2020.12.26
箱根駅伝直前Special
学生長距離Close-up
宮下隼人
Miyashita Hayato(東洋大学3年)
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューを毎月お届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。12月は箱根駅伝直前Specialと題し、8チームの選手・監督のインタビュー記事を掲載していく。
第8回目は、前回の箱根駅伝で5区区間賞を獲得した東洋大の宮下隼人(3年)。酒井俊幸監督をはじめとする周囲から「次期エース」として期待を寄せられ、年々成長を続けている鉄紺のキーマンに今シーズンの振り返り、2度目の箱根路に対する意気込みを話してもらった。
柏原竜二を見て東洋大のファンに
小学生の時に、箱根駅伝の5区で爆走する柏原竜二を見て東洋大のファンになった2年生が、“天下の険”を誰よりも早く駆け上った。前回大会で一躍スターダムにのし上がった東洋大・宮下隼人だ。山上りの5区で区間記録を保持していた國學院大・浦野雄平(現・富士通)らを抑えて、区間賞を獲得。1時間10分25秒の区間新記録も樹立した。
熱望していた箱根駅伝5区での活躍。それでも宮下の気持ちは晴れなかった。芦ノ湖のフィニッシュは11位。チームは総合10位に終わったからだ。
「目標にしていた『71分00秒』はクリアできましたが、今井正人さん(トヨタ自動車九州)、柏原竜二さん、神野大地さん(セルソース)と比べると、大きな差があります。自分はまだまだ『山の神』と言われる存在ではありません」(宮下)
3年生になった今季は酒井俊幸監督から「エースと呼ばれる存在になるように」と言われ、“鉄紺のエース”を意識するようになった。しかし、3月下旬~6月中旬の自粛期間は山梨県富士吉田市の実家に帰省。トラックの使用も難しく、思うようなトレーニングを積むことができなかった。
「1人での練習はうまくいかないことが多くて、正直、学生駅伝をしっかり走れるのか不安でしたね。ただ全体練習が始まると、質の高い練習ができたので、昨季以上の手応えはありました」
その言葉通り、10月11日の「トラックゲームズ in TOKOROZAWA」10000mで28分37秒36の自己ベストをマークする。11月1日の全日本大学駅伝は2年連続となる最終8区に出場。順大を抜き去ると、53秒先行していた早大にも並び、区間4位と気を吐いた。
「全日本は前年の経験もありましたし、トラックである程度のタイムも出せていたので、自信を持って臨みました。個人タイムでいうと、前年よりも1分20秒短縮できて、ひとまず良かったのかなと思います。ただアンカーはチームの順位が最優先される区間。早大に一度は追いついたにも関わらず、最後は競り負けてしまったのは反省点です」
“山の神”以来となる2年連続区間賞を
山梨・富士河口湖高時代は3000m障害で南関東大会8位の実績があるが、東洋大入学時の5000mベストは14分46秒82。1年目はケガが続いたこともあり、箱根駅伝は8区のタイム計測と応援に回った。
その悔しさをバネに2年目、3年目と着実にステップアップを踏み、いまや鉄紺軍団になくてはならない存在となっている。
伊勢路では1年間の成長を見せたが、「エース」と呼ぶには物足りない走りだった。2回目の箱根駅伝は5区での再登場が有力視されている。
「チームのことを考えると、5区で他大学との差をつけないといけません。でも柏原さん以来、5区の2年連続区間賞は出ていません。それだけ5区は難しい区間です。まずは前年のタイム(1時間10分25秒)を更新したい。それ以上は深く考えないようにしています。とにかく、自分の力を最大限発揮しようという考えが強いです」
周囲からは「山の神」への期待が高まっており、エースとしての快走も求められるが、宮下は冷静だ。
「気負ってしまうと良くない走りにつながってしまうので、自分がエースだとは考えていません。東洋大のエースは西山和弥さん(4年)だと思っています」と話す。一方で、5区は往路のアンカー。全日本での失敗を取り返すつもりでいる。
「前に選手がいる限り、最後まであきらめずに順位を上げる走りをしたい。来季は最上級生になるので、チームを引っ張っていかないといけません。西山さんが卒業した後は自分がエースにならないといけないなと思っています」
