2023.06.30
高2の秋にブレイク
兵庫・深津中時代の3000mベストが9分14秒だった前田は、県内の強豪である報徳学園高に進学。5000mのベストが15分半ほどだった1年時に村上和春コーチから勧誘を受けたこともあり、東農大への進学を決めた。
「そんなに強くなかった時から熱心に声をかけていただきましたし、自分のことを本当に考えてくれていると感じました。この大学なら強くなれると思ったんです」
無名だった前田は高2の秋に大ブレイクすることになる。兵庫県高校駅伝1区(10km)を28分59秒で走破。同学年の西脇工・長嶋幸宝(現・旭化成)に14秒差をつけて区間賞を獲得した。近畿大会1区も28分58秒で区間賞を奪っている。
長嶋は2019年の全中3000mで3位、高2のインターハイは1500mで4位(3分44秒87/高校歴代9位)に入っている選手。「高校入学時はまさか届くとは思っていなかったんですけど、徐々に戦えるようになってきて、強く意識するようになったんです」とライバル視するようになった。
3年時は4月の兵庫リレーカーニバル高校5000mで長嶋に競り負けるが、13分56秒65の自己ベスト。インターハイ路線の5000mは兵庫県大会と近畿大会で長嶋に惜敗するも、全国の舞台でリベンジを果たす。ケニア人留学生に食らいつき、13分58秒01で4位。長嶋を抑えて、日本人トップに輝いたのだ。この時を振り返り、前田は「すごくうれしかったですし、高校生活で一番印象に残っています」と言う。
しかし、3年時の兵庫県高校駅伝1区は自滅する。長嶋が28分31秒の区間新で駆け抜けると、前田は29分42秒の区間2位に沈み、チームは3位に終わった。
「自分の考え方が甘かったですね。エースとして長嶋選手を引き離さないといけないと、勝手に背負い込んでしまったんです。チームで勝つことを考えれば、1秒でもいいので前で確実にタスキをつなげるべきだったかなと今は思います」
竹澤健介以来の快挙を達成
6月17日の全日本大学駅伝関東学連推薦選考会、東農大の1年生、前田和摩の未知なるパワーが爆発する。 初めての10000mレースで前田は迷うことなく先頭集団でレースを進めた。5000mを14分07秒で通過すると、ケニア人留学生がペースアップ。日本人選手は前田1人になるが、留学生と最後まで真っ向勝負を演じる。残り450m付近からはトップを激走して、スタジアムをざわつかせた。 留学生2人に逆転されたとはいえ、日本人トップの3着でフィニッシュ。U20日本歴代2位の28分03秒51を叩き出した。 「日本人1位の選手を見ながら走って、チャンスがあればどんどん前に行くレースをしました。集団が分かれた時に、思い切って前の留学生についた判断が今日の結果を生んだのかなと思います。関東インカレは一度も前に出ずに終わってしまったので、潰れてもいいからラストも勝負しました。今までやってきたことを100%出せたので、自分の中では100点満点です」 関東学連の選考会が現在の形式となった1998年以降、1年生が日本人トップタイムを出したのは報徳学園高の先輩・竹澤健介(早大/05年)以来2人目。潰滝大記(中央学大)が2015年にマークした全日本選考会の日本人最高タイム(28分31秒84)も大幅に塗り替えた。 前田の快走で東農大は14年ぶりとなる全日本大学駅伝出場を決めた。低迷していた伝統校に現れた救世主の強さのルーツはどこにあるのだろうか。高2の秋にブレイク
兵庫・深津中時代の3000mベストが9分14秒だった前田は、県内の強豪である報徳学園高に進学。5000mのベストが15分半ほどだった1年時に村上和春コーチから勧誘を受けたこともあり、東農大への進学を決めた。 「そんなに強くなかった時から熱心に声をかけていただきましたし、自分のことを本当に考えてくれていると感じました。この大学なら強くなれると思ったんです」 無名だった前田は高2の秋に大ブレイクすることになる。兵庫県高校駅伝1区(10km)を28分59秒で走破。同学年の西脇工・長嶋幸宝(現・旭化成)に14秒差をつけて区間賞を獲得した。近畿大会1区も28分58秒で区間賞を奪っている。 