2023.10.22
◇第9回全日本実業団対抗女子駅伝予選会(プリンセス駅伝in宗像・福津/福岡県宗像市・宗像ユリックス前発着、6区間42.195km)
第9回プリンセス駅伝が10月22日に行われ、岩谷産業が2時間18分46秒で初のトップを占め、3年連続3回目のクイーンズ駅伝出場を決めた。
2017年創部から7年目、培った力、紆余曲折を経た想いをぶつける見事な継走を見せた。
1区の川村楓が三井住友海上・樺沢和佳奈とトップ争いを繰り広げ、いったんはリードを許したものの中継所間際で猛追。2位ながら同タイムで中継する。「区間賞までもうちょっとだったので個人としては悔しい」としつつも、流れを作る大きな仕事を果たした。
「上位で来るのはわかっていたので、その流れを後続につなぐことだけ考えて走った」という2区の前田梨乃は、三井住友海上に先行を許したもののその差を5秒にとどめた。
そして、2位でタスキを受け取った入社2年目の若井莉央が力走を見せた。4チームの集団となった先頭争いから、力強く飛び出したのが5kmを過ぎ。「マネージャーから、『出ろ、莉央は強いぞ!』と言われたので、私は強いんだ、と」。追いすがるユニクロ・平井美季を振り切り、27秒の貯金を作った。
外国人選手を起用できるインターナショナル区間の4区も久木柚奈が「自分の走りを信じて、リラックスして走れた」と、ルートインホテルズの猛追を2秒差でしのいでトップをキープする。この粘りが、5区・中野円花の快走を生み出したと言っていいだろう。
19年ドーハ世界選手権マラソン出場の実績を持つ32歳のベテランが、序盤でルートインホテルズを突き放すと、そのまま独走。10.4kmを34分16秒で駆け抜ける区間賞、この区間で2位に浮上した九電工に48秒もの大差をつけて勝負を決めた。
創部当初からのメンバーであるアンカーの青木奈波は、悠々とVロードを走り切った。「これまで大半は私が迷惑をかけてきた」と苦笑いで創部からの道のりを振り返りつつも、トップでフィニッシュテープを切り「本当にうれしい」と感無量の表情で振り返った。
選手たちの奮闘を見守った廣瀬永和監督も「5位ぐらいを目標にしていましたが、思った以上に走ってくれました。うれしいです」。
ワコール、グローバリー、シスメックスと、名将・藤田信之氏の右腕として指導力を発揮し、現チームのアドバイザーでもある野口みずき氏の2004年アテネ五輪マラソン金メダル、現在も残る日本記録樹立(2時間19分12秒、2005年)へと導いている。
2017年のチーム立ち上げから監督を務めてきたが、その道のりは決して平坦なものではなかった。
この大会初出場だった2018年、2区終盤で選手が突然倒れるアクシデントが起きた。這って進んでタスキをつなぎ切り、最終的に21位でのフィニッシュとなったが、その痛々しい姿に物議を醸す結果に。翌年はスタートラインに立つことができず、2020年も17位にとどまった。
だが、2021年に12位で初の全国出場切符を手にすると、昨年は7位で通過。そして今回はトップと、一気に階段を駆け上がった。
全日本では初挑戦の21年が20位、前回は15位。「クイーンズ駅伝に向けて、もう1度立て直して臨みたい」と廣瀬監督が語ると、青木も「クイーンズエイト(8位入賞)が狙えるなら、そこを目指してがんばりたいです」。
福岡でつかんだ手応えを、宮城・仙台で初のシード権獲得へとつなげるつもりだ。
初の1位通過でクイーンズ駅伝へ!岩谷産業のオーダー&区間成績はこちら
■岩谷産業のオーダー&区間成績 1区 川村 楓 22分39秒(区間2位) 2区 前田梨乃 11分42秒(区間7位) 3区 若井莉央 35分43秒(区間4位) 4区 久木柚奈 12分17秒(区間13位) 5区 中野円花 34分16秒(区間賞) 6区 青木奈波 22分09秒(区間8位)
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