2020.10.09
【シューズレポ】
サブスリー編集者が語る!!
「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%」
中学時代から陸上競技に取り組み、今も市民ランナーとして走り続けている月陸編集者(マラソンの自己ベストは2時間43分)が、注目のシューズをトライアル! 今回はナイキの「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%」(税込み33,000円)を紹介する。
現時点での『最速シューズ』
ランニング界に「厚底ブーム」を生み出し、業界のナンバーワンに君臨しているナイキ。そのナイキが2020年時点で「史上最速シューズ」として展開しているのが「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%(以下、アルファフライ)」だ。

ナイキのトップレーシングシューズである「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%」。新色である「ブライト マンゴー」が9月に発売された
2019年10月にはアルファフライのプロトタイプ(試作品)を履いたエリウド・キプチョゲ(ケニア)が、非公認レースながら42.195kmを人類で初めて2時間を切る1時間59分40秒で走破。今年3月の東京マラソンでは大迫傑選手(Nike)もアルファフライで2時間5分29秒の日本新記録を樹立しており、男子マラソンでは国内外ともアルファフライが文字通り「最速シューズ」となっている。
さらに、日本国内ではマラソンだけでなくトラックでもアルファフライを履いた選手が快走。7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会の5000mでは石田洸介選手(群馬・東農大二高3年)が16年ぶり高校新となる13分36秒89を叩き出し、長距離界の歴史を大きく動かした(石田選手は9月に13分34秒74とさらに記録を短縮)。その後、世界陸連のルール変更によってソールが25mmを超える厚底シューズはトラックレースでの使用がNGとなったが(11月末までは条件付きで使用できる場合もある)、それだけ『厚底旋風』の影響は大きかったとも言えるだろう。
シューズを「厚底化」させたズームX
そもそもシューズはなぜ厚底になったのか。従来、トップ選手が履くようなレーシングシューズは「薄底で軽量」がセオリーだった。しかし、薄底は軽くて反発性が高い代わりにクッション性が低く、脚へのダメージが大きいというデメリットがあった。
一方、ソールを厚くするとクッション性は上がるものの、その分重くなって反発性も落ちるという側面があった。クッション性と反発性、軽量性はトレードオフの関係にあったのだ。
ところが、テクノロジーの進化によってこの関係性が崩れ始めたのが2017年以降。ナイキは柔らかくて高反発なのに軽い「ズームX」というソール素材を開発し、それらの課題を克服した。
ズームXの反発係数は80%以上で、ナイキが従来使用していたソール素材の反発係数(60%台)を大きく上回るという。ズームXの登場によってナイキは反発性と軽量性だけでなく、クッション性も兼ね備えた厚底レーシングシューズ「ヴェイパーフライ」シリーズを完成させた。
最新モデルのアルファフライはヴェイパーフライの系譜を受け継いだシューズで、ミッドソールにはズームXを採用。そこに湾曲したカーボンプレートを内蔵しているのはヴェイパーフライと同じだが、大きな違いは前足部に「ズーム エア ポッド」というエアユニットを搭載したことにある。このズーム エアの反発係数は90%以上あるといい、硬くて高反発のズーム エアと柔らかいズームXを組み合わせることでヴェイパーフライを超えるシューズが誕生した。

前足部のエアユニット「ズーム エア ポッド」とズームXの組み合わせによってクッション性と反発性を両立している
フォアフット走法を『自動化』させる靴
アルファフライに足を入れてみると、最初に感じるのは圧倒的な柔らかさだ。ソールが柔らかすぎてグラグラするため、ただ立つだけでもバランスを取らないと倒れそうになるほどだ。
