HOME バックナンバー
ALL for TOKYO2020+1 男子短距離「日本王者」対談 桐生祥秀×飯塚翔太
ALL for TOKYO2020+1 男子短距離「日本王者」対談 桐生祥秀×飯塚翔太

僕らの走りで
日本中に感動を――

リオの〝続編〟を国立にでっかく描こう!!

 コロナ禍に見舞われた2020年がもうすぐ終わり、仕切り直しになった東京五輪イヤーがいよいよ明ける。「今度こそ」の強い思いを込めて、日本選手権男子100m、200mのチャンピオン、桐生祥秀(日本生命)と飯塚翔太(ミズノ)に、来季へ向けた取り組みや今後の夢を語り合ってもらった。言わずと知れた2016年リオデジャネイロ五輪の4×100mリレー銀メダルメンバーで、2走の飯塚から3走の桐生へ直接バトンをつないだ仲。普段から交流があり、SNSなどを使って積極的に情報発信しているところも共通している。歳は4つ違いで飯塚が上だが、日本の男子短距離界を引っ張ってきた2人のトークは滑らかで、〝陸上愛〟にあふれていた。

広告の下にコンテンツが続きます

●構成/小森貞子 撮影/船越陽一郎

2020年シーズンを振り返って

──10月初めの日本選手権で2020年シーズンを終え、しばしの休養期間を経て、そろそろ冬季トレーニングに入っている頃でしょうか。

桐生 はい。

飯塚 ちょうど入ったところです。

広告の下にコンテンツが続きます

── 誰も経験したことがない異例の年になりましたけど、2人とも日本選手権の優勝で締めくくり、まずまずのシーズンになったのではないでしょうか。

飯塚 僕は8月初めの地元(静岡)の大会でスタートしたんですけど、思ったより良くて、100mは10秒13(+2.0)で走れたんです。だけど、8月末のセイコー・ゴールデングランプリは200mが長く感じて、すごく疲れました。タイム(1位/ 20秒74、+0. 6)も出なくて。せっかく五輪会場(国立競技場)でやるのに無観客で、そんな試合は今まで経験したことがなくて、「いつも声援を送ってもらえていた試合は良かったな」と痛感させられましたね。

──9月の全日本実業団対抗選手権(埼玉・熊谷)では、200mで20秒47(+1.2)の今季ベストを出しました。

飯塚 2020年シーズンで一番良かったのが、あのレースです。良くない時は前半突っ込んで行って、スピードを上げ過ぎて失速しちゃうんですけど、実業団の時はいいリズムで行けました。

── 日本選手権(新潟)は100m4位(10秒33 /-0. 2)、200m優勝(20秒75 /-0. 5)と、2種目でしっかり結果を残しました。前年は100mで4位に入ったものの、200mの予選で脚を痛めて途中棄権でしたからね。

飯塚 ホッとしました。200mが本職ですけど、100mは楽しいから出たいんですよ。でも、一番難しい。予選、準決勝、決勝と3本あるうち、予選で課題が見つかるんです。それを修正して決勝で一番いいレースができたのは良かったんですが、一発目からしっかり走れないとダメですね。

桐生 100mの決勝の顔ぶれは、ここ数年あまり変わらないですよね。

飯塚 そうだけど、僕は100mだとレースに入れてない。今回だったら桐生とケンブリッジ飛鳥(Nike)、小池祐貴(住友電工)が前にいて、3人がやり合っているのを後ろで見ながら、最後近づいて終わるんです。僕も真横で一緒にレースに参加して、走りたいな。

──桐生選手は2020年シーズンの戦績をどう振り返りますか。

桐生 山梨の北麓スプリント100m(10秒04/+1. 4)からスタートして、日本選手権で終わったんですけど、今季はユニフォームに新しいロゴを1つつけたので、トップを走ってそれを目立たせようと思っていました。中間目標がセイコー・ゴールデングランプリで勝つこと。これは10秒14(-0. 2)で優勝し、達成しました。新しい国立で初めて試合が行われて、男子100mの〝初代チャンピオン〟ということになるじゃないですか。

飯塚 そうだね。何でも「初めて」はデカい(笑)。

──日本選手権の100mも、きっちり勝ち切りました。

桐生 あれはもっと差がついて、ダントツで勝ってると思ったんですよ。だからガッツポーズしたんですけど、僕が10秒27(-0. 2)でケンブリッジさんが10秒28。スクリーンを見て「恥ずかしい思いをするところだった」と、少々慌てました(笑)。カメラマンが明らかに僕に焦点を合わせていたから「勝ったんだ」と思ったんですよね。

