2024.05.16
悔しさバネに再スタート、年明けから主力選手が揃って好調
創部3年目の2021年、プリンセス駅伝を15位で通過し、当初の目標より2年早くクイーンズ駅伝に初出場したダイソー女子駅伝部は、翌年のプリンセス駅伝では5位に躍進するなど順調に力をつけていた。しかし、昨年のプリンセス駅伝では通過ラインにあと4秒及ばぬ〝次点〟の17位にとどまり、3年連続の全国キップを逃す悔しさを味わった。
1区の加藤小雪が12位で発進し、2区に抜てきされた森陽向は15位でつないだが、最長10.7kmの3区でキャプテンの平村古都が区間28位とふるわず23位へ後退。4区のテレシア・ムッソーニが予選通過ライン(16位)まで15秒に迫る快走で20位に上がり、10.4kmの5区を担った竹原さくらで17位へ浮上したものの、アンカー加藤美咲であと一歩及ばなかった。
「創部5年目となり、昨年は練習の質も量も少し上げたのですが、春先からなかなかチームの足並みが揃わず、継続してしっかりトレーニングできていたのは竹原と加藤小雪ぐらい。夏の合宿でなんとか立て直そうといろいろやってみたのですが、一番どん底の状態でプリンセス駅伝を迎えてしまいました。走れるメンバーはぎりぎりで、そのメンバーにも不安があったのですが、替えの選手がいなかった。しんどいレースになるだろうと予想していましたが、一番悪いかたちになってしまった」と岩本真弥監督は振り返る。
メンバーの中でいちばん不安を抱えていたのは3年連続で3区を走った平村で、「1年間、練習はできていたのに調子が上がらず、6月にコロナに罹ってさらに調子が落ちて、秋に入ってどうにか戻ってきたと思ったらプリンセス駅伝前にまた少し落ちてしまい、前年の5割も仕上がっていない状況でした。こんな私でも走らなければいけないほどメンバーが足りなくて、なんとかつなげればと思っていたのですが、(目標より)2分ぐらい遅れてボロボロ。みんなにすごく申し訳なかった」と話す。
もっとも、万全の状態にほど遠い調子でもエース区間を務めざるを得なかったキャプテンを責める選手はおらず、他のメンバーは「自分たちがもう少し、あと1秒でも早く走っていれば」と口を揃えていた。
クイーンズ駅伝への連続出場を逃したことは大きなショックだったが、悔しさを糧に選手たちは気持ちをリセット。
「プリンセス駅伝が終わってからみんなだいぶ調子を上げてきて、年が明けてから私と竹原、加藤姉妹、森はすごくいい練習ができていて、この5人を中心にチームを引っ張っていきます」と平村は巻き返しを誓った。
3種目で自己新、目を見張る竹原の成長
チームとして悔しいシーズンだったものの、5000mで15分台(15分56秒79)突入、3000mと1500mでも自己ベストを塗り替えた竹原の成長は目を見張る。
「故障せずに練習を継続できたことが結果につながっていると思います。ただ、自分の中ではまだまだ記録を出せると感じており、15分40秒を切ることが今後の目標です。駅伝ではクイーンズ出場はもちろん、(プリンセスでは)長い区間で区間賞を取ってチーム全体を助けられるような走りがしたい」と頼もしい。
そんな竹原に刺激を受けている同期の森もチームの核になりつつあり、「昨年はケガなどなく安定して練習に取り組めたのは良かったのですが、調子に波があり、プリンセス駅伝ではいい走りができませんでした。今年はしっかり調整して臨みたい」と3年目のシーズンに意欲を燃やす。
15分台の選手を増やすことがステップアップへのカギ
この春には垣内瑞希(順大卒)、板岡侑花(広島・呉高卒)の2名が入社。チーム初の大卒新人となった垣内は「練習メニューにクロカンが多く、自分に合っていると感じたこと。歳が近い選手が多く、話しやすかったこと」などをダイソー入社の理由として挙げ、1年目は実業団という環境に慣れることがテーマという。将来的にマラソン挑戦も視野に入れるスタミナ型選手で、「駅伝でも長い区間を任せていただけるような選手になりたい」と抱負を述べた。
ニューフェイスも加わってチームは活性化。岩本監督は今後に向けて、「最低でもクイーンズ駅伝に安定して出場できるチームにしていかないといけない。そのためには今年が一番大事になると思っている」ときっぱり話す。
5000mを15分台で走れる選手を育て上げることがクイーンズ駅伝で戦っていく上で大事なポイント。「1人、2人が15分台を出したぐらいでは勝負にならない。いつでも複数選手が15分台で走れるチームでなければいけない」と指揮官は肝に銘じており、竹原に続く15分台突入候補として加藤姉妹の名を挙げた。
