HOME 国内、高校

2024.07.01

衝撃の800m 高校生・落合晃&久保凛が圧倒的スピードでシニア選手を蹴散らす/日本選手権
衝撃の800m 高校生・落合晃&久保凛が圧倒的スピードでシニア選手を蹴散らす/日本選手権

24年日本選手権800mを制覇した落合晃と久保凛

◇第108回日本選手権(6月27日~30日/新潟・デンカビッグスワンスタジアム)4日目日

第108回日本選手権の4日目が行われ、男女の800mはいずれも若き高校生アスリートが好タイムで頂点に。ともに日本記録保持者や五輪代表経験者を相手にしての激走は、詰めかけたファンの度肝を抜く走りだった。

先に行われた女子は、残り1周を告げる鐘の音とともに久保凛(東大阪大敬愛高2大阪)がトップに立った。バックストレートで大会3冠を目指した田中希実(New Balance)が外側から前に出かける場面もあったが、「残り250mから仕掛けようと考えていたので、焦りありませんでした」と、一気にギアチェンジ。持ち味でもあるラストスパートで、みるみるうちに後ろとの差を広げ、真っ先にフィニッシュに駆け込んだ。タイムも2分03秒13と、2週間前のインターハイ近畿大会でマークした2分03秒50のU18日本記録を塗り替えるレコードとなった。

広告の下にコンテンツが続きます

高校記録(2分02秒57)を持つ塩見綾乃(岩谷産業)が引っ張り、400mは61秒で通過。久保としては59~60秒で通過する想定だったため、目指していた高校記録には届かなかった。「優勝できたことは自信になりますが、記録も狙っていたので、その部分は残念」と、勝てた喜びとともに、悔しさも募る。

それでも、5月の静岡国際など春のグランプリシリーズを含めシニア勢に4連勝。もちろん高校生にも負けずに前半シーズンを駆け抜けた。U18世代では、6月末時点で今季世界リストでも3位、U20でも10位につける。「世界には1分台の選手が大勢いる。高校記録を今年中に塗り替え、来年は日本記録(2分00秒45)。ゆくゆくは田中さんのように、世界を舞台に戦える選手になりたい」と志を高く持つ。

男子は、前日の予選で日本記録に0.07秒と迫る1分45秒82という衝撃のレースを演じた落合晃(滋賀学園高3滋賀)が、再び主役に。U20日本新、そして高校新、大会新を樹立した疲れも懸念されたが、1周目から先頭を引っ張るレースを展開し、1分46秒56で初優勝。それでもなお、「パリ五輪の標準突破(1分44秒70)を目指してやってきたので、それが叶わず残念です」とフィニッシュ後には悔しさでトラックに拳をぶつけた。

「記録を狙う上で1周目を51秒前後では入りたかった」とシニア勢を差し置き、スタート直後から積極的に飛ばしレースを支配。ただ、「自分の感覚としては51秒台で行っているつもり」という1周目が53秒と、1秒あまりの誤差が生じてた。

2周目も最後まで力を振り絞ったものの、タイムは及ばず。レース後には「(51秒で)行けていない時点でもう一段階上の力が必要だった」とつぶやいた。

昨夏、インターハイを大会新記録の1分47秒92で制して以降、今季の目標をパリ五輪出場と決め、ここまで突き進んできた。「今回、日本人が誰も行っていないタイム(1分44秒台)を目指してやってきたからこと、予選の記録にもつながりました。高い目標に挑んでいなければ、今回の優勝も45秒台の記録もなかったと思います」と落合。

パリ五輪の挑戦は幕を閉じたが、得るものの大きかった。この後の目標はまだ決めていないと言うものの、「800mはもちろん、1500mも5000mも、そして駅伝でもしっかり走れるように練習を積んでいきたい」と気持ちが切れることはない。

