HOME バックナンバー
第76回びわ湖毎日マラソン 日本新 interview 鈴木健吾 「2:04:56」で勝てた要因を語る
第76回びわ湖毎日マラソン 日本新 interview 鈴木健吾 「2:04:56」で勝てた要因を語る

レース直後、テレビ中継のインタビューで、鈴木健吾(富士通)は「こんなタイムが出ると思わなかったので、自分が一番ビックリしています」と、ケロッとした表情で語った。初マラソンは神奈川大を卒業する直前の2018年2月末。3年前の東京で出した2時間10分21秒がこれまでの自己ベストで、5回目のマラソンとなった今回、一気に5分25秒も更新した。2時間4分56秒は国籍変更者を含むアフリカ系選手以外の世界最高タイム。なぜ、それほどの記録を出して勝てたのか。本人に緊急インタビューしてみた。
●構成/小森貞子

「一発で決める」

──このレースは世界大会などの選考が懸かっていたわけではありませんが、どういう気持ちで臨んでいたのでしょうか。

鈴木 密かに優勝を狙っていました。今回、招待選手ではなかったので、公にする機会はありませんでしたが、福嶋(正)監督とも話して「勝負どころを見極め、一発で決める」という考えでスタートラインに立ちました。ですから、前半は集団の中で、目立たないようにしていました(笑)。

──1㎞2分58秒ペースは、楽に行けたのですか。

鈴木 序盤はリズムに乗れないというか、集団の人数が多かったので、位置取りを考えたり、周りを気にしながらのレースでした。中間点を過ぎてすぐに折り返しですけど、そのあたりでは人数も絞られてきて、自分の中でリズムが良くなってきた感覚はありました。

広告の下にコンテンツが続きます

──井上大仁選手(三菱重工)が25㎞過ぎに飛び出した時も、「まだ早い」と判断して追わなかったのですね。

鈴木 今までの経験がそう判断させたのでしょうね。前回のびわ湖(2時間10分37秒で12位)は、30㎞で外国人ランナーが出た時に僕だけ対応してしまって、そこで力を使ってズルズルという感じだったので、「まだ違う」と思いました。30㎞までのペースメーカーが1人いたので、一気にペースが落ちるとは思わなかったし、そこは自重できましたね。30㎞で(井上さんに)行かれたら、わからなかったですけど……。

── 井上選手が絶好調宣言をしていたので、あのまま逃げられてしまうという不安はなかったのですか。

鈴木 距離がジワジワと開き始めたら「追うしかない」と思ったんですけど、意外と開かなかったので、「大丈夫だな」と思いました。

──それで、36㎞過ぎの給水ポイントに「一発で決める」チャンスが来ました。

鈴木 そこのスペシャル(ドリンク)は「取らなくてもいいかな」と思っていたくらいですから、ボトルを取り損ねたことは別にどうでもよくて、その前に他の2人(サイモン・カリウキ/戸上電機製作所と土方英和/ Honda)の様子をうかがっていたんです。余裕がある感じではなかったので、2人が給水に向かった隙を突いてスパートしました。(中村)匠吾さん(富士通)が一発で勝負を決めるじゃないですか。五輪代表を決めたMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)もそうだし、ニューイヤー駅伝の4区でもそう。それを学ばせてもらっています。

36km過ぎの給水でワンチャンスをものにした鈴木

──そこから2分53秒、2分52秒、2分51秒と1㎞ごとのスプリットを上げていき、独走に持ち込みました。

鈴木 腕時計の1㎞ごとの通過は押してなかったんですけど、5㎞ごとに押してトータルで見ていて、「上がっているな」という感覚はありました。

──35㎞から40㎞が14分39秒で、この日最速です。ラスト2.195㎞は6分16秒。それでも、フィニッシュしてからは余力がありそうでした。

鈴木 結構、ゆとりがありました。気象コンディションが良かったですよ。今回は風もほとんどなかったですし。

──どのあたりで2時間4分台を意識しましたか。

鈴木 40㎞ぐらいですかね。沿道からの声が「5分台行けるぞ」から「日本記録出るぞ」になって、「4分台出るぞ」に変わったんです。「マジか」と思って時計を見たら、「行けるかもしれない」って(笑)。

