2023.06.30
学生長距離Close-upインタビュー
前田 和摩 Maeda Kazuma 東京農業大学1年
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。30回目は、東農大の前田和摩(1年)をピックアップする。
高校3年時はインターハイ5000mで日本人トップ。都道府県駅伝5区を区間2位と好走すると、高校卒業後さらに飛躍した。大学デビュー戦となった5月の関東インカレは男子2部5000mに出場。予選を悠々突破して、決勝は6人のケニア人留学生を相手に4位(日本人2位/13分57秒25)に食い込んだ。
周囲の予想を大きく上回るペースで成長を遂げ、すっかり学生長距離界でも注目を浴びる存在となったスーパールーキーのこれまでと現在地を追った。
竹澤健介以来の快挙を達成
6月17日の全日本大学駅伝関東学連推薦選考会、東農大の1年生、前田和摩の未知なるパワーが爆発する。
初めての10000mレースで前田は迷うことなく先頭集団でレースを進めた。5000mを14分07秒で通過すると、ケニア人留学生がペースアップ。日本人選手は前田1人になるが、留学生と最後まで真っ向勝負を演じる。残り450m付近からはトップを激走して、スタジアムをざわつかせた。
留学生2人に逆転されたとはいえ、日本人トップの3着でフィニッシュ。U20日本歴代2位の28分03秒51を叩き出した。
「日本人1位の選手を見ながら走って、チャンスがあればどんどん前に行くレースをしました。集団が分かれた時に、思い切って前の留学生についた判断が今日の結果を生んだのかなと思います。関東インカレは一度も前に出ずに終わってしまったので、潰れてもいいからラストも勝負しました。今までやってきたことを100%出せたので、自分の中では100点満点です」
関東学連の選考会が現在の形式となった1998年以降、1年生が日本人トップタイムを出したのは報徳学園高の先輩・竹澤健介(早大/05年)以来2人目。潰滝大記(中央学大)が2015年にマークした全日本選考会の日本人最高タイム(28分31秒84)も大幅に塗り替えた。
前田の快走で東農大は14年ぶりとなる全日本大学駅伝出場を決めた。低迷していた伝統校に現れた救世主の強さのルーツはどこにあるのだろうか。
竹澤健介以来の快挙を達成
6月17日の全日本大学駅伝関東学連推薦選考会、東農大の1年生、前田和摩の未知なるパワーが爆発する。 初めての10000mレースで前田は迷うことなく先頭集団でレースを進めた。5000mを14分07秒で通過すると、ケニア人留学生がペースアップ。日本人選手は前田1人になるが、留学生と最後まで真っ向勝負を演じる。残り450m付近からはトップを激走して、スタジアムをざわつかせた。 留学生2人に逆転されたとはいえ、日本人トップの3着でフィニッシュ。U20日本歴代2位の28分03秒51を叩き出した。 「日本人1位の選手を見ながら走って、チャンスがあればどんどん前に行くレースをしました。集団が分かれた時に、思い切って前の留学生についた判断が今日の結果を生んだのかなと思います。関東インカレは一度も前に出ずに終わってしまったので、潰れてもいいからラストも勝負しました。今までやってきたことを100%出せたので、自分の中では100点満点です」 関東学連の選考会が現在の形式となった1998年以降、1年生が日本人トップタイムを出したのは報徳学園高の先輩・竹澤健介(早大/05年)以来2人目。潰滝大記(中央学大)が2015年にマークした全日本選考会の日本人最高タイム(28分31秒84)も大幅に塗り替えた。 前田の快走で東農大は14年ぶりとなる全日本大学駅伝出場を決めた。低迷していた伝統校に現れた救世主の強さのルーツはどこにあるのだろうか。高2の秋にブレイク
兵庫・深津中時代の3000mベストが9分14秒だった前田は、県内の強豪である報徳学園高に進学。5000mのベストが15分半ほどだった1年時に村上和春コーチから勧誘を受けたこともあり、東農大への進学を決めた。 「そんなに強くなかった時から熱心に声をかけていただきましたし、自分のことを本当に考えてくれていると感じました。この大学なら強くなれると思ったんです」 無名だった前田は高2の秋に大ブレイクすることになる。兵庫県高校駅伝1区(10km)を28分59秒で走破。同学年の西脇工・長嶋幸宝(現・旭化成)に14秒差をつけて区間賞を獲得した。近畿大会1区も28分58秒で区間賞を奪っている。 長嶋は2019年の全中3000mで3位、高2のインターハイは1500mで4位(3分44秒87/高校歴代9位)に入っている選手。「高校入学時はまさか届くとは思っていなかったんですけど、徐々に戦えるようになってきて、強く意識するようになったんです」とライバル視するようになった。 3年時は4月の兵庫リレーカーニバル高校5000mで長嶋に競り負けるが、13分56秒65の自己ベスト。インターハイ路線の5000mは兵庫県大会と近畿大会で長嶋に惜敗するも、全国の舞台でリベンジを果たす。ケニア人留学生に食らいつき、13分58秒01で4位。長嶋を抑えて、日本人トップに輝いたのだ。この時を振り返り、前田は「すごくうれしかったですし、高校生活で一番印象に残っています」と言う。 [caption id="attachment_106946" align="alignnone" width="800"]
「箱根予選会にすべてをぶつけたい」
全国高校駅伝を逃した悔しさが、大学で競技を続ける大きなエネルギーになった。 自分の失敗でチームは負けてしまった、その経験をバネにして大学ではもっと強くなりたい、そうした強い思いを抱いて入学した東農大では、10000mで28分10秒台のタイムを持つ高槻芳照&並木寧音(ともに4年)とともに練習。余裕を持ったトレーニングを行い、「良いイメージで終わる」ことを意識して取り組んでいる。 その中で主将・高槻は、「前田は別格ですね。自分と並木とは、ちょっと持っているものが違うかなと感じます」と後輩のポテンシャルを評価。小指徹監督も全日本選考会の快走には驚いていた。 「高校時代、駅伝で好走していますし、長い距離の適性もある。関東インカレ5000mは予選・決勝もやっていたので、初の10000mでも十分対応できると思っていました。ただ、私の想定以上に走りましたね。箱根予選会も日本人トップで行くかもしれないですし、将来的には日本人学生最高記録も狙えると思います」 条件の良いレースにコンディションを合わせて出場すれば、あと4秒に迫ったU20日本記録(27分59秒32)の更新も狙えるだろう。ただ、前田のターゲットは明確だ。 「箱根予選会の日本人トップが目標です。まずは予選会にすべてをぶつける気持ちでいます。自分が入って、農大を強くしていきたいという気持ちがありますし、入学時からチーム引っ張ってくださった高槻さんと並木さんに、最後はチームで箱根に出ていただきたいんです」 最終的には「オリンピックのマラソンで勝負したい」という前田。10年ぶり70回目の箱根駅伝出場を目指している東農大の救世主になるだけでなく、学生長距離界のエースに羽ばたいていく──。 [caption id="attachment_106945" align="alignnone" width="800"]
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
2025.04.29
100mH田中佑美が予選トップ通過も決勝棄権「故障ではない」昨年の結婚も明かす/織田記念
-
2025.04.28
-
2025.04.26
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.04.01
-
2025.04.12
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]
2025.04.30
【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦
FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]
2025.04.30
5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場
5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]
2025.04.30
26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得
世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)