HOME 駅伝、箱根駅伝

2023.01.04

青学大 勝負の“山“で誤算も岸本大紀の区間賞で3位確保 「4年生が走りで見せてきた姿はしっかり後輩に伝わったと思う」/箱根駅伝

9区区間歴代2位の激走で、チームを8位から3位に押し上げた青学大の岸本大紀(左)。右は10区の中倉啓敦

◇第99回箱根駅伝(1月2、3日:東京・大手町←→神奈川・箱根町/10区間217.1km)

連覇を目指した青学大は『史上最強世代』と言われた4年生を7区間に投入。だが、先頭に立ったのは4区終盤のわずかな時間のみ。各中継所では一度もトップ中継は叶わず、最後まで流れを引き寄せることができなかった。

広告の下にコンテンツが続きます

歯車が狂ったのは、原晋監督が勝負ポイントと睨んでいた5区、6区の『山区間』だった。大会前日の朝に5区を予定した若林宏樹(2年)が体調不良を訴え、6区を予定していた脇田幸太朗(4年)を急遽スライドで起用。翌日の6区にリザーブとして準備をしていた西川魁星(4年)を配置した。

下級生の頃から山上り要員としても準備をしていた脇田は1時間12分47秒で区間9位と粘りを見せた。それでもほぼ同時にスタートした駒大・山川拓馬(1年)とは2分02秒の差をつけられてしまう。逆転優勝への足掛かりを作りたかった西川も序盤からペースが上がらず区間20位と苦戦。総合優勝を飾った駒大に山区間で7分03秒のビハインドを負い、原監督も「山がすべて。12月に入って順調に準備できていたが、最後にはまらなかった。選手起用含めて、監督である私の責任です」と敗戦を受け止めた。

それでも王者の意地を確かに見せた部分も垣間見えた。2区の近藤幸太郎(4年)は駒大・田澤廉(4年)、中大・吉居大和(3年)との壮絶なエース対決を繰り広げ、1時間6分24秒(区間2位)の大学新記録をマーク。4人抜きで7位から3位まで順位を押し上げた。さらに4区では前回3区で快走を見せた太田蒼生(2年)が、区間歴代3位となる1時間0分35秒の好タイムで一時首位を奪取する場面も作った。

復路では当日変更で9区に起用された岸本大紀(4年)が執念の快走。区間歴代2位の1時間7分27秒で、一時8位まで順位を下げたチームを再び3位に押し上げる快走を見せ、「近藤、太田、岸本。彼らは学生トップの力を見せてくれました。太田は来年のエース候補になる」と指揮官をうならせた。

今季の三大駅伝を振り返ると出雲4位、全日本と箱根が3位と、2強と呼ばれた駒大が三大駅伝で1つもミスなく3冠を達成した一方で、例年にないほど苦しんだ。

「どんな状況でもしっかりトップ3に入る底力は確かに見せてくれました。ただ、もうそれで喜んでいるチームじゃなくなったことは私も選手も感じている。この結果は真摯に受け止めて、また挑戦します」と決意を語った原監督。

「この1年、僕たち4年生が走りで見せてきた姿はしっかり後輩に伝わったと思うし、今回の結果に悔しいと思った選手もいると思う。来年はより強いチームを作ってほしいと思います」と語ったのは、今季の三大駅伝で唯一区間賞を獲得した岸本。チームの窮地を救ったエースの意地の走りは、王者へ再挑戦を誓う後輩たちへのエールとなったはずだ。

