状況でしたけど、あの時は「どっちかしか選択できない」と思っちゃったんです。

――「ここはまだ出るべきではない」と判断したのですね。

服部 そう思いました。30kmを過ぎて、もうすぐ折り返しというところで結論を出して、31.6kmの香椎で折り返したら園田さん(隼/黒崎播磨)が前に出てくれたので、「じゃあ、まだいいかな」って(笑)。その後、僕と外国選手2人の3人に絞られた時点で、「じゃあ、行っちゃえ」と思って行ったんです。

――単独で先頭に立つと、35kmから40kmは14分40秒と大幅にペースアップしました。

服部 すごく気持ち良かったです(笑)。
38km過ぎにいったんきつくなったんですけど、沿道の声援がものすごく後押ししてくれて。駅伝でも味わったことない感覚でしたね。応援してくれてる人と一体感がありました。40kmぐらいだったか、「僕は周りの人に支えてもらいながら走らせてもらってるんだなぁ」とすごく感じられて、陸上をやってきて良かったと思いましたし、みなさんに感謝しないといけないって、すごく思いました。

――帽子とサングラスはどこかで取ろうと思ってましたか。

服部 帽子もサングラスも途中で外すと集中力が切れてダメなんですけど、さすがに競技場に入ったらサングラスは外そうと思ってました。ただ、どうやって優勝テープを切るか、そのポーズは考えてなくて、あんな変なのになっちゃいました(笑)。高校1年の時の県駅伝で、1度アンカーをやってるんです。絶対に優勝するだろうなと思ってフィニッシュポーズを考えながら走っていたら、2位だったんですよ。それからは絶対に考えないようにしてます。

※この続きは2019年1月12日発売の『月刊陸上競技』2月号をご覧ください

追跡・福岡国際マラソン 服部勇馬

日本マラソン界の若き「エース候補」成功へのターニングポイントは「気づき」と「自己変革」

12月2日の福岡国際マラソンで日本人選手として14年ぶりに優勝を飾った服部勇馬(トヨタ自動車)。日本歴代8位に入る2時間7分27秒でMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)への出場権を獲得し、2020年東京五輪の有力候補として、社会人3年目の25歳が注目を集めた。東洋大4年時からマラソンを始めて、これが4レース目。「35km以降に失速する課題を克服できたことがうれしい」とレース後に大喜びした服部は、どのような道のりを経てこの結果につなげたのか。福岡国際マラソンから半月後、服部が入社した年に新築された愛知県田原市の合宿所で、じっくりと話を聞いた。

「27kmあたりからタイムか優勝かすごく悩んで、優勝を選択しました」

――福岡国際マラソンが終わってしばらく経ちますけど、直後の感想と変わってきたところはありますか? 服部 うれしい気持ちと、課題を克服できたというところは変わりないんですけど、走れた根底の部分は何だったのかと振り返った時に、大学でマラソンに挑戦してから約5年間結果が出なかった理由として、自分自身がなぜ走っているのかを理解できてなかったことに気づきました。大学から実業団に入って、僕の気持ちに変化がなかったというか、学生の気分から抜け出せてなかった。トヨタ自動車に入って、トヨタの社員として与えられている自分の役割は何なのか。この1年間でそれがようやくわかってきて、その気づきが競技と結びつき、ようやく結果が出たイメージを僕は持ってます。 ――なぜ走れたのかは後からお聞きするとして、福岡のレース内容を振り返った時、反省点はありますか? 例えば、30km手前からペースが落ちた時に自分が前に出れば良かった、とか。 服部 「勇気を持って行っても良かったかな」と思うのは、ペースが落ちた27kmあたりですかね。ペースが落ちてるのはわかったんですけど、まだ怖くて出られなかったんです。実は、27~28kmあたりでタイムを狙うか、優勝を狙うか、ものすごく天秤にかけたんですよ。MGCの権利を得るタイムではなくて、もっと自己ベストを大幅に破るタイムです。それを目指すんだったら、その局面で行く。だけど、優勝を確実に取りたいんだったら、ここでは行かない。そのどっちかで迷ってました。 ――二者択一の葛藤をしていたんですね。 服部 かなり迷ってました(笑)。2km以上、そんな感じで走ってましたね。その結果、もう少し先延ばしした方が僕の優勝の確率は高まると思ったので、出ませんでした。それがまだ僕の弱さでもあるんですけど……。実際に僕自身まだ余裕がありましたし、タイムも狙える、優勝も狙える、どっちも狙える状況でしたけど、あの時は「どっちかしか選択できない」と思っちゃったんです。 ――「ここはまだ出るべきではない」と判断したのですね。 服部 そう思いました。30kmを過ぎて、もうすぐ折り返しというところで結論を出して、31.6kmの香椎で折り返したら園田さん(隼/黒崎播磨)が前に出てくれたので、「じゃあ、まだいいかな」って(笑)。その後、僕と外国選手2人の3人に絞られた時点で、「じゃあ、行っちゃえ」と思って行ったんです。 ――単独で先頭に立つと、35kmから40kmは14分40秒と大幅にペースアップしました。 服部 すごく気持ち良かったです(笑)。 38km過ぎにいったんきつくなったんですけど、沿道の声援がものすごく後押ししてくれて。駅伝でも味わったことない感覚でしたね。応援してくれてる人と一体感がありました。40kmぐらいだったか、「僕は周りの人に支えてもらいながら走らせてもらってるんだなぁ」とすごく感じられて、陸上をやってきて良かったと思いましたし、みなさんに感謝しないといけないって、すごく思いました。 ――帽子とサングラスはどこかで取ろうと思ってましたか。 服部 帽子もサングラスも途中で外すと集中力が切れてダメなんですけど、さすがに競技場に入ったらサングラスは外そうと思ってました。ただ、どうやって優勝テープを切るか、そのポーズは考えてなくて、あんな変なのになっちゃいました(笑)。高校1年の時の県駅伝で、1度アンカーをやってるんです。絶対に優勝するだろうなと思ってフィニッシュポーズを考えながら走っていたら、2位だったんですよ。それからは絶対に考えないようにしてます。 ※この続きは2019年1月12日発売の『月刊陸上競技』2月号をご覧ください