勝因を自己分析すると

──これまでのマラソンは後半の失速が課題でしたが、今回これだけ力を残して最後まで行けた要因は何でしょうか。

鈴木 30㎞から35㎞が15分02秒に落ちてまかなぁ……。あと、どれだけ効果があったのかはわかりませんが、4日ぐらい前からメチャクチャご飯を食べました。今回は本当にいっぱい食べたんです、ご飯、うどん、餅の炭水化物系をイヤと言うほど(笑)。ホテルにも餅を持って行きましたし、前の晩は讃岐うどんを大きなどんぶりで食べて、親子丼もつけました。

この続きは2021年3月13日発売の『月刊陸上競技4月号』をご覧ください。

 

※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する
定期購読はこちらから

レース直後、テレビ中継のインタビューで、鈴木健吾(富士通)は「こんなタイムが出ると思わなかったので、自分が一番ビックリしています」と、ケロッとした表情で語った。初マラソンは神奈川大を卒業する直前の2018年2月末。3年前の東京で出した2時間10分21秒がこれまでの自己ベストで、5回目のマラソンとなった今回、一気に5分25秒も更新した。2時間4分56秒は国籍変更者を含むアフリカ系選手以外の世界最高タイム。なぜ、それほどの記録を出して勝てたのか。本人に緊急インタビューしてみた。 ●構成/小森貞子

「一発で決める」

──このレースは世界大会などの選考が懸かっていたわけではありませんが、どういう気持ちで臨んでいたのでしょうか。 鈴木 密かに優勝を狙っていました。今回、招待選手ではなかったので、公にする機会はありませんでしたが、福嶋(正)監督とも話して「勝負どころを見極め、一発で決める」という考えでスタートラインに立ちました。ですから、前半は集団の中で、目立たないようにしていました(笑)。 ──1㎞2分58秒ペースは、楽に行けたのですか。 鈴木 序盤はリズムに乗れないというか、集団の人数が多かったので、位置取りを考えたり、周りを気にしながらのレースでした。中間点を過ぎてすぐに折り返しですけど、そのあたりでは人数も絞られてきて、自分の中でリズムが良くなってきた感覚はありました。 ──井上大仁選手(三菱重工)が25㎞過ぎに飛び出した時も、「まだ早い」と判断して追わなかったのですね。 鈴木 今までの経験がそう判断させたのでしょうね。前回のびわ湖(2時間10分37秒で12位)は、30㎞で外国人ランナーが出た時に僕だけ対応してしまって、そこで力を使ってズルズルという感じだったので、「まだ違う」と思いました。30㎞までのペースメーカーが1人いたので、一気にペースが落ちるとは思わなかったし、そこは自重できましたね。30㎞で(井上さんに)行かれたら、わからなかったですけど……。 ── 井上選手が絶好調宣言をしていたので、あのまま逃げられてしまうという不安はなかったのですか。 鈴木 距離がジワジワと開き始めたら「追うしかない」と思ったんですけど、意外と開かなかったので、「大丈夫だな」と思いました。 ──それで、36㎞過ぎの給水ポイントに「一発で決める」チャンスが来ました。 鈴木 そこのスペシャル(ドリンク)は「取らなくてもいいかな」と思っていたくらいですから、ボトルを取り損ねたことは別にどうでもよくて、その前に他の2人(サイモン・カリウキ/戸上電機製作所と土方英和/ Honda)の様子をうかがっていたんです。余裕がある感じではなかったので、2人が給水に向かった隙を突いてスパートしました。(中村)匠吾さん(富士通)が一発で勝負を決めるじゃないですか。五輪代表を決めたMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)もそうだし、ニューイヤー駅伝の4区でもそう。それを学ばせてもらっています。 36km過ぎの給水でワンチャンスをものにした鈴木 ──そこから2分53秒、2分52秒、2分51秒と1㎞ごとのスプリットを上げていき、独走に持ち込みました。 鈴木 腕時計の1㎞ごとの通過は押してなかったんですけど、5㎞ごとに押してトータルで見ていて、「上がっているな」という感覚はありました。 ──35㎞から40㎞が14分39秒で、この日最速です。ラスト2.195㎞は6分16秒。それでも、フィニッシュしてからは余力がありそうでした。 鈴木 結構、ゆとりがありました。気象コンディションが良かったですよ。今回は風もほとんどなかったですし。 ──どのあたりで2時間4分台を意識しましたか。 鈴木 40㎞ぐらいですかね。沿道からの声が「5分台行けるぞ」から「日本記録出るぞ」になって、「4分台出るぞ」に変わったんです。「マジか」と思って時計を見たら、「行けるかもしれない」って(笑)。

