2020.09.15
【Athlete Feature Interview】金井大旺(ミズノ)
チャレンジし続けてきた競技人生
最初で最後の五輪に向け仕上げに入る
今季自己新を連発している男子110mハードルの金井大旺(ミズノ)
その精神力の強さに誰もがうなった。男子110mハードルの金井大旺(ミズノ)がシーズンインしてから絶好調。初戦となった法大競技会で13秒34の自己新、ゴールデングランプリ(1位/13秒45)をはさんで、福井で13秒27(+1.4)をマークした。2018年に日本記録を作ったものの、昨年は苦しいシーズンを送る。その間、日本記録も塗り替えられ、思うような走りができなかった。だが、それは現状維持を目指すのではなく、新たなチャレンジをし続けてきたからに他ならない。静かに闘志を燃やす男は、「最初で最後」と位置づける東京五輪へ最後の仕上げに入る。
◎構成/花木 雫 撮影/船越陽一郎
踏み切りとインターバルランを修正
――Athlete Night Games in FUKUI2020では、フィニッシュ直後のタイマーは13秒25の日本タイ記録で止まりました。その時の心境は?
金井 日本新も少し期待しました。他のレースでも、どちらかと言うと確定の際に速いタイムに修正されて表示される傾向があったので……。ちょっと残念でした。それでも13秒27の自己ベストで優勝することができて、うれしい気持ちのほうが大きかったです。
――レースを振り返っていただけますか。
金井 予選は何台かハードルに脚をぶつけてしまいバランスを崩したところがあります。それでも13秒33(+2. 0)のベストが出たので、決勝は条件が良ければもう少しタイムが縮められると思っていました。高山さん(峻野/ゼンリン)が4、5台目まで前に見えていたので少し焦りましたが、今季は後半に自信があったので、最後まで自分の走りに集中できたと思います。1週間前のゴールデングランプリの時は、身体のキレがなく、重心移動が不安定でしたが、その点はしっかり修正できました。
――タイム的には、このくらい出るだろうと想定されていましたか。
金井 記録を狙っていたわけではありませんが、予選の走りを考えると13秒2台は出るだろう、と。前半、もう少し(脚を)回したかったですが、3台目までスピードに乗れる感触がなかったのでタイムを落としてしまったと思います。もう少し行けるかなと思いますが、前半行くと後半崩れる可能性もあるので、そこは全体のバランスも考えなくてはいけません。
――8月2日の法大競技会で13秒34。そして福井の2レースと3回自己ベストを更新されています。好調の要因は?
金井 2018年(13秒36の当時日本記録を出したシーズン)と比べると、昨年は踏み切りで少しブレーキ動作を含んでしまって、力が上に逃げてしまっていました。それと、着地の際に少し沈み込んでしまってインターバルランで上下動が大きくなっていました。その2つが改善したポイントで、記録に直結した部分です。昨シーズンの終わりから、踏み切りで上に力が逃げることなくしっかり前に持っていけるように修正して、2月の日本選手権・室内競技(60mハードル予選で7秒61の室内日本新)では3台目くらいまでできるようになっていて、それを10台全部できるように取り組んできました。
Athlete Night Games in FUKUI2020では日本記録保持者の高山峻野(右から2人目)と熾烈な争いを演じ、13秒27(+1.4)と好タイムをマークした金井(左端)
――4月以降は新型コロナウイルスの影響もあったかと思います。
金井 2ヵ月くらいはハードル練習ができなくて、実際に跳べるようになったのは6月。その期間にそれまでの練習での動きなどを動画でじっくり確認したところ、いろいろな気づきがありました。
――具体的にはどのあたりでしょうか。
金井 アプローチについて踏み切り位置が少し近いと感じました。自粛が明けてトラックで練習ができるようになってから、これまでよりほんの少し遠いところから踏み切るようにしたところ、角度がちょうどよくなりました。具体的に何センチ手前というのではなく、感覚的なものです。それで前にしっかり乗っていく感覚がありました。表現するのは難しいのですが、上半身ではなく骨盤を前傾させて踏み切ると、前方向に進む感触がありました。
―― 骨盤を意識するようになったきっかけは。
金井 自粛期間中に動画を見ると、以前は踏み切りの際にハードルに対して身体を斜めにして踏み切っていた時もあって、最近は身体をまっすぐにして踏み切るイメージでした。良い時の動きを確認すると、身体の倒し方や角度ではなく、骨盤が前傾して、骨盤ごと前に動いている。そこが一番重要だと気づきました。6月以降はそれを重視してきて、技術的には高いレベルで安定するようになったと思います。調子も3月よりも良くなってきました。
―― それがレース後の取材でも話していた「後半の失速を抑えること」につながっている?
