HOME PR
PR

2023.08.13

全国初の試み !! 医療機関と 「アローズラボ」 の融合でスポーツ診療の未来を切り開く【まつえだ整形外科・ウェルスポーツクリニック(大阪・高槻市)】 
全国初の試み !! 医療機関と 「アローズラボ」 の融合でスポーツ診療の未来を切り開く【まつえだ整形外科・ウェルスポーツクリニック(大阪・高槻市)】 

「アローズラボ」のシステムを導入して5月に開業した「まつえだ整形外科・ウェルスポーツクリニック」。松枝洋院長(中央)と専門スタッフが〝新しい医療〟を目指して患者さんに向き合っている

株式会社スポーツ科学(本社:静岡県浜松市)による民間屈指のスポーツ科学センター「アローズラボ(スポーツ科学フィジカル検診施設)」。運動能力を科学的に数値化し、〝見える化〟できる施設が、このたび大阪府高槻市に開業された「まつえだ整形外科・ウェルスポーツクリニック」(松枝洋院長)に導入された。

同社にとって医療機関との提携は初の試みで、「治す」医療から発展し、「予防し、力を維持、向上させる」ところまで活用されることが期待されている。これまでにないコラボレーションでスポーツ診療に新たな領域が開拓されそうだ。

ケガを治すだけでなく、予防し、力を伸ばすために

今年5月に開設されたばかりの「まつえだ整形外科・ウェルスポーツクリニック」(大阪府高槻市)は、通常の整形外科に加え、スポーツに特化した診療を備える。そして能力を問わず、シームレスに一般の社会生活を送る人々の健康増進、運動能力の維持、向上まで視野に入れている点が特徴だ。

「私はこれまで整形外科医をしながら、子どもたちを対象としたスポーツ教室やスポーツ体験会を主催する活動に携わってきました。その活動の中で、運動能力を〝見える化〟するプログラムがあれば、より的確な運動指導ができるのではないかという考えを強く持つようになりました。そこで調べたところ、『アローズラボ』を知ったのです。整形外科医としてスポーツによるケガを治すにあたり、レントゲンやMRIを撮って医師の目線から評価をすることはできますが、患者さんが備えている運動能力まで評価することはできません。

そのため、『アローズラボ』を導入して運動能力を〝見える化〟すれば、より中身の濃いケアができるだろうと判断し、医療とスポーツ科学の融合に挑戦してみたいと考えるようになったのです。その方法を『アローズラボ』を運営する株式会社スポーツ科学の山下典秀社長と何度も検討した結果、医療機関にラボの機能を導入するのがベストだと意見がまとまり、今回、ラボを併設したスポーツクリニックを開業することになりました」

勤務医を経てこのたび独立した松枝洋院長(47歳)は、「アローズラボ」導入の経緯をこう説明する。今回、医療とスポーツ科学の融合への挑戦に挑んだ背景には松枝院長が歩んできたキャリアも関係している。高校時代は硬式野球に打ち込み、大学進学後は野球から離れたが、在学中に母校の野球部から指導の依頼を受け、外部指導者として監督を4期務め、激戦区・大阪でベスト16進出も果たした。

その後、一般企業に就職して社会人生活を送っていたが、20代後半にさしかかり次のステップを考えるようになった頃、仕事上で出会った医師から、一旦社会人となった人が再び医学部を受験して医師となる〝医学部再受験〟という道があることを教えてもらった。

偶然にもその当時に出会った女性(現在の妻)が現役の医師で、医師という仕事を具体的にイメージできるようになり、「自分も医師になれたら」という思いが芽生え、「それなら野球の指導中に何度も遭遇したスポーツ中のケガや故障をしっかり診ることができる医師になってやろう」と決意。医学部再受験という茨の道に踏み出した。

27歳に医学部再受験をスタートし、丸3年で高知大学医学部医学科に合格。31歳から医学生として再出発となった。その後、無事に国家試験合格、初期研修医も修了。その時点で医師としてどの科に進むかを選択するが、実際は迷ったという。