履き口は非常に狭いが、足が入ってしまえばアッパーのフィット感は緩めの印象。通常25.0~25.5cmのシューズを履いている筆者は24.5cmが一番合うと感じた。前作の「ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」は25.5cmだから、それよりは0.5cm~1cm程度はサイズ感が大きいのかもしれない。
重さは25.5cmで約190g(実測値)と、前作よりは20g程度増加。ドロップ(前足部と踵の高低差)が8mmなのは前作と同じだが、実際に走ってみると感覚は大きく違う。前足部の存在感が段違いで、まるで踵よりも厚いのではないかと思うほどだった。
ソールは踵を着きにくい構造になっているようで、通常は足裏がフラットに接地するはずの筆者でも、同じように走ると踵は地面にちょっと触れるだけ。前足部で体重の大部分が受け止められ、そのまま蹴り出しまで完結する印象だ。ちなみに、無理に踵から接地しようとするとソールが沈みすぎて走りにくく、どこから接地しても転がるように重心移動を誘導してくれた前作とは性能がやや異なっている。

インパクトのある見た目に反し、踵には重心が乗りにくい構造。前足部はバネのように弾み、クッション性も高いのでフォアフットで走っても疲労感は少ない
トラックでスピードを上げてみると、クッション性がありながらも強烈な推進力を感じ、1歩1歩のストライドが延びる感覚があった。実際にタイムも速く、シューズの恩恵を容易に実感できる。ただし、無理にピッチを上げようとすると思うように推進力が得られないこともあるため、シューズの反発と自分の走りを調和させることが肝心だ。一定のリズムで走り続けるには最適だが、スピードの変化が激しい展開だと走りにロスが生まれやすいかもしれない。
それでも、つま先付近はソールが硬めに作られているのか、200mなど短い距離のダッシュはそれほど違和感なくスピードが出せる。前述のようにスピード変化には対応しづらいものの、走りを切り換えてしまえばキレのあるスパートを放つことも可能だ。
ちなみに、現在5000m18分台の筆者のレベルでは、従来の薄底シューズに比べるとトラックの5000mで20秒から30秒は速く走れるように感じた。フォアフットの走り(前足部着地)を〝自動化〟させ、「楽に速く」走らせてくれるシューズ。これはもはや「靴」という概念を超えて、速く走る〝装置〟のようなものかもしれない。
文/山本慎一郎
<関連リンク>
ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト% 新色発売(ナイキ公式サイト)
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ランニング界に「厚底ブーム」を生み出し、業界のナンバーワンに君臨しているナイキ。そのナイキが2020年時点で「史上最速シューズ」として展開しているのが「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%(以下、アルファフライ)」だ。
ナイキのトップレーシングシューズである「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%」。新色である「ブライト マンゴー」が9月に発売された
2019年10月にはアルファフライのプロトタイプ(試作品)を履いたエリウド・キプチョゲ(ケニア)が、非公認レースながら42.195kmを人類で初めて2時間を切る1時間59分40秒で走破。今年3月の東京マラソンでは大迫傑選手(Nike)もアルファフライで2時間5分29秒の日本新記録を樹立しており、男子マラソンでは国内外ともアルファフライが文字通り「最速シューズ」となっている。
さらに、日本国内ではマラソンだけでなくトラックでもアルファフライを履いた選手が快走。7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会の5000mでは石田洸介選手(群馬・東農大二高3年)が16年ぶり高校新となる13分36秒89を叩き出し、長距離界の歴史を大きく動かした(石田選手は9月に13分34秒74とさらに記録を短縮)。その後、世界陸連のルール変更によってソールが25mmを超える厚底シューズはトラックレースでの使用がNGとなったが(11月末までは条件付きで使用できる場合もある)、それだけ『厚底旋風』の影響は大きかったとも言えるだろう。
シューズを「厚底化」させたズームX
