◇アジア選手権(5月27日~5月31日/韓国・クミ) 3日目
2年に一度開かれるアジア選手権の3日目が行われ、男子走高跳は地元韓国のスーパースター、ウ・サンヒョクが2m29で連覇を達成した。
ソウルから電車で南に約3時間の内陸部にある慶尚北道・亀尾市(クミ)。人口約40万人だが、それほど大きな街ではない。それでも、この日、朝からスタジアムの周りは前日よりも多くの人が集まっていた。お目当ては午後に行われる男子走高跳。昼休みには会場近くのフードコートも賑わいを見せる。
午後セッションの前に表彰式が行われていたが、18時30分頃、男子100mで栁田大輝(東洋大)が金メダルをかけようかという時に大粒の雨と雷鳴が轟いた。表彰式は中断し、競技開始も遅れた。
競技の中止も検討されるほどの豪雨と雷。だが、観客の多くは帰らない。配られた雨合羽を着て、コンコースで辛ラーメンを頬張る。音楽が流れると口ずさみ、リズムに乗って身体を揺らす。楽しみがこの後に待っているのだ、と。
本来、20時10分スタートだった男子走高跳。午後の競技開始が21時35分に決まり、走高跳は21分40分スタート。おのおの、屋根のある限られたスペースで身体を動かしていたようだが、「ウ・サンヒョクはそこでジョグしていましたよ」とグラウンドを指差したのは醍醐直幸コーチ。「強いですよね」と感嘆の声を漏らす。
入場時、そして練習ジャンプを跳ぶたびに大歓声が沸き起こる。2m15、19、23と次々に1回で成功させていく。食らいついたのは日本の真野友博(九電工)。世界大会で何度も戦ってきた相手でもある。2m26もともに1回でクリア。続く2m29が勝負となる。
雨はいつの間にか上がっていた。真野が先に挑んだが失敗。俄然、歓声が大きくなる。ウ・サンヒョクは「落ち着いて」とジェスチャー。静かになったスタンドを背に、美しいリズムの助走から一気に跳び上がり、ノータッチでクリアした。いつものようにド派手なパフォーマンスで観客を煽る。これが、世界室内を2度制し、ダイヤモンドリーグ・ファイナルを優勝した男の強さだった。
真野も3回目は惜しい跳躍を見せたが失敗。ウ・サンヒョクの連覇が決まった。優勝を決めたウ・サンヒョクは2m33に挑戦し、これは届かなかったが、大きな拍手が起こった。ミックスゾーンに現れたのは23時40分。大勢の韓国メディアの向こう側に、ファンが視線を送っていた。
ウ・サンヒョクは「こんなに遅くなったから、たくさんの方が残って応援してくれると思っていませんでした。本当に大きな力になりました」と感謝を述べ、「だからこそ、素晴らしい結果を出せましたし、金メダルを確定しても2m33に挑戦したのです」と笑顔を見せる。東京世界選手権に向けても「目標を一つ達成できた」とステップになりそうだ。
アジアを代表するスーパースターのパフォーマンスに酔いしれた観客は、すっかり雨が上がった夜空を見上げながら幸せそうに帰路についた。こんな光景が9月の東京でも見られたらどれだけ素敵だろうか。
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