「スポーツ医療に携わりたいという初志を貫徹したいが、日本の医療にはスポーツ医学という診療科はない。一番近いのは整形外科であることは理解できたが、それでもスポーツだけをやるわけではなく、スポーツはあくまで付随する一領域。

一方、スポーツで生じる疾患は整形外科以外の領域もたくさんあって、スポーツから見た必要な医療を考えたとき、もっと広い視野も必要とは思っていた。でもやはり、スポーツに一番身近な診療科は整形外科だ」との思いから整形外科へ進んだ。

松枝院長は大学時代に母校で高校野球の監督を4年間経験し、サラリーマン生活を経て、31歳で国立大の医学部に入り直した経歴を持つ

整形外科領域の診療、技術研鑽に邁進しつつ、他科領域の知識も磨くため、総合診療外来や夜間の救急診療なども積極的に行ってきた。現在に至るまで、幅広い対応ができる整形外科医・スポーツ医として、アスリートを含めて多くの患者さんの治療にあたっている。

「ケガをして治療を求める患者さんのゴールはそれぞれ異なり、医師もそれを見定めるのが難しい。一般的な医療では、日常生活を問題なく過ごせるところまで戻すというのが治療のゴールですが、アスリートの場合は日常生活に戻るのはあくまで中間点であって、そこから競技復帰にたどり着くことが出発点になります。しかも、ただ単に試合に出るだけではなく、ケガをする以前のパフォーマンスと同等かそれ以上を発揮できるレベルになることが最終ゴールとなるので、相当な険しい道です。

能力は一人ひとり違うため、設定するゴールも異なります。そこにたどり着くために必要な内容も時間もバラバラです。さらに難しいのは、我々医療者はケガをした後のアスリートしか診ていないこと。元気に最大のパフォーマンスを発揮しているレベルは想像で補うしかないので、ゴール設定は非常に難しい作業になる。ですので、健康な状態から運動能力の測定をしておき、選手の〝今〟を把握しておくことができれば、ゴール設定が明確になります。

それを〝見える化〟することができれば、と思っていたところにこのアローズラボが目の前に現れました。目に見えにくい運動能力をデータに落とし込んで〝見える化〟してくださった。しかも、多くのサンプルを集めて他者と比較できるところまでもってきてくれた。これは非常に意義があり、患者本人のモチベーションを維持・アップさせるのにとても大きな役割を果たしてくれます。運動能力を〝見える化〟できると我々も目標設定が立てやすいし、患者さんも取り組みやすいんです。

これは指導者側にとってもありがたいことです。現場サイドでは選手に早く復帰してもらいたい思いがある。医療者側からするとまだリスクが高い場合は『やめた方がいい』と言いますが、現場からすると医師の判断の裏付けとなる理由がわかりにくいことも多い。そこに客観的なデータがあるとみんなが理解できる。例えば、筋力がまだこれだけ低いから治っていない、MRI画像でまだ骨が治っていない、などです。こうした客観的データは、立場を越えた〝共通言語〟になります。その〝共通言語〟をわかりやすく共有させていくことがスポーツドクターには求められます」

松枝院長は、日本のスポーツ診療における課題をそのように考えている。

細部におよぶメディカルチェックは、これまで一部のプロスポーツ、実業団チームに所属するようなトップ選手のみが受けられる恩恵だった。しかし今回、「アローズラボ」が市中の医療機関に導入されたことで、アスリートだけでなく、誰もがそれに触れられるようになった。この点が何より意義深い。

「スポーツをやっている以上、ケガは避けられません。それは不可抗力で起きるものもありますし、時に自分の限界を越えて競技やトレーニングに打ち込む場面も出てくるからです。ただ、その多くはコンディションが悪い時にアクシデントが起こった場合、あるいは疲れが蓄積して動きが悪くなっている場合など、本来良好なコンディションであれば防げたであろうケースが多いのが実情です。