目指すは区間賞で往路優勝のフィニッシュを飾ること。それが実現すれば、誰もが認める“鉄紺のエース”に近づくはずだ。
◎みやした・はやと/1999年10月15日生まれ。山梨県出身。174cm、58kg。明見中(山梨)→富士河口湖高→東洋大。5000m14分04秒20、10000m28分37秒36
文/酒井政人
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューを毎月お届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。12月は箱根駅伝直前Specialと題し、8チームの選手・監督のインタビュー記事を掲載していく。
第8回目は、前回の箱根駅伝で5区区間賞を獲得した東洋大の宮下隼人(3年)。酒井俊幸監督をはじめとする周囲から「次期エース」として期待を寄せられ、年々成長を続けている鉄紺のキーマンに今シーズンの振り返り、2度目の箱根路に対する意気込みを話してもらった。
柏原竜二を見て東洋大のファンに
小学生の時に、箱根駅伝の5区で爆走する柏原竜二を見て東洋大のファンになった2年生が、“天下の険”を誰よりも早く駆け上った。前回大会で一躍スターダムにのし上がった東洋大・宮下隼人だ。山上りの5区で区間記録を保持していた國學院大・浦野雄平(現・富士通)らを抑えて、区間賞を獲得。1時間10分25秒の区間新記録も樹立した。 熱望していた箱根駅伝5区での活躍。それでも宮下の気持ちは晴れなかった。芦ノ湖のフィニッシュは11位。チームは総合10位に終わったからだ。 「目標にしていた『71分00秒』はクリアできましたが、今井正人さん(トヨタ自動車九州)、柏原竜二さん、神野大地さん(セルソース)と比べると、大きな差があります。自分はまだまだ『山の神』と言われる存在ではありません」(宮下) 3年生になった今季は酒井俊幸監督から「エースと呼ばれる存在になるように」と言われ、“鉄紺のエース”を意識するようになった。しかし、3月下旬~6月中旬の自粛期間は山梨県富士吉田市の実家に帰省。トラックの使用も難しく、思うようなトレーニングを積むことができなかった。 「1人での練習はうまくいかないことが多くて、正直、学生駅伝をしっかり走れるのか不安でしたね。ただ全体練習が始まると、質の高い練習ができたので、昨季以上の手応えはありました」 その言葉通り、10月11日の「トラックゲームズ in TOKOROZAWA」10000mで28分37秒36の自己ベストをマークする。11月1日の全日本大学駅伝は2年連続となる最終8区に出場。順大を抜き去ると、53秒先行していた早大にも並び、区間4位と気を吐いた。 「全日本は前年の経験もありましたし、トラックである程度のタイムも出せていたので、自信を持って臨みました。個人タイムでいうと、前年よりも1分20秒短縮できて、ひとまず良かったのかなと思います。ただアンカーはチームの順位が最優先される区間。早大に一度は追いついたにも関わらず、最後は競り負けてしまったのは反省点です」“山の神”以来となる2年連続区間賞を
山梨・富士河口湖高時代は3000m障害で南関東大会8位の実績があるが、東洋大入学時の5000mベストは14分46秒82。1年目はケガが続いたこともあり、箱根駅伝は8区のタイム計測と応援に回った。
高校時代の宮下。当時は3000m障害に取り組んでいた
その悔しさをバネに2年目、3年目と着実にステップアップを踏み、いまや鉄紺軍団になくてはならない存在となっている。
伊勢路では1年間の成長を見せたが、「エース」と呼ぶには物足りない走りだった。2回目の箱根駅伝は5区での再登場が有力視されている。
「チームのことを考えると、5区で他大学との差をつけないといけません。でも柏原さん以来、5区の2年連続区間賞は出ていません。それだけ5区は難しい区間です。まずは前年のタイム(1時間10分25秒)を更新したい。それ以上は深く考えないようにしています。とにかく、自分の力を最大限発揮しようという考えが強いです」
周囲からは「山の神」への期待が高まっており、エースとしての快走も求められるが、宮下は冷静だ。
「気負ってしまうと良くない走りにつながってしまうので、自分がエースだとは考えていません。東洋大のエースは西山和弥さん(4年)だと思っています」と話す。一方で、5区は往路のアンカー。全日本での失敗を取り返すつもりでいる。
