2019.01.12
追跡・福岡国際マラソン 服部勇馬
日本マラソン界の若き「エース候補」成功へのターニングポイントは「気づき」と「自己変革」
12月2日の福岡国際マラソンで日本人選手として14年ぶりに優勝を飾った服部勇馬(トヨタ自動車)。日本歴代8位に入る2時間7分27秒でMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)への出場権を獲得し、2020年東京五輪の有力候補として、社会人3年目の25歳が注目を集めた。東洋大4年時からマラソンを始めて、これが4レース目。「35km以降に失速する課題を克服できたことがうれしい」とレース後に大喜びした服部は、どのような道のりを経てこの結果につなげたのか。福岡国際マラソンから半月後、服部が入社した年に新築された愛知県田原市の合宿所で、じっくりと話を聞いた。
「27kmあたりからタイムか優勝かすごく悩んで、優勝を選択しました」
――福岡国際マラソンが終わってしばらく経ちますけど、直後の感想と変わってきたところはありますか?
服部 うれしい気持ちと、課題を克服できたというところは変わりないんですけど、走れた根底の部分は何だったのかと振り返った時に、大学でマラソンに挑戦してから約5年間結果が出なかった理由として、自分自身がなぜ走っているのかを理解できてなかったことに気づきました。大学から実業団に入って、僕の気持ちに変化がなかったというか、学生の気分から抜け出せてなかった。トヨタ自動車に入って、トヨタの社員として与えられている自分の役割は何なのか。この1年間でそれがようやくわかってきて、その気づきが競技と結びつき、ようやく結果が出たイメージを僕は持ってます。
――なぜ走れたのかは後からお聞きするとして、福岡のレース内容を振り返った時、反省点はありますか? 例えば、30km手前からペースが落ちた時に自分が前に出れば良かった、とか。
服部 「勇気を持って行っても良かったかな」と思うのは、ペースが落ちた27kmあたりですかね。ペースが落ちてるのはわかったんですけど、まだ怖くて出られなかったんです。実は、27~28kmあたりでタイムを狙うか、優勝を狙うか、ものすごく天秤にかけたんですよ。MGCの権利を得るタイムではなくて、もっと自己ベストを大幅に破るタイムです。それを目指すんだったら、その局面で行く。だけど、優勝を確実に取りたいんだったら、ここでは行かない。そのどっちかで迷ってました。
――二者択一の葛藤をしていたんですね。
服部 かなり迷ってました(笑)。2km以上、そんな感じで走ってましたね。その結果、もう少し先延ばしした方が僕の優勝の確率は高まると思ったので、出ませんでした。それがまだ僕の弱さでもあるんですけど……。実際に僕自身まだ余裕がありましたし、タイムも狙える、優勝も狙える、どっちも狙える状況でしたけど、あの時は「どっちかしか選択できない」と思っちゃったんです。
――「ここはまだ出るべきではない」と判断したのですね。
服部 そう思いました。30kmを過ぎて、もうすぐ折り返しというところで結論を出して、31.6kmの香椎で折り返したら園田さん(隼/黒崎播磨)が前に出てくれたので、「じゃあ、まだいいかな」って(笑)。その後、僕と外国選手2人の3人に絞られた時点で、「じゃあ、行っちゃえ」と思って行ったんです。
――単独で先頭に立つと、35kmから40kmは14分40秒と大幅にペースアップしました。
服部 すごく気持ち良かったです(笑)。
38km過ぎにいったんきつくなったんですけど、沿道の声援がものすごく後押ししてくれて。駅伝でも味わったことない感覚でしたね。応援してくれてる人と一体感がありました。40kmぐらいだったか、「僕は周りの人に支えてもらいながら走らせてもらってるんだなぁ」とすごく感じられて、陸上をやってきて良かったと思いましたし、みなさんに感謝しないといけないって、すごく思いました。
――帽子とサングラスはどこかで取ろうと思ってましたか。
服部 帽子もサングラスも途中で外すと集中力が切れてダメなんですけど、さすがに競技場に入ったらサングラスは外そうと思ってました。ただ、どうやって優勝テープを切るか、そのポーズは考えてなくて、あんな変なのになっちゃいました(笑)。高校1年の時の県駅伝で、1度アンカーをやってるんです。絶対に優勝するだろうなと思ってフィニッシュポーズを考えながら走っていたら、2位だったんですよ。それからは絶対に考えないようにしてます。
※この続きは2019年1月12日発売の『月刊陸上競技』2月号をご覧ください

追跡・福岡国際マラソン 服部勇馬
日本マラソン界の若き「エース候補」成功へのターニングポイントは「気づき」と「自己変革」
12月2日の福岡国際マラソンで日本人選手として14年ぶりに優勝を飾った服部勇馬(トヨタ自動車)。日本歴代8位に入る2時間7分27秒でMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)への出場権を獲得し、2020年東京五輪の有力候補として、社会人3年目の25歳が注目を集めた。東洋大4年時からマラソンを始めて、これが4レース目。「35km以降に失速する課題を克服できたことがうれしい」とレース後に大喜びした服部は、どのような道のりを経てこの結果につなげたのか。福岡国際マラソンから半月後、服部が入社した年に新築された愛知県田原市の合宿所で、じっくりと話を聞いた。「27kmあたりからタイムか優勝かすごく悩んで、優勝を選択しました」