これらのケガ、体調不良は重篤な状況に陥ってしまうこともあるので油断はできません。しかし、理想的なフォームや強靭な身体、心構えが備わっていると、そもそもケガをしにくい身体となり、少々の疲労やコンディション不良であっても乗り切れることが多々あります。予め自らの能力とコンディションを高めて整えていけば、余計なケガや故障を防げますし、より良いパフォーマンス、結果につながっていくのです」(松枝院長)

今年8月現在、運動能力の測定とメディカルチェックを同時に行えるのは、国内でこのまつえだ整形外科・ウェルスポーツクリニックのみとなる。

スポーツ科学×医療歴史的な一歩

「アローズラボ」とは運動能力を科学的に数値化するシステムで、視力(スポーツビジョン:動体視力など)・筋力・持久力・瞬発力・跳躍力の5大基礎体力を計測する。全国各地で展開している小・中学生を対象としたスポーツ科学トレーニング塾「アローズジム」、一般の方やプロ選手も対象とした「アローズラボ」での専門的なフィジカル検診(スポーツドック)でこれまでに測定、蓄積された延べ2万件以上に及ぶデータを基に分析、評価。その結果を踏まえ、科学的なアプローチでトレーニングを進めることを目指す。

運営する株式会社スポーツ科学の山下社長はかつてスポーツトレーナーとして各競技の国際大会に帯同するなど第一線で活躍してきたプロフェッショナル。その活動の中で「スポーツ科学」と「スポーツの現場」との乖離があり、研究分野での結果がアスリートに落とし込まれていないことを痛感していたという。

「アローズラボ」を運営する株式会社スポーツ科学の山下典秀社長は、医療機関との連携により、「科学によるスポーツの進化をさらに突き詰めていきたい」と話す

スポーツ科学を一部のトップアスリートだけのものではなく、広く、知れ渡るようにしたい。その思いからこれまで「アローズラボ」や「アローズジム」を日本中に展開し、スポーツ科学に精通した人材を育成するために医療・スポーツ系の専門学校にカリキュラムやアローズラボの設置を進めてきた。そこで得たデータの蓄積が現在地を知る上での重要な指標となっている。

「今回、アローズラボが医療機関に導入されたのは画期的な出来事です。医師は血液検査、CT・MRI検査、レントゲン検査などあらゆる方法を駆使し、健康状態を知ることができます。患者さん自身に自覚症状がなくても、例えば貧血が進行していたり、痛みがあった箇所が実は骨折していたり靱帯が損傷していたという事態も把握することができます。こうした医師の目線とアローズラボによる測定データからの評価の組み合わせで患者さんの治療や能力維持、向上の精度は上がります」

山下社長は今回のコラボレーションを歴史的な一歩と捉えている。

ケガを治すだけの医療から、ケガを防ぎ、力を伸ばすための医療を目指して独立・開業した松枝院長。この新たな挑戦が注目されている

健康診断のように運動能力診断も定期的に

「まつえだ整形外科・ウェルスポーツクリニック」は治すだけでなく、予防し、維持する、伸ばすまでを目指した医療機関。そのイメージするフローチャートは下表の通りだ。「残念ながらケガをして治療に来た患者さんをすぐに測定することはできません。それはラボでの測定自体、負荷が高く、再度、ケガをしてしまう恐れがあるからです。ですので、まずは治すことが先決。そのなかでケガをしていない部分や負担の少ない測定を少しずつしていき、状態を見極めていきます」

アスリートはもちろん、誰であっても健康寿命を延ばし、クオリティ・オブ・ライフを上げていくために、まさに健康診断のように定期的な測定が重要だと考える松枝院長。子どもから高齢者まで幅広い世代を対象に運動能力とメディカルチェックの習慣付けを促していき、状態を把握しておけば、骨粗鬆症の予防にもつながり、年齢を重ねても山登りや市民マラソンなどのイベントに、無理なく、楽しく参加できる。スポーツ科学を誰しもが利用できる環境づくりを目指すつもりだ。

言語化できないセンスの測定も視野に入れ、スポーツ診療に新たな風を!!