勝因を自己分析すると

──これまでのマラソンは後半の失速が課題でしたが、今回これだけ力を残して最後まで行けた要因は何でしょうか。 鈴木 30㎞から35㎞が15分02秒に落ちてまかなぁ……。あと、どれだけ効果があったのかはわかりませんが、4日ぐらい前からメチャクチャご飯を食べました。今回は本当にいっぱい食べたんです、ご飯、うどん、餅の炭水化物系をイヤと言うほど(笑)。ホテルにも餅を持って行きましたし、前の晩は讃岐うどんを大きなどんぶりで食べて、親子丼もつけました。 この続きは2021年3月13日発売の『月刊陸上競技4月号』をご覧ください。  
※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する 定期購読はこちらから

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.05.01

東京メトロに伊東明日香が入部 「競技が続けられる環境があることに感謝」

東京メトロは5月1日、伊東明日香が入部したと発表した。今年3月31日に埼玉医科大グループを退部していた。 伊東は東京・順天高時代から全国高校駅伝に出場。東洋大進学後は全日本女子大学駅伝や富士山女子駅伝など全国大会に出走し […]

NEWS 九電工にケニア出身のキプンゲノ・ニアマイアが加入 ハーフマラソンなどロードが主戦場

2025.05.01

九電工にケニア出身のキプンゲノ・ニアマイアが加入 ハーフマラソンなどロードが主戦場

九電工は5月1日、ケニア出身のキプンゲノ・ニアマイアが同日付で加入したと発表した。 ニアマイアはケリンゲット高出身の27歳。ハーフマラソンや10kmなどロードレースを主戦場としている。自己ベストは5000m13分57秒3 […]

NEWS アディダスによるスポーツを通じたグローバルムーブメント「MOVE FOR THE PLANET」が今年も開催!

2025.05.01

アディダスによるスポーツを通じたグローバルムーブメント「MOVE FOR THE PLANET」が今年も開催!

アディダス ジャパンは、未来のスポーツ環境を支えるためのグローバルムーブメント「MOVE FOR THE PLANET(ムーブ・フォー・ザ・プラネット)」を5月12日~25日まで開催することを発表した。5月12日の計測開 […]

NEWS 水戸招待のエントリー発表! 棒高跳に柄澤智哉、山本聖途、諸田実咲ら男女トップ集結 戸邉直人、城山正太郎も出場予定

2025.04.30

水戸招待のエントリー発表! 棒高跳に柄澤智哉、山本聖途、諸田実咲ら男女トップ集結 戸邉直人、城山正太郎も出場予定

5月5日に行われる日本グランプリシリーズ第7戦「2025水戸招待陸上」のエントリー選手が発表された。男子棒高跳には東京五輪代表の山本聖途(トヨタ自動車)、江島雅紀(富士通)や世界選手権代表経験のある柄澤智哉(東京陸協)ら […]

NEWS 【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」

2025.04.30

【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」

山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL) 
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)

page top