5000mや10000mとは異なり、世界とやや距離のある800m。新潟を舞台に繰り広げられた高校生の果敢なチャレンジが、その壁をぶち破る起爆剤となる。

文/花木 雫

◇第108回日本選手権(6月27日~30日/新潟・デンカビッグスワンスタジアム)4日目日 第108回日本選手権の4日目が行われ、男女の800mはいずれも若き高校生アスリートが好タイムで頂点に。ともに日本記録保持者や五輪代表経験者を相手にしての激走は、詰めかけたファンの度肝を抜く走りだった。 先に行われた女子は、残り1周を告げる鐘の音とともに久保凛(東大阪大敬愛高2大阪)がトップに立った。バックストレートで大会3冠を目指した田中希実(New Balance)が外側から前に出かける場面もあったが、「残り250mから仕掛けようと考えていたので、焦りありませんでした」と、一気にギアチェンジ。持ち味でもあるラストスパートで、みるみるうちに後ろとの差を広げ、真っ先にフィニッシュに駆け込んだ。タイムも2分03秒13と、2週間前のインターハイ近畿大会でマークした2分03秒50のU18日本記録を塗り替えるレコードとなった。 高校記録(2分02秒57)を持つ塩見綾乃(岩谷産業)が引っ張り、400mは61秒で通過。久保としては59~60秒で通過する想定だったため、目指していた高校記録には届かなかった。「優勝できたことは自信になりますが、記録も狙っていたので、その部分は残念」と、勝てた喜びとともに、悔しさも募る。 それでも、5月の静岡国際など春のグランプリシリーズを含めシニア勢に4連勝。もちろん高校生にも負けずに前半シーズンを駆け抜けた。U18世代では、6月末時点で今季世界リストでも3位、U20でも10位につける。「世界には1分台の選手が大勢いる。高校記録を今年中に塗り替え、来年は日本記録(2分00秒45)。ゆくゆくは田中さんのように、世界を舞台に戦える選手になりたい」と志を高く持つ。 男子は、前日の予選で日本記録に0.07秒と迫る1分45秒82という衝撃のレースを演じた落合晃(滋賀学園高3滋賀)が、再び主役に。U20日本新、そして高校新、大会新を樹立した疲れも懸念されたが、1周目から先頭を引っ張るレースを展開し、1分46秒56で初優勝。それでもなお、「パリ五輪の標準突破(1分44秒70)を目指してやってきたので、それが叶わず残念です」とフィニッシュ後には悔しさでトラックに拳をぶつけた。 「記録を狙う上で1周目を51秒前後では入りたかった」とシニア勢を差し置き、スタート直後から積極的に飛ばしレースを支配。ただ、「自分の感覚としては51秒台で行っているつもり」という1周目が53秒と、1秒あまりの誤差が生じてた。 2周目も最後まで力を振り絞ったものの、タイムは及ばず。レース後には「(51秒で)行けていない時点でもう一段階上の力が必要だった」とつぶやいた。 昨夏、インターハイを大会新記録の1分47秒92で制して以降、今季の目標をパリ五輪出場と決め、ここまで突き進んできた。「今回、日本人が誰も行っていないタイム(1分44秒台)を目指してやってきたからこと、予選の記録にもつながりました。高い目標に挑んでいなければ、今回の優勝も45秒台の記録もなかったと思います」と落合。 パリ五輪の挑戦は幕を閉じたが、得るものの大きかった。この後の目標はまだ決めていないと言うものの、「800mはもちろん、1500mも5000mも、そして駅伝でもしっかり走れるように練習を積んでいきたい」と気持ちが切れることはない。 5000mや10000mとは異なり、世界とやや距離のある800m。新潟を舞台に繰り広げられた高校生の果敢なチャレンジが、その壁をぶち破る起爆剤となる。 文/花木 雫

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.18

駒大4年生4本柱は主要区間を熱望! 主将・山川拓馬「エース区間に挑みたい」 佐藤圭汰「しっかり走って恩返しを」

第102回箱根駅伝で3年ぶりの総合優勝を狙う駒大が12月18日、オンラインで合同会見を行い、エントリー選手が出席した。 今季の駒大は4年生の4人が強力。それぞれ希望区間を問われると、主将の山川拓馬は2区と5区、伊藤蒼唯は […]

NEWS 箱根駅伝Stories/青学大3連覇へ、過去最高レベルの戦力 「チームを勝たせる走り」を結集

2025.12.18

箱根駅伝Stories/青学大3連覇へ、過去最高レベルの戦力 「チームを勝たせる走り」を結集

前回優勝メンバーから6人が卒業 前回、10時間41分19秒の大会新記録で連覇を飾ったメンバーから6人が卒業。それも4区で歴代2位の好タイムをマークした太田蒼生(現・GMOインターネットグループ)に5、6区連続区間新で、「 […]

NEWS 横山隆義氏が死去 由良育英高でインターハイ2度の総合V 全国高校駅伝でも準優勝に導く

2025.12.18

横山隆義氏が死去 由良育英高でインターハイ2度の総合V 全国高校駅伝でも準優勝に導く

鳥取・由良育英高(現・鳥取中央育英高)の陸上部顧問として、インターハイで2度の総合優勝に導き、高校駅伝でも全国大会で2度の準優勝を果たした横山隆義氏が、12月15日、肺炎のため亡くなった。81歳だった。 横山氏は1942 […]

NEWS 26年7月に第1回U23アジア選手権開催が決定! アジア跳躍選手権も実施予定

2025.12.18

26年7月に第1回U23アジア選手権開催が決定! アジア跳躍選手権も実施予定

アジア陸上競技評議会(AAC)は、2026年7月9日から12日の日程で、第1回U23アジア選手権を中国・オルドスで開催することを発表した。 陸上競技では、U18やU20など年齢別の競技会が実施されており、U20カテゴリー […]

NEWS 中大・吉居駿恭主将「一番恩返しできるのが優勝」 溜池一太は初マラソン意向も「箱根だけしか考えていない」

2025.12.18

中大・吉居駿恭主将「一番恩返しできるのが優勝」 溜池一太は初マラソン意向も「箱根だけしか考えていない」

第102回箱根駅伝で30年ぶりとなる総合優勝を狙う中大が12月18日、東京・八王子市の多摩キャンパスで合同取材を開いた。 主将の吉居駿恭(4年)は「昨年の11月中旬くらいに(総合優勝の)目標を立てました。昨年の全日本の結 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2026年1月号 (12月12日発売)

2026年1月号 (12月12日発売)

箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望
大迫傑がマラソン日本新
箱根駅伝「5強」主将インタビュー
クイーンズ駅伝/福岡国際マラソン
〔新旧男子100m高校記録保持者〕桐生祥秀×清水空跳

page top