スポーツ分野に限って言えば、松枝院長は「中高生アスリートや市民ランナーなどトップ選手だけでなく、それ以外のカテゴリーの選手にもトップ選手と同様にスポーツ医学の観点からより良いスポーツ環境に身を置くことができるようなサポートを提供したい」と話す。チームドクター、トレーナーを兼務し、ナショナルチームレベルのサポートを希望するアスリートに施す。まさに高校野球指導者の時に感じた夢を自分自身が実現しようとしている。

当院のMRIは四肢限定であるが、待ち時間なくすぐに撮影できる。ここにも松枝院長の〝こだわり〟がある

ケガの治癒促進や疲労回復が期待できる高気圧酸素ルームも設置

同時に今回の「アローズラボ」とのタッグで、日本のスポーツ診療などに新たな領域を開拓することも大きなモチベーションだ。

「今のアローズラボでは5大基礎体力を測っていますが、〝運動センス〟という曖昧(あいまい)な言葉で、実際に定義されきっていない能力があります。例えば野球でバットの芯に当てる能力や、守備能力、陸上競技で言えばハードルを減速なくうまくさばける能力などがこれにあたるでしょう。こうしたまだ言語化、定義化されていない能力もいつか計測し、その能力を向上できるプログラムが組めるように、アローズラボとともに探し当てたいと思っています。

そして、自院に通ったアスリートがその競技人生を悔いなく全うしてくれることが一番の望みです。国際大会などで活躍すればなおさらうれしいですし、将来的にはそうしたアスリートが自院に所属してくれて檜舞台で活躍する姿を見られたら最高ですね。そうした選手をたくさん輩出するのが最終的な夢です」(松枝院長)

アローズラボとともにスポーツ診療の開拓者になるために――。その第一歩がここに踏み出された。

JR高槻駅から徒歩2 ~ 3分、新築されたばかりのビルの2階にある「まつえだ整形外科・ウェルスポーツクリニック」

民間屈指のスポーツ科学センター アローズラボ&アローズジム
株式会社スポーツ科学

静岡県浜松市中区新津町534
TEL 053-411-1008
ホームページ

まつえだ整形外科ウェルスポーツクリニック
大阪府高槻市高槻町8-14 レフィシア高槻2F
TEL 072-682-6300
ホームページ

※この記事は『月刊陸上競技』2023年9月号に掲載しています

株式会社スポーツ科学(本社:静岡県浜松市)による民間屈指のスポーツ科学センター「アローズラボ(スポーツ科学フィジカル検診施設)」。運動能力を科学的に数値化し、〝見える化〟できる施設が、このたび大阪府高槻市に開業された「まつえだ整形外科・ウェルスポーツクリニック」(松枝洋院長)に導入された。 同社にとって医療機関との提携は初の試みで、「治す」医療から発展し、「予防し、力を維持、向上させる」ところまで活用されることが期待されている。これまでにないコラボレーションでスポーツ診療に新たな領域が開拓されそうだ。