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.06.17

インターハイ地区大会 広島行きを懸けて今日北海道開幕 週末は北信越、東海、中国でも!全国大会出場者が出そろう

広島インターハイ(7月25日~29日)の出場権を懸けた、最終関門となる地区大会は今日6月17日に北海道で開幕し、19日は北信越、20日には東海と中国でもスタートする。 いずれの4大会も22日までにすべて終了。16日までに […]

NEWS 弘前実が地元で男女マイルリレーV!「全国で入賞を」100mH佐藤柚希が13秒70、200m中森が好記録/IH東北

2025.06.17

弘前実が地元で男女マイルリレーV!「全国で入賞を」100mH佐藤柚希が13秒70、200m中森が好記録/IH東北

◇インターハイ東北地区大会(6月13~16日/青森・カクヒログループアスレチックスタジアム)4日目 広島インターハイを懸けた東北地区大会の最終日が行われ、男子4×400mリレーは地元・青森の弘前実が3分11秒84の大会新 […]

NEWS 110mH古賀ジェレミー驚異の高校新13秒45 次は日本選手権!七種・江口美玲5120点、岡田紗和1年初の5000点超え/IH南関東

2025.06.17

110mH古賀ジェレミー驚異の高校新13秒45 次は日本選手権!七種・江口美玲5120点、岡田紗和1年初の5000点超え/IH南関東

◇インターハイ南関東地区大会(6月13日~16日/カンセキスタジアムとちぎ、栃木県総合運動公園多目的広場投てき場) 広島インターハイ出場を懸けた南関東地区大会の4日目が行われ、男子110mハードルの古賀ジェレミー(東京3 […]

NEWS 失格とアクシデント乗り越え本村優太郎200mV 藤原千櫻&岩本咲真4冠 3000m障害の竹信祐太郎が学校初の地区制覇/IH北九州

2025.06.17

失格とアクシデント乗り越え本村優太郎200mV 藤原千櫻&岩本咲真4冠 3000m障害の竹信祐太郎が学校初の地区制覇/IH北九州

◇インターハイ北九州地区大会(6月13日~16日/佐賀・SAGAスタジアム) 広島インターハイをかけた北九州地区大会の最終日は、風が強く吹き荒れる厳しい条件下で、トラック8種目、フィールド4種目の決勝が行われた。 広告の […]

NEWS 100mH・石原南菜13秒33の激走!高校歴代2位、U18日本新で総合Vに貢献 男子総合は東農大が4連覇、4×400mR優勝で締めくくる/IH北関東

2025.06.17

100mH・石原南菜13秒33の激走!高校歴代2位、U18日本新で総合Vに貢献 男子総合は東農大が4連覇、4×400mR優勝で締めくくる/IH北関東

◇インターハイ北関東地区大会(6月13~16日/カンセキスタジアムとちぎ、栃木県総合運動公園多目的広場投てき場)最終日 広島インターハイ出場を懸けた北関東地区大会の最終日の4日目が行われ、女子100mハードルで石原南菜( […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年7月号 (6月13日発売)

2025年7月号 (6月13日発売)

詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会

page top