◇パリ五輪・陸上競技(8月1日~11日/フランス・パリ)4日目
パリ五輪・陸上競技4日目のイブニングセッションが行われ、接戦となった男子100mはノア・ライルズ(米国)が9秒79(+1.0)で初の五輪チャンピオンとなった。
昨年のブダペスト世界選手権では100m、200m、4×100mリレーの3冠に輝き、スプリント王者に就いたライルズ。今大会でも当然、金メダル候補に挙げられていたが、その地位は決して安泰ではなかった。
今季は20代前半の若手が台頭し、23歳のキシェーン・トンプソン(ジャマイカ)が6月に9秒77の世界歴代9位タイのタイムを出したほか、同じ年のオブリク・セヴィル(ジャマイカ)も9秒82、ブダペスト世界選手権2位の21歳のレツィレ・テボゴ(ボツワナ)もケガから復調し、頂点をうかがっていた。
もちろんライルズも世界王者として安定した力を披露。全米五輪選考会を9秒83の自己タイで制すると、7月20日のダイヤモンドリーグ(DL)ロンドン大会で9秒81(-0.3)の自己記録をマーク。五輪に向けて、調子を上げてパリに乗り込んでいた。
ただ、パリ五輪でのライルズは予選で10秒04(-0.2)。余裕を持っての通過ではあったが、ライバルが9秒台をマークするなかではやや見劣りするタイムに。決勝の約2時間前に行われた準決勝では9秒83(+0.7)とタイムを大きく短縮するも、セヴィルに0.02秒差で先着されたほか、別の組ではトンプソンが9秒80(+0.5)とジャマイカの2人の勢いが勝っているようにも感じられた。
それでも、王者は動じない。
決勝の選手入場時には勢いよくゲートから飛び出すと、スタンドを埋めた7万7000人の観衆を煽るかのように両手で飛び回る。このアクションに、会場の雰囲気はライルズのものになった。
スタートでの反応が遅れ、40m地点での通過は最下位だったが、2次加速の局面から他のライバルを次々とかわしていく。中盤ではトンプソンがトップに立ったが、徐々に追い詰めるとほぼ同時にフィニッシュラインを駆け抜けた。
スタジアムに設置された大型ビジョンに会場中の視線が集まるなか、一番上に記されたのは「Noah LYLES」の文字。
トンプソンもライルズと同じ9秒79のタイムだったが、1000分の1秒までの計測ではライルズが「9秒784」、トンプソンは「9秒789」。わずか0.005秒差でライルズの優勝が決まった。
レース直後には、トンプソンに駆け寄り「君が優勝したと思うよ」と声を掛けたというライルズ。「彼(トンプソン)は4レーンで、自分が7レーンだったから、何が起こっているのか、よく見えなかった。でも、勝つつもりで走リ続けるしかなかったし、フィニッシュのときには何かが自分に身体を前に傾けるように告げていたんだ」と1980年モスクワ大会以来の同タイム決着を振り返った。
昨年の世界選手権での活躍から、スポーツ界のスターへと駆け上がった。「自分の周りには自身のコマーシャルが流れていたし、『パリで主役になるよ』と言ってくれる人もたくさんいた。もちろんそれはプレッシャーにもなった。ただ、『それは自分のためにあるんだ、自分に必要なものになるんだ』と言い続けてきた」と話す。
陸上競技の人気低下を憂い、他の競技と比較する言葉が周囲と軋轢を生んだこともあった。ただ、それは自身が陸上界を引っ張っているという自負があるからこその言葉。そして、その自負を結果で示した王者・ライルズ。
次は200mでの個人2冠、そしてあのウサイン・ボルトも成し遂げなかった両リレーを含む五輪4冠へと突き進む。
【動画】最速はライルズ!男子100m決勝をチェック
🇫🇷#パリ五輪
— TBS S☆1 (@TBS_TV_S1) August 4, 2024
🎥男子100m決勝(1.0)
🥇 🇺🇸#ライルズ 9.79 PB
🥈 🇯🇲#トンプソン 9.79
🥉 🇺🇸#カーリー 9.81#パリオリンピック
競技のライブ・ハイライト・見逃しを #TVer で無料配信! pic.twitter.com/huIBzhzK5o
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.12.10
-
2025.12.07
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.12.10
【箱根駅伝エントリー】登録選手336人が決定 最多出身高は13年ぶりの駅伝名門校! 都道府県別では埼玉が2年連続トップ
第102回箱根駅伝のチームエントリーが12月10日に行われ、今回も1チーム16人、21チーム計336人が選手登録された。 登録選手を出身高校別に見ると、佐久長聖高(長野)が13人で最多となった。続いて、洛南高(京都)が1 […]
2025.12.10
前回6位の城西大・櫛部静二監督「アッと驚く試合を」 20年連続シード東洋大・酒井俊幸監督「誰が出ても粘りながら」/箱根駅伝
第102回箱根駅伝の記者発表会が12月10日、都内で行われ、出場校の監督が意気込みを語った。 前回6位の城西大は16人のエントリーの半数を4年生が占めた。櫛部静二監督は「ここ数年、この4年生の力によって、城西大としては上 […]
2025.12.10
15年ぶりVへ!早大・花田勝彦監督「往路優勝のオーダーを」山口智規主将を「胴上げしたい」/箱根駅伝
第102回箱根駅伝の記者発表会が12月10日、都内で行われ、出場校の監督が意気込みを語った。 前回4位の早大は「5強」の一角として、15年ぶり優勝をしっかりと視界に捉える。 就任4年目を迎えた花田勝彦駅伝監督は、今年度で […]
2025.12.10
99回目出場の中大・藤原監督「いい顔でスタートを」4年生が優勝へ執念「勝たせてやりたい」/箱根駅伝
第102回箱根駅伝の記者発表会が12月10日、都内で行われ、出場校の監督が意気込みを語った。 全日本大学駅伝で2位を占めた中大は、前回5位からの躍進を期す。藤原正和監督は「いいチームができました」と胸を張って語る。 1年 […]
Latest Issue
最新号
2025年12月号 (11月14日発売)
EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選
Follow-up Tokyo 2025