ケガを治すだけでなく、予防し、力を伸ばすために

今年5月に開設されたばかりの「まつえだ整形外科・ウェルスポーツクリニック」(大阪府高槻市)は、通常の整形外科に加え、スポーツに特化した診療を備える。そして能力を問わず、シームレスに一般の社会生活を送る人々の健康増進、運動能力の維持、向上まで視野に入れている点が特徴だ。 「私はこれまで整形外科医をしながら、子どもたちを対象としたスポーツ教室やスポーツ体験会を主催する活動に携わってきました。その活動の中で、運動能力を〝見える化〟するプログラムがあれば、より的確な運動指導ができるのではないかという考えを強く持つようになりました。そこで調べたところ、『アローズラボ』を知ったのです。整形外科医としてスポーツによるケガを治すにあたり、レントゲンやMRIを撮って医師の目線から評価をすることはできますが、患者さんが備えている運動能力まで評価することはできません。 そのため、『アローズラボ』を導入して運動能力を〝見える化〟すれば、より中身の濃いケアができるだろうと判断し、医療とスポーツ科学の融合に挑戦してみたいと考えるようになったのです。その方法を『アローズラボ』を運営する株式会社スポーツ科学の山下典秀社長と何度も検討した結果、医療機関にラボの機能を導入するのがベストだと意見がまとまり、今回、ラボを併設したスポーツクリニックを開業することになりました」 勤務医を経てこのたび独立した松枝洋院長(47歳)は、「アローズラボ」導入の経緯をこう説明する。今回、医療とスポーツ科学の融合への挑戦に挑んだ背景には松枝院長が歩んできたキャリアも関係している。高校時代は硬式野球に打ち込み、大学進学後は野球から離れたが、在学中に母校の野球部から指導の依頼を受け、外部指導者として監督を4期務め、激戦区・大阪でベスト16進出も果たした。 その後、一般企業に就職して社会人生活を送っていたが、20代後半にさしかかり次のステップを考えるようになった頃、仕事上で出会った医師から、一旦社会人となった人が再び医学部を受験して医師となる〝医学部再受験〟という道があることを教えてもらった。 偶然にもその当時に出会った女性(現在の妻)が現役の医師で、医師という仕事を具体的にイメージできるようになり、「自分も医師になれたら」という思いが芽生え、「それなら野球の指導中に何度も遭遇したスポーツ中のケガや故障をしっかり診ることができる医師になってやろう」と決意。医学部再受験という茨の道に踏み出した。 27歳に医学部再受験をスタートし、丸3年で高知大学医学部医学科に合格。31歳から医学生として再出発となった。その後、無事に国家試験合格、初期研修医も修了。その時点で医師としてどの科に進むかを選択するが、実際は迷ったという。 「スポーツ医療に携わりたいという初志を貫徹したいが、日本の医療にはスポーツ医学という診療科はない。一番近いのは整形外科であることは理解できたが、それでもスポーツだけをやるわけではなく、スポーツはあくまで付随する一領域。 一方、スポーツで生じる疾患は整形外科以外の領域もたくさんあって、スポーツから見た必要な医療を考えたとき、もっと広い視野も必要とは思っていた。でもやはり、スポーツに一番身近な診療科は整形外科だ」との思いから整形外科へ進んだ。 [caption id="attachment_109725" align="alignnone" width="800"] 松枝院長は大学時代に母校で高校野球の監督を4年間経験し、サラリーマン生活を経て、31歳で国立大の医学部に入り直した経歴を持つ[/caption] 整形外科領域の診療、技術研鑽に邁進しつつ、他科領域の知識も磨くため、総合診療外来や夜間の救急診療なども積極的に行ってきた。