そもそもシューズはなぜ厚底になったのか。従来、トップ選手が履くようなレーシングシューズは「薄底で軽量」がセオリーだった。しかし、薄底は軽くて反発性が高い代わりにクッション性が低く、脚へのダメージが大きいというデメリットがあった。 一方、ソールを厚くするとクッション性は上がるものの、その分重くなって反発性も落ちるという側面があった。クッション性と反発性、軽量性はトレードオフの関係にあったのだ。 ところが、テクノロジーの進化によってこの関係性が崩れ始めたのが2017年以降。ナイキは柔らかくて高反発なのに軽い「ズームX」というソール素材を開発し、それらの課題を克服した。 ズームXの反発係数は80%以上で、ナイキが従来使用していたソール素材の反発係数(60%台)を大きく上回るという。ズームXの登場によってナイキは反発性と軽量性だけでなく、クッション性も兼ね備えた厚底レーシングシューズ「ヴェイパーフライ」シリーズを完成させた。 最新モデルのアルファフライはヴェイパーフライの系譜を受け継いだシューズで、ミッドソールにはズームXを採用。そこに湾曲したカーボンプレートを内蔵しているのはヴェイパーフライと同じだが、大きな違いは前足部に「ズーム エア ポッド」というエアユニットを搭載したことにある。このズーム エアの反発係数は90%以上あるといい、硬くて高反発のズーム エアと柔らかいズームXを組み合わせることでヴェイパーフライを超えるシューズが誕生した。
前足部のエアユニット「ズーム エア ポッド」とズームXの組み合わせによってクッション性と反発性を両立している
フォアフット走法を『自動化』させる靴
アルファフライに足を入れてみると、最初に感じるのは圧倒的な柔らかさだ。ソールが柔らかすぎてグラグラするため、ただ立つだけでもバランスを取らないと倒れそうになるほどだ。 履き口は非常に狭いが、足が入ってしまえばアッパーのフィット感は緩めの印象。通常25.0~25.5cmのシューズを履いている筆者は24.5cmが一番合うと感じた。前作の「ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」は25.5cmだから、それよりは0.5cm~1cm程度はサイズ感が大きいのかもしれない。 重さは25.5cmで約190g(実測値)と、前作よりは20g程度増加。ドロップ(前足部と踵の高低差)が8mmなのは前作と同じだが、実際に走ってみると感覚は大きく違う。前足部の存在感が段違いで、まるで踵よりも厚いのではないかと思うほどだった。 ソールは踵を着きにくい構造になっているようで、通常は足裏がフラットに接地するはずの筆者でも、同じように走ると踵は地面にちょっと触れるだけ。前足部で体重の大部分が受け止められ、そのまま蹴り出しまで完結する印象だ。ちなみに、無理に踵から接地しようとするとソールが沈みすぎて走りにくく、どこから接地しても転がるように重心移動を誘導してくれた前作とは性能がやや異なっている。
インパクトのある見た目に反し、踵には重心が乗りにくい構造。前足部はバネのように弾み、クッション性も高いのでフォアフットで走っても疲労感は少ない
トラックでスピードを上げてみると、クッション性がありながらも強烈な推進力を感じ、1歩1歩のストライドが延びる感覚があった。実際にタイムも速く、シューズの恩恵を容易に実感できる。ただし、無理にピッチを上げようとすると思うように推進力が得られないこともあるため、シューズの反発と自分の走りを調和させることが肝心だ。一定のリズムで走り続けるには最適だが、スピードの変化が激しい展開だと走りにロスが生まれやすいかもしれない。
それでも、つま先付近はソールが硬めに作られているのか、200mなど短い距離のダッシュはそれほど違和感なくスピードが出せる。前述のようにスピード変化には対応しづらいものの、走りを切り換えてしまえばキレのあるスパートを放つことも可能だ。
ちなみに、現在5000m18分台の筆者のレベルでは、従来の薄底シューズに比べるとトラックの5000mで20秒から30秒は速く走れるように感じた。フォアフットの走り(前足部着地)を〝自動化〟させ、「楽に速く」走らせてくれるシューズ。これはもはや「靴」という概念を超えて、速く走る〝装置〟のようなものかもしれない。
文/山本慎一郎
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