2020.10.16
Rising Star Athlete
伊藤 陸(近大高専)
歴史を切り開き続ける期待のジャンパー
〝二刀流〟で世界を目指す
昨年、伊藤陸(近大高専)は日本インカレ男子三段跳で、最古のU20日本記録を42年ぶりに更新した。その勢いのまま、今年の2月の日本選手権・室内でもシニア初タイトル。さらに上昇気流を描こうかというところで、シーズンは止まった。それでも、今年の日本インカレでは自身の持つU20年日本記録を、今度は〝1年ぶり〟に更新。さらに日本選手権では走幅跳との、39年ぶりの跳躍ダブル入賞。スケールの大きな跳躍を見せる日本期待のジャンパーは、次にどれほど大きなステップアップを見せるのだろうか。
●文/花木 雫
日本インカレをU20日本新で連覇
すらりと長い手脚と立ち姿。この男が秘める可能性は計り知れない。日本インカレ男子三段跳で連覇を果たした伊藤陸(近大高専)。昨年のこの大会で42年ぶりに塗り替えたU20日本記録を1㎝更新する16m35(-0.1)を跳び、再び表彰台の真ん中に立った。その時点でU20今季世界2位の好記録だったが、「踏み切り板に乗っていなくて、1つ前の3回目(16m02)のほうが助走から跳躍の流れが良かった」と首を傾げる。
優勝した三段跳、前回4位から表彰台に上る3位にジャンプアップした走幅跳ともに今回が屋外3戦目。「試合も少なく、まだ全助走には(技術的にも体力的にも)耐えられない」という理由から日本インカレでは全助走から2歩少ない15歩で跳んだ。それでも自己新に、「前回は、持っている力を出し切った感じでしたが、今回は、余力があった。もう少し行ける感覚がありました」と、手応えをつかんだ様子だった。
現在、高専の最終学年となる5年生。大学に当てはめると2年生の学年となる。3年から4年に進級するにあたり4年制大学に編入する選択肢もあったが、環境は変えず、松尾大介先生の指導を仰ぐことを選択。「中学時代、全中にも出ていなかった僕がU18日本選手権で2冠(18年)を獲得するまで成長できたのは松尾先生のお陰」と、信頼を置いている。
昨シーズンを終え、「冬はウエイトトレーニングを中心に体力とスピードの強化を図ってきました」と伊藤。身長は1㎝、体重も2~3㎏増え、187㎝・70㎏とひと回り大きくなった。それでも、「立ち五段跳びは14m台で体力的には高校生レベル。測定合宿の数値を見ても橋岡君(優輝・日大)などとは比べ物にならないくらい低いです」と松尾先生は手厳しい。そうした中で16mを連発するあたり、伸びしろを感じずにはいられない。
2001年1月生まれのため、今年までU20資格を持つ。本来であれば、7月にケニア・ナイロビで開催予定だったU20世界選手権でのメダル獲得を目標にしていた。しかし、大会は1年延期に。「残念でしたが、それほど引きずることはありませんでした。日本選手権など秋に開かれることになった大会で結果を残すことに目標を切り替えました」と当時の心境を語る。
春以降も学校の協力もあり、ある程度はグラウンドで練習を積めていたという。手応えを感じてはいたが、試合がなかったぶん、成果を試す場はなかなか来なかった。「練習では全助走のジャンプはできません。強化した部分に技術を乗せていくには時間と経験が必要」と松尾先生。そのため、初戦の三重県選手権では11歩、2戦目の富士北麓ワールドトライアルではインカレに向け15歩を試し、ステップを踏んできた。
インカレ後の日本選手権では走幅跳3位、三段跳は16m00(+0. 2)で4位と悔しさを味わったが、ダブル入賞は1986年の大村一光(筑波大)以来、39年ぶりの快挙だった。
同学年やトップ選手との交流で成長
走幅跳の選手だった父親の勧めもあり、小2の冬から地元・菰野町の陸上クラブ「菰野SCクラブ」に入部。中学から本格的に走幅跳に取り組んだが、ベストは6m29と全国大会には届かなかった。三段跳にも挑戦し、ベストは12m15。「活躍したいなら近大高専」という中学の顧問・中村光宏先生(現・志摩中)の助言で進学を決め、寮生活を送っている。「陸上が好きで素直。跳躍に関しても癖がなく、何事も楽しみながら取り組んでいました」と松尾先生は入学したばかりの頃を振り返る。ちなみに、父・純哉さんは93年の栃木インターハイ走幅跳8位に入賞しており、その時に1学年下で5位だったのが松尾先生と、浅からぬ縁がある。
