2024.05.31
昨年9月のベルリン・マラソン女子。27歳のティグスト・アセファ(エチオピア)が衝撃的な世界新記録を打ち立てた。「2時間11分53秒」。従来の記録が2時間14分04秒で、その更新幅2分11秒というのは、世界記録レベルではおよそ考えられない水準だ。
その時に注目されたのが、彼女が着用していたシューズ。アディダス社がこのレースに向けて開発した「ADIZERO ADIOS PRO EVO -1(以下EVO -1)」である。
その後、このシューズを着用した選手が世界のロードレースを席捲した。春のメジャーマラソンでは、4月22日のロンドン女子でペレス・ジェプチルチル(ケニア)が女子単独レース世界新の2時間16分16秒をマークしたのをはじめ、7秒差、8秒差で2位、3位ながら同じく女子単独レース世界新となったアセファ、ショイシリン・ジェプコスゲイ(ケニア)も「EVO -1」を着用。男子を2時間4分01秒で制したアレクサンダー・ムティソ(ケニア)、1週間前のボストン覇者のシサイ・レンマ(エチオピア)もそうだった。
国内で注目を集めたのは、正月の箱根駅伝。青学大の2区で区間賞に輝いた黒田朝日と、同3区で日本人初の1時間切り(59分47秒)という激走を見せた太田蒼生が着用し、第100回大会優勝の原動力となっている。
アスリートのパフォーマンスに与える影響がますます大きくなるシューズの開発競争は、年々激しさを増す。その中でこれほどのインパクトを与えた「ADIZERO ADIOS PRO EVO -1」の秘密とは?
4月27日に開催された「ADIZERO ROAD TO RECOEDS 2024」取材の際、開発担当であるアディダス社の ナヴァ・パトリック(Nava Patrick)氏に取材する機会を得た。するとパトリック氏は「アイデアの原点はF1でした」と語る。
「F1マシンはレースに勝つために、不要なものをすべて取り除きます。できるだけ速く走るために、重量を最小限に抑えるのです」
これこそが、「EVO 1」開発にあたってのコンセプトだった。そして、「ランナーをできるだけ速く走らせる」と追求したものが「ランニングエコノミー」の向上であり、そのために重要な要素として「軽さ」「エネルギーリターン(反発力)」「ロッカー構造」を挙げた。
マラソンの42.195kmに必要な耐久力をキープしつつ、まさにF1マシンのように余計なものをそぎ落とす。アッパーはメッシュタイプを採用し、軽量化とホールド感を確保。さらに、「可能な限り軽量で、弾力性を保つ」を実現できるフォーム材を使用したことで、4枚のカーボンプレートと合わせて高い反発力も備えたソールが完成した。
加えてその表面には、「信じられないほど薄くて軽い」というリキッドラバーで高いグリップ感も備える。これほどの機能がありながら、138g(27cm片足)という超軽量化を成し遂げたことは驚異的と言えるだろう。
理想のランニングエコノミー生み出す独自設計「ロッカー構造」
そして、「EVO -1」最大の特徴が「ロッカー構造」にある。アディダス社が持つテクノロジーの粋を極めて生み出された、理想の「ランニングエコノミー」を導き出すために設計されたシューズのソールが前足部に向かって湾曲 する“パワーポイント”に独自の設計がある。。 アディダスと契約するトップランナーたち、特に参考にされたのが女性ランナーのフォームのデータを徹底的に検証。地面にもっとも力を伝えられるポイント、シューズ上の『パワーポイント』が「踵側か65%の位置」(パトリック氏)と判断した。 具体的には拇趾球の少し踵よりの位置。これはフラットからフォアフットに接地するタイプの選手が、地面に接地してプッシュする瞬間のポイントと合致する。ランニングフォームにおけるパワーポジションの姿勢になる瞬間に、シューズも同じパワーポジションとなり、選手が地面をプッシュする力をより一層高めることにつながるのだ。 [caption id="attachment_137050" align="alignnone" width="800"]
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.07.13
近大が初優勝!関西勢26年ぶり制覇 ラスト勝負・長葭「自信があった」/日本選手権リレー
2025.07.13
月刊陸上競技2025年8月号
-
2025.07.13
-
2025.07.13
-
2025.07.13
-
2025.07.06
2025.06.17
2025中学最新ランキング【男子】
-
2025.06.17
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.07.13
近大が初優勝!関西勢26年ぶり制覇 ラスト勝負・長葭「自信があった」/日本選手権リレー
◇第109回日本選手権リレー(7月12、13日/岐阜・岐阜・岐阜メモリアルセンター長良川競技場)2日目 日本選手権リレーの男子4×400mリレーが行われ、近大が3分05秒23で初優勝を飾った。関西学連勢では1999年の同 […]
2025.07.13
月刊陸上競技2025年8月号
Contents 大会報道 TOKYO to TOKYO 日本選手権 久保 凛 2度目の日本新 﨑山雄太 圧巻の87m16!! 桐生祥秀、帰還 田中希実 4年連続2冠の金字塔 泉谷 標準突破3本で代表内定 鵜澤飛羽 20 […]
2025.07.13
園田学園大 女子マイルリレー初日本一!立命大との同記録激戦制す「あきらめずに走った」/日本選手権リレー
◇第109回日本選手権リレー(7月12、13日/岐阜・岐阜・岐阜メモリアルセンター長良川競技場)2日目 日本選手権リレーの女子4×400mリレーが行われ、園田学園大が3分36秒16で優勝した。立命大との同タイムながら着差 […]
2025.07.13
【男子110mH】権田颯志(安城学園高)13秒97=高2歴代3位タイ
第84回愛知県選手権の2日目は7月13日、愛知・パロマ瑞穂北陸上競技場で行われ、男子110mハードルで権田颯志(安城学園高2愛知)が13秒97(+1.3)の高2歴代3位タイをマークした。 権田は愛知・岡崎翔南中3年時に全 […]
2025.07.13
【女子200m】バログン・イズミ(千住ジュニア)24秒71=中2歴代6位
東京都中学総体の2日目は7月13日、東京・上柚木公園陸上競技場で行われ、女子共通200m決勝でバログン・イズミ(千住ジュニア・荒川三2)が24秒71(±0)の中2歴代6位、大会新記録をマークした。 これまでの自己ベストは […]
Latest Issue
最新号

2025年8月号 (7月14日発売)
詳報!日本選手権
IH地区大会