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2025.02.16

山西利和が世界新Vで東京切符 復活ではなく「新しいフェーズ」盟友スタノもエール/日本選手権20km競歩
山西利和が世界新Vで東京切符 復活ではなく「新しいフェーズ」盟友スタノもエール/日本選手権20km競歩

山西利和(25年日本選手権20km競歩)

◇第108回日本選手権20km競歩(2月16日/兵庫県神戸市・六甲アイランド付設コース)

東京世界選手権代表選考会を兼ねた第108回日本選手権20km競歩が2月16日行われ、男子は山西利和(愛知製鋼)が1時間16分10秒の世界新記録で4大会ぶり3度目の優勝を果たした。

華麗なる復活劇、いや、本人の言葉を借りれば「新しいフェーズ」「違う世界線」。19年ドーハ、22年オレゴンと世界選手権で連覇。東京五輪も銅メダルを手にしている山西。だが、1年前のこの大会、パリ五輪代表選考会に臨んだ山西は、厚底シューズへの対応に時間を要した影響などもありトップフォームに戻らず。競技生活初の失格に終わった。

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「ここで辞めるのはないだろう」と思う自分と、実業団でやると決意した時に「代表から外れたら退く」と覚悟を決めていた自分の間で感情が揺れ動いた。過去の自分に「後ろ髪」を引かれながらも過去の自分を「説得」し、再び歩き始めた。

「この1年、やりたいことをやらせてもらった」。初めて海外選手と同じように世界陸連(WA)競歩ツアーを転戦し、そこで優勝。海外の関係者から「どうしてパリに出ないんだ」と何度も声をかけられた。海外レースを経験しながら、厚底のフォーム、そして審判の判定を緻密にすり合わせていく。「違う箱に入れてもらえて、本当にイチから作っていきました」。まるで競歩を始めた頃と同じように、じっくり作り上げ、発見していくのが楽しかったのかもしれない。どこか自分の可能性が広がっているのを感じた。

その中で、かねてから交流のあった東京五輪金メダリストのマッシモ・スタノ(イタリア)と一緒にトレーニングする提案を受けた。パリ五輪前の大事な時期に、世界トップがどんな調整をするのか肌で感じたという。さらに、12月には「日本に行って練習したい」というスタノの話をもちろん快諾。「自分の武器、この人の強みも知れました。ヨーロッパの選手の骨格がやるトレーニングがどういうものか。貴重な経験でした」。この日は家族と見守り、エールを送ったスタノも「トシカズは良き友達でライバル。日本でのトレーニングも経験になりました」と語る。

最初の1kmは3分46秒という超ハイペース。その後も3分50秒前後でラップを刻んだが、「前半は集団のリズムと自分のリズムが合わずハマりきらなかった」。腕振りのタイミングなどに苦心したが、圧巻だったのは12km付近。13kmまでは3分48秒にあげると、さらに14kmまでを3分44秒にペースアップ。一人旅になりリズムをつかんだ。

「世界記録は狙っていましたが、歩いていてもこのまま行けば範囲内だなと。あとは審判との対話」。厚底シューズのコントロールが難しくなる後半は、これまでやってきた下肢の補強の効果から乱れない。笑顔にも見えるVウォーク。フィニッシュした瞬間は、いつもの山西通り、感情が爆発することはなく。世界新にも冷静に、淡々と。「ホッとしました」。

ただ、スタノと熱い抱擁を交わし、応援団を前にすると、世界選手権内定のボードを高々と掲げる。「この1年がなければ、また同じことを繰り返していたと思います。やりたいことをやったからには結果への責任が必要」。これも山西らしく、自らの美学を貫き、結果として表現してみせた。

今大会、良きライバルでもある池田向希(旭化成)が不在。本人が否定しているドーピング違反により、スタートにさえ立てなかった。「もしいればもっと難しい展開になったと思いますし、15kmから勝負しないといけなかった。残念ながらそのシビアさはなかったです。自分の想像をはるかに超える時が一番(感情が)爆発する。それはやっぱり、池田のような相手がいるからこそ。1人ではたどり着けない部分でもあります」と、苦しむライバルに最大限のエールを送った。

これで『世界』の舞台に山西が戻ってくる。「またチャンスをもらえたので、今度こそ、というのではないですが、新しいトライをして、優勝を狙いたい」。再び世界の頂点に返り咲くために。新しい姿を見せた『王者・山西利和』が王道を突き進む。