飯塚 0.01秒でも、結構差があるように感じるよね、走っている選手は。

桐生 0.02 ~ 0.03秒差なら、完全にわかります。

──日本選手権は100mも200mも、なぜ記録が伸びなかったんでしょうか。飯塚 選考が懸かってるとみんなの気持ちの入り方が全然違うけど、今回は何もなかったですからね。あとは練習期間が短かったので、シーズンが始まってすぐは行けたけど、日本選手権の頃はもうピークを過ぎていた。僕の場合はそれですね。

桐生 思ったほど記録が出なかったのは確かです。僕はセイコーと福井のレース(Athlete Night Games in FUKUI / 10秒06、+1.0で2位)の後、日本選手権まで1ヵ月空いて、「あと1試合」と思って練習したけど、疲れてましたね。冬季の〝貯金〟を使い果たした感じです。

この続きは2020年12月14日発売の『月刊陸上競技1月号』をご覧ください。

 

※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する
定期購読はこちらから

僕らの走りで 日本中に感動を――

リオの〝続編〟を国立にでっかく描こう!!

 コロナ禍に見舞われた2020年がもうすぐ終わり、仕切り直しになった東京五輪イヤーがいよいよ明ける。「今度こそ」の強い思いを込めて、日本選手権男子100m、200mのチャンピオン、桐生祥秀(日本生命)と飯塚翔太(ミズノ)に、来季へ向けた取り組みや今後の夢を語り合ってもらった。言わずと知れた2016年リオデジャネイロ五輪の4×100mリレー銀メダルメンバーで、2走の飯塚から3走の桐生へ直接バトンをつないだ仲。普段から交流があり、SNSなどを使って積極的に情報発信しているところも共通している。歳は4つ違いで飯塚が上だが、日本の男子短距離界を引っ張ってきた2人のトークは滑らかで、〝陸上愛〟にあふれていた。 ●構成/小森貞子 撮影/船越陽一郎

2020年シーズンを振り返って

──10月初めの日本選手権で2020年シーズンを終え、しばしの休養期間を経て、そろそろ冬季トレーニングに入っている頃でしょうか。 桐生 はい。 飯塚 ちょうど入ったところです。 ── 誰も経験したことがない異例の年になりましたけど、2人とも日本選手権の優勝で締めくくり、まずまずのシーズンになったのではないでしょうか。 飯塚 僕は8月初めの地元(静岡)の大会でスタートしたんですけど、思ったより良くて、100mは10秒13(+2.0)で走れたんです。だけど、8月末のセイコー・ゴールデングランプリは200mが長く感じて、すごく疲れました。タイム(1位/ 20秒74、+0. 6)も出なくて。せっかく五輪会場(国立競技場)でやるのに無観客で、そんな試合は今まで経験したことがなくて、「いつも声援を送ってもらえていた試合は良かったな」と痛感させられましたね。 ──9月の全日本実業団対抗選手権(埼玉・熊谷)では、200mで20秒47(+1.2)の今季ベストを出しました。 飯塚 2020年シーズンで一番良かったのが、あのレースです。良くない時は前半突っ込んで行って、スピードを上げ過ぎて失速しちゃうんですけど、実業団の時はいいリズムで行けました。 ── 日本選手権(新潟)は100m4位(10秒33 /-0. 2)、200m優勝(20秒75 /-0. 5)と、2種目でしっかり結果を残しました。前年は100mで4位に入ったものの、200mの予選で脚を痛めて途中棄権でしたからね。 飯塚 ホッとしました。200mが本職ですけど、100mは楽しいから出たいんですよ。でも、一番難しい。予選、準決勝、決勝と3本あるうち、予選で課題が見つかるんです。それを修正して決勝で一番いいレースができたのは良かったんですが、一発目からしっかり走れないとダメですね。 桐生 100mの決勝の顔ぶれは、ここ数年あまり変わらないですよね。 飯塚 そうだけど、僕は100mだとレースに入れてない。今回だったら桐生とケンブリッジ飛鳥(Nike)、小池祐貴(住友電工)が前にいて、3人がやり合っているのを後ろで見ながら、最後近づいて終わるんです。僕も真横で一緒にレースに参加して、走りたいな。 ──桐生選手は2020年シーズンの戦績をどう振り返りますか。 桐生 山梨の北麓スプリント100m(10秒04/+1. 4)からスタートして、日本選手権で終わったんですけど、今季はユニフォームに新しいロゴを1つつけたので、トップを走ってそれを目立たせようと思っていました。中間目標がセイコー・ゴールデングランプリで勝つこと。これは10秒14(-0. 2)で優勝し、達成しました。新しい国立で初めて試合が行われて、男子100mの〝初代チャンピオン〟ということになるじゃないですか。 飯塚 そうだね。何でも「初めて」はデカい(笑)。 ──日本選手権の100mも、きっちり勝ち切りました。 桐生 あれはもっと差がついて、ダントツで勝ってると思ったんですよ。だからガッツポーズしたんですけど、僕が10秒27(-0. 2)でケンブリッジさんが10秒28。スクリーンを見て「恥ずかしい思いをするところだった」と、少々慌てました(笑)。カメラマンが明らかに僕に焦点を合わせていたから「勝ったんだ」と思ったんですよね。 飯塚 0.01秒でも、結構差があるように感じるよね、走っている選手は。 桐生 0.02 ~ 0.03秒差なら、完全にわかります。 ──日本選手権は100mも200mも、なぜ記録が伸びなかったんでしょうか。飯塚 選考が懸かってるとみんなの気持ちの入り方が全然違うけど、今回は何もなかったですからね。あとは練習期間が短かったので、シーズンが始まってすぐは行けたけど、日本選手権の頃はもうピークを過ぎていた。僕の場合はそれですね。 桐生 思ったほど記録が出なかったのは確かです。僕はセイコーと福井のレース(Athlete Night Games in FUKUI / 10秒06、+1.0で2位)の後、日本選手権まで1ヵ月空いて、「あと1試合」と思って練習したけど、疲れてましたね。冬季の〝貯金〟を使い果たした感じです。 この続きは2020年12月14日発売の『月刊陸上競技1月号』をご覧ください。  
※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する 定期購読はこちらから

