HOME 国内、海外

2025.05.30

韓国の英雄ウ・サンヒョクが2m29で連覇!大雨順延にも観客帰らず「大きな力になった」/アジア選手権
韓国の英雄ウ・サンヒョクが2m29で連覇!大雨順延にも観客帰らず「大きな力になった」/アジア選手権

アジア選手権男子走高跳で優勝したウ・サンヒョク

◇アジア選手権(5月27日~5月31日/韓国・クミ) 3日目

2年に一度開かれるアジア選手権の3日目が行われ、男子走高跳は地元韓国のスーパースター、ウ・サンヒョクが2m29で連覇を達成した。

ソウルから電車で南に約3時間の内陸部にある慶尚北道・亀尾市(クミ)。人口約40万人だが、それほど大きな街ではない。それでも、この日、朝からスタジアムの周りは前日よりも多くの人が集まっていた。お目当ては午後に行われる男子走高跳。昼休みには会場近くのフードコートも賑わいを見せる。

午後セッションの前に表彰式が行われていたが、18時30分頃、男子100mで栁田大輝(東洋大)が金メダルをかけようかという時に大粒の雨と雷鳴が轟いた。表彰式は中断し、競技開始も遅れた。

競技の中止も検討されるほどの豪雨と雷。だが、観客の多くは帰らない。配られた雨合羽を着て、コンコースで辛ラーメンを頬張る。音楽が流れると口ずさみ、リズムに乗って身体を揺らす。楽しみがこの後に待っているのだ、と。

本来、20時10分スタートだった男子走高跳。午後の競技開始が21時35分に決まり、走高跳は21分40分スタート。おのおの、屋根のある限られたスペースで身体を動かしていたようだが、「ウ・サンヒョクはそこでジョグしていましたよ」とグラウンドを指差したのは醍醐直幸コーチ。「強いですよね」と感嘆の声を漏らす。

広告の下にコンテンツが続きます

入場時、そして練習ジャンプを跳ぶたびに大歓声が沸き起こる。2m15、19、23と次々に1回で成功させていく。食らいついたのは日本の真野友博(九電工)。世界大会で何度も戦ってきた相手でもある。2m26もともに1回でクリア。続く2m29が勝負となる。

雨はいつの間にか上がっていた。真野が先に挑んだが失敗。俄然、歓声が大きくなる。ウ・サンヒョクは「落ち着いて」とジェスチャー。静かになったスタンドを背に、美しいリズムの助走から一気に跳び上がり、ノータッチでクリアした。いつものようにド派手なパフォーマンスで観客を煽る。これが、世界室内を2度制し、ダイヤモンドリーグ・ファイナルを優勝した男の強さだった。

真野も3回目は惜しい跳躍を見せたが失敗。ウ・サンヒョクの連覇が決まった。優勝を決めたウ・サンヒョクは2m33に挑戦し、これは届かなかったが、大きな拍手が起こった。ミックスゾーンに現れたのは23時40分。大勢の韓国メディアの向こう側に、ファンが視線を送っていた。

ウ・サンヒョクは「こんなに遅くなったから、たくさんの方が残って応援してくれると思っていませんでした。本当に大きな力になりました」と感謝を述べ、「だからこそ、素晴らしい結果を出せましたし、金メダルを確定しても2m33に挑戦したのです」と笑顔を見せる。東京世界選手権に向けても「目標を一つ達成できた」とステップになりそうだ。

アジアを代表するスーパースターのパフォーマンスに酔いしれた観客は、すっかり雨が上がった夜空を見上げながら幸せそうに帰路についた。こんな光景が9月の東京でも見られたらどれだけ素敵だろうか。