互いに切磋琢磨しながらチーム全体で成長していくのが理想。リベンジイヤーとなる2024年、ダイソー女子駅伝部の選手たちがチーム躍進のためにどんな走りを見せるか注目したい。
ダイソー女子駅伝部でただ1人中距離の800mを専門にしている池崎愛里が昨年、日本選手権に初優勝。「社員や地域の方々に勇気や希望を与える活動」が期待されているチームにとってもうれしい〝勲章〟となった。
そのレースでは、広島・舟入高時代にインターハイ(2位)で樹立した自己ベスト(2分04秒85)を7年ぶりに更新する2分03秒08をマーク。順大を卒業後、1年間の三重県スポーツ協会所属を経て地元のダイソーに入った池崎は「ケガなどでなかなかベストを更新できずに苦しかったのですが、広島に戻ってきて、ダイソーという良い環境で競技をさせていただいているのが大きいです。2年目(2023年)から寮に入り、食事面などコンディショニングへの意識も変わってきた」ことなどを飛躍の要因として挙げる。
昨年は大学1年生以来6年ぶりにアジア選手権の代表に選出され、メダル獲得にあと一歩の4位と健闘した。
トレーニングは他の部員とは別メニューで、基本的に1人でこなしている。そんな中でも実績を挙げ、「刺激を受けたというより、憧れというか尊敬のレベル。自分への厳しさを見習いたい」とキャプテンの平村は話す。
今季はマークされる存在になるだろう池崎だが、「もう急に強くなることはないと思うので、自分のペースで練習をしっかりこなしていくだけ。いつも調子が良いわけではないと思うので、レースごとに一喜一憂せずにやっていきたい」と気負いがない。目前に迫った2分2秒台や1秒台突入を目標にしつつもマイペースを崩さぬスタンスだ。
悔しさバネに再スタート、年明けから主力選手が揃って好調
創部3年目の2021年、プリンセス駅伝を15位で通過し、当初の目標より2年早くクイーンズ駅伝に初出場したダイソー女子駅伝部は、翌年のプリンセス駅伝では5位に躍進するなど順調に力をつけていた。しかし、昨年のプリンセス駅伝では通過ラインにあと4秒及ばぬ〝次点〟の17位にとどまり、3年連続の全国キップを逃す悔しさを味わった。 1区の加藤小雪が12位で発進し、2区に抜てきされた森陽向は15位でつないだが、最長10.7kmの3区でキャプテンの平村古都が区間28位とふるわず23位へ後退。4区のテレシア・ムッソーニが予選通過ライン(16位)まで15秒に迫る快走で20位に上がり、10.4kmの5区を担った竹原さくらで17位へ浮上したものの、アンカー加藤美咲であと一歩及ばなかった。 「創部5年目となり、昨年は練習の質も量も少し上げたのですが、春先からなかなかチームの足並みが揃わず、継続してしっかりトレーニングできていたのは竹原と加藤小雪ぐらい。夏の合宿でなんとか立て直そうといろいろやってみたのですが、一番どん底の状態でプリンセス駅伝を迎えてしまいました。走れるメンバーはぎりぎりで、そのメンバーにも不安があったのですが、替えの選手がいなかった。しんどいレースになるだろうと予想していましたが、一番悪いかたちになってしまった」と岩本真弥監督は振り返る。 メンバーの中でいちばん不安を抱えていたのは3年連続で3区を走った平村で、「1年間、練習はできていたのに調子が上がらず、6月にコロナに罹ってさらに調子が落ちて、秋に入ってどうにか戻ってきたと思ったらプリンセス駅伝前にまた少し落ちてしまい、前年の5割も仕上がっていない状況でした。こんな私でも走らなければいけないほどメンバーが足りなくて、なんとかつなげればと思っていたのですが、(目標より)2分ぐらい遅れてボロボロ。みんなにすごく申し訳なかった」と話す。 もっとも、万全の状態にほど遠い調子でもエース区間を務めざるを得なかったキャプテンを責める選手はおらず、他のメンバーは「自分たちがもう少し、あと1秒でも早く走っていれば」と口を揃えていた。 クイーンズ駅伝への連続出場を逃したことは大きなショックだったが、悔しさを糧に選手たちは気持ちをリセット。 「プリンセス駅伝が終わってからみんなだいぶ調子を上げてきて、年が明けてから私と竹原、加藤姉妹、森はすごくいい練習ができていて、この5人を中心にチームを引っ張っていきます」と平村は巻き返しを誓った。 [caption id="attachment_134371" align="alignnone" width="800"] 選手たちは互いに切磋琢磨しながら高め合っている[/caption]3種目で自己新、目を見張る竹原の成長
