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2025.07.06

34歳・新井涼平が今季限りで現役引退へ リオ五輪決勝、オーバートレーニング「喜怒哀楽すべてを経験した競技人生」/日本選手権
34歳・新井涼平が今季限りで現役引退へ リオ五輪決勝、オーバートレーニング「喜怒哀楽すべてを経験した競技人生」/日本選手権

最後となる日本選手権を終え、優勝した﨑山雄太と涙ながらに抱き合った新井涼平

◇第109回日本選手権(7月4日~6日/東京・国立競技場) 2日目

東京世界選手権の代表選考会を兼ねた日本選手権が行われ、男子やり投の新井涼平(スズキ)が“最後の日本選手権”を74m71の8位で終えた。

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「身体が今日壊れてもいいというつもりでしたが、壊すぐらいに(力を)発揮できませんでした」と笑いつつ、「喜怒哀楽すべてを経験させていただいた競技人生でした」と34歳は、感慨深げに振り返る。

1991年6月23日生まれ、埼玉県秩父郡長瀞町出身。小学校時代はソフトボール部、中学では野球少年だった。

陸上を始めたのは皆野高1年の夏から。インターハイ4位など全国入賞の実績を重ね、国士大でも3年時に日本インカレ優勝、4年時にはユニバーシアード(現・ワールドユニバーシティゲームズ)で8位入賞を果たしている。

大ブレイクを遂げたのが、スズキ入社1年目の2014年。春に日本歴代3位の85m48をマークし、日本選手権では初優勝。アジア大会で銀メダルに輝くと、秋の国体では歴代2位の86m83の大アーチを放った。

翌年の北京世界選手権では決勝進出を果たし、入賞にあと一歩の9位。2016年のリオ五輪でも再びファイナリストとなった(11位)。

助走スピードを高め、それを最大限やりに伝える投げを追求してきた。そのため、トレーニングは年々激しさを増し、1投1投のとてつもない負荷に耐えられる強靭な身体を作り上げていった。14年から日本選手権で7連覇、リオ五輪後も世界選手権に2大会連続で出場した。だが、心身が限界を超えた。

「何から何まで詰め込み過ぎた結果。もう感情がなくなっていたので。周りの人におかしいと言われるまで、自分で気づいていない状態でした。もうギリギリだった」

オーバートレーニング症候群だったという。「家族が一番つらかったと思いますが、家族、会社、スタッフやドクター、周りの人の支えや応援がなければ、ここまでできていない」と新井。徹底したトレーニングをしたことに後悔があるわけではなく、「だからリオ五輪に出ることができた」ときっぱり。そのやり方がすべて正しいとはもちろん思っていないが、それだけ、新井にとってやり投は「すべて」だったのだ。

「私にとって、やり投はすべてが詰まっているもの。浅い意味ではなく、喜怒哀楽もそうですし、思いつく限りのすべてが詰まったもの。話し始めたらきりがないくらい(笑)」

そんなやり投に別れを告げる時が、とうとうやってきた。体調面では回復し、昨年は日本選手権で4年ぶりの優勝を飾っている。だが、肩、肘をはじめ身体はもういうことを聞いてくれないほど。「今シーズンを始めて、無理だなと感じた」と現役引退を決意した。

その過程を知る同期であり、ライバルだったディーン元気(ミズノ)は、新井が2016年に作った大会記録(84m54)の更新を約束し、それを実現してくれた。「自分が引退する日本選手権で更新してくれて、本当に最高です。ディーンも今日に合わせてベストを投げられるように準備をしてくれたので」。試技ごとに言葉を交わし、「試合中は涙ギリギリでした」。そんなディーンからは、お互いの趣味である釣りのルアーに、名前と記録が刻まれたものをプレゼントされたという。

5歳下の﨑山雄太(愛媛競技力本部)が、新井の日本歴代2位の記録を上回る87m16をマークして新王者になった。自身も追い求めた溝口和洋の日本記録87m60は「遠いと思います。届かない存在だった」。だが、先人たちが築いた日本のやり投の歴史を「私とディーンが強くしたかもしれないけど、若手のレベルは格段に上がっている」と新井。頼もしい同期と後輩たちに後を託した。