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.06.30

【高校生FOCUS】男子棒高跳・井上直哉(阿南光高)「全国3冠取りたい」と意気込むボウルターは柔道黒帯

FOCUS! 高校生INTERVIEW 井上直哉 Inoue Naoya 阿南光高3徳島 注目の高校アスリートに焦点を当てる高校生FOCUS。今回はインターハイ徳島県大会男子棒高跳で5m21の県高校新記録をマークし、続く […]

NEWS 【学生長距離Close-upインタビュー】急成長を続ける大東大・大濱逞真 「自信を持ってエースと言えるように」

2025.06.30

【学生長距離Close-upインタビュー】急成長を続ける大東大・大濱逞真 「自信を持ってエースと言えるように」

学生長距離Close-upインタビュー 大濱逞真 Ohama Takuma 大東大2年 「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。49回目は、大東大の大 […]

NEWS 日本陸連・有森裕子新会長が小池百合子都知事訪問 東京世界陸上の成功誓う「素晴らしさと感動ふんだんに味わえるように」

2025.06.30

日本陸連・有森裕子新会長が小池百合子都知事訪問 東京世界陸上の成功誓う「素晴らしさと感動ふんだんに味わえるように」

日本陸連の新会長に就任した有森裕子会長と、同前会長で東京2025世界陸上財団の尾縣貢会長が6月30日に東京都庁を訪問し、小池百合子都知事と面会した。 冒頭で小池都知事は、有森氏が女性初の会長に就任したことに際し祝福し、「 […]

NEWS 64年東京五輪5000m銅のデリンジャー氏が死去 91歳 米国代表やオレゴン大コーチも務める

2025.06.30

64年東京五輪5000m銅のデリンジャー氏が死去 91歳 米国代表やオレゴン大コーチも務める

6月27日、米国の元長距離選手で、後にコーチとしても活躍したビル・デリンジャー氏が逝去した。91歳だった。 デリンジャー氏は5000mで3大会連続してオリンピックに出場(1956年メルボルン、1960年ローマ、1964年 […]

NEWS 100mトンプソンが世界歴代6位の9秒75!! シェリー・アンも最後の国内選手権で3位/ジャマイカ選手権

2025.06.30

100mトンプソンが世界歴代6位の9秒75!! シェリー・アンも最後の国内選手権で3位/ジャマイカ選手権

東京世界選手権の代表選考会となるジャマイカ選手権が6月26日から29日にキングストンで開催された。 男子100mはK.トンプソンが世界歴代6位、今季世界最高の9秒75(+0.8)で優勝した。トンプソンは現在23歳。これま […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年7月号 (6月13日発売)

2025年7月号 (6月13日発売)

詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会

page top