2020.12.15
僕らの走りで
日本中に感動を――
リオの〝続編〟を国立にでっかく描こう!!
コロナ禍に見舞われた2020年がもうすぐ終わり、仕切り直しになった東京五輪イヤーがいよいよ明ける。「今度こそ」の強い思いを込めて、日本選手権男子100m、200mのチャンピオン、桐生祥秀(日本生命)と飯塚翔太(ミズノ)に、来季へ向けた取り組みや今後の夢を語り合ってもらった。言わずと知れた2016年リオデジャネイロ五輪の4×100mリレー銀メダルメンバーで、2走の飯塚から3走の桐生へ直接バトンをつないだ仲。普段から交流があり、SNSなどを使って積極的に情報発信しているところも共通している。歳は4つ違いで飯塚が上だが、日本の男子短距離界を引っ張ってきた2人のトークは滑らかで、〝陸上愛〟にあふれていた。
●構成/小森貞子 撮影/船越陽一郎
2020年シーズンを振り返って
──10月初めの日本選手権で2020年シーズンを終え、しばしの休養期間を経て、そろそろ冬季トレーニングに入っている頃でしょうか。
桐生 はい。
飯塚 ちょうど入ったところです。
── 誰も経験したことがない異例の年になりましたけど、2人とも日本選手権の優勝で締めくくり、まずまずのシーズンになったのではないでしょうか。
飯塚 僕は8月初めの地元(静岡)の大会でスタートしたんですけど、思ったより良くて、100mは10秒13(+2.0)で走れたんです。だけど、8月末のセイコー・ゴールデングランプリは200mが長く感じて、すごく疲れました。タイム(1位/ 20秒74、+0. 6)も出なくて。せっかく五輪会場(国立競技場)でやるのに無観客で、そんな試合は今まで経験したことがなくて、「いつも声援を送ってもらえていた試合は良かったな」と痛感させられましたね。
──9月の全日本実業団対抗選手権(埼玉・熊谷)では、200mで20秒47(+1.2)の今季ベストを出しました。
飯塚 2020年シーズンで一番良かったのが、あのレースです。良くない時は前半突っ込んで行って、スピードを上げ過ぎて失速しちゃうんですけど、実業団の時はいいリズムで行けました。
── 日本選手権(新潟)は100m4位(10秒33 /-0. 2)、200m優勝(20秒75 /-0. 5)と、2種目でしっかり結果を残しました。前年は100mで4位に入ったものの、200mの予選で脚を痛めて途中棄権でしたからね。
飯塚 ホッとしました。200mが本職ですけど、100mは楽しいから出たいんですよ。でも、一番難しい。予選、準決勝、決勝と3本あるうち、予選で課題が見つかるんです。それを修正して決勝で一番いいレースができたのは良かったんですが、一発目からしっかり走れないとダメですね。
桐生 100mの決勝の顔ぶれは、ここ数年あまり変わらないですよね。
飯塚 そうだけど、僕は100mだとレースに入れてない。今回だったら桐生とケンブリッジ飛鳥(Nike)、小池祐貴(住友電工)が前にいて、3人がやり合っているのを後ろで見ながら、最後近づいて終わるんです。僕も真横で一緒にレースに参加して、走りたいな。
──桐生選手は2020年シーズンの戦績をどう振り返りますか。
桐生 山梨の北麓スプリント100m(10秒04/+1. 4)からスタートして、日本選手権で終わったんですけど、今季はユニフォームに新しいロゴを1つつけたので、トップを走ってそれを目立たせようと思っていました。中間目標がセイコー・ゴールデングランプリで勝つこと。これは10秒14(-0. 2)で優勝し、達成しました。新しい国立で初めて試合が行われて、男子100mの〝初代チャンピオン〟ということになるじゃないですか。
飯塚 そうだね。何でも「初めて」はデカい(笑)。
──日本選手権の100mも、きっちり勝ち切りました。
桐生 あれはもっと差がついて、ダントツで勝ってると思ったんですよ。だからガッツポーズしたんですけど、僕が10秒27(-0. 2)でケンブリッジさんが10秒28。スクリーンを見て「恥ずかしい思いをするところだった」と、少々慌てました(笑)。カメラマンが明らかに僕に焦点を合わせていたから「勝ったんだ」と思ったんですよね。
飯塚 0.01秒でも、結構差があるように感じるよね、走っている選手は。
桐生 0.02 ~ 0.03秒差なら、完全にわかります。
──日本選手権は100mも200mも、なぜ記録が伸びなかったんでしょうか。飯塚 選考が懸かってるとみんなの気持ちの入り方が全然違うけど、今回は何もなかったですからね。あとは練習期間が短かったので、シーズンが始まってすぐは行けたけど、日本選手権の頃はもうピークを過ぎていた。僕の場合はそれですね。
桐生 思ったほど記録が出なかったのは確かです。僕はセイコーと福井のレース(Athlete Night Games in FUKUI / 10秒06、+1.0で2位)の後、日本選手権まで1ヵ月空いて、「あと1試合」と思って練習したけど、疲れてましたね。冬季の〝貯金〟を使い果たした感じです。
この続きは2020年12月14日発売の『月刊陸上競技1月号』をご覧ください。
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リオの〝続編〟を国立にでっかく描こう!!