引退試合は未定だというが、全力を出す大会はこれがラスト。すべてを懸け、捧げたやり投人生にピリオドを打った。

◇第109回日本選手権(7月4日~6日/東京・国立競技場) 2日目 東京世界選手権の代表選考会を兼ねた日本選手権が行われ、男子やり投の新井涼平(スズキ)が“最後の日本選手権”を74m71の8位で終えた。 「身体が今日壊れてもいいというつもりでしたが、壊すぐらいに(力を)発揮できませんでした」と笑いつつ、「喜怒哀楽すべてを経験させていただいた競技人生でした」と34歳は、感慨深げに振り返る。 1991年6月23日生まれ、埼玉県秩父郡長瀞町出身。小学校時代はソフトボール部、中学では野球少年だった。 陸上を始めたのは皆野高1年の夏から。インターハイ4位など全国入賞の実績を重ね、国士大でも3年時に日本インカレ優勝、4年時にはユニバーシアード(現・ワールドユニバーシティゲームズ)で8位入賞を果たしている。 大ブレイクを遂げたのが、スズキ入社1年目の2014年。春に日本歴代3位の85m48をマークし、日本選手権では初優勝。アジア大会で銀メダルに輝くと、秋の国体では歴代2位の86m83の大アーチを放った。 翌年の北京世界選手権では決勝進出を果たし、入賞にあと一歩の9位。2016年のリオ五輪でも再びファイナリストとなった(11位)。 助走スピードを高め、それを最大限やりに伝える投げを追求してきた。そのため、トレーニングは年々激しさを増し、1投1投のとてつもない負荷に耐えられる強靭な身体を作り上げていった。14年から日本選手権で7連覇、リオ五輪後も世界選手権に2大会連続で出場した。だが、心身が限界を超えた。 「何から何まで詰め込み過ぎた結果。もう感情がなくなっていたので。周りの人におかしいと言われるまで、自分で気づいていない状態でした。もうギリギリだった」 オーバートレーニング症候群だったという。「家族が一番つらかったと思いますが、家族、会社、スタッフやドクター、周りの人の支えや応援がなければ、ここまでできていない」と新井。徹底したトレーニングをしたことに後悔があるわけではなく、「だからリオ五輪に出ることができた」ときっぱり。そのやり方がすべて正しいとはもちろん思っていないが、それだけ、新井にとってやり投は「すべて」だったのだ。 「私にとって、やり投はすべてが詰まっているもの。浅い意味ではなく、喜怒哀楽もそうですし、思いつく限りのすべてが詰まったもの。話し始めたらきりがないくらい(笑)」 そんなやり投に別れを告げる時が、とうとうやってきた。体調面では回復し、昨年は日本選手権で4年ぶりの優勝を飾っている。だが、肩、肘をはじめ身体はもういうことを聞いてくれないほど。「今シーズンを始めて、無理だなと感じた」と現役引退を決意した。 その過程を知る同期であり、ライバルだったディーン元気(ミズノ)は、新井が2016年に作った大会記録(84m54)の更新を約束し、それを実現してくれた。「自分が引退する日本選手権で更新してくれて、本当に最高です。ディーンも今日に合わせてベストを投げられるように準備をしてくれたので」。試技ごとに言葉を交わし、「試合中は涙ギリギリでした」。そんなディーンからは、お互いの趣味である釣りのルアーに、名前と記録が刻まれたものをプレゼントされたという。 5歳下の﨑山雄太(愛媛競技力本部)が、新井の日本歴代2位の記録を上回る87m16をマークして新王者になった。自身も追い求めた溝口和洋の日本記録87m60は「遠いと思います。届かない存在だった」。だが、先人たちが築いた日本のやり投の歴史を「私とディーンが強くしたかもしれないけど、若手のレベルは格段に上がっている」と新井。頼もしい同期と後輩たちに後を託した。 引退試合は未定だというが、全力を出す大会はこれがラスト。すべてを懸け、捧げたやり投人生にピリオドを打った。

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