金井 そうですね。踏み切りや着地でブレーキがかかると、1歩ずつ、再加速する必要があります。それをなくせたことで、失速を抑えられています。
この続きは2020年9月14日発売の『月刊陸上競技10月号』をご覧ください。
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【Athlete Feature Interview】金井大旺(ミズノ)
チャレンジし続けてきた競技人生 最初で最後の五輪に向け仕上げに入る
今季自己新を連発している男子110mハードルの金井大旺(ミズノ)
その精神力の強さに誰もがうなった。男子110mハードルの金井大旺(ミズノ)がシーズンインしてから絶好調。初戦となった法大競技会で13秒34の自己新、ゴールデングランプリ(1位/13秒45)をはさんで、福井で13秒27(+1.4)をマークした。2018年に日本記録を作ったものの、昨年は苦しいシーズンを送る。その間、日本記録も塗り替えられ、思うような走りができなかった。だが、それは現状維持を目指すのではなく、新たなチャレンジをし続けてきたからに他ならない。静かに闘志を燃やす男は、「最初で最後」と位置づける東京五輪へ最後の仕上げに入る。
◎構成/花木 雫 撮影/船越陽一郎
踏み切りとインターバルランを修正
――Athlete Night Games in FUKUI2020では、フィニッシュ直後のタイマーは13秒25の日本タイ記録で止まりました。その時の心境は? 金井 日本新も少し期待しました。他のレースでも、どちらかと言うと確定の際に速いタイムに修正されて表示される傾向があったので……。ちょっと残念でした。それでも13秒27の自己ベストで優勝することができて、うれしい気持ちのほうが大きかったです。 ――レースを振り返っていただけますか。 金井 予選は何台かハードルに脚をぶつけてしまいバランスを崩したところがあります。それでも13秒33(+2. 0)のベストが出たので、決勝は条件が良ければもう少しタイムが縮められると思っていました。高山さん(峻野/ゼンリン)が4、5台目まで前に見えていたので少し焦りましたが、今季は後半に自信があったので、最後まで自分の走りに集中できたと思います。1週間前のゴールデングランプリの時は、身体のキレがなく、重心移動が不安定でしたが、その点はしっかり修正できました。 ――タイム的には、このくらい出るだろうと想定されていましたか。 金井 記録を狙っていたわけではありませんが、予選の走りを考えると13秒2台は出るだろう、と。前半、もう少し(脚を)回したかったですが、3台目までスピードに乗れる感触がなかったのでタイムを落としてしまったと思います。もう少し行けるかなと思いますが、前半行くと後半崩れる可能性もあるので、そこは全体のバランスも考えなくてはいけません。 ――8月2日の法大競技会で13秒34。そして福井の2レースと3回自己ベストを更新されています。好調の要因は? 金井 2018年(13秒36の当時日本記録を出したシーズン)と比べると、昨年は踏み切りで少しブレーキ動作を含んでしまって、力が上に逃げてしまっていました。それと、着地の際に少し沈み込んでしまってインターバルランで上下動が大きくなっていました。その2つが改善したポイントで、記録に直結した部分です。昨シーズンの終わりから、踏み切りで上に力が逃げることなくしっかり前に持っていけるように修正して、2月の日本選手権・室内競技(60mハードル予選で7秒61の室内日本新)では3台目くらいまでできるようになっていて、それを10台全部できるように取り組んできました。
Athlete Night Games in FUKUI2020では日本記録保持者の高山峻野(右から2人目)と熾烈な争いを演じ、13秒27(+1.4)と好タイムをマークした金井(左端)
――4月以降は新型コロナウイルスの影響もあったかと思います。
金井 2ヵ月くらいはハードル練習ができなくて、実際に跳べるようになったのは6月。その期間にそれまでの練習での動きなどを動画でじっくり確認したところ、いろいろな気づきがありました。
――具体的にはどのあたりでしょうか。
金井 アプローチについて踏み切り位置が少し近いと感じました。自粛が明けてトラックで練習ができるようになってから、これまでよりほんの少し遠いところから踏み切るようにしたところ、角度がちょうどよくなりました。具体的に何センチ手前というのではなく、感覚的なものです。それで前にしっかり乗っていく感覚がありました。表現するのは難しいのですが、上半身ではなく骨盤を前傾させて踏み切ると、前方向に進む感触がありました。
―― 骨盤を意識するようになったきっかけは。
金井 自粛期間中に動画を見ると、以前は踏み切りの際にハードルに対して身体を斜めにして踏み切っていた時もあって、最近は身体をまっすぐにして踏み切るイメージでした。良い時の動きを確認すると、身体の倒し方や角度ではなく、骨盤が前傾して、骨盤ごと前に動いている。そこが一番重要だと気づきました。6月以降はそれを重視してきて、技術的には高いレベルで安定するようになったと思います。調子も3月よりも良くなってきました。
―― それがレース後の取材でも話していた「後半の失速を抑えること」につながっている?
金井 そうですね。踏み切りや着地でブレーキがかかると、1歩ずつ、再加速する必要があります。それをなくせたことで、失速を抑えられています。
この続きは2020年9月14日発売の『月刊陸上競技10月号』をご覧ください。
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