HOME 特集

2021.01.21

マラソン界のホープ吉田祐也インタビュー「準備と努力で少しでも可能性を広げる」
マラソン界のホープ吉田祐也インタビュー「準備と努力で少しでも可能性を広げる」


 1年前の別府大分毎日マラソンで、当時・青学大4年だった吉田祐也(現・GMOインターネットグループ)が、初マラソン日本歴代2位となる2時間8分30秒で日本人トップの3位に入った。競技引退を決め手いたものの、この結果もあり翻意。内定が決まっていた大手菓子メーカー「ブルボン」側も快く承諾してくれたことで、競技継続が決まった。

 吉田にとって“転機”となった別府大分毎日マラソンは、今年は残念ながらコロナ禍により延期となった。それを受け、特別番組「ティモンディのやればできる!42.195~別府大分毎日マラソン特別編~」(RKB)の放送が決定し、ゲストとして吉田、青学大・原晋監督、そして「引退撤回」を進言した一人である瀬古利彦・日本陸連マラソンリーダーが収録に参加。収録後、吉田にインタビューし、改めて福岡国際マラソンまでの取り組みなどを聞いた。

広告の下にコンテンツが続きます

スピードを磨きながらマラソン練習

――別府大分毎日マラソンから1年が経ちました。その時は競技を辞める予定だったのですよね。

吉田 フィニッシュした段階でも白紙の状態で、競技を続けることはまったく考えていませんでした。

――レース後の会見場で、瀬古利彦氏に引退撤回しないか、と声をかけられています。

吉田 マラソンの強化担当のリーダーですから、「続けてくれ」とおっしゃるだろうな、と思いました。ただ、本当にその時点では続けるとは思っていませんでした。

広告の下にコンテンツが続きます

――その後、一転して競技を続けることになり、12月の福岡国際マラソンでは見事に優勝されました。反響は別府大分の時と比べてどうですか。

吉田 福岡では箱根駅伝や青学大の選手、という“看板”を抜きにして結果を出せました。「本物だったね」という印象があったと思います。何より優勝したということに価値があると思います。

――2020年シーズンは、5000m13分36秒86、10000m28分19秒07と、いずれも自己ベストを更新。どのような取り組みでしたか。

吉田 日本選手権の参加標準記録を突破するというのがベースだと考えました。結果的に、福岡が開催されて優勝でき、やはりスピードを殺さずにマラソン練習することで高速レースに対応できると感じましたね。

――今はどういった練習環境で取り組んでいますか。

吉田 地元の東松山市(埼玉)を拠点にしていて、競技場やクロカンコースで行っています。夏くらいまではGMOの他の選手たちと同じ練習メニューに取り組んでいましたが、それ以降はマラソン練習に移行しました。

あらゆる準備をすることが大事

――福岡のレース後のインタビューで、「マラソンは能力よりも準備が大事」という言葉がすごく印象に残りました。

吉田 マラソンをやる前から「準備が大事」だという意識でやってきました。それはどのスポーツについても当てはまりますし、箱根駅伝にとってもそうです。4年時の箱根については、100%の準備ができて、100%の結果が出せました。

――そのような競技観になったのはいつ頃からですか。

吉田 大学3年の全日本大学駅伝で3大駅伝に初出場できたのですが、その時は夏合宿からすごく練習ができていました。過程が良くて、「絶対に外すことがない」と思った中で区間賞(5区)が取れたんです。やっぱり準備をすれば大丈夫、思った通りだったなと確認できました。

――吉田選手は高校時代、全国大会の経験もない中でここまで成長されました。その秘訣は?

吉田 この競技で成長するんだという強い気持ちがないとダメだと思います。あらゆる準備をして、自分自身ができる努力をきちんとしていれば、結果は出る「可能性がある」。準備によって、その可能性をどんどん広げていくのが大切です。

――今後、世界で戦うためにはどういった部分が必要だと考えますか。

吉田 単純なトラックのスピード、そしてレース中のペースの上げ・下げに対応するスピード、どちらも必要ですね。5000m13分20秒台や10000m27分45秒くらいの力がつけば、マラソンのベースも上がるのかな、と。

――マラソンについては東京五輪の代表枠は埋まっていますが、10000mはまだ2枠残されています。

吉田 正直、厳しいと思います(笑)。僕の場合はマラソンで結果を出すために10000mをやっています。相澤(晃)君(旭化成)や伊藤(達彦)君(Honda)は、トラックを今の段階では極めるというスタンスで、結果として五輪に近づいている。どちらが良いではなく、強くなる方法は人それぞれです。

――今回、別府大分が延期ということで大会の特別番組の座談会収録に参加されました。番組のみどころは?

