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ALL for TOKYO 2020+1 小池祐貴 今年より来年、来年より再来年、 成長した自分でありたい
ALL for TOKYO 2020+1 小池祐貴 今年より来年、来年より再来年、 成長した自分でありたい

【ALL for TOKYO 2020+1】
小池祐貴(住友電工)

今年より来年、来年より再来年、
成長した自分でありたい

昨年、初めて世界選手権に出場した小池。日本選手権は100m3位、200m2位だった

慶大を卒業して、社会人1年目の2018年に、ジャカルタ・アジア大会男子200mで優勝。群雄割拠の男子短距離界で、今や押しも押されもせぬ中心メンバーにいる小池祐貴(住友電工)だが、日本代表としてのキャリアはまだ浅い。その経験不足を埋めるべく、昨シーズンは何度か欧州転戦を繰り返し、7月のダイヤモンドリーグ・ロンドン大会100mでは、9秒98(日本歴代2位タイ)という大きな収穫も得た。初の世界大会となるドーハ世界選手権は故障もあって納得のいく結果ではなかったが、2019年は「まずまず良かった」と言える年に。25歳の小池は「東京五輪があるからということではなく、今年より来年、来年より再来年に成長した自分でありたい」と言う。

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◎文/小森貞子

冷静に受け止めた五輪の1年延期

年末に引き続き、鹿児島で合宿中だった今年3月末のこと。朝ご飯を食べながらテレビのニュースを見ていると、「東京五輪1年延期」の報。小池祐貴は驚きよりも「そりゃそうだよな」という気持ちのほうが大きかったそうだ。

「新型コロナウィルスの感染が世界規模で広がっていて、すべてのアスリートの条件をそろえるのは不可能だろうな、と思ったんです。むしろ、これで延期にならなかったら、すごく不平等な中でやることになると思いましたね」

東京に戻ってからは緊急事態宣言が出され、練習拠点にしている北区のナショナルトレーニングセンター(NTC)も閉鎖に。会社から部の活動も自粛が要請されて、臼井淳一コーチとは約2ヵ月、電話やメールでのやり取りだけになった。小池だけでなく、3月からチームに合流している新入社員の御家瀬緑(住友電工/恵庭北高卒)も、北海道から都内へ引っ越してきた早々にコロナ禍に巻き込まれた。昨年の日本選手権女子100mで優勝した、女子短距離界のホープ。御家瀬の兄と小池が旧知の仲という、小池にとってはいわば郷里の〝妹分〟だ。

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昨今の状況下で、まだそれほど交流する時間は持てておらず、それぞれが自宅近くで身体を動かしたり、坂上りをやったり、走ったり。「僕がお世話するという感じはまったくなくて、逆に練習パートナーが1人来てくれた感じで、いい刺激を受けています」と〝兄貴分〟は笑う。「本当に十代か? と思うぐらい落ち着いているというか、しっかりしているというか、すごく平常心を保てる子なので、こっちも冷静にならせてもらっています」と、小池は19歳の後輩を褒め称えた。

2019年は経験値を高める年に

同世代の桐生祥秀(日本生命、左)と、サニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大)らとともに、日本を代表するスプリンターのひとりに成長を遂げた

2020年が半分以上過ぎて、今さらという感がなくもないが、小池にとって「アジア・チャンピオン」で迎えた昨年はどんなシーズンだったのだろうか。「シーズンを通して試行錯誤を繰り返して、着実に成長できた1年だったので、まあまあ良かったんじゃないかなと思います」と言うのが、まず本人の総括だ。

パスポートにはどれだけ出入国のスタンプが押されたのだろう。ずいぶんと慌ただしい1年だった。3月末に米国・スタンフォード招待でシーズンインし、100mで10秒09(+3.0)と10秒07(+2.8)。追い風参考にはなったが、およそ1時間のリカバリーで10秒0台を2本。4月末にはドーハ・アジア選手権に出て、200mで2位(20秒55 /+1.7)。順当な滑り出しだった。

その後は、6月末の日本選手権をはさんで、日本とヨーロッパを行ったり来たり。男子走幅跳で3度の五輪代表になっている臼井コーチも、現役時代に海外遠征を経験しているが、口で説明するより実体験に勝るものはない。「とにかくハードスケジュールをこなして、身体にどれほどのダメージがあるのか、1度経験させたかった」と言う。

小池も「経験値を高めていくには、とりあえずダイヤモンドリーグ(DL)など、レベルの高い試合に出て、日程的に多少きつくても試合を重ねていくのがベストな方法かな、と思った」と話す。そんな師弟の意図を汲んで、力を貸してくれたのが米国人の代理人、トニー・キャンベル氏だった。

日本選手権前の6月初めにフランス(パドァヴ)とDLオスロ。日本選手権後は、7月にDLロンドン、8月にDLバーミンガム。「ざっくり言うと、新しい世界に触れたということ
です」と、小池は貴重な体験を振り返った。

例えば「試合の翌朝、3時とか4時に起きて移動し、現地に着いたら翌日が試合とか、1日おきに国をまたいで移動するとか」。小池は「陸上選手として生計を立てていくには、こういうスタイルでみんなやっているんだな、というのを肌で感じられたのが大きな経験」と話し、「これが、この人たちの常識なんだ」と痛感したという。

ただ、時差ボケには悩まされた。帰国すると「夜、眠れないし、昼間練習に行くと眠いし」。時差ボケ解消までに10日ぐらい要して、オスロから帰って2週間後の日本選手権は「まだ睡眠のリズムが戻っていなかった」と明かす。そういう中で、100mが3位、200mは2位。どちらも優勝は年下のサニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大)だったが、無難に両種目で世界選手権代表切符を手に入れた。