この続きは2020年10月14日発売の『月刊陸上競技11月号』をご覧ください。
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Rising Star Athlete 伊藤 陸(近大高専)
歴史を切り開き続ける期待のジャンパー 〝二刀流〟で世界を目指す

日本インカレをU20日本新で連覇
すらりと長い手脚と立ち姿。この男が秘める可能性は計り知れない。日本インカレ男子三段跳で連覇を果たした伊藤陸(近大高専)。昨年のこの大会で42年ぶりに塗り替えたU20日本記録を1㎝更新する16m35(-0.1)を跳び、再び表彰台の真ん中に立った。その時点でU20今季世界2位の好記録だったが、「踏み切り板に乗っていなくて、1つ前の3回目(16m02)のほうが助走から跳躍の流れが良かった」と首を傾げる。 優勝した三段跳、前回4位から表彰台に上る3位にジャンプアップした走幅跳ともに今回が屋外3戦目。「試合も少なく、まだ全助走には(技術的にも体力的にも)耐えられない」という理由から日本インカレでは全助走から2歩少ない15歩で跳んだ。それでも自己新に、「前回は、持っている力を出し切った感じでしたが、今回は、余力があった。もう少し行ける感覚がありました」と、手応えをつかんだ様子だった。 現在、高専の最終学年となる5年生。大学に当てはめると2年生の学年となる。3年から4年に進級するにあたり4年制大学に編入する選択肢もあったが、環境は変えず、松尾大介先生の指導を仰ぐことを選択。「中学時代、全中にも出ていなかった僕がU18日本選手権で2冠(18年)を獲得するまで成長できたのは松尾先生のお陰」と、信頼を置いている。 昨シーズンを終え、「冬はウエイトトレーニングを中心に体力とスピードの強化を図ってきました」と伊藤。身長は1㎝、体重も2~3㎏増え、187㎝・70㎏とひと回り大きくなった。それでも、「立ち五段跳びは14m台で体力的には高校生レベル。測定合宿の数値を見ても橋岡君(優輝・日大)などとは比べ物にならないくらい低いです」と松尾先生は手厳しい。そうした中で16mを連発するあたり、伸びしろを感じずにはいられない。 2001年1月生まれのため、今年までU20資格を持つ。本来であれば、7月にケニア・ナイロビで開催予定だったU20世界選手権でのメダル獲得を目標にしていた。しかし、大会は1年延期に。「残念でしたが、それほど引きずることはありませんでした。日本選手権など秋に開かれることになった大会で結果を残すことに目標を切り替えました」と当時の心境を語る。 春以降も学校の協力もあり、ある程度はグラウンドで練習を積めていたという。手応えを感じてはいたが、試合がなかったぶん、成果を試す場はなかなか来なかった。「練習では全助走のジャンプはできません。強化した部分に技術を乗せていくには時間と経験が必要」と松尾先生。そのため、初戦の三重県選手権では11歩、2戦目の富士北麓ワールドトライアルではインカレに向け15歩を試し、ステップを踏んできた。 インカレ後の日本選手権では走幅跳3位、三段跳は16m00(+0. 2)で4位と悔しさを味わったが、ダブル入賞は1986年の大村一光(筑波大)以来、39年ぶりの快挙だった。
同学年やトップ選手との交流で成長
走幅跳の選手だった父親の勧めもあり、小2の冬から地元・菰野町の陸上クラブ「菰野SCクラブ」に入部。中学から本格的に走幅跳に取り組んだが、ベストは6m29と全国大会には届かなかった。三段跳にも挑戦し、ベストは12m15。「活躍したいなら近大高専」という中学の顧問・中村光宏先生(現・志摩中)の助言で進学を決め、寮生活を送っている。「陸上が好きで素直。跳躍に関しても癖がなく、何事も楽しみながら取り組んでいました」と松尾先生は入学したばかりの頃を振り返る。ちなみに、父・純哉さんは93年の栃木インターハイ走幅跳8位に入賞しており、その時に1学年下で5位だったのが松尾先生と、浅からぬ縁がある。 この続きは2020年10月14日発売の『月刊陸上競技11月号』をご覧ください。
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