「前に選手がいる限り、最後まであきらめずに順位を上げる走りをしたい。来季は最上級生になるので、チームを引っ張っていかないといけません。西山さんが卒業した後は自分がエースにならないといけないなと思っています」
目指すは区間賞で往路優勝のフィニッシュを飾ること。それが実現すれば、誰もが認める“鉄紺のエース”に近づくはずだ。
◎みやした・はやと/1999年10月15日生まれ。山梨県出身。174cm、58kg。明見中(山梨)→富士河口湖高→東洋大。5000m14分04秒20、10000m28分37秒36
文/酒井政人 RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.12.26
名古屋アジア大会のマラソン、競歩の日程案が発表 マラソンは9月26日
-
2025.12.26
-
2025.12.26
-
2025.12.25
2025.12.21
【大会結果】第37回全国高校駅伝・女子(2025年12月21日)
2025.12.21
早大が来春入部選手発表!高校駅伝1区激闘の増子陽太、新妻、本田がそろって加入!
2025.12.21
【大会結果】第76回全国高校駅伝・男子(2025年12月21日)
-
2025.12.21
-
2025.12.20
-
2025.12.21
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝女子(2025年12月14日)
2025.12.21
【大会結果】第37回全国高校駅伝・女子(2025年12月21日)
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝男子(2025年12月14日)
-
2025.12.21
-
2025.12.21
-
2025.12.21
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.12.26
名古屋アジア大会のマラソン、競歩の日程案が発表 マラソンは9月26日
愛知・名古屋アジア大会組織委員会は、26年9月に開催される名古屋アジア大会のマラソンと競歩種目の日程と会場案を発表した。 マラソンは男女とも9月26日(土)に実施を予定。時差スタートで、男子は7時30分、女子は7時50分 […]
2025.12.26
箱根駅伝Stories/創部111年の年で「1位」に挑む早大 強力な主軸擁し「間違いなく前回より強い」
新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 One早稲田のスローガンで 創部111年と「1」並びの年に、早大は「 […]
2025.12.26
瀬古利彦氏と渡辺康幸氏がトークショー!第102回箱根駅伝に向けて優勝は?見どころは?「5強」だけど「わからない」
「第102回箱根駅伝見どころ先取り!スペシャルトークショー」が12月26日、新宿・京王百貨店のミズノ「第102回箱根駅伝オフィシャルグッズショップ」で行われ、瀬古利彦氏(DeNAアスレティックスエリートアドバイザー)と渡 […]
2025.12.26
宮古島大学駅伝に青学大、國學院大、中大など箱根出場の14校参加! ダイジェスト放送も実施予定
「宮古島大学駅伝ワイドー・ズミ2026」の実行委員会は12月26日、来年2月8日に実施する大会要項を発表した。 今回で6回目を迎える大会。前回発表よりも出場校が追加され、来年1月の箱根駅伝で3連覇を狙う青学大、宮古島で2 […]
2025.12.26
早稲田大学競走部がボディケアカンパニーのファイテンとサポート契約を締結
ボディケアカンパニーのファイテン株式会社は12月25日、早稲田大学競走部とボディケアサポートを目的とするスポンサーシップ契約を締結したことを発表した。 早稲田大学競走部は1914年に創部し、2024年に創部110周年を迎 […]
Latest Issue
最新号
2026年1月号 (12月12日発売)
箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望
大迫傑がマラソン日本新
箱根駅伝「5強」主将インタビュー
クイーンズ駅伝/福岡国際マラソン
〔新旧男子100m高校記録保持者〕桐生祥秀×清水空跳