吉田 座談会では久しぶりにゆっくりお話ができて、すごく楽しかったです。原監督とは思い出話や学生時代のエピソードについて話せましたし、瀬古さんからはマラソン選手としての貴重なお話をうかがえました。ぜひ見てください!

――原監督、瀬古氏はそれぞれどういった存在ですか。

吉田 原監督はマラソンの才能を見出してくださいました。瀬古さんは、マラソンを本格的に始めるにあたって極意というか、気持ちの在り方を教えていただきました。とても感謝しています。

※三者の座談会の様子は「ティモンディのやればできる!42.195~別府大分毎日マラソン特別編~」(RKB毎日放送)で見られる予定。放送は大会開催予定日だった2月7日で、13時からTBS系列で放送予定。70回の節目の大会を迎えるはずだった別大マラソンは今年の開催を断念。中止ではなく「延期」とし、70回大会の22年開催を目指している。
また、月刊陸上競技2021年3月号(2月13日発売)では、より深い切り口でのインタビューをお届けする予定。

文/向永拓史

 1年前の別府大分毎日マラソンで、当時・青学大4年だった吉田祐也(現・GMOインターネットグループ)が、初マラソン日本歴代2位となる2時間8分30秒で日本人トップの3位に入った。競技引退を決め手いたものの、この結果もあり翻意。内定が決まっていた大手菓子メーカー「ブルボン」側も快く承諾してくれたことで、競技継続が決まった。  吉田にとって“転機”となった別府大分毎日マラソンは、今年は残念ながらコロナ禍により延期となった。それを受け、特別番組「ティモンディのやればできる!42.195~別府大分毎日マラソン特別編~」(RKB)の放送が決定し、ゲストとして吉田、青学大・原晋監督、そして「引退撤回」を進言した一人である瀬古利彦・日本陸連マラソンリーダーが収録に参加。収録後、吉田にインタビューし、改めて福岡国際マラソンまでの取り組みなどを聞いた。

スピードを磨きながらマラソン練習

――別府大分毎日マラソンから1年が経ちました。その時は競技を辞める予定だったのですよね。 吉田 フィニッシュした段階でも白紙の状態で、競技を続けることはまったく考えていませんでした。 ――レース後の会見場で、瀬古利彦氏に引退撤回しないか、と声をかけられています。 吉田 マラソンの強化担当のリーダーですから、「続けてくれ」とおっしゃるだろうな、と思いました。ただ、本当にその時点では続けるとは思っていませんでした。 ――その後、一転して競技を続けることになり、12月の福岡国際マラソンでは見事に優勝されました。反響は別府大分の時と比べてどうですか。 吉田 福岡では箱根駅伝や青学大の選手、という“看板”を抜きにして結果を出せました。「本物だったね」という印象があったと思います。何より優勝したということに価値があると思います。 ――2020年シーズンは、5000m13分36秒86、10000m28分19秒07と、いずれも自己ベストを更新。どのような取り組みでしたか。 吉田 日本選手権の参加標準記録を突破するというのがベースだと考えました。結果的に、福岡が開催されて優勝でき、やはりスピードを殺さずにマラソン練習することで高速レースに対応できると感じましたね。 ――今はどういった練習環境で取り組んでいますか。 吉田 地元の東松山市(埼玉)を拠点にしていて、競技場やクロカンコースで行っています。夏くらいまではGMOの他の選手たちと同じ練習メニューに取り組んでいましたが、それ以降はマラソン練習に移行しました。