◇アジア選手権(5月27日~5月31日/韓国・クミ) 3日目 2年に一度開かれるアジア選手権の3日目が行われ、男子走高跳は地元韓国のスーパースター、ウ・サンヒョクが2m29で連覇を達成した。 ソウルから電車で南に約3時間の内陸部にある慶尚北道・亀尾市(クミ)。人口約40万人だが、それほど大きな街ではない。それでも、この日、朝からスタジアムの周りは前日よりも多くの人が集まっていた。お目当ては午後に行われる男子走高跳。昼休みには会場近くのフードコートも賑わいを見せる。 午後セッションの前に表彰式が行われていたが、18時30分頃、男子100mで栁田大輝(東洋大)が金メダルをかけようかという時に大粒の雨と雷鳴が轟いた。表彰式は中断し、競技開始も遅れた。 競技の中止も検討されるほどの豪雨と雷。だが、観客の多くは帰らない。配られた雨合羽を着て、コンコースで辛ラーメンを頬張る。音楽が流れると口ずさみ、リズムに乗って身体を揺らす。楽しみがこの後に待っているのだ、と。 本来、20時10分スタートだった男子走高跳。午後の競技開始が21時35分に決まり、走高跳は21分40分スタート。おのおの、屋根のある限られたスペースで身体を動かしていたようだが、「ウ・サンヒョクはそこでジョグしていましたよ」とグラウンドを指差したのは醍醐直幸コーチ。「強いですよね」と感嘆の声を漏らす。 入場時、そして練習ジャンプを跳ぶたびに大歓声が沸き起こる。2m15、19、23と次々に1回で成功させていく。食らいついたのは日本の真野友博(九電工)。世界大会で何度も戦ってきた相手でもある。2m26もともに1回でクリア。続く2m29が勝負となる。 雨はいつの間にか上がっていた。真野が先に挑んだが失敗。俄然、歓声が大きくなる。ウ・サンヒョクは「落ち着いて」とジェスチャー。静かになったスタンドを背に、美しいリズムの助走から一気に跳び上がり、ノータッチでクリアした。いつものようにド派手なパフォーマンスで観客を煽る。これが、世界室内を2度制し、ダイヤモンドリーグ・ファイナルを優勝した男の強さだった。 真野も3回目は惜しい跳躍を見せたが失敗。ウ・サンヒョクの連覇が決まった。優勝を決めたウ・サンヒョクは2m33に挑戦し、これは届かなかったが、大きな拍手が起こった。ミックスゾーンに現れたのは23時40分。大勢の韓国メディアの向こう側に、ファンが視線を送っていた。 ウ・サンヒョクは「こんなに遅くなったから、たくさんの方が残って応援してくれると思っていませんでした。本当に大きな力になりました」と感謝を述べ、「だからこそ、素晴らしい結果を出せましたし、金メダルを確定しても2m33に挑戦したのです」と笑顔を見せる。東京世界選手権に向けても「目標を一つ達成できた」とステップになりそうだ。 アジアを代表するスーパースターのパフォーマンスに酔いしれた観客は、すっかり雨が上がった夜空を見上げながら幸せそうに帰路についた。こんな光景が9月の東京でも見られたらどれだけ素敵だろうか。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.09.03

ライルズ、ホロウェイ、ラッセル、マクローリン・レヴロンがエントリー! 米国代表141人発表/東京世界陸上

米国陸連は9月2日、9月13日に開幕する東京世界選手権の米国代表141人を発表した。 男子は2023年ブダペスト大会に続いて2大会連続で100mと200mで2冠を狙うN.ライルズや、110mハードルで4連覇が懸かるパリ五 […]

NEWS パリ五輪女子200m金のトマスが出場辞退 男子砲丸投銀のコヴァクスは出場権得られず/東京世界陸上

2025.09.03

パリ五輪女子200m金のトマスが出場辞退 男子砲丸投銀のコヴァクスは出場権得られず/東京世界陸上

米国陸連は9月13日に開幕する東京世界選手権の米国代表を発表し、女子200mでパリ五輪金メダリストのG.トマスが出場しないことが明らかになった。トマスは7月の全米選手権で22秒20をマークして3位に入ったが、アキレス腱の […]

NEWS 100mアモ・ダジエが9秒87の自己新マーク 英国4×100mR代表選出の33歳

2025.09.03

100mアモ・ダジエが9秒87の自己新マーク 英国4×100mR代表選出の33歳

8月30日に英国・ロンドンで開催されたBFTTAで、E.アモ・ダジエ(英国)が9秒87(+2.0)の自己新で優勝した。 アモ・ダジエは現在33歳。これまでの自己記録は23年にマークした9秒93で、100mでは東京世界選手 […]

NEWS イタリア代表にタンベリらが選出 インゲブリグトセンは2種目、17歳ガウト200mで出場/東京世界陸上

2025.09.03

イタリア代表にタンベリらが選出 インゲブリグトセンは2種目、17歳ガウト200mで出場/東京世界陸上

9月13日に開幕する東京世界選手権の代表選手が各国から発表されている。 イタリア代表では、男子走高跳の東京五輪金メダリストM.タンベリが選ばれた。パリ五輪の女子10000mで銀メダルを獲得したN.バットクレッティが500 […]

NEWS 大塚製薬が東京世界陸上をポカリスエットでサポート!製品提供やイベントブースでさまざまなコンテンツを展開

2025.09.03

大塚製薬が東京世界陸上をポカリスエットでサポート!製品提供やイベントブースでさまざまなコンテンツを展開

大塚製薬は9月3日、グローバルサポーターとして協賛する東京世界選手権において、「人の可能性を信じる。」をキーメッセージに、ポカリスエットをはじめとする製品を通じて世界中から集う選手たちやすべての大会関係者をサポートすると […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年9月号 (8月12日発売)

2025年9月号 (8月12日発売)

衝撃の5日間
広島インターハイ特集!
桐生祥秀 9秒99

page top