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【学生長距離Close-upインタビュー】全日本選考会で好走した久保田徹「自分が大東大を引っ張っていく」

学生長距離Close-upインタビュー
久保田 徹 Kubota Toru 大東文化大学3年

「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。20回目は、6月の全日本大学駅伝関東地区選考会でエースが集う4組を28分53秒61で走り、日本人2番手の6着となった大東大の久保田徹(3年)をピックアップ。

埼玉・聖望学園高時代は5000mでインターハイに出場。大東大に入り、着々と実力を伸ばし、昨年は日本学連選抜の一員として全日本大学駅伝にも出場した。5大会ぶり全日本大学駅伝出場を決めたチームの中心選手でもある久保田に選考会でのレースを振り返ってもらい、これまでの軌跡と今の思い、これからの目標について聞いた。

東洋大・松山に食らいつき日本人2位

6月19日の全日本大学駅伝関東地区選考会。久保田徹(大東大)は4組にエントリーされることを1ヵ月ほど前から言われていた。昨年も4組を走り、29分07秒59で組19着。チームトップの成績を残したものの、チームとしては12位で敗退した。

「今年はなんとしても通過するぞ、という思いでした。前期シーズンの最大の目標は選考会の通過でしたから」。

選考会に合わせるため、チームとしても関東インカレへの出場を回避して、万全の準備をしてこの日に臨んだ。

1組目は暫定14位と通過圏外に。だが選手たちは動揺することなく、自らの実力を発揮した。2組目ではピーター・ワンジル(2年)が1着、大谷章紘(2年)が6着に入り、暫定順位は4位に浮上。3組目は大野陽人(4年)が組トップ、入濵輝大(1年)が21着で順位は4位をキープした。

そして最終4組には留学生や各校のエースが集まった。真名子圭監督からは「留学生にはついていかず、日本人の先頭につく。余裕がなかったら下がって、余裕のある位置でレースを進めるように」と指示をもらっていた。「29分10秒前後なら問題なく通過できるので、余裕があったら(日本人)1着を狙っていくつもりで走ってこい」と声をかけてもらい、スタートラインに立った。

留学生がハイペースで刻む集団を作り、第2集団の先頭は東洋大の松山和希(3年)が引っ張るかたちに。久保田は集団の前方に位置を取った。

「最初の2000mぐらいまではキツく感じましたが、その後は8000mぐらいまで余裕を持って走れました。けどラスト1000mはキツい走りになってしまいました」。

ラスト1周で松山が一気にペースアップした際、久保田はついていくことができず、日本人トップにはわずか1秒余り届かず。「自分の力が足りなかったですね」と反省を口にするが、チームメートなどからは「終盤まで余裕がある走りをしていた」と言われ、自分でも動画を見返してある程度の手応えを感じられた。

「最後は負けてしまいましたが、自分の最大限は出せたかなと思います。ラスト1000mでもう少ししっかり走れるように、これからもっと練習をしっかりやっていきたいです」

高3でインターハイ出場も「出るだけで満足してしまった」

埼玉県秩父郡長瀞町出身の久保田。中学時代は陸上部がなく、サッカー部に所属していた。希望制で陸上の大会に出ることができ、3000mなどに出場したが、「県大会に行くのがやっとみたいな感じでした」と振り返る。

ただ中学2年の時、地区での駅伝を走った際に、聖望学園高の指導者が「うちに来て陸上をやらないか」と声をかけてくれた。興味があり、高校から本格的に陸上を始めることにした。

とはいえ、サッカーに打ち込んでいた久保田は陸上のことをまったく知らなかった。ただ練習して努力すれば記録が伸びる。それが楽しくてどんどん陸上にのめりこんでいった。高校2年時には都道府県対抗男子駅伝の埼玉県代表に選ばれ4区を走り、区間19位。そして高校3年の時、県大会を突破し、北関東大会に出場した。「絶対にインターハイに出場したかったので、6番以内に入ることを意識して走っていました」。強豪選手たちがひしめく中、唐澤拓海(埼玉・花咲徳栄高→駒大)、石田洸介(群馬・東農大二高→東洋大)に次ぐ14分37秒65、3位でフィニッシュ。「まさか3位に入るとは思ってなかったので、すごく大きな経験となりました」と当時のことを振り返る。

ただ、インターハイには出場できたが、15分00秒83の予選組13着で敗退となった。「都道府県駅伝もそうですが、全国の大きな舞台では通用しなかったです。インターハイは暑さもあり、出られただけで満足してしまっていたなと思います。そこでもっと勝ちを意識できていれば、もっと速いタイムでいけたかな……と思うことは、今でもあります」