文/田中 葵

[caption id="attachment_90607" align="alignnone" width="800"] 9区区間歴代2位の激走で、チームを8位から3位に押し上げた青学大の岸本大紀(左)。右は10区の中倉啓敦[/caption] ◇第99回箱根駅伝(1月2、3日:東京・大手町←→神奈川・箱根町/10区間217.1km) 連覇を目指した青学大は『史上最強世代』と言われた4年生を7区間に投入。だが、先頭に立ったのは4区終盤のわずかな時間のみ。各中継所では一度もトップ中継は叶わず、最後まで流れを引き寄せることができなかった。 歯車が狂ったのは、原晋監督が勝負ポイントと睨んでいた5区、6区の『山区間』だった。大会前日の朝に5区を予定した若林宏樹(2年)が体調不良を訴え、6区を予定していた脇田幸太朗(4年)を急遽スライドで起用。翌日の6区にリザーブとして準備をしていた西川魁星(4年)を配置した。 下級生の頃から山上り要員としても準備をしていた脇田は1時間12分47秒で区間9位と粘りを見せた。それでもほぼ同時にスタートした駒大・山川拓馬(1年)とは2分02秒の差をつけられてしまう。逆転優勝への足掛かりを作りたかった西川も序盤からペースが上がらず区間20位と苦戦。総合優勝を飾った駒大に山区間で7分03秒のビハインドを負い、原監督も「山がすべて。12月に入って順調に準備できていたが、最後にはまらなかった。選手起用含めて、監督である私の責任です」と敗戦を受け止めた。 それでも王者の意地を確かに見せた部分も垣間見えた。2区の近藤幸太郎(4年)は駒大・田澤廉(4年)、中大・吉居大和(3年)との壮絶なエース対決を繰り広げ、1時間6分24秒(区間2位)の大学新記録をマーク。4人抜きで7位から3位まで順位を押し上げた。さらに4区では前回3区で快走を見せた太田蒼生(2年)が、区間歴代3位となる1時間0分35秒の好タイムで一時首位を奪取する場面も作った。 復路では当日変更で9区に起用された岸本大紀(4年)が執念の快走。区間歴代2位の1時間7分27秒で、一時8位まで順位を下げたチームを再び3位に押し上げる快走を見せ、「近藤、太田、岸本。彼らは学生トップの力を見せてくれました。太田は来年のエース候補になる」と指揮官をうならせた。 今季の三大駅伝を振り返ると出雲4位、全日本と箱根が3位と、2強と呼ばれた駒大が三大駅伝で1つもミスなく3冠を達成した一方で、例年にないほど苦しんだ。 「どんな状況でもしっかりトップ3に入る底力は確かに見せてくれました。ただ、もうそれで喜んでいるチームじゃなくなったことは私も選手も感じている。この結果は真摯に受け止めて、また挑戦します」と決意を語った原監督。 「この1年、僕たち4年生が走りで見せてきた姿はしっかり後輩に伝わったと思うし、今回の結果に悔しいと思った選手もいると思う。来年はより強いチームを作ってほしいと思います」と語ったのは、今季の三大駅伝で唯一区間賞を獲得した岸本。チームの窮地を救ったエースの意地の走りは、王者へ再挑戦を誓う後輩たちへのエールとなったはずだ。 文/田中 葵

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.11.07

編集部コラム「追いかけっこ」

毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]

NEWS メモリードが実業団陸上部の活動終了を発表 今後は個人アスリート支援へ

2025.11.07

メモリードが実業団陸上部の活動終了を発表 今後は個人アスリート支援へ

11月7日、実業団のメモリードは、27年3月をもって実業団陸上部としての活動を終了すると発表した。今後は「チーム単位での支援」から「個人アスリート支援」へと方針を転換し、陸上競技に限らず幅広いスポーツ分野の選手を対象に支 […]

NEWS 110mH学生世界一の阿部竜希がエターナルホスピタリティG内定!「勇往邁進の精神で」棒高跳・柄澤、短距離・木梨もアスナビ就職

2025.11.07

110mH学生世界一の阿部竜希がエターナルホスピタリティG内定!「勇往邁進の精神で」棒高跳・柄澤、短距離・木梨もアスナビ就職

公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)が実施するアスリート支援ナビゲーション「アスナビ」を活用し、陸上3選手の就職・内定が決まった。 男子110mハードルで13秒12(学生歴代3位、日本歴代4位)を持つ阿部竜希(順 […]

NEWS 日本陸連・有森裕子会長に岡山市市民栄誉賞「本市の名を高めることに特に顕著な功績」五輪2大会メダル

2025.11.07

日本陸連・有森裕子会長に岡山市市民栄誉賞「本市の名を高めることに特に顕著な功績」五輪2大会メダル

岡山市は11月7日、女子マラソンで五輪2大会連続メダリストの日本陸連・有森裕子会長に、岡山市市民栄誉賞を授与し同日授与式が執り行われた。 有森会長は岡山県岡山市出身の58歳。女子マラソンにおいて、1992年バルセロナ五輪 […]

NEWS 神奈川県高校駅伝で誤誘導により4校記録無効 嘆願書提出の三浦学苑が関東大会に異例のオープン参加 高体連が認める

2025.11.07

神奈川県高校駅伝で誤誘導により4校記録無効 嘆願書提出の三浦学苑が関東大会に異例のオープン参加 高体連が認める

11月3日の神奈川県高校駅伝(横浜市のフィールド小机・日産スタジアム付設ハーフマラソンコース)で誤誘導による4校が記録無効となり、記録無効となった4校のうち三浦学苑について、高体連が関東高校駅伝(11月22日/埼玉・熊谷 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年11月号 (10月14日発売)

2025年11月号 (10月14日発売)

東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望

page top