◇第108回日本選手権20km競歩(2月16日/兵庫県神戸市・六甲アイランド付設コース) 東京世界選手権代表選考会を兼ねた第108回日本選手権20km競歩が2月16日行われ、男子は山西利和(愛知製鋼)が1時間16分10秒の世界新記録で4大会ぶり3度目の優勝を果たした。 華麗なる復活劇、いや、本人の言葉を借りれば「新しいフェーズ」「違う世界線」。19年ドーハ、22年オレゴンと世界選手権で連覇。東京五輪も銅メダルを手にしている山西。だが、1年前のこの大会、パリ五輪代表選考会に臨んだ山西は、厚底シューズへの対応に時間を要した影響などもありトップフォームに戻らず。競技生活初の失格に終わった。 「ここで辞めるのはないだろう」と思う自分と、実業団でやると決意した時に「代表から外れたら退く」と覚悟を決めていた自分の間で感情が揺れ動いた。過去の自分に「後ろ髪」を引かれながらも過去の自分を「説得」し、再び歩き始めた。 「この1年、やりたいことをやらせてもらった」。初めて海外選手と同じように世界陸連(WA)競歩ツアーを転戦し、そこで優勝。海外の関係者から「どうしてパリに出ないんだ」と何度も声をかけられた。海外レースを経験しながら、厚底のフォーム、そして審判の判定を緻密にすり合わせていく。「違う箱に入れてもらえて、本当にイチから作っていきました」。まるで競歩を始めた頃と同じように、じっくり作り上げ、発見していくのが楽しかったのかもしれない。どこか自分の可能性が広がっているのを感じた。 その中で、かねてから交流のあった東京五輪金メダリストのマッシモ・スタノ(イタリア)と一緒にトレーニングする提案を受けた。パリ五輪前の大事な時期に、世界トップがどんな調整をするのか肌で感じたという。さらに、12月には「日本に行って練習したい」というスタノの話をもちろん快諾。「自分の武器、この人の強みも知れました。ヨーロッパの選手の骨格がやるトレーニングがどういうものか。貴重な経験でした」。この日は家族と見守り、エールを送ったスタノも「トシカズは良き友達でライバル。日本でのトレーニングも経験になりました」と語る。 最初の1kmは3分46秒という超ハイペース。その後も3分50秒前後でラップを刻んだが、「前半は集団のリズムと自分のリズムが合わずハマりきらなかった」。腕振りのタイミングなどに苦心したが、圧巻だったのは12km付近。13kmまでは3分48秒にあげると、さらに14kmまでを3分44秒にペースアップ。一人旅になりリズムをつかんだ。 「世界記録は狙っていましたが、歩いていてもこのまま行けば範囲内だなと。あとは審判との対話」。厚底シューズのコントロールが難しくなる後半は、これまでやってきた下肢の補強の効果から乱れない。笑顔にも見えるVウォーク。フィニッシュした瞬間は、いつもの山西通り、感情が爆発することはなく。世界新にも冷静に、淡々と。「ホッとしました」。 ただ、スタノと熱い抱擁を交わし、応援団を前にすると、世界選手権内定のボードを高々と掲げる。「この1年がなければ、また同じことを繰り返していたと思います。やりたいことをやったからには結果への責任が必要」。これも山西らしく、自らの美学を貫き、結果として表現してみせた。 今大会、良きライバルでもある池田向希(旭化成)が不在。本人が否定しているドーピング違反により、スタートにさえ立てなかった。「もしいればもっと難しい展開になったと思いますし、15kmから勝負しないといけなかった。残念ながらそのシビアさはなかったです。自分の想像をはるかに超える時が一番(感情が)爆発する。それはやっぱり、池田のような相手がいるからこそ。1人ではたどり着けない部分でもあります」と、苦しむライバルに最大限のエールを送った。 これで『世界』の舞台に山西が戻ってくる。「またチャンスをもらえたので、今度こそ、というのではないですが、新しいトライをして、優勝を狙いたい」。再び世界の頂点に返り咲くために。新しい姿を見せた『王者・山西利和』が王道を突き進む。

男子20km競歩 世界歴代10傑をチェック!

1.16.10 山西利和(愛知製鋼)   2025. 2.16 1.16.36 鈴木雄介(富士通)    2015. 3.15 1.16.43 S.モロゾフ(ロシア)   2008. 6. 8 1.16.54 王凱華(中国)      2021. 3.20 1.17.02 Y.ディニ(フランス)   2015. 3. 8 1.17.16 V.カナイキン(ロシア)  2007. 9.29 1.17.21 J.ペレス(エクアドル)  2003. 8.23 1.17.22 F.J.フェルナンデス(スペイン) 2002. 4.28 1.17.23 V.スタンキン(ロシア)  2004. 2. 8 1.17.24 川野将虎(東洋大)    2019. 3.17 1.17.24 丸尾知司(愛知製鋼)   2025. 2.16 

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