全国まで進んだ久保田には、さまざまな大学から声がかかった。その中でも大東大を選んだのは、「タイムを持っていない頃から監督やコーチが熱心に誘ってくれたから」というのがひとつ。もうひとつは、埼玉でともに切磋琢磨した同級生たちを意識したのもある。

埼玉で久保田と同年代の唐澤、白鳥哲汰(埼玉栄)、そしてチームメートだった青柿響は駒大に進んだ。「その3人とは別で強くなりたい、と思いました。実力のある選手なので、同じ練習をしていては勝てない。高校で勝てなかった分、大学で勝ちたいと思いました。とはいえ、まだ勝ててはいないですけど」と笑い、「いずれは超えられるように頑張りたいと思います」とはっきりと言い切った。

だが、入学直後には新型コロナウイルスの影響もあり、入寮したもののすぐに帰省。各自地元に帰っての練習が2ヵ月ほど続いた。大学に戻ってきてからも、はじめは高校と大学の練習量の違いに苦労した。高校ではあまり距離を踏む練習がなかったが、たびたび距離走があり、強度の高いポイント練習も増え「きついな」と感じることも多かった。必死に食らいつき、練習についていけるようになってからはタイムも伸びてきた。

大学2年の4月には、10000m28分43秒55と自己ベストを更新。前述の全日本大学駅伝関東地区選考会の結果で日本学連選抜チームに選ばれ、大学に入って初めて駅伝を走った。「テレビで見ていた大会に出られるんだ、といううれしさもありましたし、注目度が他の大会に比べて全然違うなと感じました」。緊張もあったが、楽しんで走ろうと意識し、通過タイムなどもしっかり見ながら走ることができた。この経験はミーティングなどでも話し、チームに共有してきた。

新監督のもとでベスト更新

今年の4月から、大東大OBで、宮城・仙台育英高の監督を10年務めた真名子圭監督が新たに就任した。馬場周太前監督の指導では距離走やジョグの時間が多く取られていたが、真名子監督に変わってからは走る量は減った代わりに、ジョグのスピードも最低1km4分を切るようにと指導されるなど、質が求められるようになったと久保田は話す。

もともとスピード練習には苦手意識があったという久保田だが、練習をしていくうちにこなせるようになり、4月、5月の記録会では1500m、3000m、5000mの3種目で自己ベストを更新した。特に5000mはそれまではの14分05秒76から13分52秒50と13秒近くも縮まった。

「右の腸脛靭帯を痛め、2月、3月はほぼ走れなかったので、ベストが出るのは秋以降かと思っていました。それが練習とともに調子も上がってきて、ベストを更新できました」

変わったのは練習だけではなく、生活態度にもある。毎日のあいさつや、靴をそろえて脱ぐなどの基礎的なことも徹底して指導されている。「大学生になってそういう指導をされることがなかなかなかったので、チームが変わり始めてきているなという実感があります」。チーム内でもこれまでは「どうせ」といったネガティブ発言が多かったが、練習から声かけなどをしっかり行うようにした結果、雰囲気が明るくなり、士気が高まってきている。

久保田自身も変化を感じている。「去年は最低限の走りをすればいいや、という考えでした。今年は『自分が大東を引っ張っていくぞ』という気持ちで走れています。この先もケガをせずに、しっかり自己ベストを更新していきたいです」。

エースとしての自覚はありますか? と重ねてたずねると、「先輩に木山さん(凌、4年)など速い方もいますが、真名子監督からは『エースをしっかり超えられるような選手になってほしい』と言われています。4組目を一緒に走った菊池(駿介、3年)とも、お互いに上を目指していこうと話しています。今回はその走りができたかなと思います」と充実感が伝わる言葉が返ってきた。

このあとは7月のホクレンで5000mを走り、さらなる自己ベストの更新、13分45秒切りを目指す。そして秋は箱根駅伝予選会を通過するために上位で走り、全日本大学駅伝の本線では区間賞を狙いたいと目標を語ってくれた。

「大東を応援してくださる方から、『箱根に大東がいないのは寂しい』という言葉もいただきます。今年こそ箱根に戻って、しっかり走れるように。これからがんばっていきたいです」

大東大を引っ張る久保田の存在はチームメイトに刺激を与え、さらなる好循環をもたらしていくだろう。

◎くぼた・とおる/2001年5月12日生まれ。埼玉県出身。長瀞中→聖望学園高→大東大。自己記録5000m13分52秒50、10000m28分43秒55。高校では現駒大の青柿響らと同期で、2学年先輩には昨年5000mで日本人学生歴代2位の13分19秒96をマークした砂岡拓磨(城西大→コニカミノルタ)がいる。大学進学後は着実に力をつけ、トラックで自己記録を次々と更新。昨年は日本学連選抜の一員として全日本大学駅伝にも出場した。今年はチームの中心選手として、古豪復活を牽引する。

文/藤井みさ

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