長嶋は2019年の全中3000mで3位、高2のインターハイは1500mで4位(3分44秒87/高校歴代9位)に入っている選手。「高校入学時はまさか届くとは思っていなかったんですけど、徐々に戦えるようになってきて、強く意識するようになったんです」とライバル視するようになった。 3年時は4月の兵庫リレーカーニバル高校5000mで長嶋に競り負けるが、13分56秒65の自己ベスト。インターハイ路線の5000mは兵庫県大会と近畿大会で長嶋に惜敗するも、全国の舞台でリベンジを果たす。ケニア人留学生に食らいつき、13分58秒01で4位。長嶋を抑えて、日本人トップに輝いたのだ。この時を振り返り、前田は「すごくうれしかったですし、高校生活で一番印象に残っています」と言う。 [caption id="attachment_106946" align="alignnone" width="800"]
2022年インターハイ5000mで日本人トップの4位となった前田和摩[/caption]
しかし、3年時の兵庫県高校駅伝1区は自滅する。長嶋が28分31秒の区間新で駆け抜けると、前田は29分42秒の区間2位に沈み、チームは3位に終わった。
「自分の考え方が甘かったですね。エースとして長嶋選手を引き離さないといけないと、勝手に背負い込んでしまったんです。チームで勝つことを考えれば、1秒でもいいので前で確実にタスキをつなげるべきだったかなと今は思います」
「箱根予選会にすべてをぶつけたい」
全国高校駅伝を逃した悔しさが、大学で競技を続ける大きなエネルギーになった。 自分の失敗でチームは負けてしまった、その経験をバネにして大学ではもっと強くなりたい、そうした強い思いを抱いて入学した東農大では、10000mで28分10秒台のタイムを持つ高槻芳照&並木寧音(ともに4年)とともに練習。余裕を持ったトレーニングを行い、「良いイメージで終わる」ことを意識して取り組んでいる。 その中で主将・高槻は、「前田は別格ですね。自分と並木とは、ちょっと持っているものが違うかなと感じます」と後輩のポテンシャルを評価。小指徹監督も全日本選考会の快走には驚いていた。 「高校時代、駅伝で好走していますし、長い距離の適性もある。関東インカレ5000mは予選・決勝もやっていたので、初の10000mでも十分対応できると思っていました。ただ、私の想定以上に走りましたね。箱根予選会も日本人トップで行くかもしれないですし、将来的には日本人学生最高記録も狙えると思います」 条件の良いレースにコンディションを合わせて出場すれば、あと4秒に迫ったU20日本記録(27分59秒32)の更新も狙えるだろう。ただ、前田のターゲットは明確だ。 「箱根予選会の日本人トップが目標です。まずは予選会にすべてをぶつける気持ちでいます。自分が入って、農大を強くしていきたいという気持ちがありますし、入学時からチーム引っ張ってくださった高槻さんと並木さんに、最後はチームで箱根に出ていただきたいんです」 最終的には「オリンピックのマラソンで勝負したい」という前田。10年ぶり70回目の箱根駅伝出場を目指している東農大の救世主になるだけでなく、学生長距離界のエースに羽ばたいていく──。 [caption id="attachment_106945" align="alignnone" width="800"]
2023年全日本大学駅伝選考会で日本人トップの好走を見せた前田和摩[/caption]
◎まえだ・かずま/兵庫県西宮市出身。深津中→報徳学園高→東農大。自己記録5000m13分56秒65、10000m28分03秒51、高2の県高校駅伝、近畿高校駅伝の1区(10km)で28分台をマークして注目を集めると、3年時にはインターハイ5000mで日本人トップ。今年1月の全国高校駅伝では5区で区間2位と好走した。東農大入学後はすぐチームの主力となり、関東インカレ2部5000m4位、全日本大学駅伝選考会4組3着(日本人トップ)と好走が続く。
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