この続きは2020年9月14日発売の『月刊陸上競技10月号』をご覧ください。

※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
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【ALL for TOKYO 2020+1】 小池祐貴(住友電工)

今年より来年、来年より再来年、 成長した自分でありたい

昨年、初めて世界選手権に出場した小池。日本選手権は100m3位、200m2位だった 慶大を卒業して、社会人1年目の2018年に、ジャカルタ・アジア大会男子200mで優勝。群雄割拠の男子短距離界で、今や押しも押されもせぬ中心メンバーにいる小池祐貴(住友電工)だが、日本代表としてのキャリアはまだ浅い。その経験不足を埋めるべく、昨シーズンは何度か欧州転戦を繰り返し、7月のダイヤモンドリーグ・ロンドン大会100mでは、9秒98(日本歴代2位タイ)という大きな収穫も得た。初の世界大会となるドーハ世界選手権は故障もあって納得のいく結果ではなかったが、2019年は「まずまず良かった」と言える年に。25歳の小池は「東京五輪があるからということではなく、今年より来年、来年より再来年に成長した自分でありたい」と言う。 ◎文/小森貞子

冷静に受け止めた五輪の1年延期

年末に引き続き、鹿児島で合宿中だった今年3月末のこと。朝ご飯を食べながらテレビのニュースを見ていると、「東京五輪1年延期」の報。小池祐貴は驚きよりも「そりゃそうだよな」という気持ちのほうが大きかったそうだ。 「新型コロナウィルスの感染が世界規模で広がっていて、すべてのアスリートの条件をそろえるのは不可能だろうな、と思ったんです。むしろ、これで延期にならなかったら、すごく不平等な中でやることになると思いましたね」 東京に戻ってからは緊急事態宣言が出され、練習拠点にしている北区のナショナルトレーニングセンター(NTC)も閉鎖に。会社から部の活動も自粛が要請されて、臼井淳一コーチとは約2ヵ月、電話やメールでのやり取りだけになった。小池だけでなく、3月からチームに合流している新入社員の御家瀬緑(住友電工/恵庭北高卒)も、北海道から都内へ引っ越してきた早々にコロナ禍に巻き込まれた。昨年の日本選手権女子100mで優勝した、女子短距離界のホープ。御家瀬の兄と小池が旧知の仲という、小池にとってはいわば郷里の〝妹分〟だ。 昨今の状況下で、まだそれほど交流する時間は持てておらず、それぞれが自宅近くで身体を動かしたり、坂上りをやったり、走ったり。「僕がお世話するという感じはまったくなくて、逆に練習パートナーが1人来てくれた感じで、いい刺激を受けています」と〝兄貴分〟は笑う。「本当に十代か? と思うぐらい落ち着いているというか、しっかりしているというか、すごく平常心を保てる子なので、こっちも冷静にならせてもらっています」と、小池は19歳の後輩を褒め称えた。

2019年は経験値を高める年に

同世代の桐生祥秀(日本生命、左)と、サニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大)らとともに、日本を代表するスプリンターのひとりに成長を遂げた 2020年が半分以上過ぎて、今さらという感がなくもないが、小池にとって「アジア・チャンピオン」で迎えた昨年はどんなシーズンだったのだろうか。「シーズンを通して試行錯誤を繰り返して、着実に成長できた1年だったので、まあまあ良かったんじゃないかなと思います」と言うのが、まず本人の総括だ。 パスポートにはどれだけ出入国のスタンプが押されたのだろう。ずいぶんと慌ただしい1年だった。3月末に米国・スタンフォード招待でシーズンインし、100mで10秒09(+3.0)と10秒07(+2.8)。追い風参考にはなったが、およそ1時間のリカバリーで10秒0台を2本。4月末にはドーハ・アジア選手権に出て、200mで2位(20秒55 /+1.7)。順当な滑り出しだった。 その後は、6月末の日本選手権をはさんで、日本とヨーロッパを行ったり来たり。男子走幅跳で3度の五輪代表になっている臼井コーチも、現役時代に海外遠征を経験しているが、口で説明するより実体験に勝るものはない。「とにかくハードスケジュールをこなして、身体にどれほどのダメージがあるのか、1度経験させたかった」と言う。 小池も「経験値を高めていくには、とりあえずダイヤモンドリーグ(DL)など、レベルの高い試合に出て、日程的に多少きつくても試合を重ねていくのがベストな方法かな、と思った」と話す。そんな師弟の意図を汲んで、力を貸してくれたのが米国人の代理人、トニー・キャンベル氏だった。 日本選手権前の6月初めにフランス(パドァヴ)とDLオスロ。日本選手権後は、7月にDLロンドン、8月にDLバーミンガム。「ざっくり言うと、新しい世界に触れたということ です」と、小池は貴重な体験を振り返った。 例えば「試合の翌朝、3時とか4時に起きて移動し、現地に着いたら翌日が試合とか、1日おきに国をまたいで移動するとか」。小池は「陸上選手として生計を立てていくには、こういうスタイルでみんなやっているんだな、というのを肌で感じられたのが大きな経験」と話し、「これが、この人たちの常識なんだ」と痛感したという。 ただ、時差ボケには悩まされた。帰国すると「夜、眠れないし、昼間練習に行くと眠いし」。時差ボケ解消までに10日ぐらい要して、オスロから帰って2週間後の日本選手権は「まだ睡眠のリズムが戻っていなかった」と明かす。そういう中で、100mが3位、200mは2位。どちらも優勝は年下のサニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大)だったが、無難に両種目で世界選手権代表切符を手に入れた。 この続きは2020年9月14日発売の『月刊陸上競技10月号』をご覧ください。
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