あらゆる準備をすることが大事

――福岡のレース後のインタビューで、「マラソンは能力よりも準備が大事」という言葉がすごく印象に残りました。 吉田 マラソンをやる前から「準備が大事」だという意識でやってきました。それはどのスポーツについても当てはまりますし、箱根駅伝にとってもそうです。4年時の箱根については、100%の準備ができて、100%の結果が出せました。 ――そのような競技観になったのはいつ頃からですか。 吉田 大学3年の全日本大学駅伝で3大駅伝に初出場できたのですが、その時は夏合宿からすごく練習ができていました。過程が良くて、「絶対に外すことがない」と思った中で区間賞(5区)が取れたんです。やっぱり準備をすれば大丈夫、思った通りだったなと確認できました。 ――吉田選手は高校時代、全国大会の経験もない中でここまで成長されました。その秘訣は? 吉田 この競技で成長するんだという強い気持ちがないとダメだと思います。あらゆる準備をして、自分自身ができる努力をきちんとしていれば、結果は出る「可能性がある」。準備によって、その可能性をどんどん広げていくのが大切です。 ――今後、世界で戦うためにはどういった部分が必要だと考えますか。 吉田 単純なトラックのスピード、そしてレース中のペースの上げ・下げに対応するスピード、どちらも必要ですね。5000m13分20秒台や10000m27分45秒くらいの力がつけば、マラソンのベースも上がるのかな、と。 ――マラソンについては東京五輪の代表枠は埋まっていますが、10000mはまだ2枠残されています。 吉田 正直、厳しいと思います(笑)。僕の場合はマラソンで結果を出すために10000mをやっています。相澤(晃)君(旭化成)や伊藤(達彦)君(Honda)は、トラックを今の段階では極めるというスタンスで、結果として五輪に近づいている。どちらが良いではなく、強くなる方法は人それぞれです。 ――今回、別府大分が延期ということで大会の特別番組の座談会収録に参加されました。番組のみどころは? 吉田 座談会では久しぶりにゆっくりお話ができて、すごく楽しかったです。原監督とは思い出話や学生時代のエピソードについて話せましたし、瀬古さんからはマラソン選手としての貴重なお話をうかがえました。ぜひ見てください! ――原監督、瀬古氏はそれぞれどういった存在ですか。 吉田 原監督はマラソンの才能を見出してくださいました。瀬古さんは、マラソンを本格的に始めるにあたって極意というか、気持ちの在り方を教えていただきました。とても感謝しています。 ※三者の座談会の様子は「ティモンディのやればできる!42.195~別府大分毎日マラソン特別編~」(RKB毎日放送)で見られる予定。放送は大会開催予定日だった2月7日で、13時からTBS系列で放送予定。70回の節目の大会を迎えるはずだった別大マラソンは今年の開催を断念。中止ではなく「延期」とし、70回大会の22年開催を目指している。 また、月刊陸上競技2021年3月号(2月13日発売)では、より深い切り口でのインタビューをお届けする予定。 文/向永拓史

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.06.16

競歩・山西利和が愛知県スポーツ功労賞を受賞!20km競歩世界記録樹立が評価

愛知県スポーツ顕彰授与式が6月16日に行われ、男子競歩の山西利和(愛知製鋼)がスポーツ功労賞を受賞した。 同賞は愛知県出身、もしくは県内を拠点としている選手に贈られるもので、2月の日本選手権20km競歩で1時間16分10 […]

NEWS 砲丸投・大垣尊良ビッグショットなるか 女子短距離は山崎心愛に注目 男子中長距離は吉田星が軸/IH北海道

2025.06.16

砲丸投・大垣尊良ビッグショットなるか 女子短距離は山崎心愛に注目 男子中長距離は吉田星が軸/IH北海道

広島インターハイ(7月25日~29日)を懸けた地区大会が6月に各地で開催される。 インターハイ北海道地区大会は6月17日から20日まで、旭川花咲スポーツ公園陸上競技場で行われる。 広告の下にコンテンツが続きます 昨年、男 […]

NEWS 古賀ジェレミーが110mH13秒45の高校新記録! 「もう少し上げられる自信がついた」/IH南関東

2025.06.16

古賀ジェレミーが110mH13秒45の高校新記録! 「もう少し上げられる自信がついた」/IH南関東

◇インターハイ南関東地区大会(6月13~16日/カンセキスタジアムとちぎ、栃木県総合運動公園多目的広場投てき場)最終日 広島インターハイ出場を懸けた南関東地区大会の最終日の4日目が行われ、男子110mハードル決勝で古賀ジ […]

NEWS 100mH・石原南菜が13秒33!地元で高校歴代2位・U18日本新・高2歴代最高の激走/IH北関東

2025.06.16

100mH・石原南菜が13秒33!地元で高校歴代2位・U18日本新・高2歴代最高の激走/IH北関東

◇インターハイ北関東地区大会(6月13~16日/カンセキスタジアムとちぎ、栃木県総合運動公園多目的広場投てき場)最終日 広島インターハイ出場を懸けた北関東地区大会の最終日の4日目が行われ、女子100mハードルで石原南菜( […]

NEWS 110mH・古賀ジェレミーが特大高校新13秒45!!準決勝の記録をさらに0.13秒更新/IH南関東

2025.06.16

110mH・古賀ジェレミーが特大高校新13秒45!!準決勝の記録をさらに0.13秒更新/IH南関東

◇インターハイ南関東地区大会(6月13~16日/カンセキスタジアムとちぎ、栃木県総合運動公園多目的広場投てき場)最終日 広島インターハイ出場を懸けた南関東地区大会の最終日の4日目が行われ、男子110mハードル決勝で古賀ジ […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年7月号 (6月13日発売)

2025年7月号 (6月13日発売)

詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会

page top