現在に至るまで、幅広い対応ができる整形外科医・スポーツ医として、アスリートを含めて多くの患者さんの治療にあたっている。 「ケガをして治療を求める患者さんのゴールはそれぞれ異なり、医師もそれを見定めるのが難しい。一般的な医療では、日常生活を問題なく過ごせるところまで戻すというのが治療のゴールですが、アスリートの場合は日常生活に戻るのはあくまで中間点であって、そこから競技復帰にたどり着くことが出発点になります。しかも、ただ単に試合に出るだけではなく、ケガをする以前のパフォーマンスと同等かそれ以上を発揮できるレベルになることが最終ゴールとなるので、相当な険しい道です。 能力は一人ひとり違うため、設定するゴールも異なります。そこにたどり着くために必要な内容も時間もバラバラです。さらに難しいのは、我々医療者はケガをした後のアスリートしか診ていないこと。元気に最大のパフォーマンスを発揮しているレベルは想像で補うしかないので、ゴール設定は非常に難しい作業になる。ですので、健康な状態から運動能力の測定をしておき、選手の〝今〟を把握しておくことができれば、ゴール設定が明確になります。 それを〝見える化〟することができれば、と思っていたところにこのアローズラボが目の前に現れました。目に見えにくい運動能力をデータに落とし込んで〝見える化〟してくださった。しかも、多くのサンプルを集めて他者と比較できるところまでもってきてくれた。これは非常に意義があり、患者本人のモチベーションを維持・アップさせるのにとても大きな役割を果たしてくれます。運動能力を〝見える化〟できると我々も目標設定が立てやすいし、患者さんも取り組みやすいんです。 これは指導者側にとってもありがたいことです。現場サイドでは選手に早く復帰してもらいたい思いがある。医療者側からするとまだリスクが高い場合は『やめた方がいい』と言いますが、現場からすると医師の判断の裏付けとなる理由がわかりにくいことも多い。そこに客観的なデータがあるとみんなが理解できる。例えば、筋力がまだこれだけ低いから治っていない、MRI画像でまだ骨が治っていない、などです。こうした客観的データは、立場を越えた〝共通言語〟になります。その〝共通言語〟をわかりやすく共有させていくことがスポーツドクターには求められます」 松枝院長は、日本のスポーツ診療における課題をそのように考えている。 細部におよぶメディカルチェックは、これまで一部のプロスポーツ、実業団チームに所属するようなトップ選手のみが受けられる恩恵だった。しかし今回、「アローズラボ」が市中の医療機関に導入されたことで、アスリートだけでなく、誰もがそれに触れられるようになった。この点が何より意義深い。 「スポーツをやっている以上、ケガは避けられません。それは不可抗力で起きるものもありますし、時に自分の限界を越えて競技やトレーニングに打ち込む場面も出てくるからです。ただ、その多くはコンディションが悪い時にアクシデントが起こった場合、あるいは疲れが蓄積して動きが悪くなっている場合など、本来良好なコンディションであれば防げたであろうケースが多いのが実情です。 これらのケガ、体調不良は重篤な状況に陥ってしまうこともあるので油断はできません。しかし、理想的なフォームや強靭な身体、心構えが備わっていると、そもそもケガをしにくい身体となり、少々の疲労やコンディション不良であっても乗り切れることが多々あります。予め自らの能力とコンディションを高めて整えていけば、余計なケガや故障を防げますし、より良いパフォーマンス、結果につながっていくのです」(松枝院長) 今年8月現在、運動能力の測定とメディカルチェックを同時に行えるのは、国内でこのまつえだ整形外科・ウェルスポーツクリニックのみとなる。