コロナ禍に見舞われた2020年がもうすぐ終わり、仕切り直しになった東京五輪イヤーがいよいよ明ける。「今度こそ」の強い思いを込めて、日本選手権男子100m、200mのチャンピオン、桐生祥秀(日本生命)と飯塚翔太(ミズノ)に、来季へ向けた取り組みや今後の夢を語り合ってもらった。言わずと知れた2016年リオデジャネイロ五輪の4×100mリレー銀メダルメンバーで、2走の飯塚から3走の桐生へ直接バトンをつないだ仲。普段から交流があり、SNSなどを使って積極的に情報発信しているところも共通している。歳は4つ違いで飯塚が上だが、日本の男子短距離界を引っ張ってきた2人のトークは滑らかで、〝陸上愛〟にあふれていた。 ●構成/小森貞子 撮影/船越陽一郎2020年シーズンを振り返って
──10月初めの日本選手権で2020年シーズンを終え、しばしの休養期間を経て、そろそろ冬季トレーニングに入っている頃でしょうか。 桐生 はい。 飯塚 ちょうど入ったところです。 ── 誰も経験したことがない異例の年になりましたけど、2人とも日本選手権の優勝で締めくくり、まずまずのシーズンになったのではないでしょうか。 飯塚 僕は8月初めの地元(静岡)の大会でスタートしたんですけど、思ったより良くて、100mは10秒13(+2.0)で走れたんです。だけど、8月末のセイコー・ゴールデングランプリは200mが長く感じて、すごく疲れました。タイム(1位/ 20秒74、+0. 6)も出なくて。せっかく五輪会場(国立競技場)でやるのに無観客で、そんな試合は今まで経験したことがなくて、「いつも声援を送ってもらえていた試合は良かったな」と痛感させられましたね。 ──9月の全日本実業団対抗選手権(埼玉・熊谷)では、200mで20秒47(+1.2)の今季ベストを出しました。 飯塚 2020年シーズンで一番良かったのが、あのレースです。良くない時は前半突っ込んで行って、スピードを上げ過ぎて失速しちゃうんですけど、実業団の時はいいリズムで行けました。 ── 日本選手権(新潟)は100m4位(10秒33 /-0. 2)、200m優勝(20秒75 /-0. 5)と、2種目でしっかり結果を残しました。前年は100mで4位に入ったものの、200mの予選で脚を痛めて途中棄権でしたからね。 飯塚 ホッとしました。200mが本職ですけど、100mは楽しいから出たいんですよ。でも、一番難しい。予選、準決勝、決勝と3本あるうち、予選で課題が見つかるんです。それを修正して決勝で一番いいレースができたのは良かったんですが、一発目からしっかり走れないとダメですね。 桐生 100mの決勝の顔ぶれは、ここ数年あまり変わらないですよね。 飯塚 そうだけど、僕は100mだとレースに入れてない。今回だったら桐生とケンブリッジ飛鳥(Nike)、小池祐貴(住友電工)が前にいて、3人がやり合っているのを後ろで見ながら、最後近づいて終わるんです。僕も真横で一緒にレースに参加して、走りたいな。 ──桐生選手は2020年シーズンの戦績をどう振り返りますか。 桐生 山梨の北麓スプリント100m(10秒04/+1. 4)からスタートして、日本選手権で終わったんですけど、今季はユニフォームに新しいロゴを1つつけたので、トップを走ってそれを目立たせようと思っていました。中間目標がセイコー・ゴールデングランプリで勝つこと。これは10秒14(-0. 2)で優勝し、達成しました。新しい国立で初めて試合が行われて、男子100mの〝初代チャンピオン〟ということになるじゃないですか。 飯塚 そうだね。何でも「初めて」はデカい(笑)。
──日本選手権の100mも、きっちり勝ち切りました。
桐生 あれはもっと差がついて、ダントツで勝ってると思ったんですよ。だからガッツポーズしたんですけど、僕が10秒27(-0. 2)でケンブリッジさんが10秒28。スクリーンを見て「恥ずかしい思いをするところだった」と、少々慌てました(笑)。カメラマンが明らかに僕に焦点を合わせていたから「勝ったんだ」と思ったんですよね。
飯塚 0.01秒でも、結構差があるように感じるよね、走っている選手は。
桐生 0.02 ~ 0.03秒差なら、完全にわかります。
──日本選手権は100mも200mも、なぜ記録が伸びなかったんでしょうか。飯塚 選考が懸かってるとみんなの気持ちの入り方が全然違うけど、今回は何もなかったですからね。あとは練習期間が短かったので、シーズンが始まってすぐは行けたけど、日本選手権の頃はもうピークを過ぎていた。僕の場合はそれですね。
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この続きは2020年12月14日発売の『月刊陸上競技1月号』をご覧ください。
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