――福岡国際マラソンが終わってしばらく経ちますけど、直後の感想と変わってきたところはありますか? 服部 うれしい気持ちと、課題を克服できたというところは変わりないんですけど、走れた根底の部分は何だったのかと振り返った時に、大学でマラソンに挑戦してから約5年間結果が出なかった理由として、自分自身がなぜ走っているのかを理解できてなかったことに気づきました。大学から実業団に入って、僕の気持ちに変化がなかったというか、学生の気分から抜け出せてなかった。トヨタ自動車に入って、トヨタの社員として与えられている自分の役割は何なのか。この1年間でそれがようやくわかってきて、その気づきが競技と結びつき、ようやく結果が出たイメージを僕は持ってます。 ――なぜ走れたのかは後からお聞きするとして、福岡のレース内容を振り返った時、反省点はありますか? 例えば、30km手前からペースが落ちた時に自分が前に出れば良かった、とか。 服部 「勇気を持って行っても良かったかな」と思うのは、ペースが落ちた27kmあたりですかね。ペースが落ちてるのはわかったんですけど、まだ怖くて出られなかったんです。実は、27~28kmあたりでタイムを狙うか、優勝を狙うか、ものすごく天秤にかけたんですよ。MGCの権利を得るタイムではなくて、もっと自己ベストを大幅に破るタイムです。それを目指すんだったら、その局面で行く。だけど、優勝を確実に取りたいんだったら、ここでは行かない。そのどっちかで迷ってました。 ――二者択一の葛藤をしていたんですね。 服部 かなり迷ってました(笑)。2km以上、そんな感じで走ってましたね。その結果、もう少し先延ばしした方が僕の優勝の確率は高まると思ったので、出ませんでした。それがまだ僕の弱さでもあるんですけど……。実際に僕自身まだ余裕がありましたし、タイムも狙える、優勝も狙える、どっちも狙える状況でしたけど、あの時は「どっちかしか選択できない」と思っちゃったんです。 ――「ここはまだ出るべきではない」と判断したのですね。 服部 そう思いました。30kmを過ぎて、もうすぐ折り返しというところで結論を出して、31.6kmの香椎で折り返したら園田さん(隼/黒崎播磨)が前に出てくれたので、「じゃあ、まだいいかな」って(笑)。その後、僕と外国選手2人の3人に絞られた時点で、「じゃあ、行っちゃえ」と思って行ったんです。 ――単独で先頭に立つと、35kmから40kmは14分40秒と大幅にペースアップしました。 服部 すごく気持ち良かったです(笑)。 38km過ぎにいったんきつくなったんですけど、沿道の声援がものすごく後押ししてくれて。駅伝でも味わったことない感覚でしたね。応援してくれてる人と一体感がありました。40kmぐらいだったか、「僕は周りの人に支えてもらいながら走らせてもらってるんだなぁ」とすごく感じられて、陸上をやってきて良かったと思いましたし、みなさんに感謝しないといけないって、すごく思いました。 ――帽子とサングラスはどこかで取ろうと思ってましたか。 服部 帽子もサングラスも途中で外すと集中力が切れてダメなんですけど、さすがに競技場に入ったらサングラスは外そうと思ってました。ただ、どうやって優勝テープを切るか、そのポーズは考えてなくて、あんな変なのになっちゃいました(笑)。高校1年の時の県駅伝で、1度アンカーをやってるんです。絶対に優勝するだろうなと思ってフィニッシュポーズを考えながら走っていたら、2位だったんですよ。それからは絶対に考えないようにしてます。 ※この続きは2019年1月12日発売の『月刊陸上競技』2月号をご覧ください
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.07.05
2025.07.02
HOKAの新作レーシングシューズ「ROCKET X 3」が7月2日に新登場!
-
2025.07.05
-
2025.07.01
-
2025.07.04
-
2025.06.17
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.07.06
男子三段跳は山下航平が6年ぶりの王座奪還 開催国枠設定記録に到達の16m67で世界陸上出場に望み/日本選手権
◇第109回日本選手権(7月4日~6日/東京・国立競技場) 2日目 東京世界選手権の代表選考会を兼ねた日本選手権が行われ、男子三段跳は16年リオ五輪代表の山下航平(ANA)が16m67(+0.4)を跳び、19年以来6年ぶ […]
2025.07.06
鵜澤飛羽が200m日本人初19秒台なるか?田中希実が4年連続2冠に挑戦、大激戦の女子100mHなど最終日は決勝ラッシュ/日本選手権
◇第109回日本選手権(7月4日~6日/東京・国立競技場) 東京世界選手権の代表選考会を兼ねた日本選手権の最終日3日目(7月6日)が行われる。 広告の下にコンテンツが続きます 注目は男子200m決勝。3連覇を目指す鵜澤飛 […]
2025.07.06
34歳・新井涼平が今季限りで現役引退へ リオ五輪決勝、オーバートレーニング「喜怒哀楽すべてを経験した競技人生」/日本選手権
◇第109回日本選手権(7月4日~6日/東京・国立競技場) 2日目 東京世界選手権の代表選考会を兼ねた日本選手権が行われ、男子やり投の新井涼平(スズキ)が“最後の日本選手権”を74m71の8位で終えた。 広告の下にコンテ […]
2025.07.06
男子100m・桐生祥秀が5年ぶり3回目の日本一! 11回目の決勝で自信みなぎる走りを披露/日本選手権
◇第109回日本選手権(7月4日~6日/東京・国立競技場) 2日目 東京世界選手権の代表選考会を兼ねた日本選手権が行われ、男子100mは桐生祥秀(日本生命)が10秒23(+0.4)で5年ぶり3回目の優勝を遂げた。 広告の […]
Latest Issue
最新号

2025年7月号 (6月13日発売)
詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会