スポーツ科学×医療歴史的な一歩

「アローズラボ」とは運動能力を科学的に数値化するシステムで、視力(スポーツビジョン:動体視力など)・筋力・持久力・瞬発力・跳躍力の5大基礎体力を計測する。全国各地で展開している小・中学生を対象としたスポーツ科学トレーニング塾「アローズジム」、一般の方やプロ選手も対象とした「アローズラボ」での専門的なフィジカル検診(スポーツドック)でこれまでに測定、蓄積された延べ2万件以上に及ぶデータを基に分析、評価。その結果を踏まえ、科学的なアプローチでトレーニングを進めることを目指す。 運営する株式会社スポーツ科学の山下社長はかつてスポーツトレーナーとして各競技の国際大会に帯同するなど第一線で活躍してきたプロフェッショナル。その活動の中で「スポーツ科学」と「スポーツの現場」との乖離があり、研究分野での結果がアスリートに落とし込まれていないことを痛感していたという。 [caption id="attachment_109741" align="alignnone" width="800"] 「アローズラボ」を運営する株式会社スポーツ科学の山下典秀社長は、医療機関との連携により、「科学によるスポーツの進化をさらに突き詰めていきたい」と話す[/caption] スポーツ科学を一部のトップアスリートだけのものではなく、広く、知れ渡るようにしたい。その思いからこれまで「アローズラボ」や「アローズジム」を日本中に展開し、スポーツ科学に精通した人材を育成するために医療・スポーツ系の専門学校にカリキュラムやアローズラボの設置を進めてきた。そこで得たデータの蓄積が現在地を知る上での重要な指標となっている。 「今回、アローズラボが医療機関に導入されたのは画期的な出来事です。医師は血液検査、CT・MRI検査、レントゲン検査などあらゆる方法を駆使し、健康状態を知ることができます。患者さん自身に自覚症状がなくても、例えば貧血が進行していたり、痛みがあった箇所が実は骨折していたり靱帯が損傷していたという事態も把握することができます。こうした医師の目線とアローズラボによる測定データからの評価の組み合わせで患者さんの治療や能力維持、向上の精度は上がります」 山下社長は今回のコラボレーションを歴史的な一歩と捉えている。 [caption id="attachment_109745" align="alignnone" width="800"] ケガを治すだけの医療から、ケガを防ぎ、力を伸ばすための医療を目指して独立・開業した松枝院長。この新たな挑戦が注目されている[/caption]

健康診断のように運動能力診断も定期的に

「まつえだ整形外科・ウェルスポーツクリニック」は治すだけでなく、予防し、維持する、伸ばすまでを目指した医療機関。そのイメージするフローチャートは下表の通りだ。「残念ながらケガをして治療に来た患者さんをすぐに測定することはできません。それはラボでの測定自体、負荷が高く、再度、ケガをしてしまう恐れがあるからです。ですので、まずは治すことが先決。そのなかでケガをしていない部分や負担の少ない測定を少しずつしていき、状態を見極めていきます」 アスリートはもちろん、誰であっても健康寿命を延ばし、クオリティ・オブ・ライフを上げていくために、まさに健康診断のように定期的な測定が重要だと考える松枝院長。子どもから高齢者まで幅広い世代を対象に運動能力とメディカルチェックの習慣付けを促していき、状態を把握しておけば、骨粗鬆症の予防にもつながり、年齢を重ねても山登りや市民マラソンなどのイベントに、無理なく、楽しく参加できる。スポーツ科学を誰しもが利用できる環境づくりを目指すつもりだ。

言語化できないセンスの測定も視野に入れ、スポーツ診療に新たな風を!!

スポーツ分野に限って言えば、松枝院長は「中高生アスリートや市民ランナーなどトップ選手だけでなく、それ以外のカテゴリーの選手にもトップ選手と同様にスポーツ医学の観点からより良いスポーツ環境に身を置くことができるようなサポートを提供したい」と話す。チームドクター、トレーナーを兼務し、ナショナルチームレベルのサポートを希望するアスリートに施す。まさに高校野球指導者の時に感じた夢を自分自身が実現しようとしている。 [caption id="attachment_109738" align="alignnone" width="800"] 当院のMRIは四肢限定であるが、待ち時間なくすぐに撮影できる。ここにも松枝院長の〝こだわり〟がある[/caption] [caption id="attachment_109739" align="alignnone" width="800"] ケガの治癒促進や疲労回復が期待できる高気圧酸素ルームも設置[/caption] 同時に今回の「アローズラボ」とのタッグで、日本のスポーツ診療などに新たな領域を開拓することも大きなモチベーションだ。 「今のアローズラボでは5大基礎体力を測っていますが、〝運動センス〟という曖昧(あいまい)な言葉で、実際に定義されきっていない能力があります。例えば野球でバットの芯に当てる能力や、守備能力、陸上競技で言えばハードルを減速なくうまくさばける能力などがこれにあたるでしょう。こうしたまだ言語化、定義化されていない能力もいつか計測し、その能力を向上できるプログラムが組めるように、アローズラボとともに探し当てたいと思っています。 そして、自院に通ったアスリートがその競技人生を悔いなく全うしてくれることが一番の望みです。国際大会などで活躍すればなおさらうれしいですし、将来的にはそうしたアスリートが自院に所属してくれて檜舞台で活躍する姿を見られたら最高ですね。そうした選手をたくさん輩出するのが最終的な夢です」(松枝院長) アローズラボとともにスポーツ診療の開拓者になるために――。その第一歩がここに踏み出された。 [caption id="attachment_109753" align="alignnone" width="800"] JR高槻駅から徒歩2 ~ 3分、新築されたばかりのビルの2階にある「まつえだ整形外科・ウェルスポーツクリニック」[/caption] 民間屈指のスポーツ科学センター アローズラボ&アローズジム 株式会社スポーツ科学 静岡県浜松市中区新津町534 TEL 053-411-1008 ホームページ まつえだ整形外科ウェルスポーツクリニック 大阪府高槻市高槻町8-14 レフィシア高槻2F TEL 072-682-6300 ホームページ ※この記事は『月刊陸上競技』2023年9月号に掲載しています