チームとして悔しいシーズンだったものの、5000mで15分台(15分56秒79)突入、3000mと1500mでも自己ベストを塗り替えた竹原の成長は目を見張る。 「故障せずに練習を継続できたことが結果につながっていると思います。ただ、自分の中ではまだまだ記録を出せると感じており、15分40秒を切ることが今後の目標です。駅伝ではクイーンズ出場はもちろん、(プリンセスでは)長い区間で区間賞を取ってチーム全体を助けられるような走りがしたい」と頼もしい。 そんな竹原に刺激を受けている同期の森もチームの核になりつつあり、「昨年はケガなどなく安定して練習に取り組めたのは良かったのですが、調子に波があり、プリンセス駅伝ではいい走りができませんでした。今年はしっかり調整して臨みたい」と3年目のシーズンに意欲を燃やす。 [caption id="attachment_134369" align="alignnone" width="800"] チーム内でもっとも勢い付いている入社3年目の竹原さくら[/caption]15分台の選手を増やすことがステップアップへのカギ
この春には垣内瑞希(順大卒)、板岡侑花(広島・呉高卒)の2名が入社。チーム初の大卒新人となった垣内は「練習メニューにクロカンが多く、自分に合っていると感じたこと。歳が近い選手が多く、話しやすかったこと」などをダイソー入社の理由として挙げ、1年目は実業団という環境に慣れることがテーマという。将来的にマラソン挑戦も視野に入れるスタミナ型選手で、「駅伝でも長い区間を任せていただけるような選手になりたい」と抱負を述べた。 ニューフェイスも加わってチームは活性化。岩本監督は今後に向けて、「最低でもクイーンズ駅伝に安定して出場できるチームにしていかないといけない。そのためには今年が一番大事になると思っている」ときっぱり話す。 5000mを15分台で走れる選手を育て上げることがクイーンズ駅伝で戦っていく上で大事なポイント。「1人、2人が15分台を出したぐらいでは勝負にならない。いつでも複数選手が15分台で走れるチームでなければいけない」と指揮官は肝に銘じており、竹原に続く15分台突入候補として加藤姉妹の名を挙げた。 互いに切磋琢磨しながらチーム全体で成長していくのが理想。リベンジイヤーとなる2024年、ダイソー女子駅伝部の選手たちがチーム躍進のためにどんな走りを見せるか注目したい。 [caption id="attachment_134375" align="alignnone" width="800"] 地元・広島の陸上界を活性化することがダイソー女子駅伝部の創部目的の一つであり、2021年に創設した参加費110円の記録会「ダイソーチャレンジ」を今年度も6回のシリーズで実施。4月6日が新年度の初回で、ダイソーの選手も大会運営に携わり、手の空いている時間帯は力走する小中学生に声援を送っていた[/caption] ダイソー女子駅伝部でただ1人中距離の800mを専門にしている池崎愛里が昨年、日本選手権に初優勝。「社員や地域の方々に勇気や希望を与える活動」が期待されているチームにとってもうれしい〝勲章〟となった。 そのレースでは、広島・舟入高時代にインターハイ(2位)で樹立した自己ベスト(2分04秒85)を7年ぶりに更新する2分03秒08をマーク。順大を卒業後、1年間の三重県スポーツ協会所属を経て地元のダイソーに入った池崎は「ケガなどでなかなかベストを更新できずに苦しかったのですが、広島に戻ってきて、ダイソーという良い環境で競技をさせていただいているのが大きいです。2年目(2023年)から寮に入り、食事面などコンディショニングへの意識も変わってきた」ことなどを飛躍の要因として挙げる。 [caption id="attachment_134373" align="alignnone" width="800"] 昨年の日本選手権で初優勝と7年ぶりの自己記録更新を果たした女子800mの池崎愛里[/caption] 昨年は大学1年生以来6年ぶりにアジア選手権の代表に選出され、メダル獲得にあと一歩の4位と健闘した。 トレーニングは他の部員とは別メニューで、基本的に1人でこなしている。そんな中でも実績を挙げ、「刺激を受けたというより、憧れというか尊敬のレベル。自分への厳しさを見習いたい」とキャプテンの平村は話す。 今季はマークされる存在になるだろう池崎だが、「もう急に強くなることはないと思うので、自分のペースで練習をしっかりこなしていくだけ。いつも調子が良いわけではないと思うので、レースごとに一喜一憂せずにやっていきたい」と気負いがない。目前に迫った2分2秒台や1秒台突入を目標にしつつもマイペースを崩さぬスタンスだ。 ダイソー女子駅伝部公式ホームページRECOMMENDED おすすめの記事
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