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.12.05

世界大会の競歩実施距離が変更! 35kmは42.195km、20kmはハーフマラソンの距離に 26年から採用

世界陸連は12月3日〜4日にかけて理事会を実施し、今後の競技会やルール変更についてさまざまな議案が承認されたと発表した。 大きな変更点として、2026年以降の世界大会での競歩の実施距離が変更され、35km競歩はフルマラソ […]

NEWS やり投・北口榛花が日本陸連アスリート・オブ・ザ・イヤー!室伏広治に続き2人目の2年連続受賞

2024.12.04

やり投・北口榛花が日本陸連アスリート・オブ・ザ・イヤー!室伏広治に続き2人目の2年連続受賞

日本陸連は12月4日、日本陸連アスレティックス・アワード2024の受賞者を発表し、最優秀選手に当たる「アスリート・オブ・ザ・イヤー」に、女子やり投の北口榛花(JAL)が選ばれた。昨年に続いて2年連続は、2011、12年の […]

NEWS 田中希実がオムロンとパートナーシップ契約締結 23年からセルフケアで機器を愛用

2024.12.04

田中希実がオムロンとパートナーシップ契約締結 23年からセルフケアで機器を愛用

オムロン ヘルスケア株式会社は、女子中長距離の田中希実(New Balance)とパートナーシップ契約を締結したと発表した。 1500m、5000mの日本記録保持者で、東京五輪・パリ五輪代表の田中。23年頃に股関節の繊細 […]

NEWS 富士通にブダペスト世界陸上代表・山本亜美と東京世界陸上標準突破の井之上駿太が加入!400mHホープが名門へ

2024.12.04

富士通にブダペスト世界陸上代表・山本亜美と東京世界陸上標準突破の井之上駿太が加入!400mHホープが名門へ

12月4日、富士通はホームページで、来年4月1日付で男子400mハードルの井之上駿太(法大)と女子400mハードルの山本亜美(立命大)の2人が入社することを発表した。 井之上は大阪府出身。中学時代は100mや200mに取 […]

NEWS アトランタ五輪女子円盤投金メダルのヴィルダ氏が死去 55歳 パラアスリートとしても活躍

2024.12.04

アトランタ五輪女子円盤投金メダルのヴィルダ氏が死去 55歳 パラアスリートとしても活躍

1996年アトランタ五輪女子円盤投の金メダリスト、イルケ・ヴィルダ氏(ドイツ)が12月1日に亡くなった。55歳だった。 ヴィルダ氏はライプツィヒに生まれ、ドイツ統一前は東ドイツ代表として競技していた。1988年に投げた7 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年12月号 (11月14日発売)

2024年12月号